NHK杯戦囲碁 林漢傑8段 対 広瀬優一7段(2025年9月14日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が林漢傑8段、白番が広瀬優一7段の対局です。序盤は白が実利、黒が模様という対抗で、白が上辺の1子を動かず、右辺を優先して打ったのが良い判断で、上辺は後から白から策動する手が残った分、白が少し上手くやったように思います。難しかったのが下辺での攻防で、黒が左辺下の出切りを防ぐ手を打たないで、下辺中央の白に付けていってから複雑な戦いになりました。結局左辺下は白が出切っていって隅を取り、下辺は結局劫になりましたが、上辺での劫立てに黒が受けなかったので振り替わりになりましたが、ここの収支は良く分かりませんでしたが若干黒が挽回した感じでしょうか。最後左辺と中央が残りましたが、白が左辺の黒を取り込んでしまえば中央を黒に囲わせても勝ち、という判断が的確で、最後上辺の劫など色々とありましたが、結局白が4目半勝ちで逃げ切りました。

NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 酒井佑規6段(2025年9月7日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は高尾紳路9段と酒井佑規6段の対戦です。序盤白が黒が大々ゲイマに左上隅に掛かったのに対し、6線に臨んだのが研究の一手という感じで、上辺右の黒地を値切りましたが、逆に今後この中央の白の6子が厚みとなるのか、あるいは攻められる展開になるのかが勝敗の分かれ目という感じになりました。その後左下隅の攻防で、ちょっと黒の誤算があったのか、隅の黒3子が持ち込みになった感じで大きく白地がまとまって、白のペースになりました。黒は中央を厚く打ちながら上方の白6子を攻める展開を狙いましたが、逆に白が中央の黒の二間開きの間に付けて逆襲していったのが積極的で結局これが劫を奏して、白が黒の右下隅を取り込み、逆に黒が下辺白4子を取り込みましたが、この分かれは白地が大きくここで白の勝勢となりました。結局白の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 一力遼四冠 対 藤沢里奈女流本因坊(2025年8月31日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が一力遼四冠、白番が藤沢里奈女流本因坊の、好カードです。布石ははっきした白の実利、黒の模様という対抗形で、白が四隅を取りました。江戸時代では「四隅取られて碁を打つな」と言われ、武宮宇宙流が出て来てからは「四隅取らせて碁は勝ち」となりましたが、果たしてこの碁は、と言うところです。白は左辺-中央-上辺にかけてかなり黒に囲わせてから入って行き、上辺に飛び込んでそこでの活きを目指しました。結果として上辺は何とか活きたものの、代償として左上隅をやや辛い形の活きに追い込まれて、ここで黒が少しリードした感じです。その後黒は下辺の模様を盛り上げ、中央に手を付けていった白が活きられるかという戦いになりました。途中白が覗きを打ちましたが、黒は受けず、確かに切られても上方の黒は活きがありました。結局ここの白が死んで黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 福岡航太朗7段(2025年8月24日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が福岡航太朗7段の対戦です。黒はいきなり右上隅と右下隅で両三々という、ずっとNHK杯戦囲碁を10数年続けて観ていますが、この布石は初めてのように思います。そして右上隅での戦いがこの碁の焦点になり、白が黒の断点を生覗きしていったのに黒が掛けで応じ、白はすぐ何かやっていくかと思ったら手を抜いて他を打ちました。そして黒がもう一手打ってから再度右上隅に手を付けていき、黒は上辺の白を石塔シボリで団子にしにいったのですが、白が三子を継がなかったのが明るい判断で結局白は上辺を渡って、結果的に右上隅の黒地をえぐった形となり、白がリードしました。黒は挽回のため、左下隅に付けていって、下辺の白と左下隅の白を分断しようとしましたが、結局封鎖され、白は途中まで取りかけに行きましたが、最後黒を生かす方向に転換しました。その結果左辺から中央の白が厚くなり、白のリードは続きました。最後黒が左辺に仕掛けましたが、白が冷静に黒一子を取って安全運転をして、ここで黒の投了となりました。福岡7段が今期でもし優勝すると、それは伊田9段の持つ最年少優勝記録の更新となりますが、果たしてどうなるか。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 許家元9段(2025年8月17日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が許家元9段の対戦です。冒頭のインタビューで平田8段が「殴り合いをする」と言っていましたが、最後にその通りの碁となりました。序盤は黒が実利を稼ぎ、その代償で上辺から中央に延びる黒の大石がかなり攻め立てられましたが、白が途中で取りに行くのを諦めて下辺を大きく囲う方向へ方針を変換しました。それに対し黒が下辺真ん中の白の下に付けて行ったのが勝負手で、一時は下辺の黒の右側が右下隅に渡って一部生還で収束かと思いきや、平田8段の冒頭の言葉通りここからの黒の打ち回しが目一杯のもので、半分取られ掛けているような石を更に動いていって包囲している白をダメヅマリに追い込み、更に上辺から中央へ延びている白の大石の生死と絡めてシノギを図り、最後劫に持ち込んで白の劫材が無いため、白の大石が死んで黒の下辺が全部活きるということになり、黒の中押し勝ちとなりました。これまでの平田8段はどちらかというと終盤力に優れているというイメージでしたが、まともな殴り合いの力もかなりのものであることを証明しました。

NHK杯戦囲碁 井山裕太二冠 対 結城聡9段(2025年8月10日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が井山裕太二冠、白番が結城聡9段の対戦です。布石は井山二冠が同じ方向の小目という愛用の布石だったのに対し白は両方に対して向かい小目という初めて見たものでした。途中まで真似碁のような展開になりましたが、結局右下隅で白が定石の途中で手を抜いて下辺をはさんだ関係で、黒が切り白が下辺を取り、黒が右下隅から右辺方面に勢力を築くという振り替わりになりました。これは黒が少し打ちやすい展開だったようです。その後黒が右上隅から延びる白石に対し、ハサミツケてから切って行ったのが厳しく、黒が白二子を取り込んで右辺が大きな地模様になりました。それに対して白は深く打ち込んで行きましたが、結局この白は捨てざるを得ない展開になり、黒のリードが拡大しました。最後右上隅から中央に延びる白石を黒が攻め、結局黒も切り離されて攻め合いかと思いましたが、黒が上手く下辺で取られていた石を活用して左辺に一眼作って活きた結果、白の大石が自動的に死に、白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 田中康湧5段 対 柳時熏9段(2025年8月3日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が田中康湧5段、白番が久し振りの柳時熏9段の対戦です。序盤に右下隅で本当に久しぶりの小ナダレ定石になり、黒の実利、白の模様という展開になりました。その後左下隅で白が3子を捨てて更に厚みを築き、また黒が左上隅の三々にも入ったので、黒が白の真ん中の大きな模様をどう荒らすかが焦点になりました。しかし黒は比較的浅く入りあまり踏み込まなかったため、それほど攻められることはなく、形勢は互角のまま終盤戦に入りました。しかしそこで上辺左方の白地と思われた所を黒が切っていって更に中から動き、結局劫付きの攻め合いになり、劫も黒が勝って大きな戦果を上げました。白は劫立てで左上隅を劫にしたのですが、この劫も黒が下辺を譲って無事に切り抜けました。この後のヨセでは白にもうチャンスがなく、結局黒の4目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 西健伸6段 対 小池芳弘7段(2025年7月27日→8月2日放映分)


本日の(7月27日(日)放送予定だったのが高校野球で今日に延びたもの)NHK杯戦囲碁は、黒番が西健伸6段、白番が小池芳弘7段の対戦です。西6段は右辺に大きな地模様を築き、白は右下隅に一回様子見してから右辺に打ち込んでいきました。右辺の白は中央に逃げ出すことが出来ましたが、その代償で下辺の白が置いてけぼりになり、ここでは黒が打ちやすかったかと思います。しかし白が右辺上方の黒を切り離して逆襲してから形勢は二転三転し、中央の戦いの余波で下辺の白が復活し、この白の一団の生死が勝敗のポイントになりました。しかし黒は取り切れないと思ったのか途中で追及を止め左上隅を打ちました。しかし結局白の一団が生きた後、黒の左上隅での打ち方が中途半端であり、却って自分の方の活き死にの問題になり、開き直って劫にしましたが、この辺りが今一つで、形勢は白に大きく傾き、結局黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 呉柏毅6段 対 林漢傑8段(2025年7月20日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が呉柏毅6段、白番が林漢傑8段の対戦でした。この碁は中盤から戦いの連続で面白い碁でした。特に印象に残ったのは、黒が右辺で抑えて、右下隅の白にプレッシャーをかけたのを、白が右辺上方で当てた後、下からまくっていって2線の当たりまで決め、それによって右下隅と渡るという打ち方が相手の読みを外す打ち方でした。そしてその後上辺の攻め合いになり、それがこの碁の最大の焦点でしたが、黒が9の3で白の左側に付けていって手数を伸ばしに行ったのですが、そこに何かの読み間違いがあったのか、手は伸びずに結局は黒から見ての2手ヨセコウという白から見たらほとんど黒を取ってしまったような戦果であり、ここで白が勝勢になりました。黒はそれでも下辺からの地模様を最大限大きくしようとしましたが、白が一部を捨てて上手く打ち回して差は縮まらず、逆にここに白からの劫立てが多数出来てしまい、黒から見て益々上辺の2手ヨセコウに勝つことが難しくなりました。黒はそれでも奮闘して中央で攻め合いに持ち込もうとしましたが、白から見て2手勝ちで手にならず、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 牛栄子4段 対 瀬戸大樹8段(2025年7月13日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が牛栄子4段、白番が瀬戸大樹8段の対戦です。この碁は最初から最後まで戦いの激しい碁で、特に最初の見所だったのは、黒が下辺右側の8子を右下隅に渡らないで、捨ててしまったことで、白はそれを取って25目ぐらいの地になって打ちやすくなったように見えました。しかしそこからの黒の追い上げ、つまりこの捨て石を攻め取りにさせて活用しようとするのが激しく、またその余得で左辺下側の白3子を取って挽回しました。そして結局下辺を劫付きの攻め合いに持ち込み、白は渡って攻め合いは勝ちましたが、下辺の白の半分を取って、これでほぼ互角の形勢になりました。しかしその後の黒が右上隅の石を上手く活きるのに失敗し中央に逃げ出しましたが、結局2眼は出来ず全て死に、白の中押し勝ちとなりました。なかなか最初から最後まで飽きることのない、見所の連続の碁でした。