NHK杯戦囲碁 大竹優7段 対 高尾紳路9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大竹優7段、白番が高尾紳路9段の対戦です。2人は初対局です。大竹7段は本因坊リーグにこの度入りました。序盤は左上隅で黒が左辺を重視した代償で白に封鎖されたのにすぐ動き、結果的に隅3子を白が取り、黒は中央に展開しました。しかし黒5子は眼が無く、大きく狙われていました。白は手厚い本手を打ち続け、にもかかわらず形勢は白が少しずつリードを拡大して行くという碁になりました。下辺から黒白両方の眼の無い石が絡み合う展開になりました。白は右辺下方の石と下辺から延びる石を連絡して右下隅を荒らすという作戦もありましたが、右辺であっさり外から利かせて1子を捨てて打ちました。この打ち方は明るかったと思います。結果的に中央は白が主導権を握り、左上の黒5子が飲み込まれ気味になりました。しかし左下隅から延びる白が攻められた時、下辺で白が1線に下がって眼を確保したのが緩着で、黒の左上隅の5子と中央が連絡気味になった時は、一瞬黒が逆転したかと思われました。しかし白は上辺には突入されましたが、黒4子を再度取り込み、これでコミガカリでしたが白の優勢でヨセに入りました。結局白の中押し勝ちとなりました。作れば2~4目半ぐらいの差だったと思います。

NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 黄翊祖9段(2022年11月20日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が黄翊祖9段の対戦です。最近のNHK杯戦でかなりの確率でユニークな布石を見せてくれる山下9段ですが、今回は上辺で三連星の一つ左への平行移動というか、高い中国流の星を一路左へ寄せたかというまたも初めて見る布石を披露してくれました。その後白が右上隅の三々に入り、黒が左辺にも展開しました。白は左辺に打ち込み、ここから戦いになりました。白は変幻自在な打ち方で左辺を劫にしました。この劫はこの時点では価値が大きくなく、途中で保留状態になりました。しかし白から2線に切って本劫にして活きる手が黒にとって借金として残りました。白は劫立てで打った左上隅の白2子を利用して上辺右に手をつけました。この一団が活きると右上隅の黒も眼が無いので、ここが第二の戦線になりました。ここでは白が上手く打ち回し、中央の黒2子を取って活き形になったので形勢は白が盛り返しました。しかしその後黒が左辺一団を攻めようとしたのに白が反発して上辺に踏み込んだので乱戦になり、AIの形勢判断も一手ごとに有利不利が入れ替わるという状態になりました。そんな中、黒が中央の利きを利用して右上で取られていた黒2子を生還させたため、白の眼がまた無くなりました。しかし黒は無理にこの白を取りにはいかず、中央を厚く打ち白を活かし、上辺左から延びる白を攻めて、その余得で左辺の白を切り離しました。そこで白は2線を切って本劫を決行しましたが、回りの黒が厚くなっているため、劫に勝っても白の活きが無く、左辺に大きな黒地が確定し、黒の中押し勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁3段 対 鶴田和志6段(2022年11月13日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻󠄀篤仁3段、白番が鶴田和志6段の対戦です。布石は4隅平行対抗の星というものですが、その後黒がダイレクト三々というのが現代風です。序盤はどちらかというと黒が実利に付いていましたが、上辺の競い合いで白が2手左上隅にかけてそこを大きく地にした関係で白の余し作戦になりました。黒はまず上辺の白を攻めて中央に厚みを築き、それから左下隅から延びる白を攻め、更に右下隅の白を攻めました。白は結局3つとも活きましたが、黒が少しずつ得をし、黒の打ちやすい局面になりました。大ヨセに入った時、AIは黒が中央を守る手を第一の候補に示していましたが、黒は優勢とはいえ、守りだけの手は打ちにくかったのか、左上隅の大きなヨセに回りました。白は左辺で2手利かしを打ってから中央をハネだし、黒の上辺からの石、中央左の石、下辺からの石を分断しました。この結果形勢は混沌とし、白にもチャンスが生まれました。上辺の黒と中央から上辺左方に延びる黒の連絡を巡って大きな劫争いになりました。ここで白の劫立てで中央の黒を脅かした手に黒が劫を解消した手が機敏で、黒は切断された下辺の黒を活きる好手を用意しており、白の劫立てが不発に終わりましたので、黒が大きくリードとなりました。白は諦めずにヨセを続けましたが、結局投了となりました。

NHK杯戦囲碁 安斎伸彰8段 対 沼舘沙輝哉7段(2022年11月6日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安斎伸彰8段、白番が沼舘沙輝哉7段の対戦です。この碁は戦いの連続で形勢が二転三転しました。最初の戦いは右下隅で黒の右辺からの掛かりに白が挟み、黒がケイマに掛けたのを白が出切っての戦いでした。この戦いは黒が下辺と右辺の両方を打った感じで、白は右辺上方に展開しましたが、白が断点を守る必要があって後手になったのと、なおかつ右下隅から伸びる白石に眼が無いので、ここで黒のリードとなりました。その後白は右上隅の黒を攻めましたが、黒の右辺押しに白が受けなかったため、黒はハネだし、結局右辺で劫になりました。この劫は黒が勝ち、白は劫立てで上辺を連打しましたが、右辺の白地が黒地に変わって黒の有利な別れでした。黒は更に上辺の取られかけていた黒石を利用して右上隅から伸びる白を分断しました。ここでまたも中央で劫になり、黒が劫に勝ちましたが、劫を抜いても中央は黒が厚いとは言えず、右辺から中央に伸びる黒にも眼がはっきりしなかったため、混戦になりました。その途中で白が逆に勝率8割になった局面もありましたが、結局右下隅から伸びる白石に眼が無いのが最後まで祟り、その生死を賭けてまず下辺で劫になり、それが右下隅の劫に移りましたが、結局白の劫立てが無くなり、白の大石が取られて白の投了となりました。安斎8段の力強い打ち方が成功した一局でした。

NHK杯戦囲碁 井山裕太4冠 対 張栩9段(2022年10月30日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が井山裕太4冠、白番が張栩9段、そして解説が一力遼棋聖という豪華メンバーでした。井山4冠のタイトル初挑戦が張栩9段ですし、タイトル初奪取も張栩9段からでした。序盤は左上隅で新型が出来ましたか、結果が互角だったのはさすがでした。その後左辺の黒への白の攻めをどう凌ぐかで、黒は手堅く活きましたが、中央の白が厚くなってちょっともの足らなかったと思います。その後今度は右辺の黒の活き死にが問題になりましたが、黒からのツケギリがもしかすると疑問手で、白が中から当てるという強手で反発し、こちらも黒が手堅く活きましたが、右下隅の白地が30目を超えてまとまり、なおかつ中央でも白地が付きそうという形勢になり、白が優勢になりました。黒はヨセで頑張りましたが差は縮まらず、最後は盤面でも白がリードし、黒の投了となりました。さすがの井山4冠も、最近は早碁では以前のような最強手の連続という打ち方が出来なくなって来ている感じです。

NHK杯戦囲碁 芝野虎丸9段 対 謝依旻7段(2022年10月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸9段、白番が謝依旻7段の好カードです。布石では白が三隅を取り、黒が右辺と左辺の模様で対抗という碁になりました。黒は全体的に厚い手を打って自分の弱みを消してから、強い手を打って白を攻めるというのが一貫していました。それに対して白の謝7段の逆襲が見られず、一方的に黒の横綱相撲を見せられた感じです。特に黒が中央の白を攻めながら右下隅を大きくまとめたのが、巧妙でした。ヨセで黒が左下隅をハネたのに白が押さえたため黒が切り、ここが劫になり、黒は左辺ワタリのコウダテに受けずに劫を解消しました。この結果、左辺の黒地が半減しましたが、右下隅が白地がほぼ無くなり逆に黒地が数目付き、別れとしては互角だったかもしれませんが、局面が整理され、白からの逆転のための策動の余地が無くなり、黒の勝勢になりました。白の中央の地も上下が空いていたので大きくまとまることはなく、白の投了となりました。これで今期の女流棋士は全員敗退しました。

NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 六浦雄太7段(2022年10月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が六浦雄太7段の対戦です。この両者は2020年8月にも同じくNHK杯戦で対戦しており、その時は六浦7段が勝っています。布石では黒が3隅で実利を得て地合いでリードし、白はそれに対して上辺の模様で対抗するという碁形になりました。右辺は白が2つ、黒が1つの弱石同士の絡み合いになりましたが、黒が右辺上方の白と上辺の白との連絡を脅かしながら、中央で白1子を緩めたゲタで取って弱石がなくなったので、これで黒のリードとなりました。それに対して右辺下方の白は依然として弱く、白はかなり頑張らないといけませんでした。黒は左下隅で白が小ゲイマに締まっていた所に後からかかって行き、左辺と左下隅を若干侵略しました。白はこの黒を狙って行きましたが、黒は白の右辺下方の石の連絡を脅かしつつ手厚く打って眼形を作り、白に付け入る隙を与えませんでした。黒はここを先手で切り上げ、上辺の白模様の削減に回りました。黒はここで強く白模様の中に踏み込んで行きましたが、白も数ヶ所に断点があって強くは戦えず、黒は踏み込んだ一団を無事に連絡させることが出来ました。盤面10目以上の黒のリードでヨセに入りましたが、白はウスミがあって右辺上方の石と上辺の連絡が切れてしまいました。これを見て黒が右辺で下に1線にハネたのが見合いの好手で、右辺下方の白が死ぬか、右辺上方の白が黒から見た花見コウになるかの見合いでした。結局右辺下方の白が死に、ここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 大西竜平7段(2022年10月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が大西竜平7段の、まあ言ってみればイケメン対決でした。大西7段の碁は大西ワールドという独特の世界観が特長ですが、本日の碁はどちらかと言えば、鶴山ワールドとも言うべき、力と力の全面対決という碁でした。布石は黒が盤面の右側、白が左側を占めあうプロの碁では比較的珍しい展開になりました。単純な囲い合いでは先番の黒に利があるため、白は右上隅に肩付いた石から中央に展開し、これを黒が攻める碁になりました。中央の押し合いで、白がじっと伸びて我慢すべきなのをハネていったのが、私から見れば打ち過ぎで、鶴山8段が待ってましたとばかりに切りました。白がそれに対し黒の反対側を切ったのがやり過ぎの第2段で、鶴山8段の大好きな碁形にしてしまいました。結局白は頑張れず中央でタネ石の4子を取られ、右辺から右上隅に展開して、結局振り替わりになりましたが、白の中央の損が大きく、ここで黒が優勢を通り越して勝勢になりました。ただ大西7段の碁は大体このように中盤まで劣勢で、ヨセで逆転して半目勝ちという碁が多いそうで、この碁も黒が固く打ったのと、途中小さなミスもあり、半目勝負かという局面になったこともありました。しかし結局黒の2目半勝ちに終わりました。大西7段は少し中盤の打ち方に誤算があったように思います。

NHK杯戦囲碁 小池芳弘7段 対 富士田明彦7段(2022年9月25日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小池芳弘7段、白番が富士田明彦7段の、最近勝ちまくっている若手対決で、噛み合う対戦でした。しかも二人は高林拓二門下の同門で、富士田7段が先輩とのことでした。なので小池7段からすれば勝って「恩返し」したい所、富士田7段からすれば成長著しい後輩に先輩の貫禄を見せたい所でした。局面が動いたのが右辺の攻防で、白が右下隅にかかった石からの一団がまだ治まって、ないのに、右辺上方に打ち込んでいってからです。黒は右辺中央の石から右辺下方の白にもたれて強化し、右辺上方の石をボウシで包囲しました。白はここで右上隅の黒の二間高締まりの間に付けて行きました。ここの折衝で、黒が1子を捨てて下から当てて行ったのが冷静で、白が若干厚くなったものの、黒は右上隅から右辺で40目以上の地を確保し、黒が優勢になりました。黒はその後左下隅にも潜り込んで活きたため、4隅取った形で地合いは更に開きました。こうなると白は中央と左辺でどのくらい地を作れるかの勝負になりました。黒は右下隅からつながっているかが微妙な位置に出て行きました。結果から見ればこの「つながっているかどうか」が勝敗を分けるカギになりました。黒はその石の繋がりを確かにする手を打たず、白の左下隅を脅かしつつ中央に進出して白地を削減し、順調に優勢を保っていました。どこかでバックして中央と右下隅を確実に連絡しておけば勝ちだったと思いますが、実戦心理として、つながるだけで地にはならない手を打つには抵抗があり、それが災いしました。富士田7段が一瞬の黒の隙を衝いて1目を捨てて巧みに白の眼を奪い、そして中央と右下隅の白の分断を決行しました。中央の黒が上辺の黒とつながりそうでつながらないのも読み済みで、黒はもう一眼が作れず、大石が憤死しました。富士田7段の中押し勝ちで、まるで故加藤正夫9段のような殺し屋ぶりを1回戦に続いて発揮し、見事に先輩の貫禄を見せました。

P.S. 故高林拓二6段について、正直な所あまり知識が無かったので調べてみました。ご本人の棋士としての活躍はそれほどでもなかったようですが、弟子がすごいです。許家元九段、富士田明彦七段、小池芳弘七段、伊藤優詩五段、張瑞傑五段、外柳是聞四段、日野勝太初段。日野初段のインタビュー記事によると、高林6段に生前(2019年7月に亡くなられています)に1,000局以上対局してもらったそうです。通常囲碁の師匠は入門の時に一局だけ打って、後は弟子同士が対局するもので、木谷道場とかは特にそうだったと思います。例外的に石井邦生9段が井山裕太4冠を、その才能を見込んでやはり1,000局くらいオンラインを中心で打って鍛えた、というのがありますが、弟子達の素晴らしい活躍振りを見る限り、高林6段は、全ての弟子と多くの対局を繰り返したのかなと思います。ご本人の、例えば本因坊戦や名人戦リーグに入るとか、タイトルの挑戦者になる、タイトルを取る、そういう夢は残念ながら叶わなかったのですが、それを弟子に託して鍛え上げる、これはこれで素晴らしい棋士人生だったのではないでしょうか。

NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 河野臨9段(2022年9月18日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が河野臨9段の対戦です。両者棋士の中のポジション的には近い位置にありがっぷりかみ合う対局です。白は珍しく両三々の布石、黒は両小目でした。黒が左上隅に二間にかかり白がケイマに受けたのに、黒は左辺から両ガカリ風にはさみ、白がコスミツケて黒が立って、白が中央に一間トビして上辺と左辺を見合いにしました。黒が上辺で二間に開いたので、白が左辺の星下へ挟む展開になりました。ここで左下隅の三々に対し星に肩付きしたのがいわばAI風の打ち方でした。白の這いに軽く一間に飛び、白が割り込んで黒が上から当て、白が継いだところで黒は手抜きし、左辺の白にボウシしました。ここからギシギシと石の絡み合う戦いになりました。結局白は左辺を捨てて中央を厚くし、切り離された下辺の黒4子を小さく取るのは出来ましたが、右下隅の黒の肩を衝いて下辺を目一杯拡げました。こうなると黒は取られかけていた4子を動き出す一手でした。この後の黒のサバキが見事で、黒は中央への進出を見せながら巧みにサバキました。その代償として右下隅を若干利かされましたが、結果として白の一等地で無理なく活きて、ここで黒が優勢になりました。白はその後上辺の黒模様に打ち込んでいったりして挽回を図りましたが、差は縮まらず、結局白の投了となりました。