NHK杯戦囲碁 富士田明彦7段 対 藤井秀哉7段


昨日の(昨日はオペラを観に行ったので録画で観ました)NHK杯戦の囲碁は黒番が富士田明彦7段、白番が藤井秀哉7段の対戦です。解説者の「じっくりしたヨセ勝負の碁」になるのでは、という戦前予想は外れ、最後は大石の生き死にで勝敗が決まるという戦いの碁になりました。布石は黒はタスキの星でスタート、左上隅の白には左辺から小ゲイマでかかって白がコスミで受け、そのまま黒は放置して他を打ちました。白は更に左辺で黒をはさんで行きましたが、黒は更に手を抜いて右上隅の星から上辺に向かって小ゲイマに締まりました。右下隅で白がまたもコスミに受けた後、左上隅で黒はコスんだ白石に付けて動き出しました。ここの折衝は黒が左辺を左下隅から展開して挟んだため、黒と白の競い合いになりました。黒は白石を押して行き、白も延びて行きましたが、この時右上隅の星から小ゲイマに締まったのが、白の上辺の発展を阻止しているというのが黒の言い分でした。結局黒の最後の押しに、白が左辺の石から中央に飛んだので、黒は上辺の白を二段バネして中央に厚みを築きました。しかし白も上辺に20目ぐらいの地を確保しました。黒は中央の白に覗きを2つ打ちましたが、3つ目の真ん中は覗かずに、機が熟してからの割り込みを狙いました。黒が下辺に開いた所で、白は左下隅の星の黒に付けていき、左下隅から下辺に展開しました。この白を攻めつつ黒が下辺を右下隅に向かって詰めた時、白は右辺を挟みました。ここで黒は左上隅と同じく白のコスミに付けて行きました。これに対し白はハネずに下辺の黒に付けて行き、黒が当てこんで、結局下辺は白が黒1子を取ってほぼ治まり、黒が右下隅の地を確保しました。この折衝は黒が少し得をした感じです。黒は右下隅からハネを利かせて右辺の大きな挟みに回りました。ここに打てたので黒には希望が出てきました。白は完全には治まっていない下辺の石、右辺の石、左辺から延びる大石という3箇所に薄い石が出来ました。それに対し、黒が中央と右辺の間を割きに来た時に、中央から右辺へなだれ込んだのがちょっと頑張りすぎでは無かったでしょうか。黒は中央と右辺の上側の白との間を裂きましたが、白は黒が右辺から一間に飛んでいる間に割り込みました。この結果、黒は中央の白を切り離して厚くなり、中地も見込めそうになりました。その代り右辺では白が大きく得をしました。後は残された中央の白石をうまくしのげば白の勝ちですが、黒もさすがに本気で取りに行きました。この後白は色々手を打ちましたが、結局の所この大石に活きは無く、白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 井山裕太四冠王


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段(収録時は7段)、白番が井山裕太四冠王の対戦でした。布石は左下隅でちょっと珍しい形にになり、白が4子を捨て外勢を築き黒が実利を取りました。左上隅で黒が上辺からかかって白が上辺からはさみ、黒は三々に入りました。この結果白は左辺に大模様が出来ました。これに対し黒は右辺の模様で対抗しました。それまでは比較的ゆっくりした碁だったのが動いたのは、白が右辺に打ち込み、黒が上から付けてハネに伸びた時、通常は白は伸び込むのですが、そうしないで単に断点を上方に掛け継いだのがある意味戦略的な打ち方でした。黒は白が伸びなかった所を押さえて好形になり、白は押しました。黒が白のカケツギを当てて来た時に、劫にはじいたのが井山裕太四冠王の作戦でした。劫材については、左下隅で取られている白4子を助けるというのでかなりあります。黒はそれでも劫にねばり、結局白が左上隅の黒を取り、黒が劫に勝って右辺一帯を地にするという分かれになりました。この時点では形勢不明でした。この後、白が下辺を攻められた時に右下隅に付けました。それによって白は下辺に地をもって治まった感じになりました。しかしこの後、白が右上隅をはねていって、その後ハサミツケを決行しました。黒はここは下がって頑張りたかったですが、あっさり継いで白を渡らせました。その後、下辺の白の中央の石の下に付けていってこれが黒の狙いでした。その手に受ける前に、白が右下隅から右辺へ伸び込んだのですが、黒は受けずに下辺を動き、結局下辺は黒の地になり、その代償として白は右辺の黒地を減らしました。その後、右下隅からの白が下辺が黒地になった関係で薄くなったので、井山裕太四冠王は一手かけて補強しました。しかし黒はそれでも一団の白の中央に置いていき、眼を奪いに行きました。置いた石は中手ではなく、外の黒に連絡しましたが、その結果中央に外回りに白石が来て、黒の右辺の地を削減し、逆に左辺の白模様が盛り上がり、中央に白地が見込めるようになりました。この一連の黒の打ち方が問題で、普通に寄せていた方が細かい勝負になったと思われます。その後左辺に打ち込んでいった黒が一応活きたようになりましたが、終盤で中央と切り離されてかつ眼を奪われてしまい左上隅の黒とも連絡出来なくなりました。その代償で中央の白地を荒らすことが出来る形になりましたが、この収支は白の得の方が大きく、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 藤沢里菜女流四冠


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が藤沢里菜女流四冠の対戦です。布石では黒が左上隅にかかった後手を抜いて上辺と右辺の模様を大きくしました。それに対して白は右下隅の黒の小目に星の所に付けていって、侵略を図りました。ここは白が隅に跳ねて黒が押さえ、白がカケツぎ、黒が当てました。白がはじけば劫になります。その手を保険に白は中央に逃げました。白は左下隅で小目ジマリに肩付きして一間に飛んだ黒と中央の黒の間を割いていこうとしました。これに対して黒も中央からコスんで白の切断を狙いました。その後白は劫に行きましたが黒の劫取りの後の白の中央の劫立てに黒はすぐ解消しました。白は中央を連打しましたが、黒はしつこく覗いていって切断を狙いました。これに対して白が反発した結果、黒が切断を決行しました。この結果右下隅の白は活きる必要があり、下辺で黒2子を取りましたが後手一眼であり、活きるためにもがく形となり黒に立派な壁が出来ました。白はそれでもその壁に切りを入れて行きましたが、切った2子を直接動くのは当てがなく、その利きを頼りに右辺に打ち込みました。ここで左上隅で黒が取られている石を活用して利かしにいったのがタイミングが良く、白は普通に受けると上辺で利かされ、上辺の黒模様が消しにくくなるため、反発しました。結果として左上隅は黒が活き、地合の差は大きく開きました。白はそれでも上辺と右辺の両方で活きて挽回を図りましたが、及ばず白の投了になりました。

NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 黄翊祖8段


本日(9月15日)のNHK杯戦の囲碁は黒番が孫喆7段、白番が黄翊祖8段の実力者同士の一戦でした。布石は黒がダイレクト三々とかを打ちましたが比較的オーソドックスな布石でした。その後で色々と面白かったのは上辺の攻防で、黒が白が右上隅にかかったのに、一間バサミし、それに対し白が高く挟み返しました。黒が白にコスミつけ、白が立ち、黒が右上隅を一間に開き、白が上辺で挟んだ黒にボウシしました。黒はその石を直接動かず、左上隅の白の三々に肩付きしました。その後色々あって結局上辺で白が黒一子を取込み、黒は上辺左側で所帯を持つという別れになりました。それから黒は取られている上辺右の石からケイマして付けていき、利かしに行きました。白も反発して受けている内に、黒が三線に並ぶという手がありましたが、その手を決行せず、下辺の白に打ち込んで行きました。上辺は結局白が守り、厚くなりました。その代り黒は下辺で更に右側にも打ち込んでいきました。その石は白からコスめば封鎖出来たのですが、白はそうせず堂々と中央に一間飛びしました。その結果黒と白で4箇所で中央に一間飛びという珍しい形の乱戦模様になりました。下辺右の白が、しのぎのため右下隅の黒に付けた後、三々に置いて、ここからまた難しい戦いになり、結局右上隅もからめて白が右辺に入っていき、右下隅は攻め合い模様になりました。一時白の打ち方がまずく白のつぶれではないかという局面もありましたが、うまく挽回して結局劫になりました。この時、黒がすぐに劫にいかず、白からの劫材となる箇所をカケツギして厚くしたのが冷静でした。結果として劫は白が勝ちましたが、その代償で黒は上辺で得をしました。更に下辺の白を攻め、数子を切り離して大きな黒地をまとめ、ここで黒が盤面で10数目以上の優勢になりました。白も頑張って左辺で黒を切り離し大きく地をまとめましたが及ばず、結局黒の6目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 安斎伸彰7段 対 山下敬吾9段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が安斎伸彰7段、白番が山下敬吾9段の対戦です。この2人の特徴はどちらも激しい戦いが好きだということになりますが、その特徴通り最初から最後まで戦いになりました。特に左辺と左上隅で黒がかなり頑張った打ち方をし、白がその2つをカラミ攻めにするという展開になりました。しかし黒は白の厳しい攻めをうまく受け止めて、最強の手を打ち続けました。特に中央に切り離されて残された黒2子を捨ててしまわずに担ぎ出したので、盤上眼の無い石がからみあう乱戦になりました。そんな中黒は上辺から右上隅、さらに右辺でも地を稼ぎまくりました。ただ白もうまく右上隅で手を付けて、黒数子を取り込みました。しかしそれでも地合は黒リードであったため、白は左辺からの黒と中央の黒を切り離して、どちらかを取っていく勢いで打ちました。しかし黒は左辺の石を比較的容易に生き、また中央の石も蜂の巣のように石が斜め斜めに展開していて、なかなか眼を取るのが困難でした。しかし、黒がある意味最強手を打ち続け、右辺下の白石を切り離して攻めに行ったのが打ち過ぎで、結局劫になりました。この劫を白から解消するには2手かかるため、白が大変そうに見えましたが、実際には白は左辺からの黒の大石に対し、かなりの数の劫立てが利くため、白が解消に2手かかったとしても黒は劫には勝てませんでした。結局上辺右で取られていた石を取り戻す劫立てで妥協しましたが、中央をそっくりとそれに加えて4子も取られてしまった黒の方がはるかに被害が大きく、ここで形勢は完全に逆転しました。最終的に左下隅でも劫が始まりましたが、黒の形勢の挽回には至らず、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 芝野虎丸8段 対 秋山次郎9段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が芝野虎丸8段、白番が秋山次郎9段という対戦です。芝野8段は収録時には7段でしたが、この度河野臨9段に勝って名人戦の挑戦者となったことで8段に昇段しました。10代での挑戦者は井山裕太4冠王以来の2人目で、もし名人奪取となれば初の10代の名人です。(しかも興味深いことに、対戦相手は張栩名人で、井山裕太4冠王が最初の名人戦で当たったのも張栩名人で、その時は敗れ10代での初の名人獲得はなりませんでした。)
布石は黒が右下隅で小ゲイマ締まりで、またダイレクト三々もなく、かなり伝統的な布石になりました。それが変化したのは黒が左下隅で白が星から小ゲイマに締まっていたのに小ゲイマの石にケイマにかぶせたような手でした。この手で白に受けさせ左辺に変幻自在に展開しました。黒は左辺から中央にケイマし、更に左辺の白にかけていましたが、白はすぐ受けずに手を抜いていました。その後右辺に打ち込んだのが一段落した後、白はかけられた所を出切っていったのですが、強く戦うのかと思ったら、あっさり2子を捨ててしまい(写真の場面)、代償は左下隅からのコスミツケを利かしたくらいで妥協してしまいました。その後右辺の黒模様に更に白が入って行って、何とか治まり形になりました。しかし代償に白も上辺から中央に出来かけていた模様を黒に自然に消されてしまいましたので形勢は依然黒良しでした。更に左上隅も黒が三々に打ち込んで活き、地をえぐりました。その後白は勝負手気味に右上隅から中央に延びる黒を切断し取りに行きました。結果として黒6子位を取り込む戦果を挙げましたが、代償で左辺で白3子を取られてしまい、また取った6子も攻め取りではありませんでしたが、ダメを詰める必要があり、白のポイントの挽回は大きくありませんでした。結局黒の6目半勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 林漢傑8段 対 一力遼NHK選手権者


本日のNHK杯戦の囲碁は、高校野球のためまたも13:30からの放送。黒番が林漢傑8段、白番が一力遼NHK選手権者の対戦です。序盤は黒が厚み、白が実利という進行でした。右下隅が一段落して、黒が左下隅の白にかかっていった時、白は手を抜いて、左下隅から中央に頭を出しました。右下隅の黒を狙っている手でした。黒は左下隅で両ガカリし、定石が進行しましたが、途中で白はまた手抜きし、右下隅の黒に置き兼ノゾキを決行しました。黒のカケツギに延びて継がせ、下辺を二間に開き右下隅の黒への封鎖を見ました。しかし黒は中央に頭を出さず下辺に展開しました。白はすかさず封鎖を決行し、隅の黒は放り込まれると一眼しかありません。しかし黒は隅に手を入れるのは辛いと見て外から利かしに行きました。それに対し更に白が逆襲し、下辺で戦いになりました。結局黒が選んだのは、右下隅の黒を丸ごと捨ててしまうという大胆な作戦で、その代りに中央が厚くなったのと、左下隅からの白への攻めが利いた関係で上辺から中央にかけて黒の大模様が出来ました。しかし左下隅の白は50目あり、右上隅で8目くらいあるため、黒も70目ぐらいの地をまとめないといけませんでした。黒は左上隅にかかって模様を目一杯拡げました。それに対し白は中央から確実につながりながら黒地を減らしていってそれで収支が取れているという判断でした。途中白の一間飛びに黒が割り込んで1子を切り離し、上辺から中央にかけて大きな黒地がまとまりました。しかし白も切り離された1子を捨て石にして中央を押していって、中央が厚くなりました。相対的に左辺の黒が薄くなりました。その後下辺で劫になり、この劫は白が負けると右下隅の黒が復活するため、手を入れることになり、黒が少し挽回しました。しかし全体には白が優勢で、黒は最後の勝負手で左辺で頑張った手を打ちました。しかし白に切り離された攻め合いになりましたが、白の手数が長く、黒が取られてしまい、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 今村俊也9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、高校野球のため13:30よりの放送。黒番が伊田篤史9段、白番が今村俊也9段の対戦です。
布石では、白が下辺に打ち込んで中央に逃げ出した弱い石を持ちながら、上辺に模様があり、黒は下辺の白を攻めながら右下隅から右辺に模様を張っていきました。白が上辺の白模様と右辺の黒模様の接点となる所を飛んでいった時、黒は上辺に打ち込んで行きました。白が受けずに右辺をコスんだ時、黒は更に上辺右の白の中に打ち込みました。これが上手い手で左側の黒か右上隅の黒かにどちらかに渡れました。結局白が右上隅をハネ、黒はいい形で左側の黒と連絡しました。右上隅の黒が心細くなったため、黒は活きに行きましたが、代償で中央の白が厚くなりました。ここで白は右下隅に付けて黒ハネに切り違えました。黒が一目抱えた後、隅に下がっていれば小さく活きることが出来ましたが、それだと小さいということで、当てて行きました。黒は当て返してこの白全体を取りに行きました。その後白が当てたのが間違いで結局ここの白は全て取られ右下隅が味良く黒地になりました。代償で白は右辺を少し侵略しましたが、元々そこに大きな黒地は見込めなかった所であり、この分かれは明らかに黒優勢でした。そこで白としては局面を複雑化して乱戦に持ち込むしかなく、左上隅の黒を攻めると思わせながら、左下隅から延びた黒の中央に飛んだ一子の左側に付けて行き、黒が上からハネたのに左に延びたのが、実に鋭い勝負手でした。黒はこの白2子を取り込むことが出来ず、この白が中央に逃げ出したため、左下隅からの黒に二眼無くなり、一気に勝負模様になりました。しかし眼のない石が絡み合う複雑な局面で白が間違え、結局左上隅の黒が活きて白の投了となりました。しかし敗れたとはいえ、今井9段の鋭さが出た対局でした。

NHK杯戦囲碁 呉柏毅 5段 対 謝依旻6段


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が呉柏毅 5段、白番が謝依旻6段の対戦です。解説は林漢傑8段で両対局者と併せ3人とも台湾出身という珍しい組み合わせです。最初は黒の呉5段が穏やかに打っていましたが、白が下辺を拡げた時黒が打ち込んで行って、そこから戦いが始まりました。打ち込んだ黒と、右下隅から延びた黒と、白は両ガラミでの攻めを狙いましたが、白も下辺の白が右下隅との連絡を絶たれたため、お互いが「そちらが攻められているんですよ」と主張しあう戦いになりました。その攻防で白が右下隅から延びた黒の飛びに付けていったのが強手であるのと同時に危険な手で、その後黒が右辺の白に割継いだ時、白が右辺を継いだのが打ち過ぎで、付けた石に黒から跳ね出され白も下辺からの石に眼が無く、攻め合い含みになりました。しかし黒は白の上方の石を取りかけに行きました。これは正しく打てば白の数子は取られていて、同時に白の下辺からの石が死ぬので、終わっていました。しかし、ここで黒の痛恨の読み抜けが出て、白の数子が黒2子を取って大いばりで脱出してしまいました。黒はそれでも何とか気を取り直し下辺の白との攻め合いに行きました。この攻め合いは劫になり、黒が劫に勝って白の15子くらいを取り、代償で白は黒地だった左下隅を取りました。この結果は白が優勢で盤面でもいいという形勢になりました。黒はヨセで逆転を狙いましたが、上辺と左辺の攻防ではお互い荒らし合いになりましたが、結果は白が得したようです。結局白の7目半勝ちでした。今期のNHK杯戦はこれで女流棋士3人が2回戦に進み、男性棋士に遜色のない実力を見せつけました。

NHK杯戦囲碁 張豊猷8段 対 石田篤司9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、高校野球(神奈川決勝)のため、15:30から。黒番が張豊猷8段、白番が石田篤司9段の対局です。石田9段は実に10年ぶりのNHK杯戦出場とのことです。序盤で右下隅で、白のダイレクト三々に黒が2目の頭をはねて、白が受けた後、すぐ斬り込んでいったのが、張8段の新手でした。結局黒が白1子をシチョウに抱えました。白は左上隅でシチョウアタリを打ち、黒が右下隅でAI風に1子を抜かずにふわってかぶせ、白が左上隅を連打する別れになりました。白はその後左辺で黒3子を取りました。その後の折衝で局面が動いたのは、黒が左下隅の白の三々にかかって下辺を拡げて来ましたが、白が受けて黒がさらに押した時に、白は手を抜いて下辺にすべりました。黒はそうすると左辺に割って入ることになり、その結果取られていた黒3子の動き出しが生じました。結果的に地合は白が良く、黒としては左辺で取られていた3子を動き出したことにより中央に浮いた白と、右辺の白の間を裂いて、カラミ攻めにし、どれだけ得を得ることが出来るか、という展開になりました。右辺の白は黒から打ってもギリギリで活きていましたので、黒は右辺の白に利かせてから、左辺の白の急所に置いて眼を取りました。結局、この白が活きるか死ぬかの勝負になりましたが、黒が打ったギリギリの手が奏功し、最終的に白はどうしても二眼が作れず、大石が死に白の投了となりました。張豊猷8段らしい、攻めの鋭さが光った一戦でした。