モーア・ジーベックの全集のきわめて初歩的な誤植

マックス・ヴェーバーの「中世合名会社史」を翻訳中ですが、モーア・ジーベックの全集版のテキストにきわめて初歩的な誤植を発見。
P.205にAugangspunktとありますが、こんなドイツ語が存在しないことは日本人の私にだってすぐ分かります。Ausgangspunkt(出発点)の間違いです。ちなみにこの全集版のこの巻の価格は259ユーロ、現在のレートで31,292円もします。そんなに馬鹿高い値段を付けて、それでこの校正レベルとは…しかも全集の第1巻ですよ、これ。CD-ROM版は正しかったです。このCD-ROM版には結構タイポがあるので、校正のために全集版を高いのを承知で買ったのですが、これでは逆です。
また、この全集の売りはテキスト・クリティークだった筈で、ヴェーバーが他の文献を引用している場合に、引用ミスがあれば、それには注が付いて逐一訂正されています。それをこの全集自身がヴェーバーに責任のない誤植を作ってどうすんの、という感じです。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史8段 対 村川大介十段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が伊田篤史8段、白番が村川大介十段の対戦です。二人とも7大タイトル経験者ですが意外にも対戦は本日が2回目で、しかも前回もNHK杯戦だったということです。前回は伊田8段が勝っています。黒は右下隅と右下隅にかかられて、両方ともコスミツケという、昔だったらあり得ない布石でした。しかし右下隅はコスミツケの後手堅く一間に開きましたが、右上隅ではコスミツケの後ケイマに開きました。黒が上辺で白がコスミツケられて立った所から二間に開いた石に肩付きに行きました。白がそれを受けずに黒の包囲網につけていったのが黒の分断を見て機略のある手で、ここから戦いが始まりました。ここの別れは白が黒の隅の2子を取り込んで実利を稼ぎ、黒は上辺で白1子をポン抜いて厚くなりました。この別れは黒のポン抜きが厚みとして働くか、あるいは攻めの対象になるかというその後の打ち方にかかっていました。さらに右辺で白が黒を切っているタネ石がすぐ動くのは重そうでしたが、いずれ機を見て動き出し、右辺の黒を攻めることが出来るかどうかもまた焦点でした。その後の進行で結局白は右辺も逃げ出し、上辺も上手くポンヌキの黒を攻める体制になり、局面は白がリードしました。しかしこのポンヌキの黒を巡る攻防で白が左辺の黒に利かしに行ったのに黒が手を抜いて中央をハネたのが機敏でした。左辺の白の儲けも大きかったですが中央の力関係の逆転も大きく、これで勝敗の行方は不明になりました。その後の白の打ち方で疑問があったのは、せっかく黒を攻めながら左下隅で地を稼いでいたのに、下辺で黒のハネに切っていって戦ったのがどうかと思いました。白は右辺の一団に一眼しかないため、あまり強い手は打てず、その間に黒に下辺から左下隅に潜られてしまい、ここで大きく地を損しました。ここで形勢は逆転し黒のリードとなり、結局黒の中押し勝ちになりました。

宇宙家族ロビンソンの”The Ghost Planet”

宇宙家族ロビンソンの”The Ghost Planet”を観ました。第2シーズンの第3話ですが、このシーズンが始まってやっとまともな面白い話に巡り会いました。結局また宇宙をさすらうことになったジュピター2号は突然「着陸するように」という英語の通信を受信します。それが地球からだと信じこんだドクター・スミスは、ジュピター2号をその星に向けます。そのうちジュピター2号はコントロールを失い、その星からの電波によって操られその星に着陸します。ドクター・スミスはロビンソン博士の制止も聞かず、その星の建物に入っていきます。そこで待ち受けていたのはその星のロボットだけでした。しかしドクター・スミスはジュピター2号の武器を全部渡せば財宝をやると言われて、まんまとその誘いに乗ってしまいます。しかしこちらのロボットに武器を運ばせて、それを向こうのロボットに引き渡した後、ドクター・スミスを待っていたのは、電子装置組み立ての強制労働でした。その星は巨大な電子頭脳が支配する星でした。その電子頭脳はこちらのロボットにも従うように言い、ロボットはそれに従ってウィルも強制労働に押しやります。しかしそれはこちらのロボットの芝居であって、ウィルとドクター・スミスを助け出します。一行は何とか電子頭脳の星から逃げ出すことが出来ましたが、しかし今度はその星から核ミサイルが発射され、ジュピター2号を追いかけて来ます。ロビンソン博士はジュピター2号を反転させてその星に再度向かい、ギリギリで反転してその星にミサイルを当てて爆発させます。しかし、こちらのロボットに裏切られたと思えた時はいつものようにロボットのバッテリーパックを抜けばいいのに、とちょっと矛盾点を感じました。しかし、なかなか面白い話でした。

植木金矢の「時代劇画傑作選」

植木金矢の「時代劇画傑作選」を読みました。吾妻ひでおと前後するように97歳で亡くなられた劇画界の長老でした。私はお名前を存じ上げなかったのですが、Amazonで絵を見て興味がわいたので買ってみたものです。「風雲鞍馬秘帖」という鞍馬天狗もの(?)で一世を風靡された方です。第一印象としてはすごく好きなタイプの絵ですが、惜しむらくは時代小説の挿絵の絵であり、劇画に必要な動きの描写が今一つで全体に静的に思えます。収録されている作品の中では、巌流島の決闘の武蔵の相手の佐々木小次郎が、若者ではなくその師匠の69歳の老人であった、というのがちょっと面白いです。良い所は無駄な線が少ないということです。私は現在週刊文春で新撰組ものを描いている森秀樹の絵が苦手です。何がというと余分な線が多すぎて汚い感じがするからです。そこに行くと、植木さんの絵は綺麗で無駄がありません。

ヴェーバーの「中世合名会社史」、序文の日本語訳を公開しました。

マックス・ヴェーバーの「中世合名会社史」の序文の日本語訳を公開しました。
いやー、この論考は人に審査される博士論文なので、後年のものみたいにやたらとダラダラと文章を続けるヴェーバー式の「悪文」は少ないだろうと予想していたら、とんでもない!、序文からそういう悪文のオンパレードでした。

宇宙家族ロビンソンの”Wild Adventure”

宇宙家族ロビンソンの”Wild Adventure”を観ました。この回ではドクター・スミスの陰謀?がついに勝利を収め、一度はロビンソン博士とドンは地球に戻ることを決定します。しかし何故か訳の分からない緑色の女性が宇宙空間でサイレンのようにドクター・スミスを誘惑し、ドクター・スミスは催眠術にかかってしまったように宇宙服を着て外に出てしまいます。結局、ドクター・スミスを救助するために、最後の燃料を使ってしまい、地球には戻れなくなります。しかし、アルファ・コントロールと通信だけは出来、彼らがまだ生きていることを伝えることは出来ました。
この当時、宇宙家族ロビンソンとバットマンが同じ時刻に放映されていて視聴率を競っていたみたいです。しかしバットマンの方も設定を変更してスタートに失敗し、宇宙家族ロビンソンが視聴率を失うことはなかったようです。

宇宙家族ロビンソンの”Blast Off Into Space”

宇宙家族ロビンソンの”Blast Off Into Space”を観ました。このお話から第2シーズンでカラーになります。いきなりジュピター2号は非常に激しい地震に襲われます。ジュピター2号の燃料を採掘に出かけていたドンやドクター・スミス、ウィルとロボット達の所にも地震が起きますが、そこにいきなり地底の底から、西部の49ersの格好をした山師が登場します。その男はコスモニウムという、太陽の光を凝縮したような、あらゆるものに生命を吹き込む液体を採掘しており、地震は彼が仕掛けた爆薬によるものでした。しかし、結局その爆発は連鎖反応を引き起こし、ロビンソン一家の居た星は崩壊して宇宙の塵になってしまうことが予測され、ロビンソン一家は採掘した燃料でこの星を離れることを決意します。山師の方は実は宇宙船が故障しており、それを修理する部品を欲しがっていましたが、ドクター・スミスがコスモニウム欲しさに、ジュピター2号からスラスターという部品を盗んで山師に持って行きます。結局カードの勝負になって、その部品は山師に巻き上げられてしまいます。山師はロケットを修理してさっさと星を離れましたが、ジュピター2号はドクター・スミスが部品を盗んだせいで離陸がうまく行かず、危機に陥ります。しかし結局星が崩壊してその重力が無くなったため、ジュピター2号はようやく何とか宇宙空間に出ることが出来ました。そういえば、第1シーズンの最初の頃に出ていた宇宙猿のデビーが、長らく行方不明(?)で登場しませんでしたが、この回で突然復活します。

宇宙家族ロビンソンの”No Place to Hide”

宇宙家族ロビンソンの”No Place to Hide”を観ました。放送開始前のおそらくTV局のお偉いさん説得用に作られたパイロット版で未放映です。設定が本番とは違っていて、ジュピター2号ではなくジェミニ(ジェミナイ)12号になっています。また、ドクター・スミスとロボット(フライデー)は登場しません。宇宙船は従ってドクター・スミスが密航したことによって軌道が狂って迷子になったのではなく、途中で小惑星帯にぶつかって宇宙船がダメージを受け、見知らぬ惑星に不時着したということになっています。その後の話は第1シーズンに登場した話ばかり、というか第1シーズンがこのパイロット版の映像を使っているのであり、アーウィン・アレンお得意の使い回しです。第1シーズンで、ジュピター2号が不時着した星が急に寒くなるということでロビンソン一家がチャリオットで南の方に脱出する話が何話かありました。その時何故か臆病な筈のドクター・スミスが一人ジュピター2号に残るのですが、その理由はこのパイロット版のフィルムを使うのにドクター・スミスが映っていないというだけのことでした。
ドクター・スミスとロボットを入れたというのは、ある意味大正解で、善人ばかりのロビンソン一家とドンだけでは話が単調になったと思います。しかし、ドクター・スミスは両刃の剣でもあり、彼の参加によってシリアスSFだった筈がドタバタ喜劇になってしまったということも否めません。
ともかくこれで第1シーズンは全部観終わりました。次からカラーの第2シーズンになります。

NHK杯戦囲碁 許家元8段 対 山田規三生9段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が許家元8段、白番が山田規三生9段の対戦です。この碁の焦点となったのは左上隅からの戦いです。その前に上辺でのやり取りがあった時、黒は白に上辺を地にさせ、その代り中央に二間で進出しました。この後この黒が厚みとして働くか、それとも白に攻められるのかが勝敗の分かれ目でした。山田9段はその黒を攻めることを狙って左上隅から大ゲイマして左辺とこの黒の間を分断に行きました。黒はすかさずその大ゲイマの間を分断に行き、戦いが始まりました。白が左辺の黒に付けて、黒がハネ、白が伸びた時、通常は左辺の断点を継ぐのですが、ここで黒は中央から白全体を包囲する手を打ちました。この手が好判断で白は勢い左辺を切りましたが、黒が下から当てたのが好手で、白は黒の勢力圏の中で2つに分断され、どちらもある意味もがいて生きなければならなくなりました。まず上方の白は活きること自体なのは難しくありませんでしたが、後手活きになりました。そして先手を取った黒が今度は下方の白を攻撃しました。山田9段はこの白をただ活きる手は打たず、劫含みで反撃しました。しかし劫材が十分ではなかったため、結局下辺で2段バネしてまくって絞り、1線を渡って右下隅に連絡するということになりました。この方が単に中で活きるより若干でも地を持っておりかつ黒の模様も荒らしているので優りましたが、更に黒が右下隅で星の左下に打ち込んでいったのが、許8段のさすがというべきしつこさでした。この黒は単独で活きるかあるいは捨て石にして右辺に模様を築くのどちらも出来ましたが、結果的には右下隅は白地になり、その代わりに右辺に白の一段が取り残され、これが攻められることになりました。そのシノギで白は中央の黒の断点を覗きましたが、黒が継がずに右辺を取ってしまったのが好判断でした。勢い白も切っていきましたが、オイオトシで取られそうになっていた種石を愚形で当て込むのが先手であり、そこを白が継げば上方から脱出という見合いになり、黒が捕まることはありませんでした。こうなると右辺が全部黒地になって地合は大差となり、白の投了となりました。

白井喬二の「富士に立つ影」読み直し 孫代篇

白井喬二の「富士に立つ影」の読み直し、孫代篇を読了。さしもの好漢、熊木公太郎も佐藤兵之助の部下の銃弾により命を落とし、かたや佐藤兵之助の方も、鉄砲の名人の一つ玉の国蔵に狙われ、国蔵がやはり部下の銃弾に倒れたため弾が逸れ、命こそ助かったものの膝に銃弾を受け、哀れにもビッコになってしまいます。
一方で、その兵之助とお園の子兵吾は、武士を憎み船大工の修行をしていましたが、ふとしたことからをれを止めて、侠客上冊吉兵衛の配下に加わり、侠客として名を上げていきます。思えばこの兵吾こそ、熊木伯典と佐藤菊太郎の両方の孫であり、ある意味そのどちらの才覚も受け継いでいます。そして結局は佐藤家・熊木家のどちらもが本当の意味で達成出来なかった世俗的な成功をもっとも良く果たします。また成功した後は、母親お園のそれまでの苦労に感謝して楽な暮らしをさせてやるという、この物語の中では、熊木公太郎と並ぶ好漢として描かれます。
それと対照的なのが、その父親である兵之助であり、いまやビッコを引きながら、父親の仇を討たんとする熊木城太郎から逃げ回る惨めな存在に落ちぶれます。かつての仲間や部下からは煙たがられる存在になります。また兵之助は生きてきた証にしようと自伝のようなものを作成しようと一旦は決意し書き始めますが、その内容は自分の都合の良いように事実をねじ曲げたものでした。ある意味素直に過去をありのままに振り返り、兵吾やお園に詫びる気持ちでもあればまだ救いがあるのでしょうが、自分の才覚をただ自分の出世にだけ使って来た男の晩年はみじめこの上ないです。
また不思議なのが公太郎の子の城太郎で、調子のいい時と悪い時が交代する二重人格のような人間として描かれています。調子の良い勝ち番と呼ばれる時は、剣の腕で通っている道場の師範の腕をも上回ります。一種の双極性障害(躁鬱病)なのかもしれませんが、このことが城太郎の敵討ちを困難にします。(逆に言うと読者をはらはらさせるという意味では上手い設定です。)
その城太郎を助けるのが、公太郎の親友であった大竹源五郎です。しかし源五郎は熊木家に足繁く通う内に、公太郎の未亡人である貢に恋した自分に気づき、それを恥じて自殺してしまいます。豪放磊落に見えて実は潔癖であり、あまりにも悲しい結末です。
この篇の最後で、ようやく勝ち番になった城太郎は、源五郎の自害にも気がつかず、兵之助と光之助が話あっている所へ斬り込みます。