トワイライト・ゾーンの”Cavender Is Coming”を観ました。見習い天使のカヴェンダーは失敗ばかりで、天使失格になる所を、最後のチャンスということで、アグネス・グレップというダンサーの若い女性の守護天使になり、24時間の間に彼女の人生を変えて幸せにするように命ぜられます。カヴェンダーは彼女のために豪華な邸宅を用意し、リッチなパーティーを彼女が開いたことにします。お客は皆グレップを称賛して行きましたが、アグネスはどこか戸惑ったままです。結局彼女はそのままの生活で十分な幸せを感じており、元通り子供達や友人達と暮すことを望み、カヴェンダーは結局全てを元に戻します。天ではカヴェンダーが多額の経費を使いながら失敗したことで、いよいよ天使失格の判定が出る所でしたが、しかし上級天使がアグネスの状態をチェックし、彼女が幸せいっぱいであることを発見します。何はともあれ、アグネスが幸せであるということは課題を果たしたということになり、カヴェンダーは他の人間を幸せにするように命ぜられます。
しかしカヴェンダーの思っている幸せがきわめて物質的で、アグネスの方が本当の幸せとは何だか知っているという、ちょっと皮肉が込められたエピソードでした。
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NHK杯戦囲碁 大西竜平7段 対 林漢傑8段(2023年8月20日放送分)
8月20日放送のNHK杯戦囲碁は(旧居の片付け作業でリアルタイムでは観られず、NHK+の見逃し番組視聴で観ました)、黒番が大西竜平7段、白番が林漢傑8段の対戦でした。大西7段は独特の囲碁においての世界観を持っていて、「大西ワールド」と呼ばれていますが、この碁はそれが全開でした。初手はなんと写真の赤丸を付けた所です。おそらくですが初手でここは史上初ではないでしょうか。それで白の2手目がその右に一間にかかる(?)手で、昔初手天元に対し、橋本宇太郎さんだったと思いますがやはりかかっていったというのを思い出しました。そういう訳で早速ここで戦いが始りました。白は大ゲイマというある意味軽快な手を打っていて、黒はそれを分断して攻めるのではなく、あくまでも全体を攻めました。白もそこで途中では捨てる方針だったと思いますが、黒があくまでも小さく取らないで全体を狙っていたので、結局中で活きることになりました。この別れはAIの判定では白良しだったようですが、良く分りません。白はしかし左上隅の戦いで、黒の断点を覗いていったのが疑問手で、黒が継がずに左上隅をハサミツケたのが機敏でした。ここはいったん劫になりましたが、結局黒は左辺に渡り、白地だった隅が黒地に転じ、ここで黒が若干リードしたようです。しかし勝負を決めたのは左下隅の戦いで、攻め合いになったのですが、白が二子をアタリにされたのに隅をハネて行ったのが失着で、二子を抜かれると攻め合いにならず、白が丸々取られてしまいました。こうなると白は地が足らず、ヨセで黒が固く打ったので最後は黒の2目半勝ちでしたが、白がこれ以降勝つチャンスは無かったと思います。
NHK杯戦囲碁 芝野虎丸名人 対 牛栄子女流最強(2023年8月13日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が芝野虎丸名人、白番が牛栄子女流最強の注目の一戦です。布石で黒は二連星の後、右辺に右下隅から大々ゲイマに開くという、中国流の変型のような、初めて見る形を披露しました。白が右上隅でダイレクトに三々に入ってから、右辺が黒、上辺から左上隅にかけてが白という模様の張り合いの展開になりました。そこで黒が上辺左というか左上隅に深く潜って行きました。ここからこの石の死活を巡って激しい差し手争いになりました。その結果中央で大きな劫が出来ましたが、白は臆することなく最強の手で応じ続けました。結果として、白黒双方に眼が無く、攻め合いかあるいはセキかという感じになりましたが、結局黒白双方が相手の石5子を取り合うといういい加減の別れになりました。しかし劫を巡って白は中央で厚みを築いており、形勢は白のリードとなりました。その後白は右辺の黒模様に、右上隅との渡りを見ながら打ち込んで行きました。この打込みはあわよくば黒を攻めてやろうというもので、白が右辺に展開するのを黒が妨げることは出来ませんでした。残るは下辺から右下隅にかけてで、ここでの白の消しも成功しました。残るは左下隅で、ここの白を確実に活きておけば白に残ったのではないかと思いますが、白は下辺の出という大きな手を選択しました。結果的に左下隅は劫になり、劫は黒が勝って元々白地だったところが大きな黒地になりました。これでわずかに黒が抜け出しました。終ってみて黒の3目半勝ちでした。しかし敗れたとはいえ、牛女流最強の一回戦に続く力強い打ち回しが印象に残りました。
NHK杯戦囲碁 小池芳弘7段 対 本木克弥8段(2023年8月6日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小池芳弘7段、白番が本木克弥8段の対戦です。この碁は右下隅から戦いが始まり、最後まで続きました。その発端は右辺下方で黒が延びていれば普通だったのを、ハネて白が切ったため、激しい戦いが始まりました。右辺は白黒ともほぼ同型となり、両方が活き活きとなりました。この戦いで白は下辺で得をし、また中央の黒3子も半分死んだ形となりました。なので黒としては右辺から延びる白を攻めて得を図らなければなりませんでしたが、白は上手く上辺になだれ込んで活きました。その後いろいろありましたが、最後は中央の黒が切断されて眼が無く、攻め合いも2手ぐらい白が良いということになり、黒は最後に中央の白のダメヅマリを追及しましたが、セキ活きとなり、結果中央の黒の死が確定し、黒の投了となりました。
NHK杯戦囲碁 田中康湧4段 対 広瀬優一7段(2023年7月30日放送分)令和の新布石?
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が田中康湧4段、白番が広瀬優一7段の対戦でした。布石では、広瀬7段が実に独創的な手を連続して打ちました。まずは右下隅ではさまれた時に二間に飛んだのは、これは昭和の時代に良く打たれた手ですが、その後にさらに上方に三間に飛んだのは初めて見ました。AIが示していた肩付きに比べ黒を固めていないという利点はあるものの、ふわっとした捉えどころの無い手でした。さらに驚いたのが左辺の中央に6線に打った手です。そもそも左上隅、左下隅とも三々なので普通は模様の碁にはしにくい形ですが、それにも関わらず富士山型に6線に打つという発想は面白いです。最近、ほとんどAIの真似ばかりしている棋士が多い中自分の碁を打とうとする姿勢は好感が持てました。
ただ、白は厚みを活かした攻めが上手く行ったかというとそうではなく、上下の黒を追いかけたけど、左右どちらかの白が見合いで取られてつながって活きてしまったのは大きなマイナスでした。ただその後、結局中央の白4子を捨てて、右辺の白3子を引っ張り出し、結局黒4子を取って生還したのは大きな成果で、白がかなり盛り返しました。しかしその後また一波乱あって、結局この取られていた黒4子が復活する順が生じてしまいました。それでも地合を計算してみると、意外にもAIが示している勝率の差ほど開いておらず、ヨセ勝負になりました。しかし最後に白の見落としなのか、2子を当てられて継げない(継ぐと大石が劫になってしまう)ということになり、これで黒が抜け出しました。最終的には黒の2目半勝ちでした。広瀬7段の布石が悪かった訳ではありませんが、まとめるのが難しかったということは言えると思います。
NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 蘇耀国9段
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が蘇耀国9段の対戦です。この碁が動いたのは、右辺下方の白の構えに黒が打ち込んでからです。普通白は付けて渡るのですが、白は何と手を抜いて他を打ちました。結果的に黒が下辺から中央にかけて大模様を築きました。この模様に白が打込み、その石を黒が左辺下方の白と絡みにしながら攻める展開になりました。黒は最初は左辺の下方2子と上方1子を捨て気味に打っていましたが、途中で白の中央の連絡に不備が生じ、劫でかろうじてつながるということになりますた。この劫立てで黒が左上隅を打ち、白が劫を継ぎました。結局この劫立てから左辺の黒の上下が白2子を取りながらつながって地になるという黒にとっては理想的展開で黒が優勢になりました。その後も左辺下方の白の活き死にが不明な状態で黒が寄りつき、更には下方から延びる白の一団も眼がなく、黒の寄り付きが色々利いて黒優勢のままヨセに入りました。そこで白が中央を左に出た時、アタリの白3子を黒が抜いたのが大ポカで、左辺の黒を取る手と上辺の黒を切り離して取る手が見合いになり、結局上辺の黒が取られて、左上隅から上辺にかけて60目を超える白地が出来てしまい、ここで大逆転(AIの勝率が83%→4%)となりました。結局白の中押し勝ちで、黒にとっては終始優勢で上手く打っていたのに痛恨のポカでした。
NHK杯戦囲碁 平田智也8段 対 河野光樹8段(2023年7月16日放送分)
7月16日の(相模原の新居のひかりTVのチューナーが故障して交換待ちのため録画で視聴)NHK杯戦の囲碁は、黒番が平田智也8段、白番が河野光樹8段の対戦です。河野8段は49歳にしてNHK杯戦初出場です。一方平田8段も意外に今回が2回目の出場です。
この碁の最初の焦点は右上隅で、黒が中央に一間飛びしたのに白が割り継いで、黒が切りがある所を守らなかったのに対し、白はすぐ切って行きました。黒の右上隅は問題無く活きましたが、白に切られて中央の黒は浮いて攻めの対象になりました。しかしその石の逃げを途中で保留し、黒は上辺左の白の薄みを追及しに行きました。そこからの戦いで白は何と二子を捨てて隅を取らせ、その代わりに上辺を取るという振り替わりを目指しましたが、黒は二子取っただけでは満足せず当てて行き、更に劫に行きました。劫立ては黒からは12の4の覗きが利き、白は左辺中央を押しただけで黒は劫に勝ち、大きく地を稼ぎました。その代わり中央が薄くなり、右辺に打ち込んだ石と右上隅で切り離された一団とどうしのぐかと思っていたら、黒は何と9の7に付けて行き、白模様の中で居直って活きに行きました。ここでの攻めとしのぎは、白が右辺上方の石の4線に断点があるのが響いたりして、結局黒の居直りが成功し、白一子を取って中央と右辺が連絡して、黒が大きな戦果を上げました。ヨセでは左辺にどちらが先に回るかが焦点になりましたが、結局黒が先に打ちました。その後白が中央の黒数子を取り込んだりしましたが、その代わりに黒も左辺を大きな地にし、地合の差は縮まりませんでした。結局黒の中押し勝ちで平田8段がNHK杯戦初勝利を上げました。
NHK杯戦囲碁 張栩9段 対 彦坂直人9段(2023年7月9日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が張栩9段、白番が彦坂直人9段の対戦です。この碁は、右下隅で白が黒を封鎖したのに対し、黒が左辺に模様を築きつつ、そこに入って来た白を攻めながら、途中で右下隅の白の包囲網に対してツケコシを決行しました。白は押さえずに下辺を滑ってかわし気味に打ちましたが、その後の戦いの過程で、右辺で二段バネされていた所に切りを入れました。黒は穴が開いているのでそこを出られると支えきれないのですが、黒の構想は右上隅を捨ててその代わりに右下隅を取ってしまうというものでした。この振り替わりは、白は厚い所から地を増やしましたが、黒は薄かった所が地になり、黒の成功でした。この結果白は左辺と下辺をそれぞれ活きる必要があり、黒に絡み攻めにされて、形勢は黒に傾きました。その次の焦点は、左上隅で白が黒にハサミツケて黒を分断する手を狙ったのですが、途中で止めてしまってしかも上辺も途中までしか打たず、左辺の白が活きる手を打っている間に上辺を切られて一子をシチョウに抱えられ、ここで黒が勝勢になりました。結局黒の10目半勝ちという大差になりました。
NHK杯戦囲碁 洪爽義5段 対 鈴木伸二8段(2023年7月2日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義5段、白番が鈴木伸二8段の対戦です。タスキの布石で始まりました。最初にポイントとなったのが左上隅の戦いで、白が最初に上辺を捨て気味に打ったのですが、白が5線を押したのが、普通は黒に膨らまれて好形を与えてしまうのですが、この場合後から(上から)覗いて黒に継がせた後、渡る手が生じ、白が中央と上辺の両方を打ったことになり、ここで白がリードしました。その後黒の左下隅と白の下辺右方の境界線争いで、黒のツケノビの後、白がじっと4線に並んで力を貯めたのが好判断でした。この結果、後で白が黒のツケノビの間を出た時に黒が押さえられず、下辺の白地が増えました。しかしその反動で中央の黒が厚くなって左辺の白のウスミが問題になりました。しかし黒はそれを咎めそこねて、白は無事に上辺からの石に連絡出来ました。最後に問題になったのが、黒が右辺の地を増やそうとしたことで、手をかけた割りにはあちこちで穴があって大きくはまとまらず、また白の中央の地も増えたのでここで白の勝勢になりました。結局白の5目半勝ちでした。
NHK杯戦囲碁 谷口徹5段 対 大西研也5段(2023年6月25日放送分)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が谷口徹5段、白番が大西研也5段の対戦です。大西5段は初出場ですが、以前NHK杯戦の記録係をやっていて顔なじみです。その頃より精悍な顔つきになったと思います。谷口5段は今回が3回目の出場で、過去2回とも初戦で敗れているので何とか勝ち星を上げたい所です。布石で珍しかったのは白の左辺の構えで、全て4線に構えました。普通は3線と4線をバランス良く組み合わせますが、4線のまま地になると大きいので、もしそれが成功すれば当然4線の方がいい訳です。しかし黒はこの碁では結局左辺に入って行くチャンスを逸し、一応3線に一度打ち込んだものの、この石を活きることは難しく、中央から利かして捨てることになりました。また良く分らなかったのが左上隅で黒は打ち込んで行ったのですが、活きが無いにも関わらず打ち続け、後に劫になった時の劫材として使うのかと思ったら当てを利かしたりし、更には途中で下辺で先手にならない手を打ち、結果的に丸ごと取られてしまいました。この結果左辺はぶっ通しで50目の地が出来、黒の地の全部に匹敵していました。こうなると黒は右上隅からの白の一団をいかに攻めて特を図るかですが、隅にはっきり一眼あり、中央でもう一眼を作るのはそんなに難しくありませんでした。それでも黒は眼を取りに行って目一杯打ちましたが、結果的に自分の方が薄く、包囲網を破られて眼を作られてしまい、黒の投了となりました。ちょっと黒の打ち方は淡泊過ぎたように思います。