NHK杯戦囲碁 秋山次郎9段 対 洪清泉3段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が秋山次郎9段、白番が洪清泉3段の対局です。秋山9段は緑星学園出身で天元戦の挑戦者にもなったことがある強豪です。洪3段は韓国出身で韓国で棋士になろうとして果たせず、日本にやって来てアマ棋戦で優勝して活躍し、その後関西棋院でプロ棋士になった人です。また、先日アルファ碁に関する本を紹介した洪道場の主宰者でもあります。対局は白が4手目で右下隅にかかり、黒が残りの空き隅を打った後、白は右下隅でケイマにかけ、黒が付け引いて治まりに行った時、普通白は断点を固く継ぐのですが、継がずに下がりました。これに対し黒も気合いで切っていき、いきなり戦いが始まりました。その戦いでは双方目一杯の手を打ちました。その戦いの中で黒が右辺の一団からケイマにかけたのが少し薄い手で白から逆襲をくらい、結果として白が中央ではっきり治まって、ここでは白の打ちやすい碁でした。黒はそこで左上隅にかかった後すぐ三々に入りました。白がやや妥協したので黒は隅をえぐり、かつ左辺にも展開出来ました。しかし左辺は黒模様のように見えても回りの白が厚く、なかなか大きな地にはならない所でした。ここで黒が上辺の白に横付け(10の3)したのが目一杯頑張った手で白が伸びて黒がはねて白が押さえた時に黒はかけついで、右上隅から上辺右にかけて目一杯に地模様を張りました。これで形勢は細かくなり、どちらが勝つか分からなくなりました。ここで黒が白の勢力圏にある2子を助けず白に取らせたのが好判断で、その間に黒は逆寄せを2カ所で打つことが出来ました。また取られた黒2子も絞る筋があり白の地はそれほど大きくなりませんでした。その後右上隅で劫争いが起きましたが、白の劫立てに受けずに劫を解消したのがまた好判断でした。こうして黒がリードを広げ、また左下隅で白が寄せを間違えたこともあり、終わってみれば黒7目半勝ちの大差になりました。

白井喬二の「東亜英傑伝 七 山田長政・張騫」

白井喬二の「東亜英傑伝 七 山田長政・張騫」を読了。但し「山田長政」の方に、15ページの落丁があります。「山田長政」の方は、従来通説となっていた、山田長政がシャムの国王になっていて、昔台湾に渡る時に世話になった日本人二人に感謝を伝えた話について、根拠のない作り話としています。そういう歴史考証的な態度はいいのですが、一方で山田長政が「八紘一宇」の精神に基づいて海外で活動していたなどというトンデモ歴史を書いています。白井喬二は同じシリーズの日蓮でも、日蓮に「大日本帝国」や「八紘一宇」という言葉を語らせて、無茶苦茶な歴史を作っていました。そういうのを考えると、この「山田長政」はどこまでが歴史的事実かかなり眉唾です。
「張騫」の方は、有名な匈奴に行って長い時間をかけて漢に戻って来た張騫の話で、特に脚色はしていないように思います。ただ何故張騫が山田長政とセットにされたのかはよくわかりません。どちらも生まれた国を離れて活躍したということなのでしょうか。
一つ特筆しておくべきことは、この巻の挿絵は山川惣治です。戦前から活躍していたことがわかります。