「巨人の惑星」の第2話の”Weird World”

“巨人の惑星”の第2話の”Weird World”を観ました。何か第2話で既に飽きてしまった感が。これまでアレンの3作品はそれぞれ設定は違いますが、毎回バラエティーに富んだ話が展開されましたが、この巨人の惑星は毎回舞台は同じで、話も結局地球人が巨人の住居に忍び込んで、捕まりかけながら何かするというだけで、今回は一行よりも先にこの星に不時着していた船長と会い、巨人達が持っていってしまったその船長の宇宙船を取り戻して地球に帰ろうとします。しかし、その船長が途中で自分の部下の命を犠牲にしたことを思い出して、ヘタレになって動けなくなったけど、最後に子供が巨大グモ(この星では普通のクモ)に襲われていたのを助けて自分は命を落とすという、まあ非常にありがちな話でした。

菊地清麿の「評伝 古関裕而」

菊地清麿の「評伝 古関裕而」を読了。自伝とムック本を除いて、古関裕而に関する本はこれが5冊目です。これまで読んできた本で最大の不満点であった「古関裕而の音楽そのものへの分析がほとんどない」という点に関しては、この本はかなりの情報量を持っています。筆者は元々明治大学で古賀政男以来の伝統を持つマンドリンクラブにいた人のようで、昭和流行歌謡史が専門のようです。それはいいのですが、そういう長所を言う前にこの本の校正レベルの低さに辟易しました。ほとんど数ページに一箇所ぐらいの割合で校正ミスを発見します。また、とても信じられないような内容を書いている箇所も多数あり、例えば古関が奥さんの金子さんのために作曲したオペラ3作について「どの作品をとっても豊かな音楽性に溢れ、出演者の力量を十分に活かした作品だった」(P.233)と書いていますが、この人はそういうことを一体どうやって確認したのでしょうか。と言うのもこの3作のオペラについては録音テープがあったらしいのですが、アメリカに送られて行方不明と聞いており、これまでレコードもCDも出ておらず、おそらく放送もされていません。また1960年生まれということなので実演を聴いたということもあり得ません。つまりは聴いても(観ても)いない音楽で適当なことを書く人なのだということです。また、古賀政男がコロンビアから首にされたと書いている所もありますが、実際はテイチクに好条件で引き抜かれたのであって、コロンビアは古賀を訴えています。首にした者を訴える筈がありません。という具合で、ともかく色んな情報があるのはいいのですが、かなりの部分が記憶にだけ頼って書き飛ばしている感じで、一つ一つ他の資料で確認しないととてもそのまま信じる気にはなりません。筆者は大学で講師として教えているそうですが、その割りには日本語も変な箇所が沢山あります。ともかく残念な本でした。

「巨人の惑星」の”The Crash”

アーウィン・アレンの1960年代の最後のTV作品である「巨人の惑星」の第1話”The Crash”を観ました。ロサンゼルスからロンドンへ宇宙空間を通って飛行するシャトルのスピンドリフト号が途中で磁気嵐に襲われ、目の前に出現した星に着陸したら、それは全てが地球のものより20倍以上巨大な「巨人の惑星」だっという話です。それでいきなり、アーウィン・アレンの得意技の「トカゲ恐竜」が登場したのは笑えました。ただこの世界では「恐竜」ではなくちょっと変な格好のトカゲに過ぎませんが。操縦士のスティーブと令嬢のヴァレリーが外を彷徨っている時に、見え見えの鼠捕りみたいな罠に捕まって巨人の科学者に連れ去られます。それを仲間が助けに来て、という話ですが、第1話を観た限りではわくわく感はあまりないですね。特撮もそんなに難しくなくて、セットを作るか光学合成で出来ますので、技術的に高度なものはありません。放送は1968年から70年にかけてですが、ドラマの中の設定は1983年になっていました。

NHK杯戦囲碁 鈴木伸二7段 対 洪爽義3段


本日のNHK杯戦囲碁は、黒番が鈴木伸二7段、白番が洪爽義3段の対戦です。この対戦は目まぐるしい展開で、まずは右上隅で黒が白を攻めましたが、白が右辺で切りに回りその後うまく右辺を地にして稼ぐことが出来ました。その代償で黒は右中央の白と上辺左の白をからみにして攻めようとしました。しかし白は取られかけていた右上隅の白を連れ戻して逆襲し、攻め合いになりました。しかし、白が10の1にはねた手が好手で、これによって中央の戦いで黒が白を切ることが出来なくなり、黒の12子が取られて白の40目近い地が出来ました。しかしその後黒からの利かしに白が2回ぐらい手を抜いたため、取られていた黒石を復活させる可能性のある劫になりました。この劫は結局白が勝って取られた黒はそのままでしたが、その代償で黒は右辺に潜り込んで地を稼ぎながら活き、差を縮めました。更には右下隅の白を地を稼ぎながら攻め、また左辺下方の白3子の攻めに回り、勝敗の行方は分らなくなりました。この白のシノギで、白も最強の手を打ち、結局この白石だけでは眼はなく、他との絡みで何とかという展開になりました。しかしここで中央にからめて逆に中央右の黒一団を取ってしまう手があり、結局左下隅の白と中央右の黒の振り替わりになりました。この結果は黒が若干儲けてついに逆転かと思われました。しかし白は取られていた所でしかけてそこに手が残っていて、中央の黒が劫付きながらほぼ全滅ということになり、白の中押し勝ちに終わりました。ほとんど終わっていた碁を互角以上に挽回した鈴木7段もさすがですが、それ以上に洪3段の鋭い読みが光った一局でした。

ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳の第43回目を公開

ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳の第43回目を公開しました。今回はゲゼルシャフト(ソキエタス)の連帯責任原理が法的にどういう風に論理構成されたかという議論です。
残り12.5ページとなり、ラストスパートに入っています。まだ終わっていませんが、ここまで来れて感無量です。

古関裕而の「船頭可愛や」の楽譜と実際の歌の違い

古関裕而の「船頭可愛や」ですが、楽譜を持っていますが、どうも元の楽譜(上)と、実際に歌われているのが、いわゆるビブラートを除いても明らかに楽譜とは違いサビの所(「ええええー せんどーかーわーいーーーや」の「いーーーや」の所)に(弱めの)三連符がもう一つ追加されているような歌い方が多いようです。(下の楽譜)ただ、聴き方によっては楽譜の改変というより歌い手のアレンジの範囲内という気もしないではないですが。いわゆる日本的なコブシという意味で。確かその辺りは歌手の裁量の範囲で、作曲家の方で楽譜に書くことはしないのですが、古賀政男だけコブシまできちんと楽譜にしていたと聞いたことがあります。

宇宙家族ロビンソンのProsとCons

宇宙家族ロビンソンの合計3シーズン、全83話を観終わったので例によってProsとConsを。
Pros
1.1965年という段階で、人類のはるかはなれたアルファケンタウリへの移住というテーマの斬新さ。
2.ロビンソン一家というある意味理想的な一家に、パイロットのドン、そして悪漢のドクター・スミス、更にはロボットという組み合わせの登場人物の多彩さ。
3.ドクター・スミスというとことんどうしようもない悪漢でありながら憎めないキャラクターの魅力。
4.そのドクター・スミスとロボットの毎回繰り返されるやりあい。特にドクター・スミスの多彩な悪口。
5.ロボットのキャラクターの進化。最後は非常に人間的な感情を持つに至った。
Cons
1.初期のハードSFが途中からほとんど喜劇的な話ばかりになった。
2.この作品に限ったことではないが、脚本ライター陣の安直なストーリー作り。
3.ほとんど人間と変らないエイリアンの多用。
4.ほとんどの回でのプアー極まりない特撮。
5.これもこの作品に限ったことではないが、エイリアンや怪物のひどすぎる使い回し。
後、今回通して観て気がついたのは、子供の時あれだけ何度も観ていながら、ドクター・スミスとロボットのやり取りは良く記憶にあるものの、ストーリーとしては「ああ子供の時観た」というのがほぼ1話もなかったこと。これはつまりストーリーはどうでも良くて、ドクター・スミスとロボットの掛け合いの方がはるかに印象的だったということだと思います。
キャラクターで、ドクター・スミスは前にも書きましたけど、両刃の剣でした。ドクター・スミス無しにはこの作品の成功はなかったでしょうが、ドクター・スミスが当初のハードSF路線を台無しにしたという点も否定出来ません。しかし、ジョナサン・ハリスの演技と台詞回しの見事さは誰も否定出来ません。おそらくシェークスピア劇のような古典劇の素養もあるのだと思います。また、ドクター・スミスの台詞から色々な新しい英語表現を学ぶことが出来ました。
ロボットは、最初は本当にロボットでただ命令された通りにするだけの存在でしたが、ライバルロボットが登場してそれに嫉妬するあたりからキャラが立って来て、最後は愛と友情の権化ともいうべき存在に進化しました。回路がトランジスターで記憶装置がテープというのがいかにも60年代的ですが。
ロビンソン博士は、快傑ゾロで人気を取った人だけあって、中心になって活躍する時は格好いいですが、そもそもドクター・スミスにくわれて活躍する場があまり無かったように思います。
奥さんのモーリーンは、いかにも60年代の女性の扱いという感じできわめて聡明で優しい女性ながら、同時に男性に保護されないと生きていけない、という風に描かれたのは残念でした。ただ、ジューン・ロックハートは本当にお母さん役が似合う人でその点は良かったです。
兄弟姉妹では、長姉のジュディですが、美人ながら一番活躍するシーンが少なかったと思います。ドンとの恋仲も、シーズン中で発展することは無く、たとえばドンと結婚して子供が産まれるとかあれば良かったのでしょうが、残念ながらこのお話の後半はほとんど子供向けで、そういう展開にはなりませんでした。
妹のペニーについては、アンジェラ・カートライトは非常に可愛らしかったですが、第3シーズンではちょっと大人になりすぎてジュディとかぶったように思います。また何かと言うとピュアな性格でそれがエイリアン他に愛されてというワンパターンな展開が多かったと思います。
ウィルについては、ロビンソン一家の中で一番活躍したのは間違いなく彼でしょう。ドクター・スミスによって引き起こされたトラブルを何度もウィルが知恵や勇気を出して一家を救います。ウィルの年齢の子供こそ途中からまさにこのドラマの視聴者の優先年齢層になったのだと思います。
最後にドンですが、ロビンソン博士の重要なパートナーというのと同時に、常にドクター・スミスに対する糾弾者という感じで、何か独自の性格付けが弱かったように思います。こちらもジュディとの仲がもっと進展していれば良かったのに思います。
まあ、色々ありますが、子供の時に好きだったドラマを、日本で放映されなかった第3シーズンを含め、全部オリジナル版で観られたのは本当に良かったと思います。これで1960年代のアーウィン・アレンの作品の内、タイムトンネル、原子力潜水艦シービュー号、宇宙家族ロビンソンを観終わりました。

轟由紀子の「お使いは自転車に乗って」/杉浦幸雄の「銃後のハナ子さん」

古関裕而の曲集めから、戦前の流行歌にちょってはまっていて、その中で発見したのが轟由紀子の「お使いは自転車に乗って」で、昭和18年2月の戦争の真っ最中とはとても思えない明るい曲です。
https://www.youtube.com/watch?v=cPTwt3qKXYE

この曲は「ハナ子さん」というミュージカル(!)映画(当時は敵性語禁止で、「歌合戦映画」とされています)の主題歌です。元は杉浦幸雄の「銃後のハナ子さん」という漫画を映画化したものみたいです。それでそれが載っている「主婦の友」昭和13年11月号を取り寄せてみました。元々この漫画の主人公の「ハナ子さん」のモデルが轟由紀子なんだそうで、それを映画化したものにその本人が出演しているということになっています。漫画としては四コマではありませんが、戦後の「サザエさん」をちょっと彷彿させるほのぼの系です。但し主人公は独身です。(恋人はいます。)映画の方はその恋人が出征するのをオカメのお面で泣き顔を隠して明るく見送るといったもののようです。ちなみに上記の「お使いは自転車に乗って」の作詞は、上山雅輔であの金子みすゞの実弟です。

ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」の日本語訳の第42回目を公開

ヴェーバーの「中世合名・合資会社成立史」(最終的な翻訳名はこれにしようと思っています)の日本語訳の第42回目を公開しました。
第5章が終わり、ついに結論の章に入りました。結論部はラテン語やイタリア語の出て来る割合が少ないので助かります。この箇所でもまた利子禁止(高利禁止)の話が出てきます。
この42回を含め、後5回で最後まで行く予定です。9月20日頃で一通り翻訳を完了し、その後校正に入り、年内には最終版を公開出来ればと思っています。最初の予想よりもかなり早く完成しそうで、ヴェーバーの没後100年の記念の年に間に合いそうで何よりです。