本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が孫喆7段、白番が上野愛咲美女流名人の対戦でした。序盤左上隅は白が掛かった黒を一間に挟み、白が掛けて黒が出切ってという展開ですが、双方一子を制して穏やかに別れました、その後白が右上隅に付けていって上辺を這って地を稼ぎという展開で、更に右下隅→左下隅・下辺方面と戦いが続きました。結局黒が下辺から右下隅で35目くらいの大きな地をまとめ、対して白は中央が厚く、中央にどのくらい地が付くかの勝負でした。その中央の攻防で黒が上辺左の白に利かしに行ったのに白が反発して、ここでも戦いになりました。その間白が妥協した手を打ったため、黒の言い分が通った形で黒が中央の白地をかなり削減出来たため、形勢は黒に傾きました。さらに中央下方でも黒がのぞいて行って白が反発してでここも難しい戦いになりましたが、ここでも白が頑張りきれなくて妥協した手を打ったため、形勢は黒優勢のままでした。とはいえ細かい差でありヨセでの攻防が続きましたが、黒が最後半劫を譲って半目勝ちに手堅くまとめて勝ちきりました。
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NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 小山空也7段(2025年5月18日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が洪爽義5段、白番が小山空也7段の対戦です。小山7段は3度目の出場で初勝利を狙っています。この二人の対戦は、なかなか本格的な戦いにならず、少し打ち合っては離れてというボクシングで言えばヒット&アウェーみたいな戦いが続きました。ただ黒が右辺から中央の戦いで白を切りに行ったのが少しどうかという感じで逆に黒の弱石が中央に出来ました。そうなると白の左辺の模様が効いてきて、その後黒が左辺中央の白に付けていって侵入を図りましたが、中で活きることは出来ず中央につながるのがやっとで、白は左辺ぶっ通しで45目ぐらいの地をまとめ、ここで白のリードとなりました。黒はその後辛抱しながら大ヨセを打ち続けチャンスをうかがい、上辺から中央の白の薄みを付いていく勝負手を放ちました。ここで白が慌てず騒がず白6子くらいを捨てて収束したのが冷静で、白がその前に黒の中央の5子くらいを切り離す手を打っていましたので、ここのやり取りではほとんど形勢は動かず、結局白の中押し勝ちになりました。小山7段は嬉しいNHK杯戦初勝利でした。
NHK杯戦囲碁 福岡航太朗7段 対 張瑞傑6段(2025年5月11日放送分)
本日のNHK杯戦囲碁は黒番が福岡航太朗7段、白番が張瑞傑6段の対戦です。福岡7段は初出場の頃はニキビの高校生でしたが、すっかり貫禄が付いて来たようです。この碁の焦点は何といっても左辺から中央にかけての戦いで、双方左辺の石が眼が無かったのを、白が活きた後、黒も白3子を取り込んで活きましたが、その後中央の攻防になりましたが、ここで白の手順に不備があったようで、正しく白が打っていたら黒の中央がかなり危なかったようです。しかし白の手順前後のため黒は白2子を取って連絡し、これだと左辺の得の分はっきり黒のリードとなりました。その後白が右下隅の黒に手を付けましたが、ヨセコウ程度以上の手はありませんでした。逆に黒から左上隅に手を付けられ地をもって活きられては地合で大差となり、白の投了となりました。
NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流棋聖 対 大竹優7段(2025年5月4日放送分)
本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が上野愛咲美女流棋聖、白番が大竹優7段の対戦でした。この碁では左辺の戦いが全てで、白が左辺で黒の横に付けていってから、お互いが最強の手を繰り出した結果、白からも黒からも劫に仕掛ける手が発生するという面白い形になり、白が劫を仕掛けました。黒は右下隅の白を全部取るぞ、という手を劫立てに使いましたが、白は黒6子を打ち抜いて劫を解消しました。その後白が右下隅の白の一団をじたばたせず捨てたのが好判断だったようで、これでわずかですが白がリードしました。それでも黒は粘り、中央の残った黒を策動してその結果として半分取られていた左下隅を復活させました。更に左上方面の白の巨大な地に突入し、活きを図りましたが、さすがに上野女流棋聖の豪腕をもってもこれは無理で、結局左上隅の劫で黒が小さく活きる手が残っただけで後は討ち死にしました。その左上隅の劫も白が勝ってこれで形勢はかなり白がリードになりました。その後ヨセでも白は得を重ね、結果として白の12目半勝ちとなりました。黒としては左辺の戦い、もっと時間があれば別の道も選べたのでしょうが、早碁で最強に走ると途中で止めるのが不可能になります。それに対して白は再三冷静な手を見せ、それが勝利につながりました。
NHK杯戦囲碁 佐田篤史7段 対 河野臨9段(2025年4月27日放送分)
本日のNHK杯戦囲碁は黒番が佐田篤史7段、白番が河野臨9段の対戦でした。この碁では黒が実利に走り、四隅を取って更に左辺を通しで40目以上の地としました。対して白は厚く打ち過ぎて少し遅れた感じで黒がリードの状態で中盤に入りました。黒は下辺方面から右辺にかけての白地に入っていかず敢えて白に囲わせました。その後中央の白地がどうまとまるかの攻防で黒は2手疑問手を打ち、しかもその2手がある意味バラバラで、最初に黒はすぐ継ぐ必要の無い所を継いで白は受けなかったのですが、そう打ったなら黒は出ていって白に断点を作るべきだったと思います。それをしなかったため上辺の黒は一方的に攻められ、結局劫にはなったものの、白から劫材を右上隅に求められ、全部取られてしまいました。右上隅も劫になってここは何とか黒が勝ったものの、中央の残った黒も風前の灯火となり、黒がその後何とか打開を図りましたが結局全部死んでしまい、黒の投了となりました。
NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁5段 対 横塚力7段(2025年4月20日放送分)
本日のNHK杯戦囲碁は黒番が辻󠄀篤仁5段、白番が横塚力7段の対戦です。この碁は本当にスリリングな展開でした。右下隅~下辺~中央で戦いが起き、中央が劫になったのですが、この結果黒は下辺の白6子を取込かつ下辺の白地を消したため、白が中央がやや厚くなったとはいえ、黒のリードになりました。白はそれでも左上隅方面から地模様を拡げようとしましたが、黒はここも的確に打ってリードを維持しました。白が勝負手で右上隅方面に入っていく手を打ち、また劫になりました。この勝負手が成功し、白は上辺での渡りが断たれたものの、右辺に進出出来、ここで眼を持って原形からすると白が大成功した形になりました。しかしそれでもまだ黒が良かったのですが、最後黒が左辺で頑張り過ぎ、中央の黒石を切断されて眼がなくなり、中央の黒の大石が頓死して白の大逆転勝利となりました。横塚力7段の最後まで諦めない粘りが勝利につながりました。
NHK杯戦囲碁 鈴木伸二8段 対 六浦雄太8段(2025年4月13日放送分)
本日のNHK杯戦囲碁は黒番が鈴木伸二8段、白番が六浦雄太8段の対戦です。序盤右上隅の攻防で、左下隅でのシチョウアタリが問題になり、黒が左下隅で当てたのに白が継ぐとシチョウの逃げ出しが成立するところで、白は敢えて継ぎ、黒のシチョウ逃げ出しとなりました。白はこの結果両側が薄くなり、また分断した黒は逃げ出すことが丁度下辺の白模様を消すことになり、ここで黒リードになりました。しかし白はその後頑張って下辺の白模様を目一杯拡げました。そこに黒が深く入っていき、これでしのげれば黒の勝ち、取れれば白の勝ちという勝負になりました。ここの折衝は結局白が黒2箇所を取り込み、黒は中央から下辺に侵入出来たものの、ここで形勢は互角に戻りました。そして残った左辺の攻防で、白が左辺の黒1子を抜いて中央で攻め合いに持ち込めば白が勝つ可能性が高かったですが、実戦心理としてそこまでは踏み込めず、結局黒の3目半勝ちに終わりました。
NHK杯戦囲碁 表悠斗3段 対 羽根直樹9段(2025年4月6日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、新しい年度になっての第1回戦です。黒番が表悠斗3段、白番が羽根直樹9段と新鋭対ベテランの対戦でした。内容は、黒が左辺の白を攻めながら右辺に大きな模様を築きました。白は入って行きましたが、ちょっと白のシノギに誤算があったようで、黒は白2子をいい形で取りながら右辺を大きくまとめここで黒がリードしました。しかし白は下辺で黒が受けずに地だけの手を打ったのに対して上手く下辺を荒らし、ここで形勢は微細になりました。途中白が左辺から下辺に延びる石を切る手があり、これを決行していたら黒があちらこちらで薄く、白の勝機があったように思います。終盤は息詰まるヨセ勝負でしたが、黒が最後半劫を継いで半目勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 井山裕太3冠 対 余正麒8段(決勝戦、2025年3月23日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁はいよいよ決勝戦で、黒番が井山裕太3冠、白番が余正麒8段の対戦です。余8段は8段なのが本当に不思議という感じで、これまで何度もタイトル戦に登場し後一歩で涙を飲んでいます。しかもその相手がほとんど井山3冠であり、これまでの対戦成績では1勝3敗ペースで大きく負け越しており、今度こそ、の意気込みが強く感じられました。実際の対局もその余8段の意気込みが強く感じられ、井山3冠のお株を奪うような最強手を連発しました。特に井山3冠が右上方面での白のケイマに付け越す手を見て、左辺の白にシチョウアタリとして打った手に対し、そこで取られていた左上隅の白を動き出したのが良いタイミングで、結果として攻め取りにさせ、中央に厚みを築き、井山3冠の先ほどのシチョウアタリの手を悪手にしました。その後、そのシチョウアタリ周辺で激しい攻防が続き、劫になりましたが、白は緩まず最強の手を連発して劫に勝って種石を取っただけでなく、左下隅の黒も取ったため、50目レベルの地が付きました。これで完全に白のリードとなり、この後も対局は続きましたが白の応手は的確であり、結局白の中押し勝ちとなり、ついに余正麒8段が公式タイトルを獲得しました。こうなると余8段の7大タイトル獲得も遠くないように思います。