白井喬二原作、平田弘史の漫画による「名工自刃」

白井喬二原作、平田弘史の漫画による「名工自刃」を読了。「コミックマガジン」の1968年2月27日号に掲載されたもの。マガジン・ファイブ社から出た「平田弘史作品第四集 御用金」に収録されています。まず、白井喬二が漫画の原作を担当したという事実に驚きます。しかも漫画家が平田弘史というのはうれしい驚きです。お話は医者でありながら自ら手術刀を鍛え、それが昂じて日本刀を鍛えることになる加卜のお話。自分の信念に従って真っ直ぐ生きる主人公が非常に白井らしいです。加えて平田弘史の絵がまさにぴったりはまっています。故郷を出奔し、江戸で荒んだ生活を送っている加卜を長屋の人が助けて、それがきっかけで高田藩の御典医として取り立てられます。高田藩で若君の大怪我を見事な手術で救い、次第に名を上げていきますが、憎むものも多く…といった内容です。こういう作品が漫画とはいえ読めて良かったです。

白井喬二の「黒衣宰相 天海僧正」(5)(完読)

白井喬二の「黒衣宰相 天海僧正」の未読分18回を読了しました。これでようやく全83回の全てを読み終えることが出来ました。今回の分で、天海が家康の信頼を得るようになった過程がよく分かりました。天海が家康をもっとも感心させたのは、江戸を治めるにあたって、まず度量衡の制をきちんとしろ、ということを進言したことでした。
また全83回を読んで感じることは、晩年の白井喬二が、これで読者をうならせてやろう、といった邪な心無しで、丹念に天海僧正の一生を追って、丁寧な作品を残しているということです。非常に読み応えのある作品です。これが「大法輪」のバックナンバーを当たることでしか読めないのは、返す返すも残念なことで、どこかの出版社が単行本として出版する、あるいは2030年に著作権が切れた後に、青空文庫に収録されて万人が読めるようになることを切望します。

大西康之の「東芝解体 電機メーカーが消える日」

大西康之の「東芝解体 電機メーカーが消える日」を読了。何というか、中身の薄い本です。色んな人にじっくり取材して、よく調査して書いたという感じではなく、何かこの著者独特の「史観」みたいなものに基づいて、電機メーカー・電気メーカーの失敗をあれこれあげつらっているだけの本です。致命的な欠陥といえるのは、そういう失敗を挙げるだけで、ではこれからどうしていくのかという提言がほとんどないこと。やっているのは海外メーカーで成功している会社の例を挙げるだけで、そういうのなら誰でも出来ると思うんだけど。それからこの著者は日経新聞出身ですが、失敗を繰り返してきたエレクトロニクスメーカーの経営者にヨイショした記事をばらまいていたのはまさに日経新聞だと思うけど、その辺りの反省はまるでないですね。
また、「携帯電話もスマートフォンが普及し始めた2000年ごろまでは、NEC、パナソニック、シャープといった日本メーカーが世界シェアの上位に顔を出していたが」(P.31)という説明には笑ってしまいます。確かに2000年頃既にスマートフォンと称するものはありましたが、それはiPhone以降のものとはまったく別なマイナーなものでした。またいわゆるガラケーの頃の世界シェアはノキア、モトローラ、エリクソンといった海外メーカーが上位を占め、日本メーカーなど10位にやっと入るかぐらいで、日本メーカーが上位に顔を出していたことはありません。

中里介山の「大菩薩峠」第17巻

中里介山の「大菩薩峠」第17巻を読了。後3巻になりましたが、ほとんど確信に近くなってきたのは、拡げに拡げた話が全20巻では決して収束しないであろうということです。
時間的な進行は極めて遅いですが、地理的な広がりだけはかなりのものがあります。北から順番に書くと、
(1)石巻の無名丸に乗り込んだ駒井(元)能登守一行
(2)仙台周辺に逃げ込んでいる裏宿の七兵衛
(3)江戸の神尾主膳とお絹他
(4)甲州有野村に身を寄せている与八
(5)高山から白山に向かう宇都木兵馬
(6)胆吹山の麓にユートピアを築こうとするお銀様やお雪他
(7)琵琶湖に向かう弁信と米友
とこういった感じになります。(7)の弁信と米友は前に書いた順列組合せ的な登場人物のからみの典型例で、これまで出会ったことがないのがからむようになりました。
さて後3巻で劇的な展開はあるのか?たぶん無いような…

リンガフォンの「米語上級コース」

これまで英語に関しては色々な教材に手を出して来ましたが、その中でベストと言えるのは迷い無くこのリンガフォンの「米語上級コース」(Advanced American English Course)です。リンガフォンという語学教材の会社はもうなくなってしまいましたが、一番良質な語学テキストを出していたと思います。この「上級コース」をやる前に、「米語中級コース」を全部やってから、これに進みました。コースの最初がいきなりアメリカの大統領選の解説で、あの複雑な仕組みをわかりやすく解説してくれます。内容は、第一部がCulture、第二部がCommerce、第三部がColloquial American Englishで、スピーキングだけでなく、ライティングにも役立つ教材がたくさんありました。特に、ビジネスレターの章に載っている英文レターは良く出来ていて、そこに出てきた”You may rest assured that we at Ross Business Machines will do everything possible to meet your requirements.”のような表現は丸暗記して、実際に自分の仕事でも使いました。今はインターネットのオンライン英会話とかはあふれていますが、こういう良質な教材は見つからないですね。