平凡社版完訳四大奇書の「西遊記 上巻」

平凡社版完訳四大奇書の「西遊記 上巻」を読了。写真だと大した分量じゃないように見えますが、字が小さい上に何と1ページ3段組なので、実際はかなりの分量がありますし、ちょっと老眼には辛いです。でも読み出すと面白くて止まらなくなります。上巻だけで54回に分かれていて、1回1回はそれほど長くないので飽きずに読み進めていくことができます。内容は元祖「伝奇小説」という感じで、本当に面白いです。よくもまあこれだけの妖怪を出してくるなあ、というのが正直な感想で、悟空も万能でいつも勝利するのでは決してなくて、逆にほとんど常に危なくなって、かなりのケースで観音様その他の助けを借りてやっと何とかしのいでいるという感じです。一つ大人として読んで気がついたのは、この小説では道教と仏教がほとんど対等のものとして混淆して出てくるということです。三教ということで儒教も一応形だけは出てきますけど、実際は儒教に関係する登場人物は上巻には登場しません。仏教というのは日本でも神道と混淆しますが、この小説では菩薩が蟠桃会に招かれて出かけたりと、道教と仏教の世界がごちゃごちゃです。また、「封神演義」とも結構共通するものを感じますが、「封神演義」もまた明代の小説でした。三蔵と八戒が川の水を飲んで妊娠する話も確かに出てきました。話としては短く、無くてもいい話なので、子供向け版で削除されたのはわかるような気がします。後は、三蔵法師と三人の弟子と、竜が化した馬のチームのチームワークがかなりばらばらだということ。そこがきれい事ではないリアルなお話を作っているような気がします。三蔵法師も理想的な人物ではなく、すぐ悟空のことを疑い、八戒に簡単に騙されたりする人物として描かれています。

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