小林信彦の「一少年の観た<聖戦>」を再読。「ぼくたちの好きな戦争」と対になる本で、小林信彦自身が体験した戦前・戦中・戦後の時代を主として映画の観点からまとめたものです。なので「見た」ではなく「観た」になっています。戦争は特撮技術とアニメの技術を進化させ、また戦争中でありながら、黒澤明の「姿三四郎」や、稲垣浩の「無法松の一生」といった優れた映画が封切られています。戦争に入っても映画を見続けた小林少年ですが、それは集団疎開、縁故疎開の二度の疎開で中断を余儀なくさせられます。
戦争中、チャーチルやルーズベルトに対するどぎつい風刺漫画を書いていた近藤日出造が、戦争が終わると同じタッチで獄中の東条英機を風刺する漫画を発表し、小林信彦は「それはないだろう」という感想を述べています。
フレドリック・ブラウンの「火星人ゴーホーム」
古今亭志ん朝の「明烏、船徳」
NHK杯戦囲碁 志田達哉七段 対 趙治勲二十五世本因坊
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉七段、白番が趙治勲二十五世本因坊の対局。志田七段は25歳ながら、NHK杯戦すでに6回目の実力者。趙二十五世本因坊はタイトル獲得数史上1位で現在も活躍する強豪です。対局は黒の志田七段が3手目に三々を打つなど地合で先行する打ち方。対する趙二十五世本因坊は早めに仕掛けて行き、戦いでは白が優勢でしたが、志田七段も各所で地を稼いで決め手を与えません。形勢は半目勝負で寄せに入りましたが、ここで志田七段の痛恨のポカミスが出て、アタリにされた黒3目をつがないで他を打ってしまいました。10目くらい損して折角の好局をふいにしてしました。白の中押し勝ちでした。
古今亭志ん生の「粗忽長屋」
小林信彦の「オヨヨ大統領の悪夢」
小林信彦の「オヨヨ大統領の悪夢」を読了。オヨヨ大統領シリーズの8作目です。「クネッケ博士のおかしな旅」を除くと、オヨヨ大統領が明示的に登場する最後の作品です。作者自身はオヨヨ大統領シリーズには入れていない、という情報もあります。この作品では、オヨヨ大統領は作者と同じ世界に所属して、作者に電話をかけてくる、という形で登場します。その意味でオヨヨ大統領は今回脇役で主役は作者である小林信彦自身です。オヨヨ大統領が作者を脅迫するために睡眠薬を買い占めたり、沖田総司が現代に蘇って芸能界でスターになったり、作者が真奇郎という編集者を様々なミステリーのトリックやあげくの果てはSFのトリックで殺そうしてことごとく失敗したり、と趣向を凝らした4つの話が収められています。また最後の「華麗ならざるエピローグ」ではシリーズ全体をひっくり返しかねないようなオヨヨ大統領の述懐が登場します。
古今亭志ん朝の「お見立て、火焔太鼓」
ガールズ&パンツァー 劇場版
まいにちイタリア語 2016年6月号
もりたなるおの「芸術と戦争―従軍作家・画家たちの戦中と戦後」
もりたなるおの「芸術と戦争―従軍作家・画家たちの戦中と戦後」を読了しました。この本を読んだきっかけは、小林信彦の「ぼくたちの好きな戦争」で戦争中に風刺漫画家で活躍する秋間広次のモデルが近藤日出造であることを知り、その近藤日出造について小林はさらに「一少年の観た『聖戦』」の中で、戦犯ではないかと非難しているのを知ったことです。もりたなるおは相撲小説が有名で以前よく読みましたが、作家になる前は漫画家で近藤日出造の弟子です。なので近藤日出造の戦中の活動について書かれていないかと思ってこの本を取り寄せました。
この本では近藤日出造は直接小説の主題としては取り上げられていませんが、風刺漫画家岸丈夫の章で登場し、近藤日出造と加藤悦郎が戦争中、どぎつい風刺漫画を書いていたことは出てきます。
その他、この本で取り上げられている人は、井伏鱒二、火野葦平、藤田嗣治、東郷青児、吉川英治、横山大観、林芙美子、柳家金語楼など色々です。
藤田嗣治については、戦争画に打ち込み、非常にリアルな戦争画を多数書きますが、アッツ島玉砕、サイパン玉砕といった絵でリアルになりすぎて、軍部から「戦意を削ぐ」として活動を止められ、それでありながら、戦後は逆に戦犯として活動を差し止められそうになり、それで日本を捨てフランスに移住したとあります。こうした事情は今回初めて知りました。
また、日露戦争の旅順攻防戦を書いた戦記小説「肉弾」の著者の櫻井忠温が戦後公職追放になって苦労したりなども初めて知りました。
小説家、画家、漫画家などの戦争との関わりは様々ですが、戦争に積極協力した人も一概には責める気にはなれません。