NHK杯戦囲碁 山下敬吾9段 対 高尾紳路9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が山下敬吾9段、白番が高尾紳路9段の一戦です。対局者に加え、解説が羽根直樹碁聖で、平成四天王の三人が揃いました。全員まだ十分に第一戦で活躍中で、山下9段は井山裕太三冠と何度も七番勝負での激戦を繰り広げましたし、高尾9段は名人戦でその井山三冠の七冠をストップしましたし、羽根さんは現役の碁聖です。
序盤は懐かしい感じの昔風の対局という感じでしたが、右下隅から延びる白と、上辺右に黒模様を消しに行った白、この二つの白の一団への黒の攻めが迫力満点でした。黒はこの二つの白を分断する手を打ち、まず上方の白の受け方を聞きました。白は妥協して白2子を取らせて中央と右辺を連絡させました。その代り右上隅の黒を脅かして、それで活きようとしました。そこは結局黒から打って活き活きになるところでしたが、黒は決めずに放置しました。そして今度は本命はこちらだと言わんばかりに、右下隅から延びる白に強烈な攻めを行いました。これは単に攻めて得を図るという感じではなく、取ってやろうという感じでした。しかしここで高尾9段が下辺で跳ね出し、黒が跳ね出した石を取っても、逆を継いでも、どちらかが利く、という巧妙な手を繰り出し、白のシノギが見えて来ました。結局最終的には劫になり、お互いに損にならない劫立てを打った後、白が包囲する黒に切りを入れた後、黒がこの切った白をポン抜き、白が劫を継いで活きるという別れになりました。この別れはポン抜きが厚く、黒は悪く無かったと思います。その後、黒はこの厚みを生かして左下隅から左辺の白地を侵略に行きました。しかしながら、ここの打ち方がわずかに白の方が優っていたようで、ここで白が逆転して優勢になったようです。終わってみれば白の1目半勝ちでした。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の12回目を公開。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の12回目を公開しました。今回は注釈のラテン語(蝋を塗った板に釘みたいなので書かれたものを解読したもの)の翻訳が大変でした。ラテン語金石碑文大成という18万もの碑文を集めたものの中に入っているソキエタスについての契約の文章ですが、さすがにこれは英訳は出ていないようです。英訳者のLutz Kaelberの英訳がちょっと怪しく思えて調べるのに時間がかかりました。

「アスペルガー症候群」の本

ちょっと気になって「アスペルガー症候群」の本を読んでみました。読んだ理由は例のグレタ・トゥーンベリさんがアスペルガー症候群だと聞いたからと、前から自分の性格もこれに近いんじゃないかと思っていたからです。だって社交性に乏しいとか、好きなものには極端にのめりこむとか、相手にとっては悪口になることも率直に言う、とかまさにその通りです。それにグレタ・トゥーンベリさんについても結構親近感を感じるんですね。この本には「アスペルガー症候群は病気ではない」とありますが、「発達障害」という言葉もどうかと思います。何故すべての人がすべての属性で最低限平均レベルにならないといけないのでしょうか?何かが苦手でも別のものが得意であればそれを活かしていけばいいと思うんですけど。日本人だから空気を読まないといけない、とかも私は嫌いですし。最近アスペルガーに限らず、何でも「病気」とか「異常」にしたがる傾向が感じされてちょっと気持ち悪いです。金子みすゞさんの詩じゃないですが、「みんなちがって、みんないい。」だと思います。このことは企業における人の評価にも通じます。能力評価とか見ていると、すべての項目でバランス良く得点しないと高い点にはならないようになっているのがほとんどです。でもそういう評価をやっている方の私より上の人で、そんなバランス良く色んな能力を持っている人って私は今までほとんど見たことないですけど。

宇宙家族ロビンソンの”The Toymaker”

宇宙家族ロビンソンの”The Toymaker”を観ました。以前一度登場した、宇宙のデパートの自動通販マシンが再度登場します。前回は女性アンドロイドが出てきましたが、今回は逆にドクター・スミスとウィルがマシンの中に吸い込まれ、二人とも売り物のオモチャとなってしまいます。二人が飛ばされた世界はオモチャの倉庫で、そこで不思議なオモチャ作りの職人がいて、二人をオモチャだと思い込みます。二人は倉庫の窓から地球の丁度クリスマスの様子を眺め、何とか脱出しようとします。(本来はクリスマスシーズンに放送される筈だったみたいです。)脱出は失敗しますが、ロビンソン博士とロボットが二人を救出しに来ます。ロビンソン博士は言葉巧みに、助けてくれたらロボットのようにゼンマイではなく太陽電池で動くオモチャの作り方を教えるといってオモチャ職人を味方に付けます。オモチャの倉庫の世界がちょっと面白いですが、ストーリー的には子供向けという感じです。ドクター・スミスがピエロとしてアンドロメダの子供たち(身長が23m)に売られそうになるのがちょっと笑えます。

保阪正康の「高度成長ー昭和が燃えたもう一つの戦争」

保阪正康の「高度成長ー昭和が燃えたもう一つの戦争」を読了。この本を読んだのはある意味私自身の拠ってきたる所、精神的なルーツ探しの一環です。私の中に、ある種の「ガンバリズム」みたいな部分があって、それは自分で振り返ってみて、明らかに幼少期にいわゆる「スポ根」のドラマやアニメを観て育ったのが大きいと思います。ところがそういったスポ根ものは純粋なフィクションとして自然に登場したのではなく、大松博文監督と東洋の魔女とか、相撲の横綱の初代若乃花(「土俵の鬼」と呼ばれた)とか、現実の方が先行していた訳です。そうなるとその大松監督や東洋の魔女の女子バレー選手達が、あそこまでひたむきに、お金になる訳でもないのに(相撲はお金になりますが)、一つのことに打ち込めたそのエートスはどこから来るのか、という疑問がマックス・ヴェーバーを学んだ者としては当然出てきます。大松監督も東洋の魔女も、その当時として特別に珍しい人間類型という訳ではなく、おそらくは当時の人のかなりの部分はそこまで徹底してはいなくても、結構近いような働き方をしていたのではないかと思います。だからこそ皆が同調して感動したんだと思います。
そこでこの本ですが、ちょっとエートスの部分は置いておいて、いわゆる高度成長という物が、後から振り返ると当たり前の事のように思えるのですが、実際は池田勇人首相とそのブレーンが意図的にそちらに日本全体を引っ張っていったのだなということが発見でした。私には池田首相は、病気ですぐ辞任したという印象が強かったのですが、実際は4年半くらい在職しています。その後の佐藤栄作首相はある意味、池田首相の引いた路線をそのまま継承して進めたという意味が強いと筆者は解釈しています。
エートスというか、高度成長を支えた国民各層の当時「モーレツ」とも形容された頑張りを、筆者は戦争路線の失敗に求めており、満州事変から終戦までの14年と、池田首相の「所得倍増計画」から石油ショックまでの14年とを対比させて分析しています。そして特に海軍の主計将校と言われた戦争での経理を担当した人達が、戦後各界で日本を引っ張っていったとし、その共通する精神は戦争時の日本の無謀さを十分に反省し、経済の分野でその反省を活かして高い成長を実現する、としています。
まあ筆者によると、大松式のモーレツ主義は、1960年代の後半になると早くもほころび始めており、あまりにも早すぎる成長の歪みの実感と、豊かになったことの裏返しで、いわゆるレジャーにいそしむ若者などが登場するようになったとしています。
60年代の日本のエートスを考える上で、戦争の影響は確かに避けて通れないでしょう。大松博文監督もインパール作戦の生き残り兵士ですし。それはそうですが、何かちょっとすっきりしないというか、あまりにも単純化した解釈だと思いますが、さらに突っ込んだ解釈は今後の課題です。

坪内祐三さんの死

坪内祐三さん死去、61歳、早すぎる…
同氏は雑誌「東京人」で小林信彦に執筆を依頼しており、小林信彦ファン。文庫本での小林信彦の小説に対し、解説を書かれていました。「昭和の子供だ君たちも」は戦後の学生運動史という点で参考になりました。
謹んでお悔やみを申し上げます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00000032-asahi-soci

宇宙家族ロビンソンの”The Qesting Beast”

宇宙家族ロビンソンの”The Qesting Beast”を観ました。
Jon Abbottのアーウィン・アレンのTV作品の解説本に、「宇宙家族ロビンソンの全話の中でもっとも駄目な話の一つ」とあります。まさにその通りで、ある「宇宙の騎士」(テッカマンではない)が、40年間グンダマーという火を吹く竜を追いかけているのですが、その竜と騎士の服装が、まるで「おはよう子供ショー」といった感じで、きわめてチープの子供だましという感じです。それでもちょっと面白いのは、最初はウィルが騎士にあこがれていて色々学ぼうとしていたのを、途中からただの嘘つきだと思うようになり、きわめてシニカルになってしまうことです。それに対しドクター・スミスが今回は何故か珍しくいい役で、ウィルに対してそんなシニカルな態度は早すぎる、と説教し、騎士を焚きつけて竜が隠れている洞窟を教えて対決させます。でも結局この竜と騎士はある意味なれ合いの遊びでずっと追いかけっこをやっていたことが最後に暴露されます。何だかなあ、です。

今年の我が家の神棚


令和2年版の我が家の神棚です。一番左は去年は鹿島神宮(ネット販売で入手)にしていましたが、今年は初詣に行った妙義神社のにしました。今日からまた気持ちを新たに新しい年にベストを尽くしたいと思います。

NHK杯戦囲碁 富士田明彦7段 対 一力遼NHK杯選手権者


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が富士田明彦7段、白番が一力遼NHK杯選手権者の対戦です。全体に戦いに次ぐ戦いで、振り替わりも何度もあり、プロらしい見応えのある碁でした。まずは右下隅で白がかかってハサミに掛けて、黒が出切って行き、いきなり激しくなりました。黒は隅を捨てるかと思いましたが、活きに行きました。そうなると下辺の白は単独で活きるには二線を這うしかありませんでしたが、白は出切って行き、白8子を捨て石にして締め付けを狙いました。この作戦は成功で、下辺で厚くなった白は左下隅の黒を攻め、主導権を得ました。この攻防が焦点になりましたが、黒も鋭く反撃し、一時は双方で眼の無い石が2グループずつあるというのっぴきのならない戦いになりました。結果的に黒は白2子をシチョウに取って左下隅からの石が安定し、代償に白は黒の中央のタネ石5子を取り込みました。この結果は黒先手で大きな右辺の押さえ込みに回れたので、黒が悪くなかったと思います。その後の戦いの焦点は右上隅で白が付けて右辺に展開しました。右辺を侵略された代償に黒は上辺の白に打ち込みました。ここで白が取れないシチョウを2回追いかけたのが、狙いすました好手で、シチョウの取り、下辺の攻め合いで取られている白の復活、右辺の先手での安定化と地の確保の三方狙いで、黒は何とか最初の2つはしのぎましたが、右辺は攻められていた白が地を持って安定し、なおかつ取られていた白3子が復活する手が残りました。これで白が優勢になりました。最後黒は右辺で劫に持ち込みましたが、劫材は白に多く、最後受けると劫に負ける時の被害が大きくなる手を白に劫材として打たれ、ここで黒の投了となりました。一力遼NHK杯戦手権者の読みの深さが光った一局でした。

河西昌枝の「お母さんの金メダル 家庭は気心、バレーも気心」

河西昌枝さんの「お母さんの金メダル 家庭は気心、バレーも気心」を読みました。大松監督+東洋の魔女関係の読書としてはこれで一応打ち止めとしようかと思います。
河西さんは東洋の魔女の主将で最年長、東京オリンピックの時31歳です。その2年前に世界選手権で優勝した時には29歳でした。大松監督自身を含め、その時にはソ連を倒して世界一になるという目標を果たしたので、全員引退するつもりでした。ところがそれを発表すると、近づく東京オリンピックで団体競技の唯一の金メダルが取れる競技として世の中から大きな期待が集まっており、手紙などが殺到します。その時に「一番辞める権利がある」と思っていたのが河西選手でした。しかし結局河西選手が東京オリンピック出場を決意したことにより全員が同意し、大松監督も同じでした。
それで首尾良く金メダルを取ってから、河西さんが結婚にゴールインするまでの話が面白いです。大松監督は河西さんの父親(東京オリンピックの3ヵ月前にツツガムシ病で死亡)に、「河西選手の結婚は私が責任持って面倒見ます。」と約束していました。それで金メダル後は奔走し、4つのお見合いをアレンジしたそうです。ところが河西さんは結構要求が厳しく「私より背の低い人は嫌」(河西さんは174cmで当時としてはかなり高いです。ちなみに亡母も167cmで河西さんほどではないですけど当時としては背が高く、結婚するとき自分より背の低い男性は嫌だったと言っていました。亡父は173cmでした。)「気が弱そうな人は嫌」ということで、大松監督もほとんど匙を投げかけてしまいました。そんな時大松監督の講演をたまたま聴いていた、作家の山岡荘八さんが「佐藤栄作首相の奥さんが、縁談をまとめるのが趣味だから相談してみたら」というアドバイスをし、それで結局佐藤栄作総理夫妻が紹介した自衛官の33歳の男性(ちなみに身長は172cm)と、総理夫妻の媒酌で結婚することになります。当時、「スター千一夜」でTV中継されたそうです。
それから河西改め中村昌枝さんは、男の子2人、女の子1人の子宝に恵まれ、姑さんとの仲もうまくいき、幸せな結婚生活を送ります。そして女優の淡島千景さんの支援で、「フジ・クラブ」という元魔女中心のバレーチームを作り、何と国体で優勝します。そして一般選抜という枠でNHK杯に出て、決勝まで勝ち進み、決勝でなんとニチボーチームと対戦します。結果はニチボーチームの勝ちでしたが、何ともすごい方々です。
河西さんのエピソードで忘れられないのは、チーム最年少の磯辺サタ選手が何かの病気で一週間入院していた時に、お見舞いに行ったのはいいのですが、その時にかけた言葉が「ゆっくり休めていいわね。」でした。磯辺選手は、「見舞いに来たのかイジメに来たのか」と思ったそうです。でも、要するに6人は一人でも欠けてはいけない、早く復帰して欲しい、という気持ちがそういうことを言わせたのだと思います。ただ、強烈な人であることは確かです。