NHK杯戦囲碁 鈴木伸二8段 対 村川大介9段(2025年10月12日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が鈴木伸二8段、白番が村川大介9段の対戦でした。序盤では下辺で黒がシチョウアタリから開いた所に白が打ち込んで行き、ここの戦いでは白が左下隅を大きく地にしリードしました。しかし黒もすぐその後の右下隅の戦いで挽回し、形勢は互角になりました。また左上隅を中心とした黒模様に白が上辺に打ち込んで手を付けて行きました。白がまず打ち込んだ石を中央に延びて安全にしてから、しばらくして左上隅に再度手を付けて行きました。白はここですぐ活きる手を選ばず上辺へ連絡する手を打ちましたが、白が上辺中央の黒に覗いたのを黒は受けずに左上隅を取り込み、その代わり白は中央の黒の一部を取り込むという振り替わりになりました。この結果もおそらくはほぼ互角でヨセが続きましたが、お互いに黒から中央の白地に対してハネ込む手があり、白がそれを切れないというのがあったのを気付いておらず、もし白がそれに気付いていたら白勝ちでしたが、結局黒が先に気付いて、結果として黒の半目勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 小池芳弘7段 対 余正麒NHK杯選手権者(2025年9月28日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が小池芳弘7段、白番が余正麒NHK杯選手権者の対戦です。序盤で黒がかなり大胆に下辺で5線に肩付きをしたため、白は4線を延びて20目以上の大きな地が出来ました。その代わり黒は中央が厚くなり、その後の焦点となったのは右下隅に右辺からかかり放しになっていた白の石を黒がどの程度攻めて得を図ることが出来るかどうかでした。しかし白のシノギは時には黒への逆襲を見ながら的確であり、かつ黒の中央に付きそうだった地も削減しながら打ったため、黒としてはこの白一団を殺さない限り勝てなくなりましたが、結局白はしのぎ切りました。最後左辺で取られていた黒を動き出して、左下隅で生きるかと見せて、結局下辺で目一杯地を囲うヨセを見せましたが、それでも黒は地合が及ばず白の中押し勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 山下敬吾9段(2025年9月21日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が山下敬吾9段の対局でした。毎回NHK杯戦では独創的な布石を見せてくれる山下9段ですが、今回は6手目で右下隅の黒に下辺5線から大ゲイマにかかる、という手を見せてくれました。碁は途中までは白が厚みで勝負していて、中央の黒を攻めながら地を付けていましたが、白が左下隅の黒を攻めたのに手を抜いて黒が逆襲に転じ、中央と左辺の黒を切って、白は両方が活きておらず、厳しい局面になりました。しかし白は苦心しつつも両方を何とかしのいだ結果、また中央の黒の薄みが残って大ヨセは白が主体で打ち回し、右上隅でも結構白が食い込んで地を増やし、最後は黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 林漢傑8段 対 広瀬優一7段(2025年9月14日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が林漢傑8段、白番が広瀬優一7段の対局です。序盤は白が実利、黒が模様という対抗で、白が上辺の1子を動かず、右辺を優先して打ったのが良い判断で、上辺は後から白から策動する手が残った分、白が少し上手くやったように思います。難しかったのが下辺での攻防で、黒が左辺下の出切りを防ぐ手を打たないで、下辺中央の白に付けていってから複雑な戦いになりました。結局左辺下は白が出切っていって隅を取り、下辺は結局劫になりましたが、上辺での劫立てに黒が受けなかったので振り替わりになりましたが、ここの収支は良く分かりませんでしたが若干黒が挽回した感じでしょうか。最後左辺と中央が残りましたが、白が左辺の黒を取り込んでしまえば中央を黒に囲わせても勝ち、という判断が的確で、最後上辺の劫など色々とありましたが、結局白が4目半勝ちで逃げ切りました。

NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 酒井佑規6段(2025年9月7日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は高尾紳路9段と酒井佑規6段の対戦です。序盤白が黒が大々ゲイマに左上隅に掛かったのに対し、6線に臨んだのが研究の一手という感じで、上辺右の黒地を値切りましたが、逆に今後この中央の白の6子が厚みとなるのか、あるいは攻められる展開になるのかが勝敗の分かれ目という感じになりました。その後左下隅の攻防で、ちょっと黒の誤算があったのか、隅の黒3子が持ち込みになった感じで大きく白地がまとまって、白のペースになりました。黒は中央を厚く打ちながら上方の白6子を攻める展開を狙いましたが、逆に白が中央の黒の二間開きの間に付けて逆襲していったのが積極的で結局これが劫を奏して、白が黒の右下隅を取り込み、逆に黒が下辺白4子を取り込みましたが、この分かれは白地が大きくここで白の勝勢となりました。結局白の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 一力遼四冠 対 藤沢里奈女流本因坊(2025年8月31日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が一力遼四冠、白番が藤沢里奈女流本因坊の、好カードです。布石ははっきした白の実利、黒の模様という対抗形で、白が四隅を取りました。江戸時代では「四隅取られて碁を打つな」と言われ、武宮宇宙流が出て来てからは「四隅取らせて碁は勝ち」となりましたが、果たしてこの碁は、と言うところです。白は左辺-中央-上辺にかけてかなり黒に囲わせてから入って行き、上辺に飛び込んでそこでの活きを目指しました。結果として上辺は何とか活きたものの、代償として左上隅をやや辛い形の活きに追い込まれて、ここで黒が少しリードした感じです。その後黒は下辺の模様を盛り上げ、中央に手を付けていった白が活きられるかという戦いになりました。途中白が覗きを打ちましたが、黒は受けず、確かに切られても上方の黒は活きがありました。結局ここの白が死んで黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 福岡航太朗7段(2025年8月24日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が福岡航太朗7段の対戦です。黒はいきなり右上隅と右下隅で両三々という、ずっとNHK杯戦囲碁を10数年続けて観ていますが、この布石は初めてのように思います。そして右上隅での戦いがこの碁の焦点になり、白が黒の断点を生覗きしていったのに黒が掛けで応じ、白はすぐ何かやっていくかと思ったら手を抜いて他を打ちました。そして黒がもう一手打ってから再度右上隅に手を付けていき、黒は上辺の白を石塔シボリで団子にしにいったのですが、白が三子を継がなかったのが明るい判断で結局白は上辺を渡って、結果的に右上隅の黒地をえぐった形となり、白がリードしました。黒は挽回のため、左下隅に付けていって、下辺の白と左下隅の白を分断しようとしましたが、結局封鎖され、白は途中まで取りかけに行きましたが、最後黒を生かす方向に転換しました。その結果左辺から中央の白が厚くなり、白のリードは続きました。最後黒が左辺に仕掛けましたが、白が冷静に黒一子を取って安全運転をして、ここで黒の投了となりました。福岡7段が今期でもし優勝すると、それは伊田9段の持つ最年少優勝記録の更新となりますが、果たしてどうなるか。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 許家元9段(2025年8月17日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が許家元9段の対戦です。冒頭のインタビューで平田8段が「殴り合いをする」と言っていましたが、最後にその通りの碁となりました。序盤は黒が実利を稼ぎ、その代償で上辺から中央に延びる黒の大石がかなり攻め立てられましたが、白が途中で取りに行くのを諦めて下辺を大きく囲う方向へ方針を変換しました。それに対し黒が下辺真ん中の白の下に付けて行ったのが勝負手で、一時は下辺の黒の右側が右下隅に渡って一部生還で収束かと思いきや、平田8段の冒頭の言葉通りここからの黒の打ち回しが目一杯のもので、半分取られ掛けているような石を更に動いていって包囲している白をダメヅマリに追い込み、更に上辺から中央へ延びている白の大石の生死と絡めてシノギを図り、最後劫に持ち込んで白の劫材が無いため、白の大石が死んで黒の下辺が全部活きるということになり、黒の中押し勝ちとなりました。これまでの平田8段はどちらかというと終盤力に優れているというイメージでしたが、まともな殴り合いの力もかなりのものであることを証明しました。

NHK杯戦囲碁 井山裕太二冠 対 結城聡9段(2025年8月10日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が井山裕太二冠、白番が結城聡9段の対戦です。布石は井山二冠が同じ方向の小目という愛用の布石だったのに対し白は両方に対して向かい小目という初めて見たものでした。途中まで真似碁のような展開になりましたが、結局右下隅で白が定石の途中で手を抜いて下辺をはさんだ関係で、黒が切り白が下辺を取り、黒が右下隅から右辺方面に勢力を築くという振り替わりになりました。これは黒が少し打ちやすい展開だったようです。その後黒が右上隅から延びる白石に対し、ハサミツケてから切って行ったのが厳しく、黒が白二子を取り込んで右辺が大きな地模様になりました。それに対して白は深く打ち込んで行きましたが、結局この白は捨てざるを得ない展開になり、黒のリードが拡大しました。最後右上隅から中央に延びる白石を黒が攻め、結局黒も切り離されて攻め合いかと思いましたが、黒が上手く下辺で取られていた石を活用して左辺に一眼作って活きた結果、白の大石が自動的に死に、白の投了となりました。