白井喬二の「富士に立つ影」読み直し 裾野篇

白井喬二の「富士に立つ影」の読み直しを開始。まず「裾野篇」を読了しました。大岡昇平はこの長大な小説を実に10度も読んだそうですが、そこまではいかなくても、白井喬二愛好者としては、もう一度読んでこの小説の新しい魅力を発見したいと思います。
しかしさすがにこれだけ白井喬二の著作を読んだ今となっては、少しは白井喬二の「手口」というのも分かって来ています。以下は決して批判ではありませんが、読んでいて気になったところです。

(1)江戸時代における築城家の位置付け
三田村鳶魚の批判を待つまでもなく、太平の時代の江戸時代に、果たして築城家(この小説では城師)が活躍する何ほどかの場があったのかという疑問。江戸時代の戦乱は島原の乱が最後で、その後長い太平の時代に入ります。戦国時代に多数作られた各地の城については、幕府より一国一城のお達しが出て、ほとんどが取り壊されています。領主の居城が古くなって色々問題があっても、修理するのでさえ幕府の許可が必要でかつその許可もなかなか下りなかったと聞いています。そうなると新築の城などあり得ず(おそらく大規模な新規の築城は1610年の名古屋城の築城が最後なのでは?)、城を建てる専門家としての築城家の需要はほぼ0で、この小説にあるように各地に様々な流派が残っていたというのも変な話です。

(ただ念のために言っておくと、築城学というのは明治になり復活を遂げ、陸軍大学や陸軍兵学校の講義の中には「築城学」というのがあり、主にフランスから来た「要塞作りの技術」が学ばれました。左の写真はその教科書の一つです。実際にも日露戦争の焦点となった戦いは旅順要塞の攻防であり、第1次世界大戦での最激戦区はヴェルダンの要塞を巡る戦いでした。)(2)1805年における調練城とは?
ペリーが浦賀に来航するのはもうちょっと先の話ですが、ロシアで暮らした大黒屋光太夫が帰国したのは1792年です。また蘭学という形でのオランダ経由で西洋の進んだ技術は広く知られていました。また西洋式の大砲は既に大坂夏の陣や島原の乱で使用されています。にもかかわらず、熊木伯典と佐藤菊太郎が提案する城の内容は、どう見ても戦国時代の城そのままで、まったくといって進んだ西洋の兵器にどう対抗するかという視点が欠けています。また、調練城であって、要は武士の訓練のための城であり、そうであればどれだけ多くの武士を寝泊まりさせるかとか、どういう演習を行わせるかの議論があるべきですが、まったくそういう内容は二人の提案には含まれていません。
さらに、幕府が自らのお金で城を築くのであれば、近い将来にあるかもしれない幕府への反逆、つまり後の薩長連合軍のようなものを予期した城づくりを考えるべきと思いますが、そういうのもありません。
にもかかわらず、幕府側が用意した質問の中に、「抜け穴、隠し部屋、万年水」のような、ギミックが勝ちすぎたものがわざわざ入っていて、とてもバランスを欠いています。まあ、この辺りは白井の趣味といってしまえばそれまでですが。
(3)白井一流の偽文献
賛四流の始祖が書き残し、代々の直系の跡継ぎだけが読むことを許されたという「天坪栗花塁全(てんぺいりっかるいぜん)」、これは調べてみるまでもなく、白井一流の偽書でしょう。しかしよくこういうもっともらしい書名を考えつくなと思います。ちなみに岩崎航介という人が、江戸時代の刀鍛治の「秘伝書」をほとんど調べたことがありますが、その内容はほとんどインチキで、まったく役に立たなかったと書いています。
(4)二人の築城家の決着の付け方
二人の城師の論争は言葉だけで決着が付かず、結局実地検分の四番勝負になるのですが、その内容がとても変です。最初のある一定の太さの木が周囲の山に何本あるか、というのは、城を建てる上での重要材料だからいいとして、残りの牛曳き競争とか、湖の水がどちら向きに流れていて、底の地質はどうか、ある岩穴が誘い穴になるかどうか、など築城の本質とはほとんど無関係です。

という感じで、二回目になるとさすがに色々と突っ込みどころが出てきますが、そうは言ってもこの白井の壮大なホラ話作りの才能には脱帽せざるを得ません。おそらく報知新聞で毎日の連載を読んでいた人は息つく暇も無い、という感じでお話に引き込まれていったであろうことは想像に難くないです。

後は面白いと思うのは、裾野篇では、賛四流の菊太郎を始め、その賛四流の同僚二人や花火師の竜吉も含めて男性陣はすべて伯典に陥れられて敗北の苦い味を味わう(あるいは殺されてしまう)訳ですが、一人喜運川兵部の娘お染が、自分自身伯典に毒入りの刺青を入れられてしまうという非常にむごたらしい扱いを受けながらも、伯典に対し実に効果的な復讐の方法を考案し、それを実行に移します。その内容が明らかになるのは江戸篇ですが、実に女性は恐いというか…

後は、この巻で登場するお染とお雪、この二人はある意味キャラがかぶっているというか、お互いに分身みたいな存在です。それが江戸篇で意外な形で生かされることになります。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 藤沢里菜女流四冠


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が藤沢里菜女流四冠の対戦です。布石では黒が左上隅にかかった後手を抜いて上辺と右辺の模様を大きくしました。それに対して白は右下隅の黒の小目に星の所に付けていって、侵略を図りました。ここは白が隅に跳ねて黒が押さえ、白がカケツぎ、黒が当てました。白がはじけば劫になります。その手を保険に白は中央に逃げました。白は左下隅で小目ジマリに肩付きして一間に飛んだ黒と中央の黒の間を割いていこうとしました。これに対して黒も中央からコスんで白の切断を狙いました。その後白は劫に行きましたが黒の劫取りの後の白の中央の劫立てに黒はすぐ解消しました。白は中央を連打しましたが、黒はしつこく覗いていって切断を狙いました。これに対して白が反発した結果、黒が切断を決行しました。この結果右下隅の白は活きる必要があり、下辺で黒2子を取りましたが後手一眼であり、活きるためにもがく形となり黒に立派な壁が出来ました。白はそれでもその壁に切りを入れて行きましたが、切った2子を直接動くのは当てがなく、その利きを頼りに右辺に打ち込みました。ここで左上隅で黒が取られている石を活用して利かしにいったのがタイミングが良く、白は普通に受けると上辺で利かされ、上辺の黒模様が消しにくくなるため、反発しました。結果として左上隅は黒が活き、地合の差は大きく開きました。白はそれでも上辺と右辺の両方で活きて挽回を図りましたが、及ばず白の投了になりました。

長崎 2019年9月21日

会社が所属する工業会の委員会の行事で長崎に行ってきました。長崎の風景を何枚か紹介します。長崎は坂と階段の町であり、その点は私の故郷の下関とまったく同じです。どちらの市も天然の良港ですが、そういう所は海が急に深くなっていますが、逆に言えば海から出ている部分も急であるということになります。

宇宙家族ロビンソンの”The Sky Pirate”

宇宙家族ロビンソンの”The Sky Pirate”を観ました。ロビンソン一家の住む星に不時着でやってきたのは、何と地球人の自称海賊です。生まれは何とカスター将軍がインディアンを虐殺していた頃ということで年齢は140歳です。19世紀に地球に宇宙船がある訳はなく、自称海賊のタッカーはエイリアンのUFOに拉致されて宇宙に出たと話します。老けていないのは途中で冷凍催眠を受けていたからだと説明します。タッカーはウィルを人質にし、自分の宇宙船の修理をロビンソン博士にさせようとします。ウィルはタッカーから海賊の話を聞く内にすっかりその内容に魅了されてしまい、タッカーと傷を付けた親指同士をくっつけての「海賊の誓い」をします。タッカーが持っていた何かの銃のようなものは、結局は銃ではなく未来を予知する機械でした。それが映す映像で、ドクター・スミスがまたもタッカーの宇宙船を盗んで自分だけ地球に帰ろうとしていることが判明します。そのうち、タッカーを追って不気味な球体のエイリアンがやってきます。タッカーはそのエイリアンと戦おうとしますが、エイリアンは未来予知の機械を手に入れると去って行きます。最終的に宇宙船の修理が完了し、タッカーは去っていこうとしますが、ウィルは一緒に行きたいと言います。しかしタッカーは実際には自分は単なる泥棒で、お宝なんてどこにもないんだ、とわざと冷たくウィルに言って、一人去って行きます。タッカーはドクター・スミスと同じようなある意味悪者ですが、その話し方と行動は人を魅了するものがあります。また、タッカーが自分の肩に機械の鳥を載せていますが、高速エスパーに出てくるチカを思い出しました。