谷譲次の「めりけんじゃっぷ商売往来」

谷譲次の「めりけんじゃっぷ商売往来」を読了。谷譲次は、本名が長谷川海太郎で、谷譲次以外に、林不忘、牧逸馬の3つのペンネームを使い分けて活躍した人です。林不忘の名前では、日本の時代小説の中でもっとも有名なキャラクターである「丹下左膳」を生み出した人です。(ちなみに最初に丹下左膳が出てくる作品は「大岡政談」で、丹下左膳は悪役として登場します。)
この谷譲次名義の「めりけんじゃっぷ商売往来」は、実際にアメリカで3年半色々な職業を経験した長谷川の経験を織り交ぜて、アメリカの最下層に近い所(本当の最下層はその当時のアメリカでは黒人が担い、日本人移民はその黒人の次という扱いでした)でたくましく生きていくM.J.(メリケン・ジャップ)の姿を描くものです。その日本人移民が就く職業としては、皿洗い、ウェイター、執事、商店の会計などです。この作品は「新青年」に連載されたもので、当時ここまでアメリカの実態を描く作品はこの作品の他にはほとんど無かったのではないかと思います。
もう一つの作品「めりけん一代男」は実に痛快な作品で、これもめりけんじゃっぷを主人公としますが、名前を聞かれると「俺(ミイ)か。ミイは西海岸(コウスト)のスズキてんだ。」と答え、生まれ持ったハンサムな顔と博打の腕を活かして、白人達から大金を巻き上げたり、パーティーで冷たくあしらわれた白人女性に復讐したり(その女性達の旦那を博打で陥れて、借金の形にその女性達の自由を奪い、競売にかける、という危ない話です)、という話が語られます。名前は明らかに西鶴の「好色一代男」のもじりでしょうが、阿佐田哲也の小説のような趣があります。

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