ベン・アフレックの「エア」

「エア」を観て来ました。今月映画8本目で、いい加減に観たいものが無くなって来て、まあ観てみるか、という感じでしたが、なかなか良い「ビジネス」映画でした。1984年当時の話で、その頃バッシュのシェアはトップがCONVERSE、2位がAddidasで、NIKEのシェアはわずか17%で、撤退寸前でした。それが担当者がまだNBAに入る寸前のマイケル・ジョーダンに注目し、3人分の予算をつぎ込んでジョーダンの個人ブランドを作って一発逆転を図るという話です。なんか結構「こういうのビジネスであるある」が多くて、子供には分からない映画ですね。リスクの話ばかりして消極的だったCEOも最後にCEOらしいいい仕事をします。エアージョーダンの大成功でナイキはトップシェアになり、1996年にCONVERSEを買収しているんですね、知らなかった。それからAddidasの創業者の本当の名前が「アドルフ」で元ナチ党員だったというのが出て来ましたが、本当なんでしょうか。(今調べたら本当でした。)

古碁の棋譜

隠退生活に備えて買い込んでおいた古碁の棋譜、少しずつ並べています。道策-大仙知-元丈-知得-丈和-幻庵因碩-秀和-秀策-秀甫-秀栄という分る人には分るラインナップです。
まだ引退した訳ではありませんが、囲碁並べは(書籍と碁盤・碁石を揃えた後は)費用0で楽しめる趣味です。今のプロ棋士、例えば関航太郎天元なんかはAI同士の対局を眺めながら勉強しているみたいですが、私は人間同士の碁、特に古碁にはまだまだ学ぶものが多いと思います。

エイゼンシュテインの「アレクサンドル・ネフスキー」

エイゼンシュテインの「アレクサンドル・ネフスキー」を観ました。この映画のDVDは2年前くらいに買ったのですが、ロシアがウクライナに攻め込んだため、いわばロシア愛国映画なこれを観るのを保留していました。この映画は、しかし昔から音楽で知っています。この映画のBGMはプロコフィエフによって作曲されており、それがカンタータとして作り直されています。アバドの指揮する演奏のLPやCDを持っています。改めて映画で観てみて、その音楽が本当にぴたりと内容にはまっているのを確認出来ました。
アレクサンドル・ネフスキーは13世紀のノヴゴロド公国の王子で、まずスウェーデン軍をネヴァ川の戦いで打ち破ってから「ネヴァ川の」という意味の「ネフスキー」と後世呼ばれるようになります。さらにはこの映画で描かれているように、侵略して来た(といよりカトリックのギリシア正教に対する十字軍です)ドイツ騎士団と冬のチュド湖で戦い、これを打ち破っただけでなく、ドイツ騎士団が割れた氷によって湖に落ち、ほぼ全滅しています。(多分偶然でしょうけど、この映画ではアレクサンドルがノヴゴロド軍より重武装しているドイツ騎士団の兵士を、氷が薄い所に誘い込んでそうなった、ということにされています。)
アレクサンドルの時代は、実はロシアは東からはモンゴルによって侵略されており(タタールの軛)ましたが、モンゴルはアレクサンドルの武勇を恐れてノヴゴロドには攻め込まなかったようです。このように、ロシアは侵略ばかりしている国ではなく、歴史上はモンゴル、スウェーデン、ドイツ騎士団、ポーランドといった所から侵略も受けています。だからといってもちろんウクライナ侵攻が正当化される訳ではまったくありません。
ちなみに英語字幕でしたが、かなりひどいブロークンな英語でした。おそらく機械翻訳かと。

百田尚樹の「幻庵」

百田尚樹の「幻庵」(げんなん)を読了。これは週刊文春の連載時に読んでいて単行本は未購入ですが、文庫本化されていたため購入しました。「幻庵」とは江戸時代の囲碁の家元四家の内の井上家の十一世の幻庵因碩(げんなんいんせき)のことです。囲碁史上で、名人の実力がありながら名人になれなかった、ならなかった人四人を囲碁四哲と呼び、幻庵因碩はその一人です。幻庵因碩が活躍した文化文政から幕末にかけての時代は、日本で囲碁が非常に盛んになり、同時に棋士の実力も非常に向上した時代です。しかし同時に、特にこの幻庵因碩と本因坊丈和がある意味暗闘を繰り広げます。この両者は70局以上も対局している好敵手(この本では悪敵手と表現されています)ですが、丈和が名人碁所願いを出した時、本来はこの幻庵が争い碁を申し込んでそれを阻止すべきだったのですが、丈和に「6年後に名人を譲るから今回は推薦して欲しい」と言われて騙され、まんまと丈和が名人になります。これがこの人の人生での最初の大きなミス。二番目の大きなミスは、その丈和と対局して名人から引きずり降ろすチャンスが回って来たのに、自分で打たずに、自分より段位が低い弟子の赤星因徹に代わりに打たせたこと。確かにその当時の因徹は幻庵因碩とほぼ並びかけていた実力の持ち主で、仮に丈和が負けた場合はより低段のものに負けたということで名人引き下ろしがやりやすくなるという計算でした。その期待通り因徹は丈和相手に前半は見事な碁を打ちリードしますが、結核を患っていた因徹は対局の労苦に耐えられず徐々に丈和に形勢を挽回され、最後はミスもあって終に逆転負けに終わり、その瞬間血を吐いて倒れその後わずかな間に死んでしまいます。(天保吐血の局、と言います。)三回目はミスではなくチャンスだったのですが、丈和がある理由で名人で無くなったため、今度こそ幻庵因碩にチャンスが回って来ます。しかしそこに立ち塞がったのが、本因坊家跡目の秀和で、とうとう幻庵因碩は秀和の黒番に勝つことが出来ず、名人になれませんでした。ついでにその秀和も壮年期には実力的には他を圧倒していましたが、幻庵因碩の二代後の因碩との対局で実力的には劣る相手に白番で1目負けという痛恨の敗けをくらい、幕末で幕府が何かと忙しくて碁どころではなかったのもあって、秀和もまた名人になれませんでした。(ちなみにヒカルの碁で有名な本因坊秀策はこの秀和の弟子です。)
という具合にこの時代の各棋士の暗闘は本当に面白いので、この小説もなかなか面白いです。(最近の百田の本は買わないようにしていますが、これは例外。)囲碁を知らなくてもそれなりには理解出来ると思いますが、やはり囲碁を知って読んだ方がずっと面白いです。

ジョナサン・ゴールドスタイン&ジョン・フランシス・デイリーの「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」

「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り」を観て来ました。まったく予備知識無しで観て、超古典的RPGだなと思ったら、まさにその通りで、1974年のアメリカのテーブルゲームでの同名の元祖RPGを映画化したものです。そういう訳でストーリーもほとんどあるような無いようなもので、男女ペア(女性の方が強いのが今日的)と魔法使いとエルフというチームもRPGそのものです。結局悪い魔女をどう倒すかというだけですが、まあまあ楽しめました。

NHK杯戦囲碁 中野泰宏9段 対 孫喆7段(2023年4月23日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が中野泰宏9段、白番が孫喆7段の対戦です。中野さんはお父さんから譲られたという和服で対局、そして孫7段は師匠から贈られたネクタイを着けての対局です。布石では黒が3隅を取り、代わりに白が左辺に大模様を築きました。黒が浅く消しに行ったのに白は受けず、逆に右上隅の黒の開きに肩付きしました。そのため黒は左辺に三間飛びで入り込み、白がこれを攻める展開になりました。黒が左下隅の三々に打って白に受けさせた後、そこを劫にするのを含みに黒はコスんで左辺白を攻める気配を見せましたが、白に切られて逆襲されると単につながる手を打ちました。この辺りが一貫しておらず、黒のサバキは重く成功したとは言い難かったです。左辺が一段落した後、黒は右辺から中央に二間飛びして、中央の白に攻めを見せました。白は取られている石を活用して当たりを打ち、右辺侵略の手がかりを得ようとしました。また右辺上方の肩付きで黒が受けなかった所を白が押さえ、そして曲がりを打った時に、黒が右上隅を小ゲイマで受けたのが問題だったと思います。すかさず白に筋となる付けを打たれ、結局右辺と右上隅が見合いになり、白が右上隅を大きく侵略しました。後は中央の白5子がどうなるかでしたが、黒はそちらを取る前に、中央の白を切断に行こうとしました。しかし黒が断点を継いだ後、白にカケのような手を打たれて攻められると、あっさりその石を捨て、白の5子取りに回りました。こちらも打ち方に一貫性がなかったように思います。中央が取られてしまった結果、左辺からの黒の大石に寄りつきが生じ、色々と生きるための手を打つことになりました。この結果として白地が増えました。また残った上辺も、白が取られている5子への利きを利用してまとめたので、地合は盤面でいい勝負になり、黒はコミを出せませんでした。結局白の中押し勝ちとなりました。

トワイライト・ゾーンの”Five Characters in Search of an Exit”

トワイライト・ゾーンの”Five Characters in Search of an Exit”を観ました。あるアメリカ陸軍の大佐が目覚めると、不思議な空間の中にいました。そこは円筒形で周りも床も全て金属でした。大佐はそこにピエロがいるのを発見します。更には、日雇い労働者、バレーダンサー、バグパイプ吹きの合計5人がいることが判明します。その誰もが何故ここにいるのか知っておらず、またはお腹が空くことも喉が渇くこともありませんでした。大佐は必死に出口を探しますが、どこにも無く、そういった努力は既に先住の4人が試みていたことでした。しかし大佐はここは地獄に違いない、と言いつつも諦めません。5人でそれぞれを肩に載せれば出口の天井の縁に届くのではないかということで、やってみますが、後ちょっとで届きません。しかし大佐は今度は自分が一番上になり、そこであり合わせの衣服で作ったロープをピエロが持っていたサーベルの柄にくくりつけてそれを投げ、天井に縁に引っかけることに成功します。大佐はロープを伝ってついに天井の縁に届きましたが、逆側に墜落してしまいます。そこは雪の上でした。そこはある町のクリスマスの時期であり、5人が入っていた缶は「孤児達に人形をプレゼントしましょう!」と書いてありました。通りかかった女の子が雪の上に落ちていた大佐の「人形」を缶の中に戻します…
まあそれなりに良く出来た脚本でした。これは1961年12月22日のクリスマスシーズンに放送されたものです。

井上雄彦の”THE FIRST SLAM DUNK”

「The First Slam Dunk」を観て来ました。スラムダンクは、途中まで単行本で読んでてその後中断し、しかし完結した時に最終巻を読んだという程度で、特に大ファンという訳ではありませんが、良く出来た漫画だと思っていました。何で今さら5度目のアニメ映画化なのかと思いましたが、お話しは原作の最後の山王工業戦を描いたもので、当然最後の試合の決着の仕方は知っていましたが、それでも改めて感動しました。また山王工業戦だけだと単調になるのを避けるためか、湘北のメンバーではある意味一番地味な宮城リョータをフィーチャーするものになっていました。この辺は原作者の井上雄彦のこだわりでしょうか。ちなみに監督も井上雄彦自身です。そのため、アニメで良くある原作のコミックと違う、はほとんど感じなかったです。観客は現役世代として40代以上が多いかと予想していましたが、意外に若い人が多く混んでいました。(コナンの新作アニメほどじゃないですが。)

アウター・リミッツの”Keeper of the Purple Twilight”

アウター・リミッツの”Keeper of the Purple Twilight”を観ました。科学者のエリック・プラマーはある装置を研究していましたが、莫大な予算を使いながら最後の2つの方程式を得ることが出来ず苦しんでいました。そこにアイカーという人間に化けたエイリアンが現れ、エリックの感情を彼に与える代わりに、その2つの方程式を教えるという取引きをします。プラマーの恋人であるジャネットはプラマーが突然冷たくなったのに驚きます。プラマーは方程式の力で、全ての物質の磁気的な結合を破壊するという恐るべき兵器のプロトを完成します。研究所の所長はそれが人類を滅ぼすものだとして研究の中止を求めますが、予算を出していた軍の幹部はそれに多大な興味を抱き、予算の提供を約束します。実はエイリアンの目的は、その兵器を自分達の星から持ち込むのが大変なので、それをプラマーに代わりに作らせようとしていたのでした。しかし、プラマーの感情を得たアイカーは、憎しみ、愛といった感情に混乱して、元々自分達の惑星の巨大なコンピューターのようなものの一部として行動していたのが、そこから逸脱し始めたため、味方であった兵士エイリアンから狙われるようになります。アイカーはプラマーに感情を返しますが、その時兵士エイリアン達がまた襲って来て、結局アイカーも兵士エイリアン達もプラマーが作った武器によって消滅します。自分の感情を取り戻したアイカーが、その兵器自身によってコントローラーを破壊し、設計図もすべて破棄します。
冷静でロジカルなエイリアンが地球人の愛や憎しみという感情を得て混乱する、というのは良くあるパターンです。ちなみにプラマーを演じていたウォーレン・スティーブンスは、禁断の惑星、原子力潜水艦シービュー号やスター・トレックなどで何度も観たことがある俳優です。

ウィル・メリックの「サーチ2」

サーチ2を観て来ました。映画の構成は前作で理解していますので、その面の驚きはありません。また前作の時にはまだ使われていなかったITツールが最後に結構大事な役目を演じます。まだ公開開始直後でネタバレになるのでストーリーは書きませんが、前作同様楽しめました。ただ他人のアカウントのパスワードが簡単に分かりすぎ、という疑問は前作と同じです。今後生体認証とかに切り替わった時はどうするんでしょうか。(多分サーチ3があると思います。)またこの映画で示されてる様々な個人の行動履歴の追跡、まさしくジョージ・オーウェルの1984の世界で、中国なんかはそれを国単位でやっていると考えるとぞっとします。