宇宙家族ロビンソンの”The Astral Traveler”

宇宙家族ロビンソンの”The Astral Traveler”を観ました。第2シーズンらしくナンセンスな内容で、何だか宇宙家族ロビンソンというより、タイムトンネルと言った方がいいような内容でした。ドクター・スミスとウィルが雷を避けて洞窟に入ったら、そこに何故かワープのドアが現れ、ウィルが入ると、ウィルはいつの時代だか分からないスコットランドの古城に飛ばされ、そこで昔王様に逆らって処刑された男の幽霊と出会います。ウィルは幽霊をまったく恐れず、結局すぐ元の星に戻ることが出来ましたが、ロビンソン一家の人達はウィルの言うことを信じません。ドクター・スミスだけがウィルが持ってきた葉っぱがスコットランドにだけ生える蔦であることを発見し、地球に戻れるということで、ワープのドアを磁気装置で再生させる実験に志願します。それは成功して、ロビンソン博士の一家に飛ばされていた幽霊と共にドクター・スミスはスコットランドの古城にワープします。そこで話をしていて、実はドクター・スミスの先祖がこの幽霊の仇敵であることが判明し、ドクター・スミスが斧で首を斬られそうになります。あわやの所でウィルが駆けつけて、という話です。なおスコットランドの古城で水の中に住むモンスターが登場しますが、明らかに原子力潜水艦シービュー号で出てきたモンスターでした。

NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人・王座 対 一力遼NHK杯選手権者


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が一力遼NHK杯選手権者の対決です。私の予想では今後の10年くらいの日本の囲碁界はこの二人を中心として動いて行くのではないかと思っています。この碁は右下隅から戦いが始まりました。黒の狙いは下辺で黒にほとんど包囲されている白の1子を戦いのどさくさで飲み込んで下辺を大きく地にすることです。その狙いで黒は右下隅から右辺に展開する白に挟み付けて行き、白が反発して中央に出たのでここで競い合いになりました。白がここでぼんやりと黒を封鎖気味にした手が面白く、黒は右辺の白1子を取り込みましたがこれは欠け眼で黒は半眼しかありません。なので包囲している白の薄みを突いて中央に出て行きましたが、白はその調子で同じく中央に進出し、下辺で取られかけていた石が働き、後にそれを生還させる手が残りました。中央の競い合いで、白の「天狗の鼻ヅケ」が決まり、黒のタネ石4子を取り戦果を上げました。黒はその代償として中央の白を攻めようとし、左辺にモタレて行きました。この時、白は中央を重視し左下隅を捨てたのが好判断で、黒は左下隅を大きく地にする戦果を上げましたが、中央の力関係が逆転し、右辺からの黒の大石が攻められました。この黒を白は激しく攻め、左辺の自分の模様に追い込みました。このため黒が活きてしまうと形勢が悪化する所でしたが、結局劫になって黒が右辺で眼を作る手を劫材にしたのを譲って劫に勝ち、左下隅と左辺の地を大きく確定し、一番大きな下辺の1子に連絡する手を打ち、勝勢になりました。その後すぐ黒の投了となりました。一力遼NHK杯選手権者の早碁での手の見えの速さと形勢判断の正確さが光った一局でした。

おかしくないか?


今日JRの南武線の登戸駅のトイレにおかしな掲示があったので、ググって写真はないかと調べたら、出元は厚労省でした。このポスター完全に間違ってませんか?
(1)そもそも頻繁にセキをして、しかもマスクが無いなら外出を控える、学校や会社を休むべき、と呼びかける方が先では。
(2)袖で口を覆って、そこに飛び散ったツバなどが付着した場合、満員の電車の中などだと、そのままそれは他の人の衣服等に付着する可能性大です。
(3)ハンカチで口を覆ったらなるべく早く洗いましょう、とあるけど、1回だけならともかく何度もセキをしていたらその都度外出先で洗うなんてあり得ないでしょう。
(4)大体、こういうのってエチケットの問題なのか?

以前、北朝鮮からのミサイル攻撃の危険性の時に、「ミサイルが飛んで来たら物陰に隠れましょう」なんていう馬鹿な注意があったけど、それと似ています。

芳賀徹先生ご逝去

大学時代の恩師の一人である芳賀徹さんが亡くなられたそうです。
恩師といっても、教養学科時代に「比較文学」の授業を半年受講しただけですが、今でも強く印象に残っています。
私が、歌川広重の八景物について調べるようになったそもそものきっかけは、この芳賀先生の比較文学の授業でした。その八景物がきっかけで浮世絵に興味を持つようになり、また他の日本の画家にも興味が広がりましたが、元はといえば芳賀先生です。ご冥福をお祈りいたします。

黒川伊保子編著の「妻のトリセツ」

黒川伊保子編著の「妻のトリセツ」を読みました。これと「夫のトリセツ」がベストセラーになっているので、どんなものか読んでみたもの。私は結婚していないので別に奥さんのご機嫌を取る必要はありませんが、会社で何故か部下の8割が女性なので、何かの参考になるかと思って買いました。結論から言うと、典型的な「バイナリー」な(0か1かと言った二分法の)発想の本で、人間の脳のタイプを「男性脳」「女性脳」で二つに分けて、それぞれの特徴から妻の扱い方を説明しています。それはそれで参考になるのでしょうが、私はこの本で勧められている夫の言動(例:「君の味噌汁を飲むのも、もう20年になるんだね。」)は、ほとんど出来の悪いホームドラマという感じで、こんな(クサい)セリフを言われたらむしろ吹き出してしまう方が多いのでは。また人間の脳は二種類に分けられる程単純なんでしょうか。例えば私は男性ですが、地図を読むのは得意ではなく方向音痴で、車を運転する時は100%ナビに頼りますし、車庫入れも下手です。大体この人、AIの研究者であって、脳科学の専門家ではありません。またこの本で書かれているような女性脳の特徴は、生物としてのホルモンなどの影響はもちろんあるのでしょうが、それより小さい時の育てられ方の違いも大きいと思います。そういう意味である意味「女性的」「男性的」という偏見というか伝統的な考え方を固定して広めている、といった良くない印象も受けます。まあ話のネタにはなりますが、その程度の本です。

小倉孝保の「100年かけてやる仕事 中世ラテン語の辞書を編む」+”Dictionary of Medieval Latin From British Sources”

小倉孝保の「100年かけてやる仕事 中世ラテン語の辞書を編む」を読了。今、ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳をやる上で、中世ラテン語が頻出するので何か中世ラテン語の適当な辞書は無いか探している過程で見つけた本。この本で取上げられている、”Dictionary of Medieval Latin From British Sources”も17分冊の内の第14巻だけを持っています。この辞書は全部揃えると10万円近くになります。最初それでも購入しようかどうか迷ったのですが、結局”From British Sources”というのが引っ掛かって、私が欲しいのは”From Italian Sources”です。このブリティッシュ版を作成するに当たって、他の欧州各国にもそれぞれの国版を作りませんか、と呼びかけたらしいのですが、残念ながらまだイタリア版は出来ていません。というか、イタリア語は要するに中世における俗ラテン語がベースなので、現代イタリア語の辞書が中世ラテン語をある程度カバー出来ているのだと思います。実際に、古典ラテン語の辞書で見つからなかった単語が、綴りが少し変わっている場合がありますが、現代イタリア語辞書で見つかるケースが多くあります。たとえば、stacioという単語、おそらくこれは古典ラテン語ではstatio(じっと立っていること、が原義)なんだと思いますが、現代イタリア語ではstazioneで、事業所という意味です。(英語のstationと同語源)またbottegaというのが出てきて、これも古典ラテン語の辞書にはありませんが、現代イタリア語辞書では出ていて現在でも通用する言葉であり、「店舗」という意味です。
小倉孝保の本に戻ると、興味深かったのはこのブリティッシュ版中世ラテン語の辞書の最初の編集者が、OEDのジェイムズ・マレー博士の子孫だということです。実際、この辞書のスタイルはOEDのそれをほとんどそのまま踏襲しています。この小倉さんという作者については、元々毎日新聞の特派員の方のようですが、残念ながらご本人がラテン語を勉強したことが無いため、全体に単に関係者に話しを聞いてまとめた、といういかにも新聞社的な作りで、実際に辞書の中身を読んでその特徴をまとめたりとか、古典ラテン語の辞書との違いについてもっと分析するとか、そういった所が非常に不十分です。今、実際に中世ラテン語を読まなければならないプロジェクトをやっている訳ですから、中世ラテン語辞書の現代における意義なんか説明してもらわなくても十分分かっています。この筆者は100年かけたことに感心していますが、OEDはもっとかかっていますし、ドイツのグリム辞書も同じです。後半1/3は日本の辞書作りの話ですが、間接的な知り合いが多く登場します。(仕事で大修館の辞書を作っていた人とお付き合いがあったので。)この中世ラテン語辞書とかOED、グリム辞書といったスケールで作られた辞書は残念ながら日本には無いです。まあ諸橋大漢和がそれにかろうじて近いですが。日本国語大辞典は現時点はまだまだ未熟です。また日本は国がお金を出した辞書作りが0ということで、私の知り合いの辞書に関する先生は「日本には辞書学が無い」と嘆いておられましたが、まあその通りの状況です。

山崎雅弘の「歴史戦と思想戦 ―歴史問題の読み解き方」

山崎雅弘の「歴史戦と思想戦 ―歴史問題の読み解き方」を読了。何でこの本を買ったのか忘れましたが、Amazonのお勧めで出てきたのか、よく覚えていません。内容は、産経新聞などが中心となって、「歴史戦」と名付けて、加瀬秀明とか中西輝政とかケント・ギルバートとかのいわゆる右寄りの方々の主張しているロジックの嘘を暴いて、同様の思想誘導が戦前・戦争中にもあったとしているもの。
正直、ロジックの嘘を一々説明してもらわなくても、瞬間的にインチキと分かるものばかりで、ほとんど得る所はなかったです。また、右を叩くなら、公平に左も叩くべきで、朝日新聞の強制連行に関する吉田清治のフェイク手記の連載などもきちんと批判すべきかと。
後、GHQが「ウォー・ギルト・プログラム」が日本人に戦争=悪の罪悪感を植え付けようとしたことが、ほとんど効果を上げていないと書いていますが、大衆小説の愛好家としては、GHQの政策が大衆小説、大衆演芸(講談、浪曲など)を日本の封建思想・軍国思想を広めるのに貢献したとして規制し、結果的に大きな打撃を与えたんだ、ということは忘れて欲しくないです。吉川英治みたいな要領のいい人は生き残りましたけど。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第16回目を公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第16回目を公開しました。いよいよ佳境に入りかけている感じです。今回はラテン語はあまりないですが、その分ドイツが前章までより難しく感じます。ランゴバルド法の”meta”について、ヴェーバー、英訳者、全集版の注釈者の解釈に疑問があり、調査に時間を取られています。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳、ノート一冊分終了

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳、ノート一冊を使い切り二冊目に入りました。多分三冊と半分くらいで全部訳し終えると思います。でも、これまでの人生で何百冊とノートは使って来ましたが、最後のページの最後の行まできっちり書込んで一冊終わったのは多分初めてです。かなり万年筆のカートリッジインクを使いました。アナログだけど、PCにテキストだけ打ち込んで終わりにするより、何か達成感みたいなのがあります。

亀長洋子の「イタリアの中世都市」

亀長洋子の「イタリアの中世都市」を読了。今、ヴェーバーの「中世合名会社史」を訳していて、頻繁にイタリアの中世の都市国家が出て来るので、予備知識を得ようと思っての読書。全部で87ページなのですぐ読めます。まあそんな突っ込んだ知識は得られませんが、概略のイメージは得られます。ヨーロッパの中世というと以前は暗黒の遅れた時代というイメージが強かったように思いますが、イタリアの諸都市国家では、カトリックの統制の裏をかいて利子を含む色んな商売の仕組みを整備していった、とてもたくましさを感じます。またコムメンダがイスラム起源で、複式簿記ももしかしたら中東世界の方が先だったかもしれませんが、それらを整備して発展させて来たのがイタリアの諸都市国家であることを疑う人は誰もいないと思います。そういう意味で、西洋に最初に発達した資本主義のゆりかごだったのは間違いなくイタリアです。また私は輸出貿易を14年ほどやった経験がありますが、貿易の基本的な仕組みがほとんどこの時代に作られたということにも感動を覚えます。このシリーズは高校の歴史の教科書で有名な山川出版社から出ています。