白井喬二の「昼夜車」(1)

白井喬二の「昼夜車」の連載全21回の内の、第15回の分を読了。「モダン日本」に1936年1月-1937年9月の間連載されたものです。掲載誌の「モダン日本」は戦後こそカストリ雑誌に落ちぶれますが、元は文藝春秋から出たれっきとしたもので、1931年に文藝春秋から独立したものです。とはいえ、最初から路線は「エログロナンセンス」だったようです。誌名に「モダン」がつくように、モダニズムの趣味が横溢しており、表紙は洋装の女性です。外国女優のグラビアなどもあります。
「昼夜車」は1/21を読んだだけですので全体像はまるでわかりませんが、主人公の大瀬影喜は昼は勘定寺家という呉服屋に用心棒として勤め、夜は山口同心の見張り役として勤める二重生活でそれがタイトルの元になっています。影喜は腕の立つ無骨な男ですが、女性問題で主家を追われた、と登場人物紹介にはあります。
この年のモダン日本はもう一冊取り寄せ中で、それを読めばもう少し話の内容がわかるかもしれません。

中里介山の「大菩薩峠」第5巻

中里介山の「大菩薩峠」の第5巻を読了。ここまで再読してきて、少し中里介山のストーリーの進め方がわかってきたように思います。それは、これだけの長大な小説でありながら、登場人物があまり増えないということで、その代わり限られた登場人物がまるで順列組み合わせの全てのパターンをたどるかのように、それぞれがある意味ご都合主義の偶然で絡み合うようになり話が進みます。例えば、間の山のお君の愛犬であるムクは、東海道を旅している時に龍之助と同行するようになります。その時はそれだけだったのですが、この巻で笛吹川が氾濫して龍之助が家ごと急流に流されて死にかけた時に、それを助けたのはムクです。後で、龍之助は偶然夜中に駒井能登守の子を宿して気がふれてしまったお君を辻斬りの犠牲にしようとしますが、ムクが立ちはだかってそれを阻止します。さらにはこの巻では米友が吉原にて血を吐いた龍之助を助けて一緒に暮らしたりします。こういった登場人物(登場動物も)の間の不思議な縁の展開がこの小説の眼目のように思います。
この巻ではまた、軽業師だったお角が、安房に渡ろうとして船が難破し、洲崎の浜に半死半生で打ち上げられていたのを、駒井能登守が助けると、これまたご都合主義的偶然で話が展開します。しかし、この安房の国の巻では新たに茂太郎や盲目の法師の弁信が登場します。
これでようやく全体の1/4を読了です。

白井喬二の「捕物にっぽん志」(連載第8回)

白井喬二の「捕物にっぽん志」の連載第8回を読了。「人物往来 歴史読本」の昭和37年1月号です。この回は1回の読み切りで、一休禅師のお話です。京都の寺社奉行の蜷川新左衛門が、一休禅師のことを民衆の心を惑わす売僧(まいす)ではないかと疑って部下を偵察のために貼り付けます。そんな中、一休禅師は贔屓筋となんと遊郭に出かけます。そこである絶世の美女の傾城を巡って二人の遊侠の徒が喧嘩をします。それを一休禅師が仲裁しますが、その後何と一休禅師はその傾城と床を共にし…というお話です。もちろんオチがついていますが、白井が一休禅師を取り上げたのはこれが初めてのように思います。

中里介山の「大菩薩峠」第4巻

中里介山の「大菩薩峠」第4巻を読了。新しく甲府勤番となった駒井能登守は、馬を買いに馬大尽の許を訪れ、そこでお君を見初めます。お君は病気で江戸に残っている駒井能登守の妻にそっくりでした。お君をもらい受けた駒井能登守は、お君を溺愛します。一方で、牢に入れられていた宇津木兵馬は、同じ牢にいた浪士と共に脱牢します。逃げる場所に困った脱牢組は駒井能登守の屋敷に逃げ込みますが、そこで能登守と対決してみれば、脱牢者の一人と能登守は顔なじみでした。馬大尽の娘で顔にひどい火傷の跡があるお銀は、ふとしたことから神尾主膳の別荘にいた龍之助と知り合います。龍之助が目が見えなくてお銀の顔を見ることがないということにお銀は安心して、二人は男女の仲になります。しかし、その後二人は東山梨の八幡村に逃れますが、そこは龍之助が斬り殺した亡妻のお浜の実家でした。龍之助はお浜への思いから、また辻斬りを始め、お銀も龍之助の冷酷無残な正体を知ります。一方で駒井能登守は、自分の寵愛しているお君が被差別部落の出身であることを、お君が伊勢にいたころを知っていた神尾主膳に曝露され、甲府を去ることになります。
といった感じで、まだまだこの辺りはストーリーに一応の進展がありますので、読み進むのは苦痛ではないです。とはいえまだ全体の1/5を読んだに過ぎません。

中里介山の「大菩薩峠」第3巻

中里介山の「大菩薩峠」第3巻を読了。この巻辺りから、主人公の机龍之助は、甲府で神尾主膳と何故か仲良くなり、その別荘に住み着きますが、夜な夜な辻斬りを行うという修羅の姿として描かれるようになります。何故かしりませんが、段々登場の割合は減っていき、主人公とはいえ影が薄くなっていきます。
一方、龍之助を敵と付け狙う宇津木兵馬は、甲府で神尾主膳の元にいる龍之助を訪ねようとして、裏宿の七兵衛とがんりきの百蔵が、甲府御勤番の金を盗み出したのと同じになり、あろうことかその犯人と間違われて囚われの身になります。
また江戸にいた、米友はお君の行方を求めて甲府にやってきて、物語の舞台が江戸から甲府に移ります。
一方で甲府で、代々の馬長者の娘のお銀が登場しますが、このお銀は姿はお君にそっくりですが、顔にひどい火傷を負っています。
その他、神尾主膳の上役として江戸から駒井能登守が赴任しますが、神尾主膳より年が若く、主膳は面白くなく何かと嫌がらせをしようとします。