NHK杯戦囲碁 内田修平7段 対 羽根直樹9段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が内田修平7段、白番が羽根直樹9段の対戦です。序盤は比較的オーソドックスな布石かと思いましたが、右下隅にかかった白石を放置し、白が左下隅をコスみ、黒が右下隅をコスミ付け、白が立って黒が隅からケイマした所で白はこの2子を直接動かず、下辺を左から詰めました。黒は白2子を封鎖し、白は詰めた下辺の石からケイマしてこの2子に連絡しました。この結果、黒の勢力対白の実利というこの碁の碁形が決まりました。その後右上隅の攻防になり、ここでも白は実利を稼ぎ、黒は右辺を模様にしました。この攻防で先手を取った黒は左上隅の掛かりっぱなしになっていた所からかけ、白が上辺を張ってここでも白は実利を稼ぎ、黒は左辺も模様にしました。黒がさらに上辺を押していった過程で黒がちょっと上手い手を打ち、白地を5目くらい削減することに成功しました。この辺りでは黒が悪く無かったと思いますが、ここからの羽根9段の打ち方が巧妙で、下辺から無理せずに自然に左辺および中央に進出しました。ここで黒が下辺の白に利かそうとしたのがある意味逸機で、白は受けずに左辺を打ちました。結果的に下辺の白地は大きく削減されましたが、それ以上に黒の中央に出来る筈だった地がほとんど見込めなくなった方が大きかったようです。その後黒は左下隅で出切りを敢行し、左下隅に手を付けて劫にしました。劫材は黒の方が豊富だった筈ですが、黒は妥協して白2子を取り込みましたが、白も左下隅で活きて、この結果は白が悪くなかったと思います。その後黒は切り離した中央の白への攻めも中途半端で、結局コミの負担が大きく、白の中押し勝ちとなりました。羽根9段の余し作戦がきれいに決まった感じです。

天頂の囲碁7

天頂の囲碁7がAmazonに出ていて、予約購入できるようになっていました。11月17日発売予定。説明見ると、井山裕太六冠王を始めとしてプロ棋士に勝ったバージョンと同じみたいで、棋力は9段になっています。これは期待します。
天頂の囲碁6は九路盤互先で打っている限り、以前見いだした必勝パターンで勝つことが多くなり、つまらなくなって最近あまり対局しなくなっていた所でした。

NHK杯戦囲碁 一力遼7段 対 潘善琪8段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が一力遼7段、白番が潘善琪8段の対局です。一力7段は若干20歳ですが、既にタイトル戦挑戦者になり、ポスト井山裕太の最有力候補です。布石はオーソドックスなものでしたが、左辺は黒が左下隅と左上隅に両方にかかり、白も大人しく受けたので、黒が言い分を通したような形になりました。先手を取った白は右下隅にかかり、黒が二間に挟んだのに対し白はカケ、黒が出切るという定石になりました。白が切られた後、定石通り挟んだ黒の右横に付けていきましたが、ここで黒は伸びました。白は黒の切った石を右から当てて行き、調子で左側の石を出て行って黒石を裂かれ形にしました。しかし白も右側の2子を犠牲にしており、互角のワカレでした。次に右上隅の攻防になり、白はかかった後挟まれて、両ガカリし、その後三々に入って隅の実利を取りました。その後黒は左上隅の白に肩付きした後右に一間に飛んで、右上隅の黒の壁に接近している白の攻めを狙いました。白は左側に大ゲイマし、中央へ逃げようとしました。黒は肩付きして一間に飛んだ所に一手かけてカケツギの形にしました。このカケツギへのノゾキが利くかどうかが結果的にこの碁の焦点になりました。白は準備した上でノゾキを決行しましたが、黒が継がずに覗いた白の上に付けたのが上手い受けでした。白はそれに対し更に上に付け返しました。しかし黒は1目を捨てて白を封鎖することが出来ました。白からは黒を切れば劫に出来たのですが、その劫に見合う劫材がどこにもなく、劫は決行出来ず、別の所から中央に逃げました。この結果、左上隅から中央にかけて黒が素晴らしい厚みを築きました。この厚みを背景に、黒は左下隅でツケコシを決行し、左下隅と中央の白を分断しました。結果的に白は左辺から中央の石、上辺から中央に伸びた石、そして下辺右の石と、3カ所に活きていない石が出来ました。白は色々手を尽くして、結果としては3カ所共に活きましたが、その間に黒に色々と余得を図られ、この時点で黒がはっきりリードしました。黒は更に左上隅の白にも手を付けていきました。これは二手ヨセコウでしたが、結局白に劫材がなく、白の投了となりました。

武宮正樹9段の「武宮の形勢判断 地を囲わない努力」

武宮正樹9段の「武宮の形勢判断 地を囲わない努力」を読了。武宮正樹9段の最近の本をマイナビのサイトで見かけて買ってみようとAmazonでレビューを見たら、「最近の武宮9段の本は同工異曲で、取り上げている棋譜も同じものが多くてまったく新鮮味がない」とされていました。それでその本を買うのは止めましたが、その人が褒めていたのがこの本です。(出版は2003年)武宮9段は若い頃は宇宙流と呼ばれる大模様の碁が有名でしたが、年が進むと単純な大模様は少なくなり、むしろ全体に厚い碁が多くなったように思います。この本はそんな厚い打ち方の解説の本です。「厚い」打ち方をすると、どうしても相手に先に地を与えるので、アマチュアである我々はつい焦ってしまいますが、この本で解説されている武宮9段の棋譜は素晴らしく、まったく地が無いように見えて、後半追い上げていく様が見事だと思います。また厚い碁で勝つには力も相当必要で、相手が無理手を打ってきたら的確に咎めて得をしなければなりません。そういう意味で厚い碁は、力のある人向けの戦法なのかもしれません。とはいえ、この本で解説されている打ち方はとても自然で、アマチュアにも非常に参考になります。

大橋拓文の「囲碁AI時代の新布石法」

大橋拓文(プロ棋士6段)の「囲碁AI時代の新布石法」を読了。大橋6段は、アルファ碁の棋譜の分析で最近名前を良く目にする棋士です。アルファ碁やDeepZenの打ち方に触発されて、昭和の初めに囲碁界に革命を起こしたいわゆる「新布石」の打ち方を見直してみようとしている本です。新布石は、昭和8年に呉清源と木谷実という2人の天才棋士が考え出したもので、それまでの隅をまず打ち、次に辺へ展開し、という順序の打ち方を180°転換して中央の重視を打ち出した打ち方です。囲碁ライターでプロ棋士級の棋力もあった安永一が本を書いて、それが囲碁の本としては異例のベストセラーになりました。(私も持っています。)この新しい布石は当時のプロ棋士の間で一時爆発的に流行するのですが、やがて古い布石との融和が起こり、星や三々を多用する現代布石となって落ち着きます。また発展として武宮宇宙流となって花開きます。この最初に爆発的に流行した時に実に意欲的な布石が多く試されたのですが、結局結論は出ずブームは去ってしまいました。最近のプロの碁は、国際棋戦を代表として持ち時間が3時間程度と短くなり、布石であまり時間を使うのは不利であり、プロ棋士の間であまり斬新な布石が打たれることはありません。例外は、張栩9段と蘇耀国8段がNHK杯戦で見せたブラックホールぐらいです。この本では同じブラックホールの名前でも中央で正方形に構える打ち方が推奨されています。アマチュアは自由に打てるのですから、どんどん新しい布石を試せばいいのですが、斬新な布石はその後の構想力が強く求められるため、なかなか最後まで勝ちきるように打つのは大変です。AIの囲碁に関しては、布石については人間の真似でそんなに斬新な布石を打っているという記憶はなかったのですが、GodMovesという謎の打ち手(たぶんAI)が現れ、初手天元や、中央での一間構えを打ったそうです。
戦いの本とか詰碁の本は棋力が要求されますが、そういうのに比べると布石の本は気楽に読め夢もあるので、お勧めです。