NHK杯戦囲碁 許家元碁聖 対 上野愛咲美2段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が許家元8段、白番が上野愛咲美2段の、今打てているバリバリの2人の対戦です。特に許家元8段はついこの間井山裕太7冠王から碁聖のタイトルを3-0のストレートで奪取したばかりです。乗っている若手同士の対局は実に面白く。特に下辺から黒が左下隅に利かしに行った時、白が反発して黒に対しノゾキを決行したのに黒が更に反発して下辺右からの白にノゾキ返した所が実に面白い攻防でした。下辺の攻防は互角だったと思いますが、白が左辺の黒を攻めに行った時に黒はただ逃げるのではなく、左下隅と中央の白の連絡の不備をとがめて、下辺の黒からじっと伸びを打ちました。これが俗手のように見えて厳しい実戦的な好手でした。白の中央は切り離されて弱くなり、また左下隅も手を入れないと黒から劫にする手があり、結局後手を引いたのは痛く、黒が明らかにポイントを上げました。その後中央の攻防で、中央の白が完全に黒に包囲される寸前というタイミングで、白は下辺を出ましたが、黒は受けずに中央を伸びきり、白が下辺の黒4子を取り、黒が中央の白をほぼ取るという振り替わりになりました。その後白は下辺右から延びる白を攻めたてられ、その間に黒は白に2カ所でノゾキを打って右辺を地にし、更に中央も厚くなったので中央の白が完全に取られました。また、黒はそれでも緩まず左上隅に手を付けていきました。白はこの黒を攻めながら上辺を目一杯囲おうとしましたが、黒は緩まず白に切りを入れました。白はその切った黒を大きく取ろうとしましたがうまく行かず、ここで白の投了となりました。

安斎伸彰7段の「決定版!囲碁9路盤完全ガイド」

安斎伸彰7段の「決定版!囲碁9路盤完全ガイド」を読了しました。私は、囲碁の基本トレーニングとしてずっとAI(最近は「天頂の囲碁(Zen)」)との9路盤対局を繰り返してきました。9路盤で19路盤の布石の勉強をするのはほぼ不可能ですが、接近戦や死活のトレーニングとしては9路盤は非常に優れていると思います。最近、「トライボーディアン」という、囲碁9路盤、将棋、オセロの3つの異なるボードゲームを同時に行う大会が行われており、以前より9路盤への関心が高まっているようで、そこにこの本が登場しました。黒の初手を「天元」「星」「高目」の3つに限定し、初手以降の変化手順を研究したものです。しかし、9路盤とはいえ、一つの図の手順はそれなりに長く、私の棋力ではちょっと変化を追い切れない感じです。また「完全ガイド」となっていますが、AIが打ってくる手を全て網羅しているものでもありません。19路盤に比べて石が置ける場所はわずか81箇所に過ぎませんが、それでも変化は膨大であり、この本一冊で全てがカバーされたりはしません。
一つ嬉しかったのは、私が以前からAIに対する有力な手として打っている、星の対抗布石で、付けて跳ねた時、引くのではなく突っ張る手が、この本(右側写真右上の図)で「こういう風に忙しく打ちたい」ということで推奨の手になっていることです。この手については、以前このブログの中で紹介しています。

NHK杯戦囲碁 結城聡9段 対 山田規三生9段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が結城聡9段、白番が山田規三生9段のほぼ同世代の対決です。布石で右下隅で黒が下辺で厚みを築き、白が隅で大きく実利を取るという分かれになりました。しかし白は本手では2線に下がって隅を取りきるべきなのをある意味欲張って右辺に一間に飛びました。局後の感想戦で示されたことは、黒からすぐにでも劫にする手があり、白の一間トビは失着でした。しかしこの劫は結局決行されず、局面が大きく動いたのは、白が左辺の黒に対して左下隅からツケふくらんで利かしに行った時でした。白からすれば黒に一手守らせてから右辺に回る予定であり、それが実現していれば白が優勢だったと思います。しかし黒は反発して中央を一本出てからハサミ付け、白に継がしました。この結果中央の白と左下隅の白の連絡に不備が生じ、黒から両ノゾキを打たれてしまいました。この結果中央の白は左下隅から切り離され独自に活きなくてはならなくなりました。黒は下辺に厚みがあり、こういう展開になるとその厚みが100%働いて来ます。黒は更に中央の白を攻めながら右上隅から右辺を大きくまとめることが出来、黒の理想的展開になりました。更には序盤の白の借金である右下隅の劫も残っており、結局中央の白は活きるだけの手はあったと思いますが、それでは右辺が大きくまとまって勝てません。なので白は右辺になだれ込んで黒地を消しながら活きることを目指しましたが上手く行きませんでした。最後は左辺の黒との攻め合いを目指しましたが、これも眼を取ること自体が大変で手が長く、ここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 趙治勲名誉名人 対 芝野虎丸7段

本日のNHK杯戦の囲碁はTOEIC受験のため、録画で視聴。黒番が趙治勲名誉名人、白番が芝野虎丸7段という、年齢差43歳という、往年の名棋士対新鋭バリバリという興味深い対戦でした。黒の趙名誉名人は1、3、5手目がすべて三々でした。先週の伊田篤史9段は2、4、6手目がすべて三々でした。もっとも1、3手の向かい三々の布石は趙名誉名人は全盛期から打っていたように思います。違うのはAIの影響で相手の星の構えにいきなり三々に入るところです。そういう風に趙名誉名人がひたすら実利に走ったので、対する芝野7段は当然厚みから模様を張る展開になりました。白の下辺から右辺にかけての構えに、趙名誉名人がらしく相対的に深く打ち込んで行きました。芝野7段は、右下隅で黒から切り取りがあった所をかけついで隅の黒に利かした後、打ち込んだ石にボウシしました。その後の一連の攻防で、黒は目一杯の手を打ち続けましたが、誤算があったのが取られていた黒2子を逃げ出したことで、この黒はその後色々やっても結局取られで、ここで黒は大きく損をしました。しかしここからの黒の趙名誉名人の粘りと反撃が見事で、下辺からの石は我慢して左辺に連絡し、今度は右辺に出ていき、右辺を荒らしながら、同時に右上隅の白への攻めを見ました。この打ち方はかなり効果的で一時かなり挽回したかなと思いました。しかし右上隅の白を攻めようとした時、白が右辺から下に一間に飛んで、黒を逆に切り離しました。結局攻め合いになるのですが、白の方が一手長く、結局中央の攻め合いで白に黒数子を取り込まれ,更には右辺でも白二子を取り込むことがかなわず、結局ここで黒の投了となりました。芝野7段の読みの的確さと、趙名誉名人の粘りの両方が楽しめました。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 伊田篤史8段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が伊田篤史8段の対戦です。この2人はどちらも本因坊丈和並みの豪腕で、がっぷり噛み合う対局です。これまでの対戦成績も五分五分のようです。布石は伊田8段の作戦なのか、2隅を三々、さらに黒の星の構えにも三々入りと徹底した実利作戦です。黒は必然的に中央が厚くなりました。まず白は上辺に入っていき、黒は眼を取って攻めたてましたが、白の右上隅とからめたしのぎで、上辺は取りあえず白がほぼ活き形になりました。次に白は右辺に入っていきました。ここでも黒は白を厳しく攻め、白は右辺に一眼も無い格好で中央に逃げました。黒は地合では白に大きく先行されて、取りあえずこの右辺の白を攻め続けるしかありませんでした。黒はそこで厳しい手で白を攻めましたが、白にうまくかわされて空振り気味でした。白は右辺から下辺に進出し、多少の薄みはあるもののほぼ右下隅の白と連絡し、安心しました。黒は頑張らないといけない形勢で、取りあえず左下隅の白を攻めて自身を厚くし、また左辺の白にかぶせて中央を厚くし、白の大石を分断する手を打ちました。白は右辺からの石は取りあえず先手一眼ありましたが、後一眼を作るのが大変でした。しかし包囲する黒もあちこち薄く、戦いは予断を許しませんでした。白は右辺下部に仕掛けていき、ここが大きな劫になりました。劫材はしかし黒に多く、結局劫は黒が勝ちました。しかし白は劫材で中央の黒と右辺の黒を切り離しました。ここの劫は2段劫で黒から解消するには2手必要でした。その1手の余裕を使って白は左上隅から中央に延びる黒の一段を攻めました。この黒を攻める手がすべて劫材になり、劫は白が勝ち、中央の黒を取って右辺の白は大きく活きました。その代償で右下隅と下辺の白は黒から突き出され、下辺は黒地になり、右下隅も黒からもう一手打てば死という大きな振り替わりになりました。しかし左上隅から延びる黒はまだ活きていおらず結局ここも劫になりました。劫は黒が勝ちましたが白は代償で右上隅と右辺すべてを地に、大きくリードし、黒の投了となりました。豪腕通しの見応えのある碁でした。