吉川英治の「宮本武蔵」(戦前版)(空の巻)

吉川英治の「宮本武蔵 空の巻」(戦前版)、全6巻の内の第4巻を読了。この巻になって、ようやく戦前的な描写が出てきました。それは、伊達政宗の臣下で、武蔵をスカウトしようとする石母田外記という侍が、武蔵に対し伊達政宗の人柄を紹介するのに、正宗が皇室を何より重んじ、肚から勤王家である、という説明をします。一応調べてみましたが、歴史的な事実として正宗が勤王家であったなどというのはどこにも出てこず、これは吉川英治による脚色だと思います。ただ、青空文庫で「戦後版」を見てみましたが、この部分は削除されずにそのままです。そうすると、吉川英治が戦前版を書き直して一部削除したのは、1949年~1950年出版の六興出版版だけで、その後の版はまた戦前版に戻したのかもしれません。この辺りを確かめるため、六興出版版の一部を取り寄せ中です。
この巻の最後の「跋」には、しかしながら、本当に時代に迎合していた吉川英治がよくわかる文章が入っています。以下引用します。「征戦の皇軍中には、現代の生ける宮本武蔵が、無数にいるのである。すでにかなり盡(つく)した古人武蔵の史料をなお机に漁らんよりは、生ける武蔵に親炙して、親しく学ぼうと思うのである。涼秋八月、長江の血河に筆を洗って、次の構想を、腹いっぱい、大陸の銀河から吸いこんで来ようと思うのである。」

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