NHK杯戦囲碁 佐田篤史7段 対 富士田明彦7段(2025年2月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が佐田篤史7段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。この対局では最初に上辺で戦いが起きましたが、結局白が右側の4子を捨てて打ったので左側に白地がまとまりましたが、まだ黒2子の逃げ出しも残っていて、やや黒がリードしました。その後白が下辺から中央にかけて大きな地模様を築き、その中の黒が活きるかどうか、という勝負になりました。ここで劫になりましたが、劫争いの最中で白は右辺でハサミツケを打ちました。この手は黒の右上隅方面を荒らすという意味で大きな手でしたが、やはりまだ下辺から中央の黒を狙っていった方が大きかったのではないかと思います。白は右辺方面で黒4子を取るなどの戦果を上げましたが、白は上辺左の白地が劫立てに受けなかった関係で大きく減っており、トータルでは黒が盤面10目ちょっとリードしたままでした。結局黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 一力遼4冠 対 井山裕太3冠(2025年2月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼4冠、白番が井山裕太3冠と事実上の決勝戦的な、かつ現在の囲碁界のトップ2の対戦でした。ただこの対局全体に渡って井山3冠の巧みな打ち回しが光り、右辺に入っていってすぐには活きには行かず、黒に攻めさせてからシノギに行き、結果的に黒の攻めを空振りさせたという印象で、白の巧みなシノギによって上辺にも右辺にも大きな黒地が付かなくなってしまいました。黒はその後下辺を開いてから左下隅に入っていって挽回を図りましたが、白が緩まず最強の手で左下隅を取り切り、後は左辺の攻防で黒が逆に切られて中央の白との攻め合いになりましたが、これも白は余裕でしのぎ、黒の投了となりました。一力遼4冠は最近多忙のせいか、棋聖戦でも井山裕太3冠相手に1勝3敗とカド番に追い込まれています。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 芝野虎丸9段(2025年2月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が芝野虎丸9段の対戦です。余9段はこれまで何度かタイトル戦に登場していますが、惜しくも後一歩届かないという感じですが、おそらく近い日にタイトルを取るかと思います。この碁では左辺での戦いが最初の焦点となり、白が左辺から中央に延びる黒を切断に行きました。結果的に黒が9子を捨てて中央を厚くするかと思いましたが、白は取りに行かずセキになりました。この別れは元々白の勢力圏だったことを考えると黒が上手くやったと思います。白はそれでもまず右下隅に入って地を稼いだ後、中央の黒を狙いながら切りを狙いました。しかし右下隅方面の黒の2箇所の切りがあったのを2線の方を先に切ったのがどうだったか、という感じで黒が思い切りよく上から当てて白が右辺に地を稼ぎましたが、黒は中央が厚くなって大石の心配がなくなりました。白はそれでも下辺に策動して、左下隅の黒を劫付きですが切離して追い上げました。左下隅は劫になりましたが、黒は劫を譲って上辺の白地を減らす順を選び、それでも黒の優勢のままでした。結局黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 表悠斗3段 対 許家元9段(2025年2月2日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が表悠斗3段、白番が許家元9段の対戦です。本局は何と言うか戦いが最初から最後までほとんどなかった中で、許9段が左辺から左下隅で2線の覗きを決めて、左下隅の黒に一手入れさせて一本取ったのと、右下隅方面への黒へのヨセで、割り込んでわざと1子取らせたのを下からも上からも二重に利かしに使うという小技を出して、それでリードを拡げたという感じで、結局白の5目半勝ちでした。黒は左上隅の三々に打ちこむチャンスが2回ありましたが、どちらでも決行しませんでした。もちろん手になったかどうかは分かりませんが、形勢が悪いのにそのまま淡々とヨセを打った、という印象です。表3段は17歳初出場で3回戦まで来れた、というのは立派ですが、こういう戦わない碁で上に行けるのかな、という気がします。トップの一人の井山裕太3冠がともかく目一杯の手を打つのをやはり参考にすべきではないかと思います。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 富士田明彦7段(2025年1月26日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が富士田明彦7段の対戦です。二人は去年のNHK杯戦でも同じ3回戦で当たり、その時は山下9段が勝っています。いつも新しい布石を見せてくれる山下9段が、左上隅で小目の白に対し5の5にかかるという手を披露したのですが、そこで白は受けずに右下隅で同じ位置に打ち返すという意地を見せました。そこから進んで焦点となったのは左上隅と左辺の戦いで、富士田7段が山下9段のお株を奪うように自分から仕掛けて黒を分断しました。その後の折衝でおそらく黒に疑問手があり、結局黒9子が攻め合いにもならず取られてしまい、また上辺で劫になりましたがこれも白が勝ち、併せて40目レベルの白の確定地が出来て白が優勢になりました。しかし黒が左下隅にかかった石を白が目一杯はさんだのがある意味打ち過ぎで、その後の折衝で黒が中央を厚くして上方の白を攻めながら右下隅方面の大模様をまとめる、という願ってもないチャンスが黒に来たのですが、黒はそのチャンスを逃してしまいます。白は上下2つの弱石をしのぐ必要がありましたが、両方を巧みにしのぎ、白の中押し勝ちになりました。富士田7段は昨年の雪辱を果たして準々決勝に進みました。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 伊田篤史9段(2025年1月19日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が伊田篤史9段の対戦です。二人は同じ歳ということでしたが、何と公式戦では初対戦です。中盤までは白が思う存分打ち回してリードしたという印象で、特に上辺、左上隅、中央にかけての攻防で、白が上辺から左上隅を侵略するぞという手を利かしてすかさず次は中央に打ち、黒が固く受けると今度はまた上辺を打ち、ということで白が上辺の地をかなり得しました。対して黒は左辺に模様を作ったのですがここも白が上手く荒らして、地合では白が大きくリードしました。ここまでは白の圧勝という感じでしたが、その後白が優勢を意識して固い手を打ちすぎたのと、左辺上方で黒が白の2子に鼻ヅケしたのに、白がこの2子を捨てていれば白のリードのままでしたが、白が頑張って2子を助けた結果、白地が分断されここで形勢がややですが黒リードに変わりました。その後の黒の打ち振りは確実に勝ちを目指し、2つの劫が発生し最初の劫は譲ったものの、2番目の劫には勝ち、白はその代償に左上隅に手を付けましたが、黒を取ることは出来ずセキ止まりで、振り替わりは黒が儲けてリードを拡げました。結局黒の中押し勝ちとなりました。2人の持ち味が出た好対局でしたが、伊田9段としては初対局ということで平田8段の末脚の棋風をちょっと軽く見ていた感じがしました。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 呉柏毅6段(2025年1月12日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が呉柏毅6段の対戦です。両者台湾出身の関西棋院であり、対戦成績も余8段から見て3勝2敗と拮抗しています。この碁の焦点は右下隅から右辺で、白が隅からハネ継いで黒が下辺とタケフでつながったのに対し、白が右辺の黒の傷を覗いてそこから白が右辺に展開しました。白は軽く更に上辺にも入って行きましたが、結果から見るとこの打ち方が薄く、黒に間を裂かれて絡み攻めにされました。白は取り敢えず上辺の石は中央に出てくつろげましたが、黒は右辺の白を本気で取りに行きました。黒が出た時に白が一間に飛んだのが悪手でこれで白の眼形が一気に無くなりました。白は劫にしてねばり、また中央の黒への逆襲も狙いましたが、すべて上手く行かず右辺の白が取られて黒地がここだけで約70目となり、白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 井山裕太3冠(2025年1月5日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が井山裕太3冠の対戦です。(ちなみに今年は囲碁のお正月特番が無かったです。将棋はちゃんとあったのに。残念。)布石は白が左上隅でかかったまま手を抜いていた黒を大きく取り込む構えを見せ、地合は白がリード気味でスタートしました。その後白が右上隅の黒の星からの小ゲイマ締まりに肩をついて黒がすべったのに今度は右辺に入り、それを黒が裂いていって、という戦いになりました。この戦いの中で右下隅にどちらが先に回るかが勝負でしたが、結局白がかかることになりました。ここの折衝で白は右下隅に大きな地を取りました。黒は代償で右辺に取り残された白5子を取れていれば互角でしたが、白は堂々と逃げ出しました。この白のシノギで黒の中央のダメが詰まっていて傷があるのが災いし、結局黒はこの白を取ることも、他で大きな戦果を上げることも出来ず、最後は中央の包囲している黒が取られてしまって、12目ぐらいの地を持って白に治られてしまっては、黒が勝てない碁になりました。結局白の中押し勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 佐田篤史7段(2024年12月29日放送分)


12月29日(日)のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が佐田篤史7段の対戦です。(旅行のためNKH+で後から視聴)布石では上辺の白の模様と黒の右辺から中央の模様が対抗形になりましたが、黒は上辺の白を押していってそちらを地として確定させ、中央を厚くして模様を拡げました。しかし右辺で白から大々ゲイマに開いて2線に潜るのが切れそうで切れない手で、これによって黒地が値切られてしまい、ここで白が一歩リードしました。しかしその後左辺から延びる白と黒の石で、中央で大きな劫争いが始りました。この劫は中央の勢力争いと左辺のそれぞれの石の死活で非常に大きく、黒は右辺の白を分断する手を劫材にし、白は劫材がないので劫を解消しました。この結果先の局面で折角黒地を値切った白がほぼ取られになりましたが、白はこの一団を活きに行き、また右上隅で劫が始りました。この劫は黒が勝って右辺を地として確定させ、白は右下隅を2手連打し、ここでまた劫が始りました。黒はこの劫は譲ってヨセ勝負に持ち込もうとしましたが、この時、左下隅をきちんと活きておけば黒がわずかながらに優勢だったようです。しかし黒は形勢が難しいと思っていたのか、結局左下隅が劫になり、白はこれに勝って地合がわずかながらですが白優勢になりました。結局黒の投了となりました。劫がめまぐるしく移り変わっていく、という面白い碁でした。

NHK杯戦囲碁 一力遼4冠王 対 広瀬優一7段(2024年12月22日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼4冠王、白番が広瀬優一7段の対戦です。普通に考えると一力4冠王の勝ちを予想し、広瀬7段がどこまで食い下がれるかと思っていましたが、直近の早碁の対戦で広瀬7段が一力4冠王を半目勝ちで破っているとのことで、楽しみな対戦になりました。対戦は右下隅で白が三々に入り、這った後一間に飛んだので、黒から出切りからシチョウに抱える手があり、黒は左上隅の白の断点をシチョウアタリで覗きました。白はこれに対して右下隅に手を入れましたので、黒は左上隅の白を切っていきました。これでもつれた戦いになりましたが、白が上辺で2子を捨て石にして締め付けて、左側の白のハネだしの弱点を補おうとしたのに対し、黒が切って2子を取りに行かず、上辺の左側の黒から3線に曲った手がAIも予想していなかった好手で、結果として劫になり、振り替わりで黒は右側の白を大きく取り込み、優勢になりました。しかし白は諦めずに、かなり無理気味ですがこの取られ気味の白を活きに行きました。結局劫にはなり、また黒が劫立ての手でやや譲り気味の手を打った結果、白は何とか活きることが出来ました。しかし黒も右下隅を取った上に全体に厚いので、黒の優勢は続いていました。最後に白は上辺から延びる黒の大石を狙いましたが、包囲している白にも眼がなく攻め合いであり、黒の手数が2手ほど長いため、白の投了となりました。しかし劣勢になってからの白の頑張りは見応えがありました。