三遊亭圓生の「鰍沢、猫怪談、汲みたて」

jpeg000 135本日の落語は、三遊亭圓生師匠の「鰍沢、猫怪談、汲みたて」です。「鰍沢」は先日、NHKの「おはよう日本」で、この落語の舞台になっている山梨県の富士川町が、この落語で町おこしを図っているという報道を見て、興味が出て取り寄せてみたものです。四代目橘家圓喬が得意とした噺で、色々と伝説的な話が残っているみたいです。ただ、実際に聴いてみると大して面白い噺ではなかったです。
「猫怪談」は、与太郎の養父が死んでしまって、お弔いをして死体をお寺に持って行く途中で魔に魅入られて、死体が踊り出すお噺。圓生師匠の与太郎の馬鹿っぷりがいいです。
「汲みたて」は清元の師匠を巡るさや当てのお噺ですが、サゲ(題はサゲから来ています)が汚いのでちょっとマイナス評価です。

池井戸潤の「仇敵」

jpeg000 128池井戸潤の「仇敵」を再読。池井戸潤については、出版されている作品はすべて読んでいると思います。Amazonで久し振りに「池井戸潤」で検索したら、新刊としてこれが出てきたので取り寄せてみたのですが、既に読んだことがあるものでした。
池井戸潤の「銀行もの」としては、典型的な作品と思います。また短編を集めながら話が連続しているという構成は、他にも「シャイロックの子供達」があります。
地方銀行の庶務行員として働く恋窪商太郎は、かつて都市銀行でエリート社員として働いていましたが、ある銀行幹部の陰謀を追及していたところ、逆にその幹部にはめられて都市銀行を退職することになります。その恋窪が、あくまで庶務行員の立場で、地方銀行の若い行員の相談に乗りながら、安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクティブ)のように、銀行にからむ犯罪を追及していきます。その中にかつて自分を陥れた敵の存在を感知し、復讐のためその悪を追い詰めていく、というストーリーで、池井戸作品らしいカタルシスが結末部にはあります。
なお、この「仇敵」の中の話が、TVの「花咲舞が黙ってない」に使われているとのことです。ちなみに、私は「花咲舞」の直接的な原作になる「不祥事」はあまり評価していません。池井戸潤が描く女性は、男性から見たある種類型的な性格をしていることが多く、あまりうまいとは思えないからです。私が池井戸潤の作品で一番評価しているのは、「空飛ぶタイヤ」と「鉄の骨」です。