NHK杯戦囲碁 谷口徹5段 対 上野梨紗女流棋聖(2024年7月21日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が谷口徹5段、白が上野梨紗女流棋聖の対戦でした。上野女流棋聖は初出場、一方谷口5段は出場5回目で初勝利がかかります。展開は黒が白を攻めて行くのが目立つという展開で、方々に弱石を抱えた白はシノギが大変でしたが、右下隅に置いた石から動き出したのがいいタイミングでそれを捨て石に黒を分断し、黒3子を取り込んで下辺で活き、右上隅は取られ、また左上隅方面も取られで、白が盛り返しましたが、まだ黒がややリードかなと思っていました。しかし黒は形勢に悲観していたのか、白が左下隅方面から中央に飛んだ石などに受けずに、上辺に突入することを優先しました。結果として左上隅で取られていた白が復活し、確かに白の上辺の地は減りましたが、ここで白のリードに変わりました。その後白は右辺も上手く打って黒地を減らし順調でした。最後右下隅で2の3に置いていって、黒が反発して劫になりました。しかし黒の劫立てが続かず、ここで黒の投了となりました。上野女流棋聖の初出場初勝利でした。

NHK杯戦囲碁 山田規三生9段 対 西健伸5段(2024年7月14日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山田規三生9段、白番が西健伸5段の対戦でした。序盤は黒の実利、白の厚みと模様という感じでしたが、白が右辺に打ち込んでいってから競い合いになり、結局白の右辺からの石と黒が白の模様を消しに行った一群との戦いになりました。黒が中央から下辺に降りた一団から右に一間に飛んだのはごく普通の手かと思いましたが、白が考慮時間を使って割り込んでいったのが最強の手で結局黒は中央を諦めざるを得ず、代わりに下辺で実利を取りました。この結果やや白がリードしましたが、まだ中央から上辺が未解決で結局ここでも最後は攻め合いになりました。黒は中央でほぼ取られかけていた石を動き出して策動しましたが、残念ながらわずかに足りず、また上辺での攻め合いも白一手勝ちになり、黒は万策尽きてここで投了となりました。二人は以前もNHK杯戦で対戦していてその時は山田9段が勝っていますので、西5段がリベンジを果たしました。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 関航太郎9段(2024年7月7日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が関航太郎9段の対戦でした。この碁では白が下辺で70目超の大きな地模様を築き、その代償で薄くなった上辺から延びる白石の一群を尻尾を取られるぐらいでしのいで、白が優勢でした。しかしそこからの黒の逆襲が見事で、左辺下方で切って当たりにした石を延びて白模様の中で開き直りました。この黒単独で活きるのは大変そうでしたが、左辺で白を切って行く勝負手を放ち、結果として左辺が劫になりました。黒の下辺の劫立てに白は劫を解消し、黒は白の大模様を分断して治まり、ここで逆転して黒が優勢になりました。その後白は形勢不利ということで上辺で目一杯の手を打ちましたが、黒が的確に反撃し手にならず、白が投了しました。下辺と左辺の振り替わりは、これぞプロの碁という感じで見事でした。

NHK杯戦囲碁 藤沢里奈女流本因坊 対 小山空也6段(2024年6月30日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が藤沢里奈女流本因坊、白番が小山空也6段の対戦でした。この碁の焦点は碁盤の下半分という感じで、右下隅~下辺~左下隅でお互いの石がもつれあって、難解なねじり合いになりました。結果として白は下辺で活きましたが、黒が下辺右と左下隅で白を取り、ここではっきりと黒がリードしました。しかし白の小山6段もヨセで特に中央で的確に打ち回して差を縮め、一時はAIの判定では逆転していました。しかし黒は中央を劫にし、この劫に勝ってリードを確定しました。その後両者は正確に打ち回しましたが、終ってみれば黒の1目半勝ちでした。両者の良さが出た見応えのある碁でした。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流立葵杯 対 呉柏毅6段(2024年6月23日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野愛咲美女流立葵杯、白番が呉柏毅6段の対戦です。序盤、左上隅で両ガカリからの白の左辺の黒へのツケにいきなりハネ込んでいったのが上野女流立葵杯らしい打ち方でした。結局隅は活き活きになりました。この碁での最大の戦いは、白が黒の右辺の模様に打ち込んでいってからで、黒は白を攻めて行きましたが、白に下辺に降りられて、包囲している左方の黒にも眼がなく、結局下辺で劫になりました。白は劫争いの中で中央を上手く利かし、黒に継ぎを打たせてから下辺右の白を活き、劫は黒に譲りました。そして中央をケイマに飛び出して黒を攻め、これで十分という判断でした。その判断は正確で黒もヨセで食い下がりましたが、どうしてもコミを出すことが出来ず、白の中押し勝ちとなりました。呉6段の上野女流立葵杯の豪腕に負けない正確な読みが光った一局でした。

NHK杯戦囲碁 大場惇也8段 対 福岡航太朗5段(2024年6月16日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大場惇也8段、白番が福岡航太朗5段の対戦です。黒の布石は懐かしの低い中国流でした。一時AIによる対策手段が有効ということで打たれなくなっていましたが、その後の研究で特に低い方は打てるということで、またボチボチと打たれるようになっているみたいです。私の世代では特に、第2期棋聖戦の藤沢秀行さんと加藤正夫さんの激闘で、黒を持った方が中国流を採用していたというのを覚えています。序盤・中盤と互角の戦いが続きましたが、黒が白のケイマの間をツケコシて切って行く前に、下辺で白が黒2子取っていた所を利かしに行ったのに、白が手を抜いて中央を打った判断が的確で、これによって黒の右辺から中央の模様の広がりが抑えられ白が優勢になりました。その後白がヨセで若干リードを拡げ、最後右下隅の死活で黒がうっかりしてポカを打って頓死し、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 本木克弥8段 対 依田紀基9段(2024年6月9日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が本木克弥8段、白番が依田紀基9段の対戦でした。序盤から中盤にかけて、白は左下隅に打ち込んだ石を捨て石にして中央をやや厚くし、更にその後左辺の攻防になりましたが、白の4子くらいが左辺に置き去りになって、左辺から左下隅が通しの黒地になり、この辺りは黒が優勢でした。異変が生じたのは、左辺で白が利かしに行ったのを黒が受けずに、上辺の白を攻めにいった時です。黒は右辺下から中央に延びる石に眼が無いので、上辺白の攻めでそれをカバーしようとしたこともあるのでしょうが、結果的に左辺で取られていた白2子が復活し、出入りは大きく、白が挽回しました。また上辺の白も眼2つながら先手で活きたので、黒の攻めは空振り、明らかに白が成功し優勢になりました。後は依田9段の手堅い収束振りで、結局終ってみれば白5目半勝ちになりました。久しぶりに依田9段らしい碁を観たように思います。

NHK杯戦囲碁 林漢傑8段 対 広瀬優一7段(2024年6月2日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が林漢傑8段、白番が広瀬優一7段の対戦です。両者攻めよりシノギの棋風ということで戦いにならずにヨセ勝負かと思いきやいきなり序盤に左辺で攻め合いになりました。この攻め合いは白が勝ちましたが、黒も左上隅に食い込むことが出来ました。その後も下辺での戦いになった時に、白が4の17にコスミ付けて行き、ここからの戦いがまた激しくなりました。黒は白1子を取らずにどんどん上に延びて行く手が成立し、この辺り白は少し誤算があったように思います。しかし黒が白の攻めに転じてからどこかで間違え、中央が劫になり劫は黒が勝ったのですが、白はその代償で黒の下辺の地になだれ込み、同時に左下隅の黒に利かせつつ先手で活きたため、ここで形勢は白に傾きました。最後は白が黒の模様になだれ込もうとしたのを黒が根元から切断しました。しかし白は右下隅で犠打を打ち、その後黒の包囲網を上手く脅かしながら中央で連絡し、そうなると右辺上方の黒に眼が無く連絡する手を後手で打たなければならない、ということでここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 表悠斗2段(2024年5月26日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が横塚力7段、白番が表悠斗2段の対戦です。表2段は16歳初出場です。対局は黒の実利、白の厚みで進み、AIの判定は白が有利でしたが実際には拮抗した状態が続いたように思います。右上隅から右辺にかけて劫になったのですが、白が黒が下辺を打った劫立てに受けず劫を解消しました。これに黒は下辺を渡って行っただけでしたが、もしかすると13の16に跳ね出して行くより厳しい手が成立したかもしれません。ヨセで黒は左辺上方の地の所に白から真ん中に置いていくヨセがあるのをうっかりしていたようで白に渡られ黒地が減り、ここでは白がリードしたようです。しかし黒も左上隅を劫に持ちこんで若干挽回し、結局最後まで形勢不明の勝負になりました。最後右下隅で半劫が残り、これに白が勝ったことで白の半目勝ちというきわどい勝負でした。表2段は初出場ながら良く戦いきったと思います。次は張栩9段との対戦です。

NHK杯戦囲碁 蘇耀国9段 対 沼舘沙輝哉7段(2024年5月19日放送分)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が蘇耀国9段、白番が沼舘沙輝哉7段の対戦です。黒が初手高目、3手目が大高目と珍しい布石で、白が4手目で左下隅の星に入っていきました。その後左辺から左上隅の折衝で黒が白のノゾキに受けず隅を跳ねて行き、ここが劫になりました。黒の左下隅への劫立てに受けずに劫を解消するのが有力だったようですが、白は受け結局黒が劫に勝ちました。そして上辺で白が劫立てに打った手で連打し、黒は中央の石を捨てるのかと思いきや愚形に曲がって逃げました。しかし白の左辺からの大石は取られるような石ではなく、この辺りはほぼ互角でした。焦点となったのは白から11の5に切る手があり、ここを黒が守るのか白が切るのかが焦点になりましたが、結局黒が守り、この守ったことで形勢が黒に傾きました。その後白が下辺の黒に打ち込みましたが、ちょっと白に誤算があって打ち込んだ白2子が取られました。また右辺で1線の急所に打たれて、死にはしないものの、黒が白2子を先手で取ったのは大きく、この辺りの大ヨセで差が少しずつ開きました。結局小ヨセでも蘇9段が正確に打ち、結局は黒の10目半勝ちという大差になりました。ところで、最初の挨拶で2人ともがお互いに顔が似ていると言われてきた、と言っていましたが、今回見た感じではそうは思いませんでした。