落語、今度は志ん朝の「居残り左平次、雛鍔」。「居残り左平次」は、川島雄三監督の「幕末太陽伝」の元になっているお噺。品川の遊郭でさんざん遊んで、そのまま居残ってしまい、結局お金を払わないで出てきてしまう、佐平次の口のうまさ、たくましさが志ん朝によって生き生きと描写されています。「雛鍔」はお武家の子供が、穴開きのお金を知らないで、「お雛様の刀の鍔だろう」としたものを、町家の子供がちゃっかり真似をしてお金をせしめるお噺です。
投稿者「kanrisha」のアーカイブ
小林信彦の「オヨヨ島の冒険」
古今亭志ん朝の「唐茄子屋政談」
落語、志ん生の「唐茄子屋政談」が前半だけだったので、全体を通して聴きたくなって、志ん朝のを取り寄せました。前半部は奇しくも親子の聴き比べになりました。全体にぞろっぺえの感じがする志ん生に対し、志ん朝のは噺の内容が細かく補足されていて、私には志ん朝の方が好ましく思いました。噺の内容としては、遊びが過ぎて勘当された若旦那が、身投げをしようとしていた所を叔父に見つかって止められ、叔父の家に居候して唐茄子(かぼちゃ)を売る行商として働くことになりますが、唐茄子の売上げを不幸な女性にあげてしまいます。そのお金を因業な大家が取り上げてしまったのを、若旦那が知って、大家の所に乗り込んで大家を殴ります。このことがお上の知る所になり、大家は罰を受け、若旦那にはお褒めの賞金が出て、勘当も取り消されるという、「情けは人のためならず」の噺です。通して聴いて、人情噺の傑作と思います。志ん朝は自身が落語界の若旦那的な存在だったせいもあると思いますが、若旦那を演じさせると本当にいいですね。
筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」
筒井康隆の「ビアンカ・オーバースタディ」を読了。
昔、「時をかける少女」のジュブナイル小説を書いた筒井康隆がライトノベルに挑戦したもの。といっても筒井康隆なんで、そのまま単なるライトノベルを書くはずがなく、ライトノベルでありながら、ライトノベルのパロディ、からかいになっています。
「涼宮ハルヒ」シリーズのいとうのいぢのイラスト付き。
目次を見るだけで既に爆笑で、全部の章が「~スペルマ」で終わっています。
第一章 哀しみのスペルマ
第二章 喜びのスペルマ
第三章 怒りのスペルマ
第四章 愉しきスペルマ
第五章 戦闘のスペルマ
何でかというと、美少女高校生のビアンカが生物部という設定で、放課後にウニの生殖実験をやっていて、それにあきたらず人間の生殖を観察したくなって、自分のファンの下級生の男子のスペルマを採取する(つまり抜いてあげる)から、こういうタイトルになっています。
ラノベながら、ちゃんとSFにもなっていて、かつ文明批判的な要素も入っており、また筒井康隆自身の60-70年代のスラップスティックの雰囲気がよく出ています。
筒井康隆ももう80歳を超えているんでしょうが、こういうのをまだ書ける、っていいと思います。
フラバァ(The Absent-Minded Professor)
ウォルト・ディズニー・スタジオの1961年の映画、「フラバァ」(うっかり博士の大発明 フラバァ)を取り寄せて観ました。亡父が、私が小学4年生の時に、一度だけ連れて行ってくれた映画が「トラ・トラ・トラ」でその時にリバイバルで併映されていたのがこの「フラバァ」でした。コメディー映画の傑作です。お話しは、ある大学の化学のブレイナード教授が、いつも怪しげな実験を繰り返しているのですが、偶然に、フラバァ(Flying Rubber → Flubber)という物質を作り出してしまいます。この物質は弾力性にすばらしく富んでいて、またそれ自体がエネルギーを持っていて、これをくっつけるとくっつけられたものは宙に浮きます。
丁度ブレイナード教授の大学のバスケット部とライバル大の試合がありましたが、教授の大学のチームは身長が低く、ライバル大にまったくかないません。ですが、ブレイナード教授がチームの選手のバスケットシューズの底にフラバァをくっつけたので、選手達は驚異的なジャンプ力を身につけ、試合に逆転して勝ちます。このバスケットボール試合のシーンが爆笑ものです。
また、フラバァの力を知った成金が、だまされてフラバァ付きのシューズを履かされ、ジャンプし始めると止まらなくなり、TV中継がやってきたり消防署がやってきたりと大騒ぎになるシーンがまた爆笑ものです。子供たちがこのジャンプのシーンを眺めながら、アイスキャンデーを舐めているのですが、ジャンプで上下するのに合わせて子供たちがアイスキャンデーを上下に舐めるのがまた笑えます。
教授はさらに、フラバァを自分のおんぼろT型フォードに組み込むと、このT型フォードは空を飛ぶようになります。教授はこのT型フォードでワシントンに向かって、自分の発明を政府に認めてもらおうとするのですが、UFOと間違えられてジェット戦闘機に追いかけ回されたり、ミサイルに狙われたりします。
小林信彦は、この映画を封切り時に観ていて、「地獄の映画館」の中で、スラップスティックコメディーの典型例として、この映画を高く評価しています。
この映画は1997年にリメイクされています。
古今亭志ん生の「唐茄子屋政談(上)、妾馬、井戸の茶碗」
小林信彦の「一少年の観た<聖戦>」
小林信彦の「一少年の観た<聖戦>」を再読。「ぼくたちの好きな戦争」と対になる本で、小林信彦自身が体験した戦前・戦中・戦後の時代を主として映画の観点からまとめたものです。なので「見た」ではなく「観た」になっています。戦争は特撮技術とアニメの技術を進化させ、また戦争中でありながら、黒澤明の「姿三四郎」や、稲垣浩の「無法松の一生」といった優れた映画が封切られています。戦争に入っても映画を見続けた小林少年ですが、それは集団疎開、縁故疎開の二度の疎開で中断を余儀なくさせられます。
戦争中、チャーチルやルーズベルトに対するどぎつい風刺漫画を書いていた近藤日出造が、戦争が終わると同じタッチで獄中の東条英機を風刺する漫画を発表し、小林信彦は「それはないだろう」という感想を述べています。
フレドリック・ブラウンの「火星人ゴーホーム」
古今亭志ん朝の「明烏、船徳」
NHK杯戦囲碁 志田達哉七段 対 趙治勲二十五世本因坊
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が志田達哉七段、白番が趙治勲二十五世本因坊の対局。志田七段は25歳ながら、NHK杯戦すでに6回目の実力者。趙二十五世本因坊はタイトル獲得数史上1位で現在も活躍する強豪です。対局は黒の志田七段が3手目に三々を打つなど地合で先行する打ち方。対する趙二十五世本因坊は早めに仕掛けて行き、戦いでは白が優勢でしたが、志田七段も各所で地を稼いで決め手を与えません。形勢は半目勝負で寄せに入りましたが、ここで志田七段の痛恨のポカミスが出て、アタリにされた黒3目をつがないで他を打ってしまいました。10目くらい損して折角の好局をふいにしてしました。白の中押し勝ちでした。