NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 福岡航太朗7段(2025年8月24日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が福岡航太朗7段の対戦です。黒はいきなり右上隅と右下隅で両三々という、ずっとNHK杯戦囲碁を10数年続けて観ていますが、この布石は初めてのように思います。そして右上隅での戦いがこの碁の焦点になり、白が黒の断点を生覗きしていったのに黒が掛けで応じ、白はすぐ何かやっていくかと思ったら手を抜いて他を打ちました。そして黒がもう一手打ってから再度右上隅に手を付けていき、黒は上辺の白を石塔シボリで団子にしにいったのですが、白が三子を継がなかったのが明るい判断で結局白は上辺を渡って、結果的に右上隅の黒地をえぐった形となり、白がリードしました。黒は挽回のため、左下隅に付けていって、下辺の白と左下隅の白を分断しようとしましたが、結局封鎖され、白は途中まで取りかけに行きましたが、最後黒を生かす方向に転換しました。その結果左辺から中央の白が厚くなり、白のリードは続きました。最後黒が左辺に仕掛けましたが、白が冷静に黒一子を取って安全運転をして、ここで黒の投了となりました。福岡7段が今期でもし優勝すると、それは伊田9段の持つ最年少優勝記録の更新となりますが、果たしてどうなるか。

NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 許家元9段(2025年8月17日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が許家元9段の対戦です。冒頭のインタビューで平田8段が「殴り合いをする」と言っていましたが、最後にその通りの碁となりました。序盤は黒が実利を稼ぎ、その代償で上辺から中央に延びる黒の大石がかなり攻め立てられましたが、白が途中で取りに行くのを諦めて下辺を大きく囲う方向へ方針を変換しました。それに対し黒が下辺真ん中の白の下に付けて行ったのが勝負手で、一時は下辺の黒の右側が右下隅に渡って一部生還で収束かと思いきや、平田8段の冒頭の言葉通りここからの黒の打ち回しが目一杯のもので、半分取られ掛けているような石を更に動いていって包囲している白をダメヅマリに追い込み、更に上辺から中央へ延びている白の大石の生死と絡めてシノギを図り、最後劫に持ち込んで白の劫材が無いため、白の大石が死んで黒の下辺が全部活きるということになり、黒の中押し勝ちとなりました。これまでの平田8段はどちらかというと終盤力に優れているというイメージでしたが、まともな殴り合いの力もかなりのものであることを証明しました。

NHK杯戦囲碁 井山裕太二冠 対 結城聡9段(2025年8月10日放送分)

本日のNHK杯戦囲碁は黒番が井山裕太二冠、白番が結城聡9段の対戦です。布石は井山二冠が同じ方向の小目という愛用の布石だったのに対し白は両方に対して向かい小目という初めて見たものでした。途中まで真似碁のような展開になりましたが、結局右下隅で白が定石の途中で手を抜いて下辺をはさんだ関係で、黒が切り白が下辺を取り、黒が右下隅から右辺方面に勢力を築くという振り替わりになりました。これは黒が少し打ちやすい展開だったようです。その後黒が右上隅から延びる白石に対し、ハサミツケてから切って行ったのが厳しく、黒が白二子を取り込んで右辺が大きな地模様になりました。それに対して白は深く打ち込んで行きましたが、結局この白は捨てざるを得ない展開になり、黒のリードが拡大しました。最後右上隅から中央に延びる白石を黒が攻め、結局黒も切り離されて攻め合いかと思いましたが、黒が上手く下辺で取られていた石を活用して左辺に一眼作って活きた結果、白の大石が自動的に死に、白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 田中康湧5段 対 柳時熏9段(2025年8月3日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が田中康湧5段、白番が久し振りの柳時熏9段の対戦です。序盤に右下隅で本当に久しぶりの小ナダレ定石になり、黒の実利、白の模様という展開になりました。その後左下隅で白が3子を捨てて更に厚みを築き、また黒が左上隅の三々にも入ったので、黒が白の真ん中の大きな模様をどう荒らすかが焦点になりました。しかし黒は比較的浅く入りあまり踏み込まなかったため、それほど攻められることはなく、形勢は互角のまま終盤戦に入りました。しかしそこで上辺左方の白地と思われた所を黒が切っていって更に中から動き、結局劫付きの攻め合いになり、劫も黒が勝って大きな戦果を上げました。白は劫立てで左上隅を劫にしたのですが、この劫も黒が下辺を譲って無事に切り抜けました。この後のヨセでは白にもうチャンスがなく、結局黒の4目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 西健伸6段 対 小池芳弘7段(2025年7月27日→8月2日放映分)


本日の(7月27日(日)放送予定だったのが高校野球で今日に延びたもの)NHK杯戦囲碁は、黒番が西健伸6段、白番が小池芳弘7段の対戦です。西6段は右辺に大きな地模様を築き、白は右下隅に一回様子見してから右辺に打ち込んでいきました。右辺の白は中央に逃げ出すことが出来ましたが、その代償で下辺の白が置いてけぼりになり、ここでは黒が打ちやすかったかと思います。しかし白が右辺上方の黒を切り離して逆襲してから形勢は二転三転し、中央の戦いの余波で下辺の白が復活し、この白の一団の生死が勝敗のポイントになりました。しかし黒は取り切れないと思ったのか途中で追及を止め左上隅を打ちました。しかし結局白の一団が生きた後、黒の左上隅での打ち方が中途半端であり、却って自分の方の活き死にの問題になり、開き直って劫にしましたが、この辺りが今一つで、形勢は白に大きく傾き、結局黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 呉柏毅6段 対 林漢傑8段(2025年7月20日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が呉柏毅6段、白番が林漢傑8段の対戦でした。この碁は中盤から戦いの連続で面白い碁でした。特に印象に残ったのは、黒が右辺で抑えて、右下隅の白にプレッシャーをかけたのを、白が右辺上方で当てた後、下からまくっていって2線の当たりまで決め、それによって右下隅と渡るという打ち方が相手の読みを外す打ち方でした。そしてその後上辺の攻め合いになり、それがこの碁の最大の焦点でしたが、黒が9の3で白の左側に付けていって手数を伸ばしに行ったのですが、そこに何かの読み間違いがあったのか、手は伸びずに結局は黒から見ての2手ヨセコウという白から見たらほとんど黒を取ってしまったような戦果であり、ここで白が勝勢になりました。黒はそれでも下辺からの地模様を最大限大きくしようとしましたが、白が一部を捨てて上手く打ち回して差は縮まらず、逆にここに白からの劫立てが多数出来てしまい、黒から見て益々上辺の2手ヨセコウに勝つことが難しくなりました。黒はそれでも奮闘して中央で攻め合いに持ち込もうとしましたが、白から見て2手勝ちで手にならず、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 牛栄子4段 対 瀬戸大樹8段(2025年7月13日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が牛栄子4段、白番が瀬戸大樹8段の対戦です。この碁は最初から最後まで戦いの激しい碁で、特に最初の見所だったのは、黒が下辺右側の8子を右下隅に渡らないで、捨ててしまったことで、白はそれを取って25目ぐらいの地になって打ちやすくなったように見えました。しかしそこからの黒の追い上げ、つまりこの捨て石を攻め取りにさせて活用しようとするのが激しく、またその余得で左辺下側の白3子を取って挽回しました。そして結局下辺を劫付きの攻め合いに持ち込み、白は渡って攻め合いは勝ちましたが、下辺の白の半分を取って、これでほぼ互角の形勢になりました。しかしその後の黒が右上隅の石を上手く活きるのに失敗し中央に逃げ出しましたが、結局2眼は出来ず全て死に、白の中押し勝ちとなりました。なかなか最初から最後まで飽きることのない、見所の連続の碁でした。

NHK杯戦囲碁 今分太郎4段 対 本木克弥9段(2025年7月6日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が今分太郎4段、白番が本木克弥9段の対戦です。今分4段は初出場です。黒は初手高目ということで厚み主体の布石で、黒は中央から右辺にかけての地模様を築きました。中央に入って来た白を攻めながら、黒は左辺になだれ込んで、ここで戦いが起き、劫になりました。結局白が劫をつないで、黒が左辺を継ぎ、白が右側を切って黒の3子を取り込んで中央で活き、ここでは白がやや一本取ったような形になりました。しかしまだ黒も中央から右辺の模様が残っていました。その模様の境界を確定する争いで上辺が打たれた時に、突然黒が白の下辺の構えに置いて行きました。ここで白が受け方を間違えて結局この石が死んでしまいました。しかし白は諦めずに黒の右辺になだれ込んで行き、ここが活きれば白勝ち、劫なら互角、取れば黒勝ちという状況になりました。結局劫になりましたが、右上隅への黒の劫材に白は受けられず、劫は勝ちましたが白は右上隅の黒の一部を取ってつながる、という活き方で戦果を挙げ、ここで黒のリードになりました。その後のヨセも白が上手く打って結局白の5目半勝ちになりました。今分4段も負けはしたものの、下辺の置きは鋭い手で、楽しませてくれました。

NHK杯戦囲碁 阿部良希5段 対 藤沢里奈女流本因坊(2025年6月29日放送分)


本日のNHK杯戦囲碁は黒番が阿部良希5段、白番が藤沢里奈女流本因坊の対戦です。阿部5段はNHK杯2回目で前回は謝依旻7段に敗れています。対戦は黒の実利、白の厚みという感じで展開し、白は左辺から上辺にかけて大きな模様を築きました。右辺に黒が打ち込んでいってからの戦いは互角で双方が中央に延びていきました。そして黒が左上隅に付けて侵略を図ったのですが、ここでの黒の打ち方がまともに活きに行ったもので、その結果白に中央をかなり厚くされてしまいました。こうなると中央に展開する黒には隙があり、12の9への覗きから天元に割り込まれて左右を分断されてしまいました。こうなると黒は両方をしのがなければならなくなり、最初は白は左を攻め、途中で右側の攻めに転じ、中央が劫になりました。白が劫立てに左下隅を使ったのを黒は受けられず劫を解消して中央の黒はつながって両方活きましたが、左下隅は白地に変わり、地合は大差となりました。その後黒はそれでも下辺の白に絡んで行きましたが、白に無事に逃げられて、ここで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 蘇耀国9段 対 平田智也8段(2025年6月22日放映分)


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が蘇耀国9段、白番が平田智也8段の対戦です。蘇9段は碁盤を広く使いたい、と言っていましたが、その言葉通り、4線中心の中央重視の布石でした。この碁の最初の焦点となったのは左上隅から上辺にかけての戦いで、黒が上辺の白に付けていって積極的に仕掛けたのですが、白が反発した結果闇試合となり、黒は結局2つに分断され左上隅で眼二つで活きることになり、白は逆に黒の石をポン抜いて厚くなり、この戦いは白がポイントを上げました。白は更に左辺を攻められようとした時に手を抜いて上辺の取られていた2子を助けました。ここでの黒の左辺白への攻めが空振りし、結果的に白の開き直りが成功し、白のリードが拡がりました。こうなると黒の狙いは右辺上方の白を攻めることでしたが、ここでも白は上手く反撃し逆に黒を上下に分断して下辺の黒を取り込み、更に右辺の黒も攻め合いですが取り込む手が残りここで黒の投了となりました。平田8段は先期に準決勝に進出した好調が維持されている感じです。