NHK杯戦囲碁 内田修平7段 対 羽根直樹9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が内田修平7段、白番が羽根直樹9段の対戦です。序盤は比較的オーソドックスな布石かと思いましたが、右下隅にかかった白石を放置し、白が左下隅をコスみ、黒が右下隅をコスミ付け、白が立って黒が隅からケイマした所で白はこの2子を直接動かず、下辺を左から詰めました。黒は白2子を封鎖し、白は詰めた下辺の石からケイマしてこの2子に連絡しました。この結果、黒の勢力対白の実利というこの碁の碁形が決まりました。その後右上隅の攻防になり、ここでも白は実利を稼ぎ、黒は右辺を模様にしました。この攻防で先手を取った黒は左上隅の掛かりっぱなしになっていた所からかけ、白が上辺を張ってここでも白は実利を稼ぎ、黒は左辺も模様にしました。黒がさらに上辺を押していった過程で黒がちょっと上手い手を打ち、白地を5目くらい削減することに成功しました。この辺りでは黒が悪く無かったと思いますが、ここからの羽根9段の打ち方が巧妙で、下辺から無理せずに自然に左辺および中央に進出しました。ここで黒が下辺の白に利かそうとしたのがある意味逸機で、白は受けずに左辺を打ちました。結果的に下辺の白地は大きく削減されましたが、それ以上に黒の中央に出来る筈だった地がほとんど見込めなくなった方が大きかったようです。その後黒は左下隅で出切りを敢行し、左下隅に手を付けて劫にしました。劫材は黒の方が豊富だった筈ですが、黒は妥協して白2子を取り込みましたが、白も左下隅で活きて、この結果は白が悪くなかったと思います。その後黒は切り離した中央の白への攻めも中途半端で、結局コミの負担が大きく、白の中押し勝ちとなりました。羽根9段の余し作戦がきれいに決まった感じです。

白井喬二の「登龍橋」

白井喬二の「登龍橋」を読了。こちらもわずか12ページの短篇です。「耳の半蔵」と呼ばれた名与力の瀬尾半蔵が、年齢62になって引退を願い出ようと、自らが「登龍橋」と秘かに呼んでいる大江奉行の屋敷の橋を渡ろうとした時に、たまたまタケノコ売りの声が聞こえ、その話をヒントに、半蔵が手がけた事件の中で唯一失敗した真珠貝盗猟事件の謎を解き明かし、犯人が偽物のタケノコの中に真珠貝を隠していたのを突き止めるという話です。「耳の半蔵」だからヒントを耳から得る、というのが面白いですが、タケノコの中に隠すというのは、まあ白井らしい奇抜な発想です。