トーマス・マンの「ブッデンブローク家の人々」(上)

トーマス・マンの「ブッデンブローク家の人々」(上)を読了。北杜夫の「楡家の人びと」をいつか読もうと思っていますが、その前にはまずこれを、ということで読み始めているものです。訳者の望月市恵は、旧制松本高校で北杜夫のドイツ語の先生だった人です。「どくとるマンボウ青春記」に、北杜夫らが「太陽党」(Die Sonnepartei)を結成すると、Die Sonnenparteiの方がいいよ、と言ってくれるドイツ語の先生が登場しますが、それが望月市恵です。ただ個人的には、この望月さんの訳はイマイチで、低地ドイツ語やその他のドイツ語のバリエーションや、フランス語が混ざった会話を苦労して訳しているのはわかるのですが、今一つこなれていないという感じがします。といっても今さらドイツ語で読もうなどとはさらさら思いませんが…
物語は19世紀の北ドイツのリューベックで、裕福な商人の一家だったブッデンブローク家が段々と没落していく様子を描いた長篇です。上巻ではコンズル・ブッデンブロークの娘のトーニが中心で、意に染まないが裕福な商人から結婚を申し込まれ、それを断って時間稼ぎをしている内に、モルテンという医者の卵の青年と本当の恋をするけど、結局親の勧める裕福な商人との結婚を承諾する。そして二人の間には娘が生まれるが、ところがその裕福な商人の正体は…という展開です。