本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が富士田明彦7段の対戦です。二人は去年のNHK杯戦でも同じ3回戦で当たり、その時は山下9段が勝っています。いつも新しい布石を見せてくれる山下9段が、左上隅で小目の白に対し5の5にかかるという手を披露したのですが、そこで白は受けずに右下隅で同じ位置に打ち返すという意地を見せました。そこから進んで焦点となったのは左上隅と左辺の戦いで、富士田7段が山下9段のお株を奪うように自分から仕掛けて黒を分断しました。その後の折衝でおそらく黒に疑問手があり、結局黒9子が攻め合いにもならず取られてしまい、また上辺で劫になりましたがこれも白が勝ち、併せて40目レベルの白の確定地が出来て白が優勢になりました。しかし黒が左下隅にかかった石を白が目一杯はさんだのがある意味打ち過ぎで、その後の折衝で黒が中央を厚くして上方の白を攻めながら右下隅方面の大模様をまとめる、という願ってもないチャンスが黒に来たのですが、黒はそのチャンスを逃してしまいます。白は上下2つの弱石をしのぐ必要がありましたが、両方を巧みにしのぎ、白の中押し勝ちになりました。富士田7段は昨年の雪辱を果たして準々決勝に進みました。
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NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 伊田篤史9段(2025年1月19日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が伊田篤史9段の対戦です。二人は同じ歳ということでしたが、何と公式戦では初対戦です。中盤までは白が思う存分打ち回してリードしたという印象で、特に上辺、左上隅、中央にかけての攻防で、白が上辺から左上隅を侵略するぞという手を利かしてすかさず次は中央に打ち、黒が固く受けると今度はまた上辺を打ち、ということで白が上辺の地をかなり得しました。対して黒は左辺に模様を作ったのですがここも白が上手く荒らして、地合では白が大きくリードしました。ここまでは白の圧勝という感じでしたが、その後白が優勢を意識して固い手を打ちすぎたのと、左辺上方で黒が白の2子に鼻ヅケしたのに、白がこの2子を捨てていれば白のリードのままでしたが、白が頑張って2子を助けた結果、白地が分断されここで形勢がややですが黒リードに変わりました。その後の黒の打ち振りは確実に勝ちを目指し、2つの劫が発生し最初の劫は譲ったものの、2番目の劫には勝ち、白はその代償に左上隅に手を付けましたが、黒を取ることは出来ずセキ止まりで、振り替わりは黒が儲けてリードを拡げました。結局黒の中押し勝ちとなりました。2人の持ち味が出た好対局でしたが、伊田9段としては初対局ということで平田8段の末脚の棋風をちょっと軽く見ていた感じがしました。
NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 呉柏毅6段(2025年1月12日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が呉柏毅6段の対戦です。両者台湾出身の関西棋院であり、対戦成績も余8段から見て3勝2敗と拮抗しています。この碁の焦点は右下隅から右辺で、白が隅からハネ継いで黒が下辺とタケフでつながったのに対し、白が右辺の黒の傷を覗いてそこから白が右辺に展開しました。白は軽く更に上辺にも入って行きましたが、結果から見るとこの打ち方が薄く、黒に間を裂かれて絡み攻めにされました。白は取り敢えず上辺の石は中央に出てくつろげましたが、黒は右辺の白を本気で取りに行きました。黒が出た時に白が一間に飛んだのが悪手でこれで白の眼形が一気に無くなりました。白は劫にしてねばり、また中央の黒への逆襲も狙いましたが、すべて上手く行かず右辺の白が取られて黒地がここだけで約70目となり、白の投了となりました。
NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 井山裕太3冠(2025年1月5日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が井山裕太3冠の対戦です。(ちなみに今年は囲碁のお正月特番が無かったです。将棋はちゃんとあったのに。残念。)布石は白が左上隅でかかったまま手を抜いていた黒を大きく取り込む構えを見せ、地合は白がリード気味でスタートしました。その後白が右上隅の黒の星からの小ゲイマ締まりに肩をついて黒がすべったのに今度は右辺に入り、それを黒が裂いていって、という戦いになりました。この戦いの中で右下隅にどちらが先に回るかが勝負でしたが、結局白がかかることになりました。ここの折衝で白は右下隅に大きな地を取りました。黒は代償で右辺に取り残された白5子を取れていれば互角でしたが、白は堂々と逃げ出しました。この白のシノギで黒の中央のダメが詰まっていて傷があるのが災いし、結局黒はこの白を取ることも、他で大きな戦果を上げることも出来ず、最後は中央の包囲している黒が取られてしまって、12目ぐらいの地を持って白に治られてしまっては、黒が勝てない碁になりました。結局白の中押し勝ちでした。
NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 佐田篤史7段(2024年12月29日放送分)
12月29日(日)のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が佐田篤史7段の対戦です。(旅行のためNKH+で後から視聴)布石では上辺の白の模様と黒の右辺から中央の模様が対抗形になりましたが、黒は上辺の白を押していってそちらを地として確定させ、中央を厚くして模様を拡げました。しかし右辺で白から大々ゲイマに開いて2線に潜るのが切れそうで切れない手で、これによって黒地が値切られてしまい、ここで白が一歩リードしました。しかしその後左辺から延びる白と黒の石で、中央で大きな劫争いが始りました。この劫は中央の勢力争いと左辺のそれぞれの石の死活で非常に大きく、黒は右辺の白を分断する手を劫材にし、白は劫材がないので劫を解消しました。この結果先の局面で折角黒地を値切った白がほぼ取られになりましたが、白はこの一団を活きに行き、また右上隅で劫が始りました。この劫は黒が勝って右辺を地として確定させ、白は右下隅を2手連打し、ここでまた劫が始りました。黒はこの劫は譲ってヨセ勝負に持ち込もうとしましたが、この時、左下隅をきちんと活きておけば黒がわずかながらに優勢だったようです。しかし黒は形勢が難しいと思っていたのか、結局左下隅が劫になり、白はこれに勝って地合がわずかながらですが白優勢になりました。結局黒の投了となりました。劫がめまぐるしく移り変わっていく、という面白い碁でした。
NHK杯戦囲碁 一力遼4冠王 対 広瀬優一7段(2024年12月22日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が一力遼4冠王、白番が広瀬優一7段の対戦です。普通に考えると一力4冠王の勝ちを予想し、広瀬7段がどこまで食い下がれるかと思っていましたが、直近の早碁の対戦で広瀬7段が一力4冠王を半目勝ちで破っているとのことで、楽しみな対戦になりました。対戦は右下隅で白が三々に入り、這った後一間に飛んだので、黒から出切りからシチョウに抱える手があり、黒は左上隅の白の断点をシチョウアタリで覗きました。白はこれに対して右下隅に手を入れましたので、黒は左上隅の白を切っていきました。これでもつれた戦いになりましたが、白が上辺で2子を捨て石にして締め付けて、左側の白のハネだしの弱点を補おうとしたのに対し、黒が切って2子を取りに行かず、上辺の左側の黒から3線に曲った手がAIも予想していなかった好手で、結果として劫になり、振り替わりで黒は右側の白を大きく取り込み、優勢になりました。しかし白は諦めずに、かなり無理気味ですがこの取られ気味の白を活きに行きました。結局劫にはなり、また黒が劫立ての手でやや譲り気味の手を打った結果、白は何とか活きることが出来ました。しかし黒も右下隅を取った上に全体に厚いので、黒の優勢は続いていました。最後に白は上辺から延びる黒の大石を狙いましたが、包囲している白にも眼がなく攻め合いであり、黒の手数が2手ほど長いため、白の投了となりました。しかし劣勢になってからの白の頑張りは見応えがありました。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸9段 対 羽根直樹9段(2024年12月15日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸9段、白番が羽根直樹9段の対戦です。芝野9段は今年7大タイトルの5つを争ったそうですが、残念ながら今は無冠です。序盤右下隅の戦いで黒が両ノゾキを打ち、その結果黒が白7子を取り、白が右下隅を取る振り替わりとなりました。その後右上隅方面の戦いが、石が切り結んでのギシギシした戦いになったのですが、白が黒2子を当てた時に黒が手を抜いて上辺を飛んだのは驚きました。この当たりに延びると白が取られている7子を復活させる手があるということみたいでしたが、ここは白が上手くやったと思います。しかしその後白が上辺から延びる眼の無い黒石をかけて止めにいったのがやや打ち過ぎで、結果としては白が上辺をへこまされながら黒が無事連絡したため、ここでわずかですが黒がリードしたように思います。その碁ヨセで黒が右辺を止めていなかったのを白が手を付けていけばもしかすると逆転したかもしれませんが、結局黒が押さえに周り、結果としては黒の1目半勝ちとなりました。
NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 許家元9段(2024年12月8日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が孫喆7段、白番が許家元9段の対戦です。この碁は白が地に辛く打ちながらも途中で下辺から戦いを仕掛け、その後延々と戦いが続き白が少しですがリードを保ち続けました。途中上辺左、左上隅、左辺の打ち方で、黒が左上隅の星上に付けたのに、白が外からハネて隅を黒に譲れば普通でしたが、左に延びたため、上辺から左上隅は黒地になりました。白の狙いは左辺の黒への置きでしたが、これは大した戦果が挙がらず、ここで黒がやや盛り返した感じでした。ヨセに入って白の技が決まったのが右下隅で、黒が割りこんで来たのに下から当てたのが妙手で、右下隅の黒地が逆に白地になり、ここで白が大きくリードしました。白はリードしているにもかかわらず、左下から中央、右上へと延びる黒の大石を執拗に狙っていきました。その関連で、左下隅で黒が下辺を掛け継いで劫を狙っていたのに白が手を抜いている所が問題になり、黒がハネた時、ケイマに外したのが白の上手い受けでした。これでセキになる筈でした。しかし黒はそれでも手を付けて行き、なんと下辺第1線で自ら2子当たりに突っ込む手があり、これで結局劫になりました。黒はこの劫を利用して大石を無事活きて、白は妥協しましたが、形勢には影響なく黒の投了となりました。やはり隅というのは色々と手があるものだと、死活の勉強になりました。
NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 結城聡9段(2024年12月1日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が結城聡9段の重量級対決です。布石は伝統的な布石とAI的な布石の組み合わせで、2つの隅でカカリにハサミが出来たのが最近では珍しいです。下辺から左下隅の戦いで、黒がちょっと左右の連絡を絶たれて苦しくなり、左側を劫にしたのですが、黒の劫立てに白は受けずに劫を解消し、黒7子を取り込んで白がリードしました。その後上辺に白が打ち込んでからの攻防が激しかったですが、白が右上隅を荒らす手を選んだのが打ちすぎで、ここもまた劫になったのですが、白の劫立てが少なく、黒が劫を解消して黒地が多く黒が打ちやすい碁になりました。唯一左辺から中央の黒が心配でしたが、実は上辺での白の渡りが不完全で、そこを付いていって結局は上辺の白を取り込んでつながったので、これで完全に黒のリードになりました。しかしその後白が右辺を荒らしに行ったのですが、黒も右下隅から出ていって、結局黒も白も眼が無いという攻め合い含みの状況になりました。この攻め合いをAIは正しく読めておらず、結局黒から右辺に一眼作る手があったので、攻め合いは眼有り眼無しで白が最後ダメを詰めることが出来ず、黒の攻め合い勝ちとなり、白の投了となりました。河野9段のさすがの読み、という感じでした。
NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 依田紀基9段(2024年11月24日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が依田紀基9段というタイトル経験者同士の好対局です。序盤の右上隅の攻防がまず珍しく、黒がツケヒキで右上隅を地にしたのかと思ったら、その後の白のアテコミに隅ではなく右辺を受けたので、隅が白地に変わりました。その後の左辺から左下隅の攻防で、お互いが意地を張ったような戦いが面白かったのですが、左下隅で黒が受け方を間違えて、中央の黒6子が切離されてしまったのは黒の失着でした。これで白が優勢になりましたが、ここから依田9段の楽観癖という何度も見た悪い癖が出て、右辺に打ち込んで黒地を減らしに行った後の打ち方があまりにも固すぎて、その間に黒にいい所を打たれ、あっという間に追い付かれただけでなく、その後の打ち方も今一つで黒に右上隅からの地を拡げられ、結局黒の4目半勝ちという差になってしまいました。