NHK杯戦囲碁 井山裕太3冠 対 余正麒8段(決勝戦、2025年3月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁はいよいよ決勝戦で、黒番が井山裕太3冠、白番が余正麒8段の対戦です。余8段は8段なのが本当に不思議という感じで、これまで何度もタイトル戦に登場し後一歩で涙を飲んでいます。しかもその相手がほとんど井山3冠であり、これまでの対戦成績では1勝3敗ペースで大きく負け越しており、今度こそ、の意気込みが強く感じられました。実際の対局もその余8段の意気込みが強く感じられ、井山3冠のお株を奪うような最強手を連発しました。特に井山3冠が右上方面での白のケイマに付け越す手を見て、左辺の白にシチョウアタリとして打った手に対し、そこで取られていた左上隅の白を動き出したのが良いタイミングで、結果として攻め取りにさせ、中央に厚みを築き、井山3冠の先ほどのシチョウアタリの手を悪手にしました。その後、そのシチョウアタリ周辺で激しい攻防が続き、劫になりましたが、白は緩まず最強の手を連発して劫に勝って種石を取っただけでなく、左下隅の黒も取ったため、50目レベルの地が付きました。これで完全に白のリードとなり、この後も対局は続きましたが白の応手は的確であり、結局白の中押し勝ちとなり、ついに余正麒8段が公式タイトルを獲得しました。こうなると余8段の7大タイトル獲得も遠くないように思います。

囲碁の可能性-AIの手は「正解」か?

NHK杯戦囲碁をずっと観ていて、解説者がAIが示した手を「正解」と言ったり、またプロ棋士が打った手がAI推奨の手と同じだったのを「すごい」とか言うのを聞く度にちょっと腹が立ちます。プロ棋士が自分で囲碁の可能性を否定してどうなるんだ、と思います。そこでChatGPT4oに現在の囲碁AIの実力レベルと将来の可能性について聞いてみました。なかなか興味深いです。
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囲碁AIについてです。かつて藤沢秀行名誉棋聖は、神様の碁を100としたら自身の碁のレベルはどのくらいか、という質問に最初「3から4」と答えてその後「2から3」に訂正しました。囲碁AIが考えつかないより良い手を人間が考えつくことはしばしばありますし、また囲碁AIは人間のプロ棋士なら比較的簡単に読める「攻め合い」を読むのが苦手であることは広く知られています。またAIが推奨する手というのは、相手の着手が比較的限定されている「読みやすい手」が多いように思います。囲碁AIの基礎技術はディープラーニングとモンテカルロ法と言われていますが、囲碁の手の数は361の階乗あり、モンテカルロ法といっても枝刈りをした限定的なモンテカルロ法に過ぎません。先ほどの藤沢秀行名誉棋聖への質問で言うなら現在の囲碁AIの実力は神様が100としたらどのくらいでしょうか?私はせいぜい10くらいだと思っています。
ChatGPT:
この問いは非常に興味深く、囲碁AIの本質的な限界を考える上で重要な視点です。
藤沢秀行名誉棋聖が自身の碁のレベルを「2から3」としたのは、人間の棋士としての自負を超えて、囲碁というゲームの計り知れない奥深さを感じていたからでしょう。そして、その尺度に照らしてAIを評価するならば、現在の最強の囲碁AI(例えばKataGoやLeela Zero)が「神様の100」にどれほど近づいているかを考える必要があります。
1. 囲碁AIの特徴と限界
AIは、局所的な最適手を探すのに優れている一方で、人間が本能的に感じ取る「全局的な調和」や「柔軟な形勢判断」には弱さを見せることがあります。
攻め合いや死活の読みが苦手な場面があり、特に部分的な複雑な戦いではミスを犯すこともある。
また、自己対局による学習のため、独自の「最適解」を見つけるが、それが必ずしも人間にとって「納得できる手」ではないこともある。

2. 神の碁を100とした場合の囲碁AIの評価
もし藤沢秀行名誉棋聖が「2から3」と自己評価したとすると、当時のトップ棋士が「5」くらいに位置すると考えるのが自然です。その上で、現在の囲碁AIの強さをどのように見るかが問題ですが、以下の点を考慮すると「せいぜい10くらい」というあなたの評価は十分に納得のいくものです。
計算能力の限界
AIはすべての可能性を計算するのではなく、枝刈りをした限定的なモンテカルロ法を使っているため、本質的には局所最適の探索にすぎません。
創造性の欠如
AIが考えつかない新しい手を人間が発見することは今でもあります。AlphaGoが生み出した「手法」は画期的でしたが、AI自体が「囲碁のすべて」を理解しているわけではありません。
「完璧な碁」との距離
現在のAIのレベルは人間のトッププロを凌駕するものの、「神様の100」に比べると、まだ局地戦の上手さが目立つレベルに留まっているとも言えます。
結論として、現状の最強AIのレベルは「神様の100」に対して10〜15程度と考えるのが妥当 ではないでしょうか。これは、AIが確かに人間を超えた部分はあるものの、囲碁そのものの全貌を完全に理解しているとは言い難いためです。
もし未来に、AIが全ての手の意味を完璧に理解し、攻め合いや死活の弱点を克服したとしても、それが100に到達するかどうかは疑問が残ります。囲碁というゲーム自体が、数学的にも未解決な奥深さを持っているからです。
 
あなた:
いつのか囲碁の全てが解明される日というのは来るのでしょうか?例えば量子コンピューターとかを使った場合で、時間制限を無くして可能な限り長時間考えさせて、とかで361の階乗の可能性は全て探索し尽くせるのでしょうか?
 
ChatGPT:
囲碁が完全解明される日は来るのか?
囲碁は、最も完全情報ゲームの中で計算量が大きい部類に入ります。確かに、量子コンピューターや超高性能計算機を使えば現在のAIより強いものは作れるかもしれませんが、それでも囲碁の全てを解明するのは極めて困難と考えられます。
 
1. 361!(階乗)の計算量の問題
囲碁のすべての可能手順を探索し尽くすというのは、361の階乗(361!)の組み合わせを全て計算することを意味します。しかし、この数は天文学的なオーダーです。
361! の規模感
361! ≈10^768
(これは、将棋の局面数と比較すると 桁違い に大きい)
宇宙に存在する原子の数(約10^80 個)よりも圧倒的に多い。
つまり、宇宙の全原子に一つずつコンピューターを載せて同時並行計算させたとしても、到底計算しきれない桁数 になります。
 
2. 量子コンピューターで解けるか?
量子コンピューターは指数関数的に並列計算が可能ですが、量子アルゴリズム(例えばグローバーのアルゴリズムやショアのアルゴリズム)が適用できる問題は限られています。
現在の量子コンピューターが得意な問題:
素因数分解(RSA暗号の解読)
量子シミュレーション(物理や化学の計算)
組合せ最適化問題(巡回セールスマン問題など)
囲碁の探索問題に特化した量子アルゴリズムはまだ存在せず、汎用的な量子コンピューターでは解決が難しいです。
また、仮に量子コンピューターで全探索が可能になったとしても、囲碁の「最適な打ち方」を証明するための計算量が莫大であるため、「現実的な時間で解く」のは困難 でしょう。
 
3. チェッカー(ドラフツ)は解明されたが、囲碁は?
実は、チェッカー(8×8のドラフツ)は2007年に完全解明され、最適プレイ同士の結果が「引き分け」と判明しました。しかし、これは盤面が小さいため可能だったのであり、将棋や囲碁とは比較にならないほど計算量が少ないゲームです。
囲碁の場合、最適なプレイが「勝ち」か「引き分け」か「負け」かすら証明されていない状態なので、チェッカーのように完全解明されるのは遥かに遠い未来の話になります。
 
4. 人間が直感的に「真理」を理解できる可能性
たとえコンピューターが囲碁の全探索を達成できたとしても、人間がそれを理解できるとは限りません。
例えば:
数学には「定理」と「証明」がありますが、ある定理が証明されても、その証明が極端に長く難解であれば、人間が直感的に納得できないこともあります。
囲碁の「最善手」がAIによって完全解明されたとしても、それがなぜ最善なのかを説明できない可能性があります。
実際、現在のAIの「最善手」も、人間には理解できないことが多いです。特にAlphaGoの「Masterバージョン」は、プロ棋士ですらその手の意味を完全に把握できないとされています。
 
結論:囲碁の完全解明は極めて難しい
計算量があまりにも膨大であるため、全探索は事実上不可能
量子コンピューターを使っても、現実的な時間で解けるとは限らない
仮に解けたとしても、人間がそれを理解できるかは別問題
したがって、囲碁のすべてを解明する日が来る可能性は極めて低い でしょう。ただし、「部分的な真理」が今後AIによって少しずつ解明されていくことは間違いありません。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 井山裕太3冠(2025年3月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が井山裕太3冠の対戦です。二人の対戦成績は何と1回だけで、阿含杯の決勝戦で平田8段が勝っています。対局内容は何と言うか平田8段らしさが満開というか、白が中央と右辺を全部取る大模様を張り、黒がそれ以外の周辺を全部取るという極端な碁形になりました。普通ここまでの大模様になる前に黒が入って行くのですが、平田8段はこれでも勝てるという信念だったようです。惜しかったのは下辺の攻防で黒が3線に打ちましたがAIが推奨していたように4線に打つ手は無かったのか、あるいはその後白がコスミツケたのに立っていればどうなったのか、そこが勝敗の分かれ目だったと思います。最終的には白地は110目超というなかなか見ないレベルになって、それでも白は1目半勝ちという微差でした。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 佐田篤史7段(2025年3月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が佐田篤史7段の対戦です。左上隅方面で、白石の眼がなくなって攻められたのですが、ここは白が上手くしのいで比較的大きな地をもって治りました。この碁の焦点はその後、黒が上辺で当たりを打ってさらに当てて行き、右上隅方面の白を切離したことで、その後はこの白のシノギが問題になりました。白は右上隅に斬り込んで捨て石で上辺で後手一眼を作る余地を残しつつ右辺に展開しましたが、黒がぴたりと白石の腹に付けて行った手が厳しく、白は右辺で完全に止められるのを嫌って断点を継がずに右辺を打ちましたが、結局黒に切られ、後手一眼しかなく、攻め合いに行きましたが中央の黒への包囲網も完全ではなく、最後は中央の白が取られてセキにもならず白が右上隅方面も取られてここで白の投了となりました。余正麒8段の決勝戦進出は2回目です。余8段は若き日の故加藤正夫9段のようにこれまでタイトルに手が届いていませんので、NHK杯戦優勝は狙っていると思います。

NHK杯戦囲碁 許家元9段 対 平田智也8段(2025年3月2日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が許家元9段、白番が平田智也8段の対局です。序盤で左辺の戦いで、白が左上隅から上辺で地を稼ぎ、黒が中央の白を攻めるという展開になりました。白は形を崩されながらも何とか左下隅方面の白とほぼつながりました。続けて黒が右上隅で上辺に向かって大ゲイマに打ったのに、白が三々に入って行きました。白はもちろん活きる手はありましたが、敢えて捨てて右辺での締め付けを狙いました。まだ右上隅は一手寄せ劫が残っていたので、これでまあバランスは取れていました。白はヨセ劫をすぐ決行しましたが、その途中で黒が下辺真ん中の星に打ち、その後左辺の白と左下隅の白の間を切っていく手を打ちました。ここから激しい戦いとなり、双方眼の無い石が2箇所ずつということになりました。黒は左下隅を劫に持ち込みましたが、劫材は白が多く、劫は白が勝ってここで形勢が白に振れました。黒はそれでも諦めずに中央の白を狙っていったのですが、下辺の黒が弱く、逆に白から分断されて結局ここも攻め合いになり、白が一手勝ちとなり白の中押し勝ちとなりました。平田8段はこれまで許9段に1勝8敗という大幅な負け越しでしたが、この前の対局で勝っており、これで連勝となりました。

NHK杯戦囲碁 佐田篤史7段 対 富士田明彦7段(2025年2月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が佐田篤史7段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。この対局では最初に上辺で戦いが起きましたが、結局白が右側の4子を捨てて打ったので左側に白地がまとまりましたが、まだ黒2子の逃げ出しも残っていて、やや黒がリードしました。その後白が下辺から中央にかけて大きな地模様を築き、その中の黒が活きるかどうか、という勝負になりました。ここで劫になりましたが、劫争いの最中で白は右辺でハサミツケを打ちました。この手は黒の右上隅方面を荒らすという意味で大きな手でしたが、やはりまだ下辺から中央の黒を狙っていった方が大きかったのではないかと思います。白は右辺方面で黒4子を取るなどの戦果を上げましたが、白は上辺左の白地が劫立てに受けなかった関係で大きく減っており、トータルでは黒が盤面10目ちょっとリードしたままでした。結局黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 一力遼4冠 対 井山裕太3冠(2025年2月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼4冠、白番が井山裕太3冠と事実上の決勝戦的な、かつ現在の囲碁界のトップ2の対戦でした。ただこの対局全体に渡って井山3冠の巧みな打ち回しが光り、右辺に入っていってすぐには活きには行かず、黒に攻めさせてからシノギに行き、結果的に黒の攻めを空振りさせたという印象で、白の巧みなシノギによって上辺にも右辺にも大きな黒地が付かなくなってしまいました。黒はその後下辺を開いてから左下隅に入っていって挽回を図りましたが、白が緩まず最強の手で左下隅を取り切り、後は左辺の攻防で黒が逆に切られて中央の白との攻め合いになりましたが、これも白は余裕でしのぎ、黒の投了となりました。一力遼4冠は最近多忙のせいか、棋聖戦でも井山裕太3冠相手に1勝3敗とカド番に追い込まれています。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 芝野虎丸9段(2025年2月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が芝野虎丸9段の対戦です。余9段はこれまで何度かタイトル戦に登場していますが、惜しくも後一歩届かないという感じですが、おそらく近い日にタイトルを取るかと思います。この碁では左辺での戦いが最初の焦点となり、白が左辺から中央に延びる黒を切断に行きました。結果的に黒が9子を捨てて中央を厚くするかと思いましたが、白は取りに行かずセキになりました。この別れは元々白の勢力圏だったことを考えると黒が上手くやったと思います。白はそれでもまず右下隅に入って地を稼いだ後、中央の黒を狙いながら切りを狙いました。しかし右下隅方面の黒の2箇所の切りがあったのを2線の方を先に切ったのがどうだったか、という感じで黒が思い切りよく上から当てて白が右辺に地を稼ぎましたが、黒は中央が厚くなって大石の心配がなくなりました。白はそれでも下辺に策動して、左下隅の黒を劫付きですが切離して追い上げました。左下隅は劫になりましたが、黒は劫を譲って上辺の白地を減らす順を選び、それでも黒の優勢のままでした。結局黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 表悠斗3段 対 許家元9段(2025年2月2日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が表悠斗3段、白番が許家元9段の対戦です。本局は何と言うか戦いが最初から最後までほとんどなかった中で、許9段が左辺から左下隅で2線の覗きを決めて、左下隅の黒に一手入れさせて一本取ったのと、右下隅方面への黒へのヨセで、割り込んでわざと1子取らせたのを下からも上からも二重に利かしに使うという小技を出して、それでリードを拡げたという感じで、結局白の5目半勝ちでした。黒は左上隅の三々に打ちこむチャンスが2回ありましたが、どちらでも決行しませんでした。もちろん手になったかどうかは分かりませんが、形勢が悪いのにそのまま淡々とヨセを打った、という印象です。表3段は17歳初出場で3回戦まで来れた、というのは立派ですが、こういう戦わない碁で上に行けるのかな、という気がします。トップの一人の井山裕太3冠がともかく目一杯の手を打つのをやはり参考にすべきではないかと思います。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 富士田明彦7段(2025年1月26日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が富士田明彦7段の対戦です。二人は去年のNHK杯戦でも同じ3回戦で当たり、その時は山下9段が勝っています。いつも新しい布石を見せてくれる山下9段が、左上隅で小目の白に対し5の5にかかるという手を披露したのですが、そこで白は受けずに右下隅で同じ位置に打ち返すという意地を見せました。そこから進んで焦点となったのは左上隅と左辺の戦いで、富士田7段が山下9段のお株を奪うように自分から仕掛けて黒を分断しました。その後の折衝でおそらく黒に疑問手があり、結局黒9子が攻め合いにもならず取られてしまい、また上辺で劫になりましたがこれも白が勝ち、併せて40目レベルの白の確定地が出来て白が優勢になりました。しかし黒が左下隅にかかった石を白が目一杯はさんだのがある意味打ち過ぎで、その後の折衝で黒が中央を厚くして上方の白を攻めながら右下隅方面の大模様をまとめる、という願ってもないチャンスが黒に来たのですが、黒はそのチャンスを逃してしまいます。白は上下2つの弱石をしのぐ必要がありましたが、両方を巧みにしのぎ、白の中押し勝ちになりました。富士田7段は昨年の雪辱を果たして準々決勝に進みました。