ドイツ語の tralaticisch の意味

マックス・ヴェーバーの「ローマ土地制度史」の日本語訳を開始していますが、序論の中に„„Tralaticische” Quellencitate habe ich thunlichst beschränkt verwendet.” という文章が出てきます。この„tralaticisch”という形容詞が、紙の辞書、オンラインの辞書とも出てきません。(グリム辞書、Dudenも全部ダメでした。)しかしググるといくつかの昔のドイツ語文献で使用されているのが確認出来ました。おそらくこの形容詞は英語での相当語は”tralatitious”ではないかと思います。もしそうならOEDによれば、語源はラテン語のtrālātīciusです。その場合の意味は、「伝統的な、代々伝えられてきた、慣習となっている、通常の」と言ったものです。ここでは「伝承的な文献引用については、私は出来る限りそれに準拠しないように努めた。」という訳になるかと思います。ローマ法というのは、十二表法という原本が失われており、その後に出た法学書に引用されている条文から元の法文を再現することが行われています。また、ユスティニアヌス帝によるローマ法の再現である学説彙纂について、ヴェーバーの時代に編纂者が表面的に辻褄が合わない所を恣意的に変えた可能性がある、ということで見直しが行われていました。そういう背景から理解すべき文であると思います。また、ヴェ-バーの特に初期の文献にはこういうラテン語をそのままドイツ語にしたようなのが時々出てきます。