国枝史郎の「八ヶ嶽の魔神」を再読。前に読んだのは6年ぐらい前ですが、内容はほとんど忘れてしまっていました。国枝の三大傑作は「神州纐纈城」、「蔦葛木曽桟」とこの「八ヶ嶽の魔神」と言われています。その三作の中で、この作品だけが唯一完結しています。但し、完結しているといっても、一人の姫を巡って争った兄弟の兄の方の末裔が山窩族となり、弟と姫の間に出来た久田姫の末裔が水狐族となって双方が代々争っています。山窩族の血を引く主人公の鏡葉之助が、水狐族の長を倒した時に呪いを受け、永遠に不安を感じながら生き続けることになり、物語が書かれた大正時代の今も生きている、というのが果たして普通に言う結末と言えるかどうか。この作品も平凡社の現代大衆文学全集に収められています。というか国枝史郎だけで、三巻も割り当てられおり、国枝史郎が当時いかに人気が高かったかが窺えます。物語の印象としては、最後の方で葉之助と、淫祠邪教化した水狐族の、血で血を争う腥い戦い(葉之助の味方となった熊や狼や豹の猛獣が人間を食い殺すシーンもたくさんあります)の描写が実に国枝らしいです。
国枝史郎の「八ヶ嶽の魔神」
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