NHK杯戦囲碁 青木喜久代8段 対 張豊猷8段

本日のNHK杯戦の囲碁、今日はTOEICでの外出だったので、先日買ったブルーレイレコーダーが初めて役に立ちました。黒番が青木喜久代8段、白番が張豊猷8段の対局。青木8段は、これまで女流タイトルを11期獲得した強豪です。これまで女性棋士の最高段位は8段までですが、是非とも9段を目指して欲しいと思います。将棋と違って囲碁では男女の差は大きくありません。張8段は王立誠9段門下の台湾出身で、名人戦リーグ在籍経験もある強豪で、ハードパンチャーです。(張8段の趣味はボクシングなので、両方の意味で。)
対局は青木8段の中国流からお互いに模様を張り合う、最近はやりのAI的な打ち方ではなくオーソドックスな布石です。白は左上隅から大ゲイマに打って黒に受けさせてから、右上隅の三々に入りました。これに対し、黒は定石通りではなく、一本押さえた後はケイマに外して先手を取りました。この先手で左下隅に掛かりましたが、白に一間にはさまれ三々入り。定石が進行しましたが、白は2線の石を捨てずに引っ張りだし、ここから戦いになりました。黒の青木8段はこの戦いで、ほとんど最強とも言えるような強気の手を連発し、張8段がその勢いに押されて受け一方になってしまったという感じで、結果としては白だけが弱石を中央に抱えた形になり、黒が局面をリードしました。黒は右辺の折衝でもうまく立ち回り、大場として残されていた右上隅のハネに回り、さらには左上隅の三々にも入って地合でもリードしました。しかし、右辺で守りの手を打ったのが緩着で、さらには白が右下隅にすべったのを止めようとしてツケコしたのが悪手で、地も損しましたし、何より下辺の黒がとたんに薄くなってしまいました。白がこの黒を攻めていた手どころで、右辺から中央で白2子をアタリにしたのが敗着で、白は受けずに下辺の黒に覗きを打ち、結果として下辺の黒の右半分をもぎ取られてしまいました。黒は左半分で白を取って活きようとしましたが、この部分は劫付きでうまくいきませんでした。最後は中央で白を分断し、右上隅の白を全部取ろうとしましたが上手くいかず、黒の投了となりました。青木8段にとっては惜しい一局でした。

洪道場編の「進化を続ける アルファ碁 最強囲碁AIの全貌」

洪道場編の「進化を続ける アルファ碁 最強囲碁AIの全貌」を読了。この本は藤沢里菜女流本因坊のツィートで知りました。まず洪道場というのを知らなかったのですが、洪清泉三段が主宰するアマ・プロを問わない研究会(道場)なのですが、そこから出てきた棋士がすごいの一言で、一力遼7段、平田智也7段、呉柏毅 3段、芝野虎丸3段、そして藤沢里菜女流本因坊などがこの道場の出身です。
この本は、その洪道場のメンバーが、アルファ碁の進化版であるMasterが早碁で超一流棋士60人(重複有り)と対局した棋譜を検討したものです。ご承知の通り、早碁とはいえ、この60局の全てでMasterが勝ったのですが、ともかくMasterの強さに恐れ入ります。その強さというのは人間より読みが優れているというのではなく、構想が人間の上を行っている、形勢判断が人間より優れているという印象です。従って坂田栄男9段みたいな鋭い手(鬼手)が飛び出てそれで勝つと言うより、棋聖秀策や、全盛期の呉清源9段、または藤沢秀行名誉棋聖のような、打ち回しの素晴らしさで勝っている印象を強く受けます。とはいっても、Masterの強さは人間の棋譜をディープラーニングで学習することで得たものであり、人間の手から飛び離れているかというと、そこまでは感じません。今後Masterはもう人間との対局はしないとのことですが、今後はMaster独自の方法論を生み出して更に強くなって、人間に色々と囲碁に対するヒントを与えて欲しいと思います。

NHK杯戦囲碁 陳嘉鋭9段 対 芝野虎丸3段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が陳嘉鋭9段、白番が芝野虎丸3段の対局です。陳嘉鋭9段は中国出身の棋士で、世界アマ選手権で優勝した後関西棋院でプロになり、本因坊リーグ、名人リーグにも参加したことのある強豪です。一方の芝野虎丸3段は、洪道場出身でまだ17歳ですが、ポスト井山裕太の最有力の一人です。対戦は黒が上辺に展開したのに白が右上隅にかかっていき、黒がそれを一間に高くはさんで、早くも競いあいになりました。その後上辺から延びた白を黒が攻める手を打った所、白は出切りという最強の手で応えました。黒は白の気合に押されたのか、切られた石を捨てました。この時、せっかく捨てたのなら押しも決めるべきだったと思いますが、黒はここで手を抜いて右下隅のかかりに転じました。すかさず白は中央の黒にノゾキを決め、更に上辺から延びた石からコスみ、黒がケイマに飛んだのを強引に切断に行きました。この結果、黒は中央に弱石を2つ抱えることになり、白が打ちやすくなりました。その後黒は中央の白と右下隅の白を分離しましたが、右辺と中央と両方しのがなくてはいけなくなりました。白は右辺に手を付けていき、結果として黒6子を先手で打ち抜くという戦果を上げました。黒は右辺の半分がようやく右上隅に連絡しただけで、ここで白が地合も優勢になりました。白はその後も緩まず、下辺を攻め、また先手で左辺に回り取り残された黒を攻めました。この攻防で白は地を稼ぎ、左下隅も大きくまとまって勝勢になりました。最後は中央の黒の眼を取って活きをなくし、ここで黒の投了となりました。ともかく芝野3段の強烈な攻めと手所での正確な読みが光った一局でした。

NHK杯戦囲碁 清成哲也9段 対 許家元4段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が清成哲也9段、白番が許家元4段です。清成9段は私と同じ年齢の関西棋院のベテラン、許4段は台湾出身の19歳で、最近各棋戦で活躍しています。対局は上辺で黒が左上隅の白にかかって白が1間に挟んだのに黒が手を抜いて右上隅を締まり、白がその締まった石に肩付きしてという、アルファ碁の打ち方に影響を受けた最近ありがちな展開になりました。黒はその後左上隅で挟んだ白に付けていって治まりを目指しました。その折衝の中で、黒は白1目を抱えましたが、白は左上隅から這いを効かそうとしましたが、黒は効かされとみて受けず、左辺を打ちました。白がその石に付けてきてツケオサエで隅を治まりに行きました。黒は当ててできた2つの断点について、下の石を下がるという一番頑張った手を打ちました。この時黒は切られた石をすぐ延びず、隅に曲がって行き、更に隅にハサミツケを打ちました。しかし白はそれを受けず、切った石から当たりを打ちました。一連の折衝の結果、黒は左上隅の地をかすって地に辛く頑張りましたが、白が全体的に手厚くなりました。白はその後下辺を大きく模様にしました。これに対し黒は左辺の白を切っていき、中央進出を図りました。ここの折衝は劫になりましたが、黒は劫立ても兼ねて下辺に手を付けていきました。ここで白が左下隅の黒に差し込んでいって継ぎ方の様子を聞いたのが好手で、下辺に黒が眼を作るのが難しくなりました。黒は中央に出て行き、結果的に活きましたが、その間白は今度は右辺を大きな地にしました。またどさくさに紛れ、劫にも勝って継いで、中央の黒を取り込んでしまいました。これで白が勝勢になり、その後黒は中央に進出を図りましたが、白地削減は限定的であり、ここで黒の投了となりました。許4段はNHK杯戦で初勝利です。

NHK杯戦囲碁 坂井秀至8段 対 志田達哉7段

本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が坂井秀至8段、白番が志田達哉7段の対戦。坂井8段は灘高から京大医学部に行って医者に1回なっておきながら、そこからプロ棋士に転向した変わり種。そういうコースをたどった棋士としては東大出てから銀行員になった後プロ棋士になった石倉昇9段もいるのですが、坂井8段はそういう遅いスタートでありながら碁聖のタイトルを取っている所がすごいです。対する志田7段は、26歳ですが既に各棋戦で活躍中の若手です。対局は黒の坂井8段が2連星でスタートし、途中で3連星にしたのが珍しいです。白が右上隅の黒の星にいきなりスソ掛かりしたのがまた珍しい打ち方でしたが、その結果白は上辺を目一杯模様にし、白が悪くないと思いました。白が右辺の黒模様を消した後、黒は上辺の白模様に手をつけて行きました。結果として黒は先手で活きましたが、白も中央が厚くなり、右辺からの石が安定したので白が悪くなかったと思います。その後白は中央の厚みを生かし左辺の黒に打ち込んで行きました。折衝の結果左辺は劫になりました。この劫は黒が勝って若干形勢を盛り返したように思いましたが、白も右辺を連打できたので、形勢としてはやや白が打ちやすいのは変わりませんでした。寄せで双方最善を尽くしたように思いますが、終わってみれば白の半目勝ちでした。