NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 羽根直樹9段(2024年10月27日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が羽根直樹9段の対局でした。この碁の焦点となったのは黒からの2回のシチョウアタリに対する白の対応で、特に2回目の対応は白が見事に黒からのシチョウアタリをかわしてシチョウ有利を保ち、それがポイントになったように思います。右上隅から延びる白の大石を黒がどう攻めるかが後半の最大の焦点でしたが、黒が無理気味でしたが、左下隅に手を付けて劫になって劫争いになった時に、白を包囲している中央左側の黒がダメが詰まって結局劫で分断され、黒は両方の劫は頑張れず、左下隅の劫は白が勝って地合は大きく白に傾きました。後は右上隅からの白が活きるか死ぬかが勝負でしたが、羽根9段は活きを読み切っており、冷静に活きて黒の投了となりました。羽根9段の味わい深い名局だったと思います。

NHK杯戦囲碁 大竹優7段 対 一力遼三冠(2024年10月20日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大竹優7段、白番が一力遼三冠の対戦です。対局は黒の実利、白の厚みと模様という展開になり、特に左辺がどうなるかが焦点でした。そこで予想通り激しい攻防になりましたが、その余波で下辺で白が下がっていたのに黒が受けている暇が無く、白から強烈な覗きが来ました。黒はそこを受けずに左辺の戦いに集中して、左下隅3子を取り込んで戦果を挙げましたが、結局白が右下隅の切りに回り黒地だった所に大きな白地が出来、白のリードとなりました。白はその後巧みに右辺にも踏み込み、半分死んでいた白1子が生還しただけでなく、逆襲して右辺の黒を攻めました。右下隅との連絡の関係で劫になりましたが、この劫に白は勝ちに行かず、右辺全体を攻めました。黒は結局右下隅に渡ってそこに一眼作っても、後の一眼を作ることが出来ず、ここで黒の投了となりました。一力三冠は世界戦の応氏杯でも日本人棋士として久し振りに優勝し、今絶好調です。

NHK杯戦囲碁 富士田明彦7段 対 西健伸5段(2024年10月13日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が富士田明彦7段、白番が西健伸5段の対戦でした。この対戦は途中までは西健伸5段の柔らかな打ち回しが成功して、黒の攻防がやや空回りした感があり、左辺の黒を白が飲み込んで大きく地にしてやや白優勢だったように思います。黒はその分を右下隅と上辺の白を攻めて取り戻そうとしましたが、白も右上隅に潜り込んで地を取ったりで対抗して、中盤後半までは白優勢のまま進みました。しかし左辺で黒が時間つなぎ気味かあるいは勝負手に打った手を、白が楽観視して上から受けたのが失着で、黒は左辺で取られていた黒石を半分連れ戻して白地を大きく削減することに成功しました。これ以降は黒のペースで白の上辺に寄りつきながら各所で少しずつ地を増やしました。また黒が下辺で9の18に付けて目一杯下辺の地を増やしに行ったのに白が受けなかったため、更に差が広がりました。最後二段劫になって劫は白が勝ちましたが形勢に影響はなく、結局黒の9目半勝ちに終わりました。

こども囲碁名人 小学生の部決勝戦(2024年10月6日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、こども囲碁名人戦でお休み。黒番小川さんが小学4年生、白番横手さんは去年の優勝者で小学6年生、二人は何と同じ藤澤一就9段の教室に通う、普段からのライバル同士です。序盤黒が左辺の攻防で左下隅を捨てて上手く振り替わりましたが、白地が40目ぐらいあって大きく、ここまでは白がリード。しかし右上隅から右辺、中央の戦いで、白の疑問手があり、黒が右上隅からの一団を活きた上に、左下隅も大きくまとめてここで逆転、黒の12目半勝ちとなりました。二人とも近い将来プロ棋士になるのではと思います。その日が楽しみですし、小さい時からAIを使って強くなったプロ棋士がどういう碁を打つようになるのかも楽しみです。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 福岡航太朗5段(2024年9月29日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が福岡航太朗5段の対戦です。山下9段はまたユニークな布石を見せてくれ、1手目が右上隅の高目、2手目に白が右下隅に打つと3手目は左下隅の小目、白が左上隅の星に打つと黒の5手目は何と天元の左で、良く見ると3手とも星の左で斜め一直線というものでした。山下9段のユニークな布石でいつも感心するのは、そのユニークなものがただユニークだけであるというだけではなく、きちんとそれが後で働いてくる打ち方をされることで、この碁でも中央の天元左の石が、上辺で切りが入って戦いになった時に実にいい位置にいました。この碁はお互いに相手に利かしに行ったのに反発が入り、地の配置が目まぐるしく変化し、左辺は大きな黒模様だったのを黒が白のハネツギに受けずに他を打ったため、白地に変わりました。また右下隅も白地かと思っていたら、黒が急所の覗きから三々に打ち、白が反発して右辺に展開して黒が右下隅を取りました。そして更に黒が白3子を取り込んだ結果、黒が先に下辺に目一杯踏み込んで打った石をバックして中央に連絡する必要がなくなり、ここで黒がリードになりました。また右上隅も白から手が残っているかが焦点でしたが、黒が巧みに打って黒地を確定させました。こうして黒がややリードでヨセに入りましたが、左下隅のヨセで黒が普通に受けていればいいものを、中央で後手一眼作れるからと他を打ったのがミスで、これでまったく形勢不明になりました。AIの判定がおそらく下辺での攻め合いをきちんと読めてなかったのか、最後まで50:50でしたが、結局黒が手止まりを打ち、黒の半目勝ちという大激戦でした。

NHK杯戦囲碁 上野梨紗女流棋聖 対 安達利昌7段(2024年9月22日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野梨紗女流棋聖、白番が安達利昌7段の対戦です。この碁ではまず右上隅で黒が白のカカリに一間で挟み、白が掛けて黒が出切ってということで、ここがまず小競り合いになりました。結局白が黒2子を切離して、後で黒がここを動き出せるかが焦点になりました。戦いは下辺に移り、黒も白もお互いに弱い石が2つずつというもつれた戦いになりました。結局白が黒を切離すのを含みに劫を仕掛けましたが、結局白は下辺を渡り、黒が劫を継ぐという穏やかな別れになりました。その後黒が先ほど切り離された2子を動き出し、ここが手になるかどうかのギリギリの勝負になりました。結局黒も白も最善を尽くして別れ、黒は白8子を取って生還するという大利を上げたようで、白も黒の左辺を一部破って左上隅の地を大きく増やしたため、この別れはややですが白に分があったようで、白優勢のままヨセに入りました。結局白が右下隅の劫を仕掛けずに譲って、それで白の半目勝ちでした。なかなか見応えのある見事な勝負だったと思います。

NHK杯戦囲碁 表悠斗2段 対 張栩9段(2024年9月15日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が表悠斗2段、白番が張栩9段の新鋭 対 レジェンドのベテランの対戦でした。対局は序盤、白が左辺の黒を取り込み、リードしました。しかし黒は中央の白を狙って攻め、劫に持ち込み、劫に勝ってこの白を取り、形勢を互角に挽回しました。この後一進一退の状況が続きながら下辺でまた劫が発生し、それが結局右下隅の劫へと劫移しとなりました。この劫に対する黒の劫立てで左辺で取られている黒を活きるぞ、というのを打ったのですが、これに対する白の受けが間違いで黒の劫立てが増えてしまい、結局右下隅の劫は白が解消したのですが、左辺で手が生じ、黒が左辺の一部を食い破りました。この収支は黒が得をしており、これで黒の勝ちが決まり、結局黒の3目半勝ちでした。17歳初出場が2回戦も突破しました。表2段が今期の注目株になりつつあります。

NHK杯戦囲碁 藤沢里奈女流本因坊 対 広瀬優一7段(2024年9月8日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が藤沢里奈女流本因坊、白番が広瀬優一7段の対戦でした。この二人はどちらもヨセ勝負が得意ということで、序盤と中盤は黒が実利、白が厚みの展開で、途中いくつか大きな戦いに行く可能性のある分岐点がありましたが、どちらも戦いを仕掛けずに淡々と進み、形勢的にはやや白が優勢で進みました。非勢を意識していた黒は、中央の黒が攻められるのを承知で地を取って開き直り、白がこの黒を取りに行って劫になりました。しかし黒の中央での劫材の立て方に疑問があったようで、下辺からの白も眼が無く攻め合い含みになりましたが、結局白が劫に勝ち黒の眼を取り、黒が代償で左上隅の白を取るという大きな振り替わりになりました。下辺から中央の黒はまだ攻め合いでしたが、この攻め合いは2手ほど白が勝っていて、この中央の黒の取られた跡が60目以上の白地になり、ヨセで頑張っても黒が届かず黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 小池芳弘7段(2024年9月1日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が小池芳弘7段の対戦でした。対局前の挨拶で、芝野名人が「今日は初手を石音高く打って相手を驚かせたい」と言っていましたが、その初手はいつもよりは確かに音がしましたが、それでも「ぽそっ」という感じで、後はいつものように「そっと置く」スタイルに戻りました。それはともかく、黒は2連星から右下隅で一間にしまったのが珍しいです。白が右上隅の三々に入った時、黒がケイマにかけたのに白が付けて、やや大型定石気味の展開になりましたが、黒が上方の3子を捨てて厚みを築くということになりました。結局黒の石を切っている白が逃げ出し、その白と上辺の黒の戦いになりました。どちらかというと白が黒を攻めていたかと思いきや、黒が天元の一路上に割り込んでから白を切って行き(写真の場面)、どちらかの白を取ろうとする攻めが非常に鋭く、AIも解説の三村智保9段も予想していなかった、まさに芝野名人らしさの出た妙手でした。結局白は攻め合いではありますが、右上隅からの白が取られてしまい、ここで黒のリードとなりました。とってもまだ大きな差ではなかったですが、黒は着実に左辺の白模様を侵略し、結局白の投了となりました。白も中央の黒の逆襲が読めていなかったことで、戦意喪失したみたいです。

NHK杯戦囲碁 蘇耀国9段 対 余正麒8段(2024年8月25日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が蘇耀国9段、白番が余正麒8段の対戦でした。黒は両高目から右下隅で高ジマリという変則布石でスタートしました。左上の折衝で黒が戦線を上辺に拡大し、右上隅の白への攻めを見せたのですが、白が上手く黒の左辺と上辺を分断し、厳しく攻め、石塔シボリで黒のダメを詰め、黒が捨てるにせよ逃げるにせよ苦しくなりました。黒は中央を犠牲にしながら左方に逃げ出しましたが、まだ活きている訳ではなくもがいている感じでした。その後黒は右上隅で劫を仕掛け白4子を劫に勝って取りましたが、代償に白は黒の右下隅の高ジマリの構えを突き抜いて、白の優勢は変わりませんでした。最後は白が黒の下辺に打ち込んでからの折衝がありましたが、黒が勝負手で左辺に打ち込んだのが、白の上手い返し技があって不発で、ここで黒の投了となりました。