柳家小さんの「将棋の殿様、お神酒徳利」

jpeg000 200今日の落語、五代目柳家小さんの「将棋の殿様、お神酒徳利」。
落語で、碁が出てくる噺は、「笠碁」「碁泥」「柳田格之進」とあります。しかし、将棋が出てくる噺は、一般的に演じられるのはこの「将棋の殿様」ぐらいみたいです。お噺は、ある時殿様が家来と将棋をやりだしたのはいいですが、駒は勝手に取ってはダメ、飛車が成り込んだらダメ、その一方で自分の飛車は金銀を飛び越えて成ってしまう。それで家来に勝っただけならいいが、負けた者を鉄扇で頭を打つということまでやりだす。ある日病で休んでいたご意見番の老侍が復帰し、殿様と将棋を指すけど、殿様の勝手なルールを軍学を持ち出してことごとく拒否、見事殿様に勝ち、鉄扇で殿様を殴る。これに懲りて殿様が将棋を止めるという噺です。
「お神酒徳利」は、ある野菜売りが、ある家で野菜を断られたのの腹いせにお神酒徳利を水瓶に沈めて隠し、その後易者のふりをしてそれを見事当ててみせたため、名人易者と思われてかえって苦労する噺です。

小林信彦の「流される」

jpeg000-207R01小林信彦の「流される」を再読了。2011年の作品で、2005年の「東京少年」、2007年の「日本橋バビロン」に続く自伝的三部作の最後の作品です。
「日本橋バビロン」では主に、小林信彦の父方の祖父の話が中心でしたが、この「流される」は青山に住んでいた、小林信彦の母方の祖父にまつわる話が中心になります。この人は、創業から間もない沖電気のエンジニアで、色々な発明をして、沖電気の創業者である沖牙太郎の右腕と呼ばれた人で、沖電気退社後は、歯科用機械の工場を経営していました。太平洋戦争後、両国の生家を東京大空襲で焼かれた小林一家は、しばらくこの青山の祖父の家に身を寄せます。
あくまで「自伝的小説」であって、固有名詞は本来の名前になっていますが、かぎりなく架空の人物も登場します。その辺りの虚実の境目を意識しながら読むといい作品です。