白井喬二の「珊瑚重太郎」

jpeg000 220白井喬二の「珊瑚重太郎」を読了。昭和5年、白井喬二が42歳の時から1年半、「講談雑誌」に連載されたもの。
これは本当に面白いです!こんなに面白い本を読むのは久し振りという感じです。お話は、若侍の珊瑚重太郎がふとしたことで牢中に囚われている武士を救うため、ある大名屋敷に失踪中の若殿様に化けて乗り込むのですが、その重太郎に次から次に難題が持ち上がります。まずはその大名屋敷の宝物について、偽物か本物かの鑑定を迫られ、その鑑定の結果によって、人質となっている若侍2人のどちらかが死ななければならないということになります。それを何とかごまかすと今度は、ある高貴な家のお姫様と結婚させられそうになります。重太郎自身が次の日に結婚式を控えた身でした。それを何とか日延べしてごまかすと、今度はお家の存亡をかけた訴訟事になりますが、その訴訟の相手方というのが何と自分自身でした。お奉行所で重太郎は双方の訴え人となり、一人二役で大忙しで何とかごまかそうとします。その訴えは、重太郎個人が勝てば、大名家がお取りつぶしになって高貴な家のお姫様が悪者の元に嫁がなければならなくなり、また大名側が勝てば、貧しい女性が何人も苦界に身を売らなければならない、というジレンマの状況です。そうした重太郎を、陰からこっそり助けるのが、実は本物の若殿様で、二人はそっくりなのですが、重太郎が本物に早く入れ替わるように頼んでも、何故か若様は首を縦に振りません。その理由が実は…とこの設定がまた素晴らしいです。この作品は言ってみれば、日本版「王子と乞食」ですが、白井喬二はストーリーテリングに関しては天才的です。また、主人公は何度も何度も危機的状況に陥って苦悩するのですが、その行動が一貫して倫理的なのがさわやかな印象を与えます。
この小説は昭和9年(1934年)に片岡千恵蔵主演の映画になっています。

白井喬二の「珊瑚重太郎」」への2件のフィードバック

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