NHK杯戦囲碁 福岡航太朗7段 対 張瑞傑6段(2025年5月11日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が福岡航太朗7段、白番が張瑞傑6段の対戦です。福岡7段は初出場の頃はニキビの高校生でしたが、すっかり貫禄が付いて来たようです。この碁の焦点は何といっても左辺から中央にかけての戦いで、双方左辺の石が眼が無かったのを、白が活きた後、黒も白3子を取り込んで活きましたが、その後中央の攻防になりましたが、ここで白の手順に不備があったようで、正しく白が打っていたら黒の中央がかなり危なかったようです。しかし白の手順前後のため黒は白2子を取って連絡し、これだと左辺の得の分はっきり黒のリードとなりました。その後白が右下隅の黒に手を付けましたが、ヨセコウ程度以上の手はありませんでした。逆に黒から左上隅に手を付けられ地をもって活きられては地合で大差となり、白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流棋聖 対 大竹優7段(2025年5月4日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が上野愛咲美女流棋聖、白番が大竹優7段の対戦でした。この碁では左辺の戦いが全てで、白が左辺で黒の横に付けていってから、お互いが最強の手を繰り出した結果、白からも黒からも劫に仕掛ける手が発生するという面白い形になり、白が劫を仕掛けました。黒は右下隅の白を全部取るぞ、という手を劫立てに使いましたが、白は黒6子を打ち抜いて劫を解消しました。その後白が右下隅の白の一団をじたばたせず捨てたのが好判断だったようで、これでわずかですが白がリードしました。それでも黒は粘り、中央の残った黒を策動してその結果として半分取られていた左下隅を復活させました。更に左上方面の白の巨大な地に突入し、活きを図りましたが、さすがに上野女流棋聖の豪腕をもってもこれは無理で、結局左上隅の劫で黒が小さく活きる手が残っただけで後は討ち死にしました。その左上隅の劫も白が勝ってこれで形勢はかなり白がリードになりました。その後ヨセでも白は得を重ね、結果として白の12目半勝ちとなりました。黒としては左辺の戦い、もっと時間があれば別の道も選べたのでしょうが、早碁で最強に走ると途中で止めるのが不可能になります。それに対して白は再三冷静な手を見せ、それが勝利につながりました。

NHK杯戦囲碁 佐田篤史7段 対 河野臨9段(2025年4月27日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が佐田篤史7段、白番が河野臨9段の対戦でした。この碁では黒が実利に走り、四隅を取って更に左辺を通しで40目以上の地としました。対して白は厚く打ち過ぎて少し遅れた感じで黒がリードの状態で中盤に入りました。黒は下辺方面から右辺にかけての白地に入っていかず敢えて白に囲わせました。その後中央の白地がどうまとまるかの攻防で黒は2手疑問手を打ち、しかもその2手がある意味バラバラで、最初に黒はすぐ継ぐ必要の無い所を継いで白は受けなかったのですが、そう打ったなら黒は出ていって白に断点を作るべきだったと思います。それをしなかったため上辺の黒は一方的に攻められ、結局劫にはなったものの、白から劫材を右上隅に求められ、全部取られてしまいました。右上隅も劫になってここは何とか黒が勝ったものの、中央の残った黒も風前の灯火となり、黒がその後何とか打開を図りましたが結局全部死んでしまい、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁5段 対 横塚力7段(2025年4月20日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が辻󠄀篤仁5段、白番が横塚力7段の対戦です。この碁は本当にスリリングな展開でした。右下隅~下辺~中央で戦いが起き、中央が劫になったのですが、この結果黒は下辺の白6子を取込かつ下辺の白地を消したため、白が中央がやや厚くなったとはいえ、黒のリードになりました。白はそれでも左上隅方面から地模様を拡げようとしましたが、黒はここも的確に打ってリードを維持しました。白が勝負手で右上隅方面に入っていく手を打ち、また劫になりました。この勝負手が成功し、白は上辺での渡りが断たれたものの、右辺に進出出来、ここで眼を持って原形からすると白が大成功した形になりました。しかしそれでもまだ黒が良かったのですが、最後黒が左辺で頑張り過ぎ、中央の黒石を切断されて眼がなくなり、中央の黒の大石が頓死して白の大逆転勝利となりました。横塚力7段の最後まで諦めない粘りが勝利につながりました。

NHK杯戦囲碁 鈴木伸二8段 対 六浦雄太8段(2025年4月13日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が鈴木伸二8段、白番が六浦雄太8段の対戦です。序盤右上隅の攻防で、左下隅でのシチョウアタリが問題になり、黒が左下隅で当てたのに白が継ぐとシチョウの逃げ出しが成立するところで、白は敢えて継ぎ、黒のシチョウ逃げ出しとなりました。白はこの結果両側が薄くなり、また分断した黒は逃げ出すことが丁度下辺の白模様を消すことになり、ここで黒リードになりました。しかし白はその後頑張って下辺の白模様を目一杯拡げました。そこに黒が深く入っていき、これでしのげれば黒の勝ち、取れれば白の勝ちという勝負になりました。ここの折衝は結局白が黒2箇所を取り込み、黒は中央から下辺に侵入出来たものの、ここで形勢は互角に戻りました。そして残った左辺の攻防で、白が左辺の黒1子を抜いて中央で攻め合いに持ち込めば白が勝つ可能性が高かったですが、実戦心理としてそこまでは踏み込めず、結局黒の3目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 表悠斗3段 対 羽根直樹9段(2025年4月6日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、新しい年度になっての第1回戦です。黒番が表悠斗3段、白番が羽根直樹9段と新鋭対ベテランの対戦でした。内容は、黒が左辺の白を攻めながら右辺に大きな模様を築きました。白は入って行きましたが、ちょっと白のシノギに誤算があったようで、黒は白2子をいい形で取りながら右辺を大きくまとめここで黒がリードしました。しかし白は下辺で黒が受けずに地だけの手を打ったのに対して上手く下辺を荒らし、ここで形勢は微細になりました。途中白が左辺から下辺に延びる石を切る手があり、これを決行していたら黒があちらこちらで薄く、白の勝機があったように思います。終盤は息詰まるヨセ勝負でしたが、黒が最後半劫を継いで半目勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 井山裕太3冠 対 余正麒8段(決勝戦、2025年3月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁はいよいよ決勝戦で、黒番が井山裕太3冠、白番が余正麒8段の対戦です。余8段は8段なのが本当に不思議という感じで、これまで何度もタイトル戦に登場し後一歩で涙を飲んでいます。しかもその相手がほとんど井山3冠であり、これまでの対戦成績では1勝3敗ペースで大きく負け越しており、今度こそ、の意気込みが強く感じられました。実際の対局もその余8段の意気込みが強く感じられ、井山3冠のお株を奪うような最強手を連発しました。特に井山3冠が右上方面での白のケイマに付け越す手を見て、左辺の白にシチョウアタリとして打った手に対し、そこで取られていた左上隅の白を動き出したのが良いタイミングで、結果として攻め取りにさせ、中央に厚みを築き、井山3冠の先ほどのシチョウアタリの手を悪手にしました。その後、そのシチョウアタリ周辺で激しい攻防が続き、劫になりましたが、白は緩まず最強の手を連発して劫に勝って種石を取っただけでなく、左下隅の黒も取ったため、50目レベルの地が付きました。これで完全に白のリードとなり、この後も対局は続きましたが白の応手は的確であり、結局白の中押し勝ちとなり、ついに余正麒8段が公式タイトルを獲得しました。こうなると余8段の7大タイトル獲得も遠くないように思います。

囲碁の可能性-AIの手は「正解」か?

NHK杯戦囲碁をずっと観ていて、解説者がAIが示した手を「正解」と言ったり、またプロ棋士が打った手がAI推奨の手と同じだったのを「すごい」とか言うのを聞く度にちょっと腹が立ちます。プロ棋士が自分で囲碁の可能性を否定してどうなるんだ、と思います。そこでChatGPT4oに現在の囲碁AIの実力レベルと将来の可能性について聞いてみました。なかなか興味深いです。
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囲碁AIについてです。かつて藤沢秀行名誉棋聖は、神様の碁を100としたら自身の碁のレベルはどのくらいか、という質問に最初「3から4」と答えてその後「2から3」に訂正しました。囲碁AIが考えつかないより良い手を人間が考えつくことはしばしばありますし、また囲碁AIは人間のプロ棋士なら比較的簡単に読める「攻め合い」を読むのが苦手であることは広く知られています。またAIが推奨する手というのは、相手の着手が比較的限定されている「読みやすい手」が多いように思います。囲碁AIの基礎技術はディープラーニングとモンテカルロ法と言われていますが、囲碁の手の数は361の階乗あり、モンテカルロ法といっても枝刈りをした限定的なモンテカルロ法に過ぎません。先ほどの藤沢秀行名誉棋聖への質問で言うなら現在の囲碁AIの実力は神様が100としたらどのくらいでしょうか?私はせいぜい10くらいだと思っています。
ChatGPT:
この問いは非常に興味深く、囲碁AIの本質的な限界を考える上で重要な視点です。
藤沢秀行名誉棋聖が自身の碁のレベルを「2から3」としたのは、人間の棋士としての自負を超えて、囲碁というゲームの計り知れない奥深さを感じていたからでしょう。そして、その尺度に照らしてAIを評価するならば、現在の最強の囲碁AI(例えばKataGoやLeela Zero)が「神様の100」にどれほど近づいているかを考える必要があります。
1. 囲碁AIの特徴と限界
AIは、局所的な最適手を探すのに優れている一方で、人間が本能的に感じ取る「全局的な調和」や「柔軟な形勢判断」には弱さを見せることがあります。
攻め合いや死活の読みが苦手な場面があり、特に部分的な複雑な戦いではミスを犯すこともある。
また、自己対局による学習のため、独自の「最適解」を見つけるが、それが必ずしも人間にとって「納得できる手」ではないこともある。

2. 神の碁を100とした場合の囲碁AIの評価
もし藤沢秀行名誉棋聖が「2から3」と自己評価したとすると、当時のトップ棋士が「5」くらいに位置すると考えるのが自然です。その上で、現在の囲碁AIの強さをどのように見るかが問題ですが、以下の点を考慮すると「せいぜい10くらい」というあなたの評価は十分に納得のいくものです。
計算能力の限界
AIはすべての可能性を計算するのではなく、枝刈りをした限定的なモンテカルロ法を使っているため、本質的には局所最適の探索にすぎません。
創造性の欠如
AIが考えつかない新しい手を人間が発見することは今でもあります。AlphaGoが生み出した「手法」は画期的でしたが、AI自体が「囲碁のすべて」を理解しているわけではありません。
「完璧な碁」との距離
現在のAIのレベルは人間のトッププロを凌駕するものの、「神様の100」に比べると、まだ局地戦の上手さが目立つレベルに留まっているとも言えます。
結論として、現状の最強AIのレベルは「神様の100」に対して10〜15程度と考えるのが妥当 ではないでしょうか。これは、AIが確かに人間を超えた部分はあるものの、囲碁そのものの全貌を完全に理解しているとは言い難いためです。
もし未来に、AIが全ての手の意味を完璧に理解し、攻め合いや死活の弱点を克服したとしても、それが100に到達するかどうかは疑問が残ります。囲碁というゲーム自体が、数学的にも未解決な奥深さを持っているからです。
 
あなた:
いつのか囲碁の全てが解明される日というのは来るのでしょうか?例えば量子コンピューターとかを使った場合で、時間制限を無くして可能な限り長時間考えさせて、とかで361の階乗の可能性は全て探索し尽くせるのでしょうか?
 
ChatGPT:
囲碁が完全解明される日は来るのか?
囲碁は、最も完全情報ゲームの中で計算量が大きい部類に入ります。確かに、量子コンピューターや超高性能計算機を使えば現在のAIより強いものは作れるかもしれませんが、それでも囲碁の全てを解明するのは極めて困難と考えられます。
 
1. 361!(階乗)の計算量の問題
囲碁のすべての可能手順を探索し尽くすというのは、361の階乗(361!)の組み合わせを全て計算することを意味します。しかし、この数は天文学的なオーダーです。
361! の規模感
361! ≈10^768
(これは、将棋の局面数と比較すると 桁違い に大きい)
宇宙に存在する原子の数(約10^80 個)よりも圧倒的に多い。
つまり、宇宙の全原子に一つずつコンピューターを載せて同時並行計算させたとしても、到底計算しきれない桁数 になります。
 
2. 量子コンピューターで解けるか?
量子コンピューターは指数関数的に並列計算が可能ですが、量子アルゴリズム(例えばグローバーのアルゴリズムやショアのアルゴリズム)が適用できる問題は限られています。
現在の量子コンピューターが得意な問題:
素因数分解(RSA暗号の解読)
量子シミュレーション(物理や化学の計算)
組合せ最適化問題(巡回セールスマン問題など)
囲碁の探索問題に特化した量子アルゴリズムはまだ存在せず、汎用的な量子コンピューターでは解決が難しいです。
また、仮に量子コンピューターで全探索が可能になったとしても、囲碁の「最適な打ち方」を証明するための計算量が莫大であるため、「現実的な時間で解く」のは困難 でしょう。
 
3. チェッカー(ドラフツ)は解明されたが、囲碁は?
実は、チェッカー(8×8のドラフツ)は2007年に完全解明され、最適プレイ同士の結果が「引き分け」と判明しました。しかし、これは盤面が小さいため可能だったのであり、将棋や囲碁とは比較にならないほど計算量が少ないゲームです。
囲碁の場合、最適なプレイが「勝ち」か「引き分け」か「負け」かすら証明されていない状態なので、チェッカーのように完全解明されるのは遥かに遠い未来の話になります。
 
4. 人間が直感的に「真理」を理解できる可能性
たとえコンピューターが囲碁の全探索を達成できたとしても、人間がそれを理解できるとは限りません。
例えば:
数学には「定理」と「証明」がありますが、ある定理が証明されても、その証明が極端に長く難解であれば、人間が直感的に納得できないこともあります。
囲碁の「最善手」がAIによって完全解明されたとしても、それがなぜ最善なのかを説明できない可能性があります。
実際、現在のAIの「最善手」も、人間には理解できないことが多いです。特にAlphaGoの「Masterバージョン」は、プロ棋士ですらその手の意味を完全に把握できないとされています。
 
結論:囲碁の完全解明は極めて難しい
計算量があまりにも膨大であるため、全探索は事実上不可能
量子コンピューターを使っても、現実的な時間で解けるとは限らない
仮に解けたとしても、人間がそれを理解できるかは別問題
したがって、囲碁のすべてを解明する日が来る可能性は極めて低い でしょう。ただし、「部分的な真理」が今後AIによって少しずつ解明されていくことは間違いありません。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 井山裕太3冠(2025年3月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が井山裕太3冠の対戦です。二人の対戦成績は何と1回だけで、阿含杯の決勝戦で平田8段が勝っています。対局内容は何と言うか平田8段らしさが満開というか、白が中央と右辺を全部取る大模様を張り、黒がそれ以外の周辺を全部取るという極端な碁形になりました。普通ここまでの大模様になる前に黒が入って行くのですが、平田8段はこれでも勝てるという信念だったようです。惜しかったのは下辺の攻防で黒が3線に打ちましたがAIが推奨していたように4線に打つ手は無かったのか、あるいはその後白がコスミツケたのに立っていればどうなったのか、そこが勝敗の分かれ目だったと思います。最終的には白地は110目超というなかなか見ないレベルになって、それでも白は1目半勝ちという微差でした。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 佐田篤史7段(2025年3月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が佐田篤史7段の対戦です。左上隅方面で、白石の眼がなくなって攻められたのですが、ここは白が上手くしのいで比較的大きな地をもって治りました。この碁の焦点はその後、黒が上辺で当たりを打ってさらに当てて行き、右上隅方面の白を切離したことで、その後はこの白のシノギが問題になりました。白は右上隅に斬り込んで捨て石で上辺で後手一眼を作る余地を残しつつ右辺に展開しましたが、黒がぴたりと白石の腹に付けて行った手が厳しく、白は右辺で完全に止められるのを嫌って断点を継がずに右辺を打ちましたが、結局黒に切られ、後手一眼しかなく、攻め合いに行きましたが中央の黒への包囲網も完全ではなく、最後は中央の白が取られてセキにもならず白が右上隅方面も取られてここで白の投了となりました。余正麒8段の決勝戦進出は2回目です。余8段は若き日の故加藤正夫9段のようにこれまでタイトルに手が届いていませんので、NHK杯戦優勝は狙っていると思います。