次亜塩素酸ナトリウム剤―ピューラックスとハイターの違い

次亜塩素酸ナトリウムの製品で、ハイター、キッチンハイターなどの家庭用とピューラックスなどの医療用があります。写真は左が医療用のピューラックスの1800ml、右が家庭用(洗濯用)のハイターの2500mlです。
値段はどちらもAmazonでピューラックスの方が1,408円、ハイターが424円です。(送料を除く。)100mlあたりでは、ピューラックスが78円、ハイターが17円で、ピューラックの方がハイターの約4.6倍も高いです。

それで、一体何が違うのかと思ったら、ピューラックスは容器に「濃度6%」とはっきり書いてあります。しかしハイター、キッチンハイターともどちらのの容器にも濃度はまったく書いていません。また成分もピューラックスの方は次亜塩素酸ナトリウムだけですが、ハイターの方は次亜塩素酸ナトリウム+水酸化ナトリウムになっています。

これはどういうことかというと、ハイター、キッチンハイターもメーカー(花王)での製造時は6%で作っているみたいです。しかし流通で在庫されて時間が経つにつれ、次亜塩素酸ナトリウムの濃度がどんどん低下し、最悪は2~3%ぐらいにまで落ちるようです。花王のサイトのキッチンハイターの薄め方の説明で逆算すると、原液の濃度は2%になっています。また、水酸化ナトリウムが入っているのは、アルカリ性を高めて塩素濃度の低下を抑えるのが目的のようです。しかし、水酸化ナトリウムといえば劇薬であり、ちょっと怖い感じです。

ピューラックスの方はどういう仕組みなのか知りませんが、濃度の保証が入っていて、それで値段が高いようです。ただ、使用期限は製造から1年で、濃度6%はその間だだけの保証です。また次亜塩素酸ナトリウムだけで水酸化ナトリウムは入っていないため、飲料水の消毒用としても使用可能です。

ちなみに同じく医療用でミルトンというのもありますが、こちらは濃度は1%です。ミルトンは哺乳瓶などの赤ちゃん用器具の消毒用なので、塩素が残留して赤ちゃんが摂取してしまうリスクとかを考え、濃度を低くしているのかと思います。

このページにもハイターとピューラックスの違いが詳しく書いてあります。

結論としては、ちゃんと安定した濃度の次亜塩素酸ナトリウム液が必要な場合と、飲料水の消毒も必要ならピューラックスですね。ハイターも塩素濃度の低下を計算に入れて希釈すれば別に問題は無いと思いますが、水酸化ナトリウム入りというのは気持ち悪いですね。そもそもハイターは漂白用であり、容器には「用途以外には使うな」と書いてありますので、マスクなどを消毒するのに使うのはメーカーの保証外ということになります。まあ意識高い人は高くてもピューラックスを1年に1回のペースで買え、ということでしょう。

P.S. ピューラックスには単なるピューラックスとピューラックス-Sがあります。この違いは、薬事法に基づく第二類医薬品として認可を受けているのが「ピューラックス」で、食品衛生法に基づく食品添加物の認可を受けているのが「ピューラックスS」です。おそらく中身はまったく変らないと思いますけど、例えば食品加工工場なので食品の消毒を行うのはピューラックス-Sを使わないといけない、ということだと思います。

P.S.のP.S.
そういえば、ハイターにも病院用があって、しかもメディカルハイターと病院用ハイターと2種類あって、英語に訳したらどっちも同じではないかと思われますが、これがまた違います。病院用ハイターは家庭用ハイターと同じで水酸化ナトリウムが入っていて、濃度の保証はありません。これに対しメディカルハイターはピューラックスと同じで、2年間の濃度保証(5.4~6.6w/v%)で次亜塩素酸ナトリウムだけです。
詳しくはこちらをどうぞ。

ライオンの「薬用 キレイキレイ」と新型コロナウィルス

消毒効果を謳うライオンのハンドソープ「薬用 キレイキレイ」があちこちで売り切れになっていますが、その殺菌成分であるイソプロピルメチルフェノールは厚労省のページによれば、

イソプロピルメチルフェノール
本剤は、使用濃度においてグラム陽性菌、グラム陰性菌、結核菌には有効であるが、芽胞(炭疽菌、破傷風菌等)及び大部分のウイルスに対する効果は期待できない

ということですので、コロナウィルスには効果がありません。
ただソープの主成分である界面活性剤には脂肪を分解する効果がありますので、全体としては脂質で出来たエンベロープに包まれているコロナウィルスには効果があります。しかし、別に「キレイキレイ」で無くても(ハンド)ソープならどれでも一緒であり、特にコロナウィルス用に「キレイキレイ」を選ぶ理由はありません。何となくイメージ的に「殺菌力のあるソープ」ということで売り切れになっているだけでしょう。

家庭用消毒剤の研究

色々とネットで取り寄せて、家庭におけるベストな消毒剤とは何かを研究しています。元々会社で医療機器用の電子部品の調査を数年間やっていて滅菌装置であるオートクレーブについても調べたりして、私はこの話題に関してはそれなりに知識があります。
今日の新顔は「オスバンウオッシュ」(後列の左から2番目)という、塩化ベンザルコニウム、一般に言う「逆性石鹸」です。普通の石鹸は陰イオンですが、逆性石鹸は陽イオンです。それでマイナスの電位を帯びた細菌などを惹き付け菌を殺します。ただ、分類上は元々が「低水準」の消毒薬であり、効果が限定されます。コロナウィルスへの効果も今の所確認されていないようです。
オキシドールは昔から家庭でも良く使われていましたが、血の中のカタラーゼと反応して酸素を出してそれで消毒します。カタラーゼがなくて酸素が出ない場合も殺菌効果はありますが、時間がかかります。また切り傷、擦り傷で昔はオキシドールが使われましたが、しみるのと皮膚の細胞自体を痛めるので、明らかにやばい細菌やウィルスが傷口に入ったと思われる場合を除き、単に流水で洗うだけの方が無難です。
アクアクは次亜塩素酸ナトリウムですが、飲料水の消毒用です。

宇宙家族ロビンソンの”Flight into the Future”


宇宙家族ロビンソンの”Flight into the Future”を観ました。ジュピター2号が宇宙をまたさすらっている時に、エメラルド色の小惑星と遭遇し、ドクター・スミスのミスで、ポッド毎ウィルとロボットとドクター・スミスがその惑星に不時着します。すぐにジュピター2号も追いかけて着陸しますが、先に到着した筈のポッドを見つけられません。一方、ジャングルの中に着陸したポッドは、ウィルとドクター・スミスが疲れて15分間眠っている間に何故か浦島太郎かリップ・ヴァン・ウィンクルのように270年も時が経ってしまいます。ロボットはボロボロになり、ポッドには蔦がからまっています。そして3人は未来の地球から来た宇宙考古学者の一団に会い、その中にジュディの4代後くらいの子孫と同じくドクター・スミスの子孫がいました。ドクター・スミスの子孫はドクター・スミスはスミス一族の面汚しだとなじります。その内ウィルがどうもおかしいと気がつき、全てが何らかの幻想ではないかと思い始めます。それで途中でまたもアーウィン・アレンのワンパターンのトカゲ恐竜まで登場しますが、ウィルが「これは存在しない」と叫ぶと全部消えていきます。最後にたどり着いたのは、何かの置き去りにされたロボットで、侵入者を脅かすために幻想を作り出していたことが分かります。そのロボットは最後に本物の怪物を1つだけ作り出しますが、ジュピター2号のロボットの攻撃で倒れ、ウィルはロビンソン博士やドンと再会します。もう一ひねりすれば面白いストーリーになったような気がしますが、全てが幻想でした、というのは原子力潜水艦シービュー号の時にもあり、安易な発想だと思います。

トイレの消毒とバスルームの掃除

コロナウィルス騒ぎで清潔本能(?)が目覚め、今の所に住み始めて初めてトイレを次亜塩素酸ナトリウムで消毒。そしてかなり久し振りの浴室の掃除に着手。結果、しつこいカビなどが取り切れてはいませんが、それなりには綺麗になりました。リンレイのウルトラハードクリーナーを使いました。このクリーナー、以前はネットでしか買えなかったのですが、最近はドラッグストアで普通に売っています。

我が家の消毒体制

我が家の家庭用としてはほぼ完璧な消毒体制です。エタノールは何とか入手はしましたが、医療用ではなく、洗浄用の工業用ですが無いよりはましかと。キッチン泡ブリーチ、キッチンハイター、ピューラックスはすべて次亜塩素酸ナトリウムです。ポビドンヨードは、うがい薬のイソジンと同じヨウ素剤。昔傷の消毒に良く使われたヨードチンキ(ヨーチン)をより安全に改良したものです。アルコールよりも消毒効果が長続きします。IPAは先日紹介したもので、イソプロパノールに30%ほど精製水を加えたものです。

フローレンス・ナイチンゲール

ナイチンゲールについてちょっと知りたくなって(もちろん子供の時から名前は知っていますが)Amazonでポチってみたら、子供(中学生程度)向けの伝記でした。それでも色々なことを知ることが出来ました。ナイチンゲールというとクリミア戦争の時の野戦病院での、慈愛に満ちた「ランプを掲げた淑女・天使」のイメージが一般に通用していますが(それはビクトリア朝において作り上げられたイメージでもありますが)、実際の彼女は「戦う女性」でした。ありとあらゆる社会の不平等や不道徳と一生をかけて男性中心のビクトリア朝の社会の中で戦った女性でした。プルーストの「失われた時を求めて」の中に、真の慈愛の化身というような人は、実際にはいかなる憐憫も同情も顔に出さない、人を傷つけるのを恐れない、しかしそうした優しさを欠いた、感じの悪い、しかし崇高きわまりない顔こそ真の善意の顔である、というのが出てきますが、まさしくナイチンゲールこそそういう女性でした。
また独学で数学と統計学を学んで(グラフの一種であるレーダーチャートを発明したのはナイチンゲールだったってご存知でしたか?)、病院建築・病院経営の合理化にも尽くした人で、これまで思っていたよりはるかに巨大な方でした。新型コロナウィルスの蔓延の中、たった今も世界の多くの場所でナイチンゲールの精神を受け継いだ看護師さんが病気と闘う患者さんをケアしています。

久地の円筒分水の桜(2020年)


久地の円筒分水の今年の桜です。神奈川も外出自粛要請が出ていますが、毎年ここの桜だけは定点観測的に撮っているので、車で行って一時停止し5分くらいで撮りました。さすがにシートを敷いてお花見している方はいませんでしたが、それでも桜を見に来た方はちらほらいました。
いつもならここからスタートして、溝の口まで二ヶ領用水の桜を撮るのですが、それは断念しました。
年年歳歳花相似たり、歳歳年年人同じからず、という白頭翁の嘆きが今年ほどぴったり来る年はないように思います。
(写真はクリックで拡大します。)

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の19回目を公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の19回目を公開しました。新型コロナウィルスにも負けず、私は私の出来ることを粛々とやっていきたいと思います。
これまでラテン語の訳に時間がかかっていましたが、第3章に入ってからはドイツ語の本文も結構難しくて時間がかかっています。実はヴェーバーが大学に博士号論文として提出したのはこの第3章だけだったみたいで、その意味で中心的な章ですが、それだけに色々錯綜していて大変です。

市川崑監督の「東京オリンピック」

市川崑監督の「東京オリンピック」を観ました。2020年東京オリンピックの延期が決まったこのタイミングで観るのが何とも言えない感じです。全部で2時間50分という大作で3回に分けて観ました。公開当時、「芸術か記録か」という論争になったのですが、私は批判した人の気持ちが良く分りました。日本人がメダルを取ったものを全て網羅しておらず、柔道ですら、重量級の猪熊功と、無差別級の神永昭夫の試合(ヘーシンクに敗れた決勝戦)だけです。その一方で、男子1万メートルで周回遅れの最終ランナーのシーンにかなりの時間を使ったり、アフリカのチャドから来た無名選手の描写にかなりの尺を使ったりとか、バランスを欠いていると思います。特に銅メダルの男子バレーは女子バレーに5分ぐらい使っているのに対し、まったく出て来ず、松平康隆監督が激怒したのは良く分ります。
写真は女子バレーについてはさんざん書いたので(一つだけ、女子バレーのシーンを撮影しているのは短編映画「挑戦」の監督の渋谷昶子さんです)、男子マラソンにしました。帝王アベベと、3位になった円谷幸吉さんです。アベベは「裸足の帝王」というイメージが強いのですが、東京オリンピックではちゃんと靴を履いていました。(どうでもいいですけど、エチオピアに対する日本人のイメージはこのアベベによる良いものがあったと思いますが、それを今回WHOのテドロス氏が崩してしまいました。)
後はお元気な昭和天皇のお姿が「お懐かしや」という感じで、若き日の美智子様もおきれいでした。また、東西ドイツがこの時は別々の国ではなく統合ドイツとして出場していて、メダルの時に国家の代りにベートーヴェンの歓喜の歌を使っていたのも印象的でした。
開会式も良かったですが、閉会式でこれも古関裕而作曲のオリンピック・マーチに合わせて、各国の選手が隊列を崩して自由に混ざり合って行進したのも印象的でした。
ともかくもこの頃の日本は若さとエネルギーに満ちていたという感じで、よくもまあこれだけの大イベントをやり遂げたな、と素直に感心します。