ヴェーバーの翻訳にChatGPT4は本当に役立ちます。

ヴェーバーのドイツ語の翻訳に、ChatGPT4は本当に役立ちます。というか木村相良の辞書のVerfassungの項の記述に「組織・体制」の意味が書いていないのがおかしいのですが。下記の回答見ても分るように、ChatGPT4はこの「ローマ土地制度史」の全体の内容をきちんと理解しています。現在日本にヴェーバーの研究者は掃いて捨てるほどいますが、「ローマ土地制度史」をこのレベルで読んでいる人は一人もいないと思います。(かつてはいたと思いますが。)

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以下のドイツ語はマックス・ヴェーバーの「ローマ土地制度史」の一部です。この文章でのFlurverfassungはどういう意味でしょうか?つまり耕地に対する法律の意味なのか、それとも耕地に関する記述でしょうか?
Mag die colonia, die »Bauernschaft« — nach Mommsens Ansicht — die verjüngte Projektion der gentilen Flurverfassung sein, so ist sie ausserdem doch auch eine Organisation zur Abwehr dritter in einem befestigten Ort, also einer Stadt.

ChatGPT
この文脈での「Flurverfassung」は、特定の耕地に関する制度や組織の枠組みを指す用語として使われています。ドイツ語で「Flur」は「耕地」「畑地」などの意味があり、「Verfassung」は「憲法」「制度」「組織の枠組み」などの意味を持ちます。したがって、「Flurverfassung」は直訳すると「耕地の制度」または「耕地の組織の枠組み」となり、耕地に対する法的または組織的な枠組み、つまり耕地に関する制度や管理の仕組みを意味しています。
この文章の中でマックス・ヴェーバーは、ローマの土地制度、特に「colonia」や「Bauernschaft(農民社会)」が、古代の「gentilen Flurverfassung(氏族的な耕地制度)」の影響を受けて形成されたものであると述べています。しかし、それに加えて、「colonia」は外部からの防衛を目的とした固定された場所、すなわち都市としての機能も持っていたと指摘しています。
従って、この文脈では「Flurverfassung」は、耕地に関する記述やその管理・運用に関する法的または組織的な枠組みを指していると解釈できます。この用語は、単に法律の意味ではなく、より広い意味で耕地に関する社会的・組織的な制度を含む概念として使用されているようです。

「中世合名・合資会社成立史」の余波

ようやく、という感じですが、私が日本語訳したヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」を読んで、それをベースにして本を書いた人を見つけました。私の訳も誉めていただいていて、それは嬉しいのですが、肝心の「成立史」の読解と解釈にかなり問題があり、批評を書きました。しかし、安藤英治氏と言い、今回の方と言い、ヴェーバーがきちんと述べていることを理解せず、ヴェーバーが言ってもいないことを勝手に解釈する人が多いのは何故なんでしょうか。

「中世合名・合資会社成立史」を改訂しました。

「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳、第1回正式公開版(2020年9月23日より公開開始)はその後細かな校正で30回以上改訂して来ましたが、この度第4章の一部でちょっとした誤訳があったのを発見しこれを改めたのと、特に前半部で原注の番号が抜けている箇所が多く見つかったため、これを修正してこの機会に版を新たにしました。この際に同時にヘッダーにこれまで版番号を入れていたのを読者の便宜を考え章名に変更しました。

「中世合名・合資会社成立史」日本語訳正式公開

「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳売れ行き

Amazonで売っている書籍版のヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳、これまで月に1~2冊程度でしたが、何故かこの1月は10冊近く売れています。なんかあったのでしょうか?
(私のに限らず、Amazonでのマックス・ヴェーバー関連本は、一番売れているのでも月に数冊程度です。検索した時のランキングから推測して。)

立林和夫編著の「入門 MTシステム」

立林和夫編著の「入門 MTシステム」を読了。これを読み始めてから、1/3で中断し、一度タグチメソッドに戻って学習しなおし、改めて読んでいます。もちろん数式については細かい所は理解しないで、感覚的な理解に留めています。Mはマハラノビスで、Tはタグチメソッドです。要するにマハラノビスの汎距離を使った解析に、タグチメソッドを組み合わせたもので、マハラノビスの汎距離を使う単位空間を構成する要素について候補の中から直交表を用いて実験を行い、そこでS/N比や感度というタグチメソッド的手法で選定を行っていきます。マハラノビスの汎距離と通常のユークリッド距離がどう違うかと言うと、マハラノビスの汎距離の場合は要素間の相関を考慮し、各サンプルの重心からの距離に相関係数の逆数をかけて補正します。現実のパラメーターについて、お互いに相関が0というものはほとんどないので、単純なユークリッド距離を使った重回帰分析よりも、少ない要素数でより的確な解析や予想を行うことが出来ます。なおMTシステムといっても、実際はバリエーションがあり、最初のMTS法から始って、MTA法、TS法、T法などがあり、T法はさらに3種類あります。それぞれ特徴があります。なお、この本でのMTシステムの事例として挙げられているのは、製品歩留まりの予想、手書き文字認識、機械のノイズによる不良検知、天気予報、賃貸不動産の賃料予測、医療診断などきわめて多岐に渡っています。このようにMT法の有用性は昔から分っていたのですが、実際に相関係数の逆行列をかけていってマハラノビス距離を計算するのが大変でした。しかし今はパソコンで簡単に出来てしまいます。私はスイッチメーカーでの経験が長いですが、例えば押ボタンスイッチの荷重曲線を使ってMT法でスイッチの寿命を予測したり不具合を検知する、ということは当然出来そうです。なお波形データとかをどう数値化するかですが、微分である変化量と、積分である単位時間の面積を使ってパラメーターとする手法が紹介されています。生成AIのエンベディングにマハラノビス距離が使われているのも、少ないパラメーターで出来るだけ精度の高い解析を行うのが目的のようです。

ヴェーバー関係の書籍の整理

新居にてようやく段ボール箱開梱もほぼ終って、これまで本はかなり適当に空いている本棚に詰めていただけなのを、本棚を更に1台追加して、まずマックス・ヴェーバー関係を集めてみました。残念ながら1台では足らず、翻訳の時の資料とかは溢れてしまいました。これだけ集めたのは、今集めておかないともう簡単には買えなくなるという予感があったからです。例えば「経済と社会」の日本語訳を出していた創文社は解散してしまいました。なのでヴェーバー本人の書いたものは大体読みましたが、研究書や入門書の類いはきちんと読んでないのが沢山あります。

ヴェーバーポータルでの新着書き込み2件

日本マックス・ヴェーバー研究ポータルに、2つほど新しい書き込みをしました。

(1)フッサールの「厳密な科学としての哲学」(2)
(2)ヴェーバーの科学論文で言及されている「心理学」とは

どちらもヴェーバーの「理解社会学」とは何か、というのをきちんと調べようとしている動機からのものです。

David GraeberとDavid Wengrowの”The Dawn of Everything”(2)

David GraeberとDavid Wengrowの”The Dawn of Everything”をようやく読了しました。この本、ベストセラーになっていますが、このペーパーバック版で注を除いて525ページあります。そのせいか、ダイジェスト版が2種類も出版されています。中身の感想は「日本マックス・ヴェーバー研究ポータル」の方に書きましたので、そちらを参照してください。

アドルフ・ヒトラーの「わが闘争」

これを買いました。「ドイツの文化と社会」というご大層な名前の学科の卒業生としては、やはり一度は読んでおきべきかと思って。またマックス・ヴェーバーの初期の主張はヒトラーとかなり共通性がある、と言っている人もいるので、アマチュアのマックス・ヴェーバー研究者としても読むべきかと思いました。
多くの人が誤解していますが、ヒトラーは軍事クーデターや革命で政権を取ったのではなく、合法的に選挙で権力を得ています。すなわち当時のドイツやオーストリアで多くの人に支持されたということです。

中野敏男氏の「ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程」の書評

中野敏男氏の「ヴェーバー入門 ――理解社会学の射程」という入門書についての書評を、日本マックス・ヴェーバー研究ポータルの方で公開しました。ご興味のある方は参照ください。この書については折原浩先生と中野氏の論争がありますが、そちらへの応答というつもりではありません。