小林信彦の「汚れた土地ー我がぴかれすく」

yogoreta-tochi中原弓彦(小林信彦)の「汚れた土地-我がぴかれすく」を読了。小林信彦として、「虚栄の市」に続く第二作で、同じ年に「冬の神話」も出版されています。電子書籍や文庫本化されていなくて、古書で入手するしかなく、1万円近くしました。この小説は横浜にある、イギリス人が経営する米兵相手の貸家会社が舞台になっています。小林信彦は大学を出た後、叔父が経営する塗料会社のセールスマンとしてまず就職し、その後、日英混血のやはり親類が米兵相手に営んでいた貸家会社・有限会社レオポルド&サンに勤務していますが、その会社がモデルになっています。「我がぴかれすく」とあるように、半自伝的小説で、主人公が悪漢(ピカロ)になろうとしてなりきれない様子を描きます。この主人公の「悪漢ぶり」が卑小で、ある意味とても「痛い」ものです。主人公は元やくざの会社役員や、イギリス人と日本人の混血の社長や他の役員がそれぞれ会社を食い物にするのに翻弄されます。この不動産会社は、実際の会社もこの小説に出てくる会社も、米兵の日本駐留が減ってしまった煽りを受けて、不渡りを出して倒産します。この過程で、実際の小林信彦も社長に暴力を受けたりしたらしいのですが、その経験もこの小説に取り入れられています。全体的には三作目になり、小林信彦らしさ、というのは随所に出てきて面白く一気に読むことができました。これで小林信彦の初期の三作品を全部読むことができて満足です。

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