
本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が鈴木伸二8段、白番が芝野虎丸十段の対戦です。二人のこれまでの対戦成績は5勝5敗の5分です。序盤は黒が実利に走り、結局四隅全部を黒が取るという展開になりました。ただ左上隅の黒の生き方は小さく、白が左辺の黒二子を取り込んだので白が若干リードしました。その後白は左辺から伸びる黒の一団を攻めて中央が激しい戦いになりました。しかし黒が白の5子の取りをにらんだ劫争いに持ち込み、この劫に黒が勝って中央の石が全部活きたので、黒が優勢になりました。しかし白も左上隅の黒を振り替わりのような形で取ったので、形勢の差は微細でした。最後右辺に侵入した白と中央の白を黒が切っていき、中央の白と右上隅の黒の攻め合いになりました。結局黒の一手勝ちになりましたが、白が先に当て込みを打っていたら逆に白の一手勝ちだったかもしれません。黒の中押し勝ちとなりました。
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NHK杯戦囲碁 一力遼5冠王 対 本木克弥9段(2025年12月21日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が一力遼5冠王、白番が本木克弥9段の対戦です。右下隅方面から戦いが始まり、一力遼5冠がかなり積極的に仕掛けていった感じで、中央にも切りを入れて右辺から延びる白石全体を狙いました。その戦いは左辺へも拡大し、黒の左辺の地がどうなるかという所が焦点でしたが、まず黒は右辺からの白への攻めで先手で目をつぶせた所を打ち損ない逆にそこを白に打たれたため、白から見て活きが容易になりました。左辺での戦いも最後に黒の中央が薄くなって黒が手を入れざるを得なくなり、結果的に白が先手で黒の左辺を大きく荒らし、なおかつ右辺中央の白から打てば黒地をセキで0目に出来る手に白が回って、白の勝ちが確定しました。白の2目半勝ちで本木9段は金星を挙げました。
NHK杯戦囲碁 表悠斗3段 対 福岡航太朗7段(2025年12月14日放送分)
NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 井山裕太碁聖(2025年12月7日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が横塚力7段、白番が井山裕太碁聖の対戦です。(井山さんもついに碁聖だけになりました。感慨があります。)
対戦は下辺での黒の打ち方が一応振り替わりでしたが損を先にしたようなもので、それ以降はずっと白のリードで進みました。しかし上辺での折衝で白は黒の戦いの誘いに乗った感じで打ち過ぎてしまい、白がかなり損をし、黒は中央がかなり厚くなって形勢は互角になりました。その後中央の黒地を白がどう値切るかの戦いが続きましたが、ここでも黒は上手くしのいで、形勢はやや黒有利で進みました。しかし黒が左辺2線を先手のつもりで押さえたのが、白の黒6子取りと換わり手拍子で、これでまた形勢不明になりました。しかし双方でヨセにミスが出て、結局は白が何とか半目勝ちとなりました。全体に井山碁聖らしさがあまりない碁でした。横塚7段は大きなチャンスを逃しました。
NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 芝野虎丸十段(2025年11月30日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が河野臨9段、白番が芝野虎丸十段の対戦です。序盤で白が4手目で右上隅にかかり、変形秀策流のような布石で始まりました。右上隅で黒は中央にケイマで顔を出し、右辺を押していって白地を確定させるという河野9段としては珍しい打ち方をしました。その後上辺と左上隅、左辺にかけてお互いに切り合って戦いが始まり、黒が白のダメヅマリを利用した上手い手で上手く中央に顔を出しました。そうすると残された中央の白がどうしのぐかという所ですが、白は下辺に黒に付けて行き、そこと絡めてのしのぎを目指しました。ここで黒が下辺を優先して中央の黒5子を捨ててしまったのが少し追及不足という感じで、白は黒を取って治まり、形勢としては白のリードになりました。その後黒が右辺の白地に踏み込む勝負手を見せましたが、結局は白有利の攻め合いで、少し締め付けが利いた程度で形勢の逆転にはならず、白の中押し勝ちとなりました。芝野十段の戦い上手が目に付いた対局でした。
NHK杯戦囲碁 富士田明彦8段 対 鶴山淳志8段(2025年11月23日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が富士田明彦8段、白番が鶴山淳志8段の対戦です。この碁は終始戦っており、特に下辺での激しい折衝が中央から左辺にかけて延びて行き、黒が攻められていた中で、左下に覗きを打ってそれに白が反発しという展開で、結局左下隅は黒地になりましたが、その代わりに下辺から中央に延びた黒石がかなり危なくなりました。しかし白の攻め方が若干まずい所があり、黒は取られていて左上隅の石を利用して上手くしのぎました。しかし白も中央が厚くかなりの地が見込めそうで、黒の右辺がどのくらいまとまるかが勝負でしたが、白が右下隅に付けて黒に受けさせた後、右辺上方に利かして打った打ち方が巧妙で、右上隅の黒は手を抜くと眼が無くなるのでやむを得ず受けになり、それから右下隅のさっき付けた石を動き出したのが巧妙でした。これで白が右辺を上手く割り、白の優勢になりました。その後右辺で劫が発生しましたが、勝敗には関係なく、結局白の3目半勝ちになりました。
NHK杯戦囲碁 本木克弥9段 対 志田達哉8段(2025年11月16日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が本木克弥9段、白番が志田篤8段のどちらも7大タイトルの挑戦経験者同士です。(志田8段は今年の天元戦で一力遼天元に挑戦しましたが、惜しくも3連敗でタイトル奪取はなりませんでした。)この碁はがっぷり四つという感じで、最後まで微細な形勢が続きました。上辺左でいわゆる「鶴の巣ごもり」の形が出来て、それで白が守らずに黒に取らせたのも珍しいことでした。左辺で黒が白地を侵略して活きた代わりに中央がかなり白っぽくなったのですが、黒が下辺の白を脅かしつつ中央を上手く侵略して大きな白地を作らせなかったのが黒の勝因になりました。また最後の方で上辺の劫争いをしている時に、左辺を劫に弾いて新たな劫を作ってそれを劫立てにしたのも上手く、最後白の左下隅に置く手があり、白が一手手入れが要るということで、結局黒の1目半勝ちに終わりました。
NHK杯戦囲碁 張栩9段 対 田中康湧5段(2025年11月9日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が張栩9段、白番が田中康湧5段の対戦でした。張9段が対局前のインタビューで「今日は積極的に仕掛けて行く」と言っていましたが、本局はその仕掛けが終始空振りしたような内容でした。特に上辺から左上隅の攻防で、上辺の白が黒に当て込んで渡りを目指したのに、黒が三々に入って行きました。結局この左上隅は劫になったのですが、黒の劫取りに白が1線を継ぐ手があり、結局黒は左辺を突き抜いたものの、左上隅は取られてしまい、ここで白がリードしました。白にとっては後は下辺から中央に延びる一団をしのげば勝ちという展開になり、黒も白の覗きに受けずに攻めに行きましたが、切られて上下を分断され、最後は黒のアテに白が手を抜いて上辺右の黒を取り切ってしまい、黒は白の一団を取れないということになり、白の中押し勝ちとなりました。田中5段はNHK杯戦の2回戦初勝利でしたが、白の完勝譜でした。
NHK杯戦囲碁 大竹優7段 対 横塚力7段(2025年11月2日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が大竹優7段、白番が横塚力7段の対戦です。序盤での見所は、黒が右辺の白に対し大ゲイマで利かしに行ったのに対し白が反発して中央に出ていった場面です。勢い黒は右辺に飛び込んで激しい戦いになると思いきや、白が上方の黒を取り込み、黒が右下隅の白3子を取り込むという振り替わりになりました。しかしどちらも取ったとはいえまだ味残りで、実際に後でもつれます。その後、白が右下隅で取られている石を活用しつつ下辺に展開し、ここでまた戦いになりました。この戦いは二転三転しましたが、途中でまた振り替わりになり、黒が左辺の白を取り込み、白は右下隅で取られていた石を復活させるということになりました。その後黒も右辺上方で取られて石を活用して策動し、一部を生還させようとし、劫になって、結局劫は白が勝ち、黒は左手で2手連打しました。という具合で行ったり来たりの好勝負でしたが、わずかに白が抜け出して、最終的には白の1目半勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 関航太郎9段 対 表悠斗3段(2025年10月26日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が関航太郎9段、白番が表悠斗3段の対戦です。表3段については以前やはりNHK杯戦での許家元9段との対局で私は「黒は左上隅の三々に打ちこむチャンスが2回ありましたが、どちらでも決行しませんでした。もちろん手になったかどうかは分かりませんが、形勢が悪いのにそのまま淡々とヨセを打った、という印象です。表3段は17歳初出場で3回戦まで来れた、というのは立派ですが、こういう戦わない碁で上に行けるのかな、という気がします。トップの一人の井山裕太3冠がともかく目一杯の手を打つのをやはり参考にすべきではないかと思います。」と書いたことがあります。まさかこれを読んだ訳でも無いと思いますが、本日の表3段は、下辺へ潜航艇を飛ばしたり、左辺から黒の中央の模様に果敢に入っていったりと、積極的な面が目立ち、それがいい方向に働き、左辺の白がある意味大いばりで中央に進出し、左辺下方の白は取られはしたものの攻め取りであり、関9段もタジタジといった感じの打ち方でした。結果として盤面でも白が4目ぐらい良いという大差になり、黒の投了となりました。
