NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人・王座 対 一力遼NHK杯選手権者


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が一力遼NHK杯選手権者の対決です。私の予想では今後の10年くらいの日本の囲碁界はこの二人を中心として動いて行くのではないかと思っています。この碁は右下隅から戦いが始まりました。黒の狙いは下辺で黒にほとんど包囲されている白の1子を戦いのどさくさで飲み込んで下辺を大きく地にすることです。その狙いで黒は右下隅から右辺に展開する白に挟み付けて行き、白が反発して中央に出たのでここで競い合いになりました。白がここでぼんやりと黒を封鎖気味にした手が面白く、黒は右辺の白1子を取り込みましたがこれは欠け眼で黒は半眼しかありません。なので包囲している白の薄みを突いて中央に出て行きましたが、白はその調子で同じく中央に進出し、下辺で取られかけていた石が働き、後にそれを生還させる手が残りました。中央の競い合いで、白の「天狗の鼻ヅケ」が決まり、黒のタネ石4子を取り戦果を上げました。黒はその代償として中央の白を攻めようとし、左辺にモタレて行きました。この時、白は中央を重視し左下隅を捨てたのが好判断で、黒は左下隅を大きく地にする戦果を上げましたが、中央の力関係が逆転し、右辺からの黒の大石が攻められました。この黒を白は激しく攻め、左辺の自分の模様に追い込みました。このため黒が活きてしまうと形勢が悪化する所でしたが、結局劫になって黒が右辺で眼を作る手を劫材にしたのを譲って劫に勝ち、左下隅と左辺の地を大きく確定し、一番大きな下辺の1子に連絡する手を打ち、勝勢になりました。その後すぐ黒の投了となりました。一力遼NHK杯選手権者の早碁での手の見えの速さと形勢判断の正確さが光った一局でした。