白井喬二の「彦左一代 天馬の巻」

久しぶりに白井喬二作品で、「彦左一代 天馬の巻」を読了しました。2022年11月に、上巻の「地龍の巻」だけを読んでいて、下巻を探していましたが、古書店のTさんがわざわざ私のブログで入荷した旨をコメントで教えてくださり購入したものです。この場をお借りしてTさんに御礼申し上げます。
下巻はいわゆる「天下のご意見番」となった大久保彦左衛門の活躍が描かれますが、いわゆる講談での籠での出仕が禁じられたので桶に乗って登城したなどの通俗エピソードは紹介されておらず、白井作品の主人公らしく筋を通し、言説を駆使し、出世を拒み、主君家康に尽くす彦左衛門が描かれます。ただ出世を拒んだと言っても、歴史的事実は大久保彦左衛門はそれほどの戦勲を上げたというのは疑問で、関ヶ原の戦いの前哨戦及び本戦でも真田幸村に散々な目に遭わせられています。三河以来の直参だから二千石まで言ったのであり、それ以上の禄をもらう程の器量は無かったというのが正解でしょう。ただ清貧に甘んじ、浪々の身の侍を多く食客として抱えていたというのは事実みたいで、そういうのが誇張されたのが「天下のご意見番」なんでしょう。そうはいっても、この作品で彦左衛門が福島正則を何度も凹ませる活躍は痛快です。この作品が出版されたのは昭和17年10月でミッドウェー海戦以降の敗戦は国民には伝えられていなかったでしょうが、次第に戦況が悪化していっていた時で、このような作品は国民に少しでも慰撫を与えることが出来たのではないでしょうか。

ダブル・オーディオルーム

相模原に購入した中古の一戸建ては、5LDK+1S(収納部屋)と広いので、二部屋をオーディオルームにしようとしています。一つが主にクラシック音楽、もう一つが主にジャズを聴くためのものです。まあ男の隠れ家、英語でdenです。この週末にメインのレコードプレーヤーを移して、両方それらしくなりつつあります。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 蘇耀国9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が蘇耀国9段の対戦です。この碁が動いたのは、右辺下方の白の構えに黒が打ち込んでからです。普通白は付けて渡るのですが、白は何と手を抜いて他を打ちました。結果的に黒が下辺から中央にかけて大模様を築きました。この模様に白が打込み、その石を黒が左辺下方の白と絡みにしながら攻める展開になりました。黒は最初は左辺の下方2子と上方1子を捨て気味に打っていましたが、途中で白の中央の連絡に不備が生じ、劫でかろうじてつながるということになりますた。この劫立てで黒が左上隅を打ち、白が劫を継ぎました。結局この劫立てから左辺の黒の上下が白2子を取りながらつながって地になるという黒にとっては理想的展開で黒が優勢になりました。その後も左辺下方の白の活き死にが不明な状態で黒が寄りつき、更には下方から延びる白の一団も眼がなく、黒の寄り付きが色々利いて黒優勢のままヨセに入りました。そこで白が中央を左に出た時、アタリの白3子を黒が抜いたのが大ポカで、左辺の黒を取る手と上辺の黒を切り離して取る手が見合いになり、結局上辺の黒が取られて、左上隅から上辺にかけて60目を超える白地が出来てしまい、ここで大逆転(AIの勝率が83%→4%)となりました。結局白の中押し勝ちで、黒にとっては終始優勢で上手く打っていたのに痛恨のポカでした。

帰ってきたウルトラマン」の「怪獣は宇宙の流れ星」

「帰ってきたウルトラマン」の「怪獣は宇宙の流れ星」を観ました。強力な磁力を持つマグネドン登場。最初MATは爆弾でマグネドンをバラバラにしますが、雷雨に打たれたマグネドンは蘇り、次にレーザーで溶かそうとしますがこれも失敗し、郷は負傷します。この2つの失敗で、またもMATは上官から「今度失敗したら解散だ」とやられます。MATを解散して一体どこが怪獣を退治するのか、まったくバックアップも無しにやたらと厳しく当たられて、MATは可哀想な部隊です。科特隊やウルトラ警備隊に比べ、MATは本当に立場が弱いです。ウルトラマンは今回はブレスレットをダムの決壊を防ぐのに使ったり、またマグネドンを宇宙に持っていくのにも使い、まったく何でもありの便利武器となっています。最後は月面(?)かどこかの戦いで、やはりブレスレットがマグネドンを粉砕します。話はつまらないですが、最後の戦いの映像はなかなか幻想的です。

スター・トレック・ザ・ネクスト・ジェネレーションの”Too Short a Season”

スター・トレック・ザ・ネクスト・ジェネレーションの”Too Short a Season”を観ました。モーダン4という惑星の総統のカーナスから、連邦に対しテロリストが連邦の外交官を人質に取って立て籠もった、テロリストは彼の言うことは聞かないので、マーク・ジェイムソン提督を交渉者として派遣する要請があり、エンタープライズ号がジェイムソン提督をモーダン4に送ります。ジェイムソン提督は84歳で足の病気で電動車椅子が無いと動けませんでした。しかし提督は若返りの薬を飲み、急速に元気になっていました。しかしその薬には強い副作用があり、提督の心臓は時々発作を起していました。実は45年前、提督がやはり人質を取ったカーナスからその父の仇のため武器を渡すよう要求され渡し、それだけだと異文明の文明に干渉したことになるので、敵対勢力にも同じ武器を渡しました。結果的にそれが40年以上続く内戦を引き起こしました。それを恨みに思ったカーナスが、テロリストのせいにしてやはり人質を取り、ジェイムソンを呼び出したのが真相でした。しかしジェイムソンはカーナスの前で心臓発作を起して死んでしまい、カーナスはそれを見て復讐心が無くなった、という話です。うーん、若返りと若き日の過ちは何の関係も無いと思いますが…前回は良かったので期待しましたが、やはりこの辺りのエピソードの出来は良くないですね。

「帰ってきたウルトラマン」の「宇宙から来た透明大怪獣」

「帰ってきたウルトラマン」の「宇宙から来た透明大怪獣」を見ました。サータンという透明になる性質(中性子で出来た怪獣とされます)を持った宇宙怪獣で、MATが攻撃しても弾がすり抜けてしまい、MATは敗北します。次郎はこの怪獣が学校で最初に現れた時に怪我をしており、MATと郷隊員が負けた精神的ショックで重体になります。MATは怪獣に電子を与えて実体化する「原子核攪乱作戦」で怪獣を実体化させることに成功します。最後はウルトラマンが新兵器ブレスレットの何でもありの効果でサータンを爆破します。しかし、地球の怪獣でマンネリ化したのを打破するためか、宇宙怪獣が続きます。

トワイライト・ゾーンの”The Trade-Ins”

トワイライト・ゾーンの”The Trade-Ins”を観ました。老夫婦のジョンとマリーはある会社の営業所に来ています。ジョンは78歳で不治の病に冒され、慢性的な強い痛みに襲われています。この会社は老人の肉体を若い肉体に交換するサービスの会社です。二人は20代に戻ることが出来ると喜びますが、その会社が提示した料金は10,000ドルで二人が用意出来た5,000ドルは一人分しかありません。ジョンはポーカーでそのお金を倍にしようとしますが、却って元手をほとんどすってしまいかけますが、ギャンブルの店のオーナーの情けで勝ちを得て、何とか元の5,000ドルだけを取り戻します。ジョンが痛みをこらえているのを見ていられないマリーは、ジョンだけが若返ることを望み、結局ジョンもそう決断します。しかし若返ったジョンを見たマリーが流した涙を見たジョンは、結局元の体に戻って死の運命に従うことを選びます。
うーん、こういう未来って果たしてユートピアなのか、個人的には疑問に思います。ただ秀作ではありました。

「帰ってきたウルトラマン」の「ウルトラセブン参上!」

「帰ってきたウルトラマン」の「ウルトラセブン参上!」を観ました。これはリアルタイムで観ましたが、確か放送予定日に全日空機と自衛隊機が衝突して162名が亡くなるという大事故が起きた関係で、一週間延期されたのを覚えています。これまでずっと弱かったウルトラマンですが、今回は初めて宇宙怪獣に対し、スペシウム光線もあっさり吸収されて敗れてしまいます。それで自棄を起して太陽に向かって飛んでいたらその重力に捕まって落下していたのをウルトラセブンに救われ、救われただけではなくブレスレットという多彩な切断技に使える強力な武器ももらいます。これでセブンのアイスラッガーみたいにベムスターをバラバラにして倒します。しかしブレスレットは今度は強力過ぎてつまらなくなるという逆効果ももたらします。またセブンの登場はこの後結局ウルトラ6兄弟という形でファミリー化される、第一歩となります。ちなみに6兄弟とか言い出したのは小学館の小学○○年生の雑誌によります。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 河野光樹8段(2023年7月16日放送分)


7月16日の(相模原の新居のひかりTVのチューナーが故障して交換待ちのため録画で視聴)NHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が河野光樹8段の対戦です。河野8段は49歳にしてNHK杯戦初出場です。一方平田8段も意外に今回が2回目の出場です。
この碁の最初の焦点は右上隅で、黒が中央に一間飛びしたのに白が割り継いで、黒が切りがある所を守らなかったのに対し、白はすぐ切って行きました。黒の右上隅は問題無く活きましたが、白に切られて中央の黒は浮いて攻めの対象になりました。しかしその石の逃げを途中で保留し、黒は上辺左の白の薄みを追及しに行きました。そこからの戦いで白は何と二子を捨てて隅を取らせ、その代わりに上辺を取るという振り替わりを目指しましたが、黒は二子取っただけでは満足せず当てて行き、更に劫に行きました。劫立ては黒からは12の4の覗きが利き、白は左辺中央を押しただけで黒は劫に勝ち、大きく地を稼ぎました。その代わり中央が薄くなり、右辺に打ち込んだ石と右上隅で切り離された一団とどうしのぐかと思っていたら、黒は何と9の7に付けて行き、白模様の中で居直って活きに行きました。ここでの攻めとしのぎは、白が右辺上方の石の4線に断点があるのが響いたりして、結局黒の居直りが成功し、白一子を取って中央と右辺が連絡して、黒が大きな戦果を上げました。ヨセでは左辺にどちらが先に回るかが焦点になりましたが、結局黒が先に打ちました。その後白が中央の黒数子を取り込んだりしましたが、その代わりに黒も左辺を大きな地にし、地合の差は縮まりませんでした。結局黒の中押し勝ちで平田8段がNHK杯戦初勝利を上げました。

Kripton KX-5PXのファーストインプレッション(兼 渡邉勝さんへの感謝状)

KriptonのKX-5PXのファーストインプレッションです。私にとってはKriptonのスピーカーは2007年のKX-3P、2021年のKX-1.5に続いて3セット目です。今回KX-5PXを買った大きな理由の一つには、KX-1.5の音が非常に良かったので、最上位機種が欲しくなったというのがあります。
私が最初に買った本格的なオーディオ用スピーカーは、オンキヨーのM77という密閉型+ソフトドームの3ウェイスピーカーです。(1980年)そして2セット目が、有名なRogersのLS3/5Aです。(1987年)これも密閉型+ソフトドームのスピーカーです。そして今回また密閉型+ソフトドーム(KX-5PXのツィーターは正確にはピュアシルクリングダイアフラム・ツィーターですが、振動板に樹脂を含浸させたシルクを用いており、明らかにソフトドームの発展形です。)のスピーカーに回帰して来ている訳です。
その間に実は密閉型+ソフトドームの正反対の性格を持つ、バックローデッドホーンをハセヒロのキットで2台組み立て使用していましたし、更には3年くらい前にJBL4307や、オンキヨーのD-77NEのような本格的なバスレフスピーカーも買って使っていますし、またB&W 706 S2やTANNOY Autograph mini/GRのような、背面ダクトのバスレフ(低音の増強用にダクトを使うのではなく、スピーカーの背圧を逃がすことを主目的としたダクト配置のバスレフ)も買いました。
そういう訳で、密閉型(エアーサスペンション方式)、バスレフ型(ダクト前面、ダクト後面)、バックローデッドホーンというそれぞれの方式のメリットとデメリットはそれなりに理解して来ています。
どの方式にもメリットとデメリットはあるのであり、密閉型(エアーサスペンション方式)については、
メリット
1.エンクロージャーを密閉することにより、空気バネの力で比較的小形のエンクロージャーでも低域の再生限界周波数を下げることが出来る。
2.同じく空気バネの力で比較的大出力を入れることが出来る。
3.スピーカー背面の音がほぼダンプされ前面に出て来ないため、低音での再生の忠実性が高い。このため低音楽器の音程がきわめて明確である。
デメリット
1.聴感上の低域の量感はバスレフ型に比べると劣る。
2.空気バネの力が働くことにより、特に低域で細かな音が抑圧されて聴き取りにくくなる。
3.やはり低域で空気バネの力により詰まった感じの音になりやすく、過渡特性が悪くなる。
ということになります。
デメリットの3.は特にソフトドームを使った場合は低域だけでなく、中高域でもパルシブな音(例えばピアノやドラム)が丸くなりやすいということになります。日本における密閉型+ソフトドームの元祖はビクターが1970年代初頭に出したSXシリーズです。このSXシリーズはクラシック音楽ファンからは非常に高く評価された一方で、ロック音楽のファンなどからは酷評されることもある、好き嫌いのはっきり分れるスピーカーでした。このスピーカーの開発チームに参加していたのが、KriptonのKXシリーズのスピーカーの開発者である渡邉勝さんです。

前置きが長くなりましたが、今回のKX-5PXについては、驚くべきことに上記の密閉型(エアーサスペンション方式)の欠点がほぼ解消されています。
1.低域の量感 → 低域は40Hzぐらいまで素直に伸びており、聴感上不足を感じることはありません。
2.細かな音 → KX-5PXは細かな音が非常に良く聞こえます。例えばホールエコーが減衰して消えていく様子がかなりの部分まで聴き取れます。
3.詰まった音 → 既にKX-3Pの時からこの欠点は解消されており、周波数全域において詰まった感じはほとんどありませんし、ピアノの音にいたっては、エンクロージャーのピアノ塗装仕上げもあって、もっともピアノらしい音を聴かせるスピーカーです。低域についても詰まったというより適度な弾力感がある音です。これはブチルゴムエッジの採用、アルニコマグネットでのコイルの移動距離の大きい磁気回路とクルトミュラーのコーンによる軽い振動板、2種類の吸音材による空気バネの抑制など、様々な技術の複合で実現していると言えると思います。ちなみに昔の密閉型スピーカーは反りのあるレコードを再生しても、バスレフと違って空気バネの力でウーファーが揺すられることはほとんどなく、従ってアンプのサブソニックフィルターは不要でしたが、KX-1.5やこのKX-5PXはそれなりにレコードの反りまで再生します。
以上のような密閉型(エアーサスペンション方式)の欠点の解消を私は「渡邉マジック」と呼びたいと思います。渡邉さんは、1960年代半ばにコーラル音響に入り、その後ビクターに移って、2000年代初め頃からKriptonに移り、一貫してスピーカーユニットとスピーカーシステムの開発に携わって来られました。渡邉さんがSXシリーズ以来一貫してこだわり続けているのが、
1.密閉型+ソフトドームという構成
2.ウーファーのコーンにクルトミュラーの紙を使うこと
3.スピーカーの磁石にアルニコマグネットを使うこと
です。もちろん価格の安いモデルでは、2、3は必ずしも採用されていませんが、このKX-5PXはまさにこの3つが採用されており、渡邉さんが長年に渡って改良を続けたいわば集大成となっています。
またもう一つ特筆すべきなのが、KX-5Pから採用された砲弾型イコライザー付35mm口径ピュアシルクリングダイアフラム・ツィーターです。これはハイレゾのソースに対応するためということで、高域の周波数を伸ばすために採用されています。従来のソフトドームだとドーム頂点部とドームの周辺部で出た音が相殺しあって高域が伸びないということのようで、それを解消するために、振動板部を同心円状に二重にし、また中心に金属のイコライザーを立てた構造になっています。Kriptonのスピーカーはこのツィーターを採用してから、音が大きく変わったと思います。このツィーターは最高域が伸びた結果として可聴領域での抜けが良くなり、聴感上はかなり華やかな感じの音となっています。更にはKX-5PXの特性表を見ると、明らかに5KHz辺り(クロスオーバーは4KHz)にピークがあり、若干ではありますがハイ上がりの音です。なので、ポピュラーのいわゆるオンマイクの録音の女性ボーカルだと、若干サ行の子音がキツく響く場合もあります。(これはおそらく使い込んでいくと解消されると予想します。)しかしながら全体的に音を明るい方向に持っていっており、好ましい方向の変化だと思います。
低域については、低音楽器の音程の明確さがこれほどはっきり感じられるスピーカーというのも初体験で、オーケストラ音楽については、低音の上に組み立てられた音響・和声をきわめて正確に味わうことが出来ます。
音像については、大きさはTANNOY Autograph mini/GRの10cm同軸スピーカーの音に比べれば若干ですが大きめですが、一般的に言えば問題ない大きさで、実在感も優れています。音場については細かな音が良く聞こえることが音場感の良さにつながっており、音場は広く特に高さが良く再現されます。
結論として、このスピーカーは日本におけるスピーカー作りのマイスターである渡邉勝さんが完成させた、ほとんど密閉型(エアーサスペンション方式)の完成型に近いスピーカーと言って良いと思います。ジャンルも選ばず、ほとんど万人に推奨出来るスピーカーです。以上を渡邉勝さんへの感謝状とさせていただきます。

評価機器:
SACDプレーヤー
・デノン DCD-SX1
USB-DAC
・デノン DA-310USB
プリアンプ
・SPEC RPA-P5
パワーアンプ
・SPEC RPA-W5ST x 2台(バイアンプ接続)
アナログプレーヤー
・VPI Classic Turntable
カートリッジ
・オーディオテクニカ AT-OC9XSH
MC昇圧トランス
・オーディオテクニカ AT3000T
フォノイコライザー
・フェーズメーション EA-300
CD、SACD、ハイレゾ音源、LPにて評価。