白井喬二の「満願城」

jpeg000-74白井喬二の「満願城」を読了。1931年8月から1932年10月にかけて「講談倶楽部」に連載され、1949年に梧桐書院から出版されたもの。いわゆる天一坊事件について、大岡越前守が自らの命を賭け、天一坊が偽の御落胤であることを暴く話です。(大岡越前守が天一坊事件を扱ったというのは歴史的な事実ではありません。)白井喬二作品としては珍しく、主人公である象牙彫り師の醒井乱青は根は悪人ではないのですが、天一坊一味から御落胤の証拠の品である3品のうちの一つ、早瀬の鮎の象牙彫りをそれとは知らず注文されたことがきっかけで、段々と悪の道に入っていきます。まずその自分が彫った早瀬の鮎の象牙彫りを取り戻そうとして天一坊の屋敷に忍び込み、首尾良く取り戻せたと思ったら、間違えて500両入りの紙入れを盗み出してしまいました。その紙入れをある金物屋の妾の女に見られ、口封じに談判に行った時に、勢いでその女の間夫になってしまいます。そしてその女の昔の男が尋ねて来たのを、誤って殺してしまいます。そして女の元に忍んで行っている時に、旦那である金物屋がやってきたため、乱青は強盗のふりをして、その旦那から金品を巻き上げてしまいます。このようにどんどんと悪の深みにはまっていって、最後は女の昔の男の子供に敵討ちで刺されて死んでしまいます。一方で大岡越前守は、一度は天一坊が怪しいとにらみ、再吟味の許可を申し入れますが、松平伊豆守の妨害で逆に閉門となり、切腹を申しつけられそうになります。しかしながら、閉門をこっそり破って水戸綱條卿に会いにいって、支援を頼んだお陰で何とか再吟味が認められます。越前守に与えられた時間はわずかに9日でしたが、その間に部下が天一坊が偽物であるという証拠をつかみ、見事天一坊の悪を暴きます。

白井喬二の「満願城」」への2件のフィードバック

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