「アスペルガー症候群」の本

ちょっと気になって「アスペルガー症候群」の本を読んでみました。読んだ理由は例のグレタ・トゥーンベリさんがアスペルガー症候群だと聞いたからと、前から自分の性格もこれに近いんじゃないかと思っていたからです。だって社交性に乏しいとか、好きなものには極端にのめりこむとか、相手にとっては悪口になることも率直に言う、とかまさにその通りです。それにグレタ・トゥーンベリさんについても結構親近感を感じるんですね。この本には「アスペルガー症候群は病気ではない」とありますが、「発達障害」という言葉もどうかと思います。何故すべての人がすべての属性で最低限平均レベルにならないといけないのでしょうか?何かが苦手でも別のものが得意であればそれを活かしていけばいいと思うんですけど。日本人だから空気を読まないといけない、とかも私は嫌いですし。最近アスペルガーに限らず、何でも「病気」とか「異常」にしたがる傾向が感じされてちょっと気持ち悪いです。金子みすゞさんの詩じゃないですが、「みんなちがって、みんないい。」だと思います。このことは企業における人の評価にも通じます。能力評価とか見ていると、すべての項目でバランス良く得点しないと高い点にはならないようになっているのがほとんどです。でもそういう評価をやっている方の私より上の人で、そんなバランス良く色んな能力を持っている人って私は今までほとんど見たことないですけど。

保阪正康の「高度成長ー昭和が燃えたもう一つの戦争」

保阪正康の「高度成長ー昭和が燃えたもう一つの戦争」を読了。この本を読んだのはある意味私自身の拠ってきたる所、精神的なルーツ探しの一環です。私の中に、ある種の「ガンバリズム」みたいな部分があって、それは自分で振り返ってみて、明らかに幼少期にいわゆる「スポ根」のドラマやアニメを観て育ったのが大きいと思います。ところがそういったスポ根ものは純粋なフィクションとして自然に登場したのではなく、大松博文監督と東洋の魔女とか、相撲の横綱の初代若乃花(「土俵の鬼」と呼ばれた)とか、現実の方が先行していた訳です。そうなるとその大松監督や東洋の魔女の女子バレー選手達が、あそこまでひたむきに、お金になる訳でもないのに(相撲はお金になりますが)、一つのことに打ち込めたそのエートスはどこから来るのか、という疑問がマックス・ヴェーバーを学んだ者としては当然出てきます。大松監督も東洋の魔女も、その当時として特別に珍しい人間類型という訳ではなく、おそらくは当時の人のかなりの部分はそこまで徹底してはいなくても、結構近いような働き方をしていたのではないかと思います。だからこそ皆が同調して感動したんだと思います。
そこでこの本ですが、ちょっとエートスの部分は置いておいて、いわゆる高度成長という物が、後から振り返ると当たり前の事のように思えるのですが、実際は池田勇人首相とそのブレーンが意図的にそちらに日本全体を引っ張っていったのだなということが発見でした。私には池田首相は、病気ですぐ辞任したという印象が強かったのですが、実際は4年半くらい在職しています。その後の佐藤栄作首相はある意味、池田首相の引いた路線をそのまま継承して進めたという意味が強いと筆者は解釈しています。
エートスというか、高度成長を支えた国民各層の当時「モーレツ」とも形容された頑張りを、筆者は戦争路線の失敗に求めており、満州事変から終戦までの14年と、池田首相の「所得倍増計画」から石油ショックまでの14年とを対比させて分析しています。そして特に海軍の主計将校と言われた戦争での経理を担当した人達が、戦後各界で日本を引っ張っていったとし、その共通する精神は戦争時の日本の無謀さを十分に反省し、経済の分野でその反省を活かして高い成長を実現する、としています。
まあ筆者によると、大松式のモーレツ主義は、1960年代の後半になると早くもほころび始めており、あまりにも早すぎる成長の歪みの実感と、豊かになったことの裏返しで、いわゆるレジャーにいそしむ若者などが登場するようになったとしています。
60年代の日本のエートスを考える上で、戦争の影響は確かに避けて通れないでしょう。大松博文監督もインパール作戦の生き残り兵士ですし。それはそうですが、何かちょっとすっきりしないというか、あまりにも単純化した解釈だと思いますが、さらに突っ込んだ解釈は今後の課題です。

坪内祐三さんの死

坪内祐三さん死去、61歳、早すぎる…
同氏は雑誌「東京人」で小林信彦に執筆を依頼しており、小林信彦ファン。文庫本での小林信彦の小説に対し、解説を書かれていました。「昭和の子供だ君たちも」は戦後の学生運動史という点で参考になりました。
謹んでお悔やみを申し上げます。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200114-00000032-asahi-soci

河西昌枝の「お母さんの金メダル 家庭は気心、バレーも気心」

河西昌枝さんの「お母さんの金メダル 家庭は気心、バレーも気心」を読みました。大松監督+東洋の魔女関係の読書としてはこれで一応打ち止めとしようかと思います。
河西さんは東洋の魔女の主将で最年長、東京オリンピックの時31歳です。その2年前に世界選手権で優勝した時には29歳でした。大松監督自身を含め、その時にはソ連を倒して世界一になるという目標を果たしたので、全員引退するつもりでした。ところがそれを発表すると、近づく東京オリンピックで団体競技の唯一の金メダルが取れる競技として世の中から大きな期待が集まっており、手紙などが殺到します。その時に「一番辞める権利がある」と思っていたのが河西選手でした。しかし結局河西選手が東京オリンピック出場を決意したことにより全員が同意し、大松監督も同じでした。
それで首尾良く金メダルを取ってから、河西さんが結婚にゴールインするまでの話が面白いです。大松監督は河西さんの父親(東京オリンピックの3ヵ月前にツツガムシ病で死亡)に、「河西選手の結婚は私が責任持って面倒見ます。」と約束していました。それで金メダル後は奔走し、4つのお見合いをアレンジしたそうです。ところが河西さんは結構要求が厳しく「私より背の低い人は嫌」(河西さんは174cmで当時としてはかなり高いです。ちなみに亡母も167cmで河西さんほどではないですけど当時としては背が高く、結婚するとき自分より背の低い男性は嫌だったと言っていました。亡父は173cmでした。)「気が弱そうな人は嫌」ということで、大松監督もほとんど匙を投げかけてしまいました。そんな時大松監督の講演をたまたま聴いていた、作家の山岡荘八さんが「佐藤栄作首相の奥さんが、縁談をまとめるのが趣味だから相談してみたら」というアドバイスをし、それで結局佐藤栄作総理夫妻が紹介した自衛官の33歳の男性(ちなみに身長は172cm)と、総理夫妻の媒酌で結婚することになります。当時、「スター千一夜」でTV中継されたそうです。
それから河西改め中村昌枝さんは、男の子2人、女の子1人の子宝に恵まれ、姑さんとの仲もうまくいき、幸せな結婚生活を送ります。そして女優の淡島千景さんの支援で、「フジ・クラブ」という元魔女中心のバレーチームを作り、何と国体で優勝します。そして一般選抜という枠でNHK杯に出て、決勝まで勝ち進み、決勝でなんとニチボーチームと対戦します。結果はニチボーチームの勝ちでしたが、何ともすごい方々です。
河西さんのエピソードで忘れられないのは、チーム最年少の磯辺サタ選手が何かの病気で一週間入院していた時に、お見舞いに行ったのはいいのですが、その時にかけた言葉が「ゆっくり休めていいわね。」でした。磯辺選手は、「見舞いに来たのかイジメに来たのか」と思ったそうです。でも、要するに6人は一人でも欠けてはいけない、早く復帰して欲しい、という気持ちがそういうことを言わせたのだと思います。ただ、強烈な人であることは確かです。

「原子力潜水艦シービュー号」のWikipedia記事の移設

引用

Wikipediaでの「原子力潜水艦シービュー号」の項に対し、現在公開されている版の約3倍の量の内容を私が追加したり書き換えたりしていたのですが、例のWikipedia自警団との争いの時に、IPアドレスでの匿名の奴が私の書いた部分を全て削除するという暴挙に出ました。Wikipediaの管理者によってそのIPアドレスはブロックされて元に戻されたのですが、今日見たらその直後また別のIPアドレスで削除されていました。(間違いなく同一人物の仕業です。)もうWikipediaの編集とは縁を切ったので、私が書いた部分を使って記事を全部書き直したものをここで公開します。両方見ていただければどちらが優れた記事かは一目瞭然だと思います。
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原子力潜水艦シービュー号(原題:Voyage to the bottom of the sea)

『原子力潜水艦シービュー号』(げんしりょくせんすいかんシービューごう、Voyage to the Bottom of the Sea)は、1961年のSF映画『地球の危機』を監督であったアーウィン・アレンが映画のセットをそのまま活用して1回60分の連続テレビドラマに再構成したものである。

1964年から1968年まで、アメリカABC系列で4シーズンにわたり110話が放送された。第1シーズンはモノクロで月曜日の夜19時半からの放送だったが、視聴率が良かったため第2シーズン以降はカラー放送で日曜日の19時からの放映になった。日本では、1964年から1965年まで、NET(現テレビ朝日)で「原子力潜水艦シービュー号」のタイトルで第1シーズンのみが放送され、第2シーズン~第4シーズンは1967年から1969年にかけて、東京12チャンネル(現テレビ東京)で「原潜シービュー号 海底科学作戦」というタイトルで放送された。(そのためか、現在日本で発売されているDVDは第2~第4シーズンのみである。)

概要

シービュー号は、ネルソン海洋調査研究所(N.I.M.R:Nelson Institute of Marine Research)の所長、ハリマン・ネルソン海軍提督が設計し建造した、最新の技術を集めた海洋調査を主目的とする原子力潜水艦。第1話で暗殺された初代艦長に替わり、ネルソン提督と海軍で一緒に働いたことがあるリー・クレーンが艦長に就任。海洋調査の他、軍から命じられた諜報活動から、巨大な海の怪物や地球を侵略しようとするエイリアンとの戦いまで、海にからむあらゆる任務に挑むというストーリーである。

映画版とTV版ではストーリーの連続性は無く、映画版と同じ事がTV版の第2シーズンのエピソード18(The Sky’s on Fire 邦題:「燃える南半球」)で起こっているが、途中経過も結末もかなり異なっている。映画版でネルソン提督を演じたのは、「禁断の惑星」でモルビウス博士を演じたウォルター・ピジョンである。コワルスキー役のデル・モンローのみが両方で同じ役を演じている。TV版でのシービュー号内部のセットは映画で40万ドルをかけて作られたものをそのまま利用しているため、低予算のTV番組でありながら豪華なセットとなった。固定されたセットと登場人物を使い、毎週色々な事件に遭遇していくというスタイルは、スタートレックを始めとする後のSF番組にも影響を与えた。

時代設定は放送時から見て、大体10~15年後ぐらいとなっている。

本ドラマのシービュー号のクルーには女性がいないが、これはアーウィン・アレンがリアリティを追求し当時の現実の潜水艦の乗員には女性がいなかったことを反映している。(歴史的にはディーゼルエンジンの潜水艦の中はエンジンの発する熱でかなり暑いため(冷房はあってもどちらかといえば機器を冷却するためであり、また無音航行時は当然空調は切られる)、乗員は上半身裸で勤務している場合があり(ジェリー・アンダーソンの「謎の円盤UFO」に登場する潜水艦スカイダイバーでは、クルーは男女とも裸の上に網目状のシャツを着用している)女性が参加出来るような環境ではなかった。また同時に艦内のスペースが限られているため女性専用のトイレやシャワールーム用更衣室を備え付けるのが難しかった(ほとんどの場合更衣室自体が存在せず通路に脱いだ衣服を置いてシャワールームを利用した)という事情がある。一般に世界の軍隊で女性の潜水艦乗組員が認められるようになったのはようやく2010年頃からであり、日本の自衛隊については、女性の潜水艦乗組員を認めたのは2018年12月になってからである。)

当初のターゲット視聴者は男性の20代・30代であったので、TV局側は毎週ゲスト女優を登場させることを要求したが、アーウィン・アレンは女優の扱いが上手くなかったため、女性がまったく登場しない回もいくつかある。

また全編を通してアフリカ系アメリカ人が登場しないが、これはこのドラマに限ったことではなく、1964年公民権法が成立する前のアメリカのTVドラマではごく普通のことだった。こうした状況が改められるのは公民権法後の1966年スタート後である。なお本作品のゲスト俳優には、ジェイムズ・ダレン(タイムトンネルのトニー)、ホイット・ビッセル(タイムトンネルのカーク所長)、ジョン・ザレンバ(タイムトンネルの老科学者スウェイン)、ジューン・ロックハート(宇宙家族ロビンソンのモーリーン・ロビンソン)など、他のアーウィン・アレンの1960年代のTV作品に登場する俳優が多く登場している。

アーウィン・アレンは低予算で視聴率の良い番組を作ることでは右に出る者はいなかったが、そのためにシービュー号の航行や戦闘などの特撮シーンは、何度も使い回されている。映画「地球の危機」からの流用シーンも多い。特に目立つのは、北極海でシービュー号が氷の間から飛び出すように海面に浮上するシーンである。その他の映画からの流用も行われ、中でも同じアレン制作の「失われた世界」のシーンも何度も使用されている。というか 第1シーズンのエピソード7は、後半はほとんど映画「失われた世界」そのままである。但し映画はカラーでTVは白黒である。クレーン艦長役のデヴィッド・ヘディソンが「失われた世界」でも新聞記者役で登場しているため、このような使い回しが可能になった。なお、「失われた世界」の通称「トカゲ恐竜」(トカゲやイグアナ、ワニなどに飾りを付けた恐竜)はアーウィン・アレンの1960年代の4つのTVシリーズ(「原子力潜水艦シービュー号」「宇宙家族ロビンソン」「タイムトンネル」「巨人の惑星」)のすべてで使い回されている。


本シリーズは、当初は当時の冷戦の激化を反映し、ソ連や中国や東欧諸国を想定している敵国の陰謀と戦うという話や、核戦争危機に関するシリアスな話が多かった。第2シーズンに入ると007映画のヒットに始まるスパイ・ブームの影響を受け、外国などのスパイが艦内に潜入したり、乗組員が諜報活動に従事したりする話も多く作られた。やがて予算の削減と子供向けをより意識するようになったこともあって、宇宙人や怪物などが毎週登場する「今週の怪物」路線が多用された。怪物は海洋の巨大生物ばかりでなく、ドイツの(第1次世界大戦時の)Uボート艦長の亡霊、狼男(2回登場)、人魚と半魚人、蘇生したミイラ、妖精、白いゴリラ、岩石男など、さまざまなパターンが登場し、最新鋭の潜水艦の中を舞台とする意味がほとんど無い話が特に第3・4シーズンで多い。クレーン艦長役のデヴィッド・ヘディソンは、例えば映画「失われた世界」の時でも、名優クロード・レインズ(チャレンジャー教授役)にろくな演技もさせないで、恐竜が主体の映画を制作したアーウィン・アレンに批判的であり、こうした路線が一時的に視聴率的には成功しても、役者にとっては非常に苦痛であったと述べている。ヘディソンはアーウィン・アレンは良いセールスマン、良いプロデューサーであったが良い監督では無かった(役者の使い方がまるで駄目)としている。結局、この路線転換は却って視聴率の低下を招き、第4シーズンで特に最終回的なストーリーも無く中止が決定された。


シービュー号の諸元

ハリマン・ネルソン提督の設計した、最新鋭原子力潜水艦。艦内は3階構造。正式名称は、S.S.R.N. Seaview (Submarine Ship Research Nuclear Seaview)。全長406フィート(124m)、全幅77.5フィート(24m)、全高64フィート(20m)。(シービュー号のサイズについては他に諸説あり。現在残されている撮影用のミニチュア数種の縦横高さのサイズ比が微妙に違うからである。)潜行時の最高速度は推定で40ノット(74Km/時)超。圧壊深度は4,500フィート(1,372m)程度。(深度計のレッドゾーンは4,000フィート~5000フィートになっている。現実の原潜の圧壊深度はせいぜい600メートル程度。)艦首は透明な観測窓となっているが、非常時には観測窓の内側にシャッターが下り、さらに艦首部と操縦ルーム間が可動式の隔壁で分離される。

所属としては軍属ではなくあくまでも民間機関であるネルソン海洋調査研究所の所有物である。第1話では「水に浮かぶ最強の兵器(the mightiest weapon afloat)」として紹介されている。(しかし「最強の兵器」と呼ばれる割りには、敵から何かの攻撃を受けると、艦が左右に激しく揺れそれに伴いほとんどいつも艦内の装置が火を吹き火災が発生する。また、マシンルームにあるメインの制御装置は多くの回路がキャビネットにすら入っておらず剥き出しであり、しばしば中に入り込んだエイリアンや敵のスパイによって簡単に破壊されている。)またアメリカ軍から軍事的任務の委託を受けており、民間所属の潜水艦でありながら戦略兵器であるポラリス型核ミサイルを装備している。

母港は、ネルソン研究所のあるサンタバーバラであり、研究所の地下500フィート(152m)の所に発着ポートがある。

第2シーズンからの番組のカラー化に伴い改修がなされ、観測窓が1列になった。また、艦首下部にフライング・サブを収納するスペースと、さらにその下部に発着口が作られた。

なお、原子力潜水艦であるので当然原子炉を備えているが、第2シーズンまではエンジンルームのシーンは一度も登場せず、放射能危険の表示すら出てこない。それが第3シーズン以降は一転して何度も登場する。しかしながら、クルーが放射線防護服も着用せずエンジンルームに入ったり、制御棒を素手で扱ったりと、ありえないようなシーンが複数の脚本家によって書かれている。(放映開始当時、原子力潜水艦は最高軍事機密であり、その内部に関する情報は公開されていなかった。現在の米国海軍の原子力潜水艦を含む原子力船は通常の原子力発電所と同じ加圧水型の原子炉を使っている。)

シービュー号の主要装備

魚雷発射管:4門。但し各回によって艦前方に発射したり、後方に発射するケースが入り交じっており、発射口の正確な位置は不明。(フォックスが発表しているシービュー号の青写真では発射口は後方。第4シーズンのエピソード9では、4門ある魚雷の内、1番と3番を後方から追走する敵潜水艦に対し発射し、2番と4番を前方の敵の潜水艦基地に対して発射するという離れ業(?)を演じている。しかし魚雷の装填口は4門が正方形に配置されており、2本ずつ前後に発射出来るようにはとても見えない。)相手の潜水艦の熱を感知して追走する熱感知魚雷や超音波魚雷を備える。第4シーズンのエピソード13では核弾頭魚雷も使用された。敵のエージェントなどによって艦内に仕掛けられた爆発物を艦外に放出するためにも何度か使われている。

ミサイル発射管:16門。ポラリス型核弾頭ミサイルを発射可能。戦略核ミサイルの発射にはまずアメリカ大統領が「戦争」を宣言した後、ネルソン提督とクレーン艦長を含む4人が持つキーで4箇所のロックを解除して、なおかつ発射ボタンを押すのに大統領の最終許可が必要であると説明されている回と、そういうフェイルセーフシステムがまったくなく発射可能な回とが入り交じっている。またこの発射管から宇宙船を打ち上げるという回も存在する。その他、航空機に対する迎撃ミサイルも存在する。

高圧電流:シービュー号に海の怪物等が接触した場合には、艦の外殻に原子力エンジンで発電した高圧電流を流して撃退する、というストーリーが数回存在する。

レーザー光線:第1シーズンではシービュー号は近接した敵には高圧電流以外には攻撃手段が無い(近距離で魚雷を使用すればシービュー号自身も爆発のダメージを受ける)状態だったが、第2シーズンでフライング・サブが登場すると同時に、艦首から発射できるレーザー光線が装備された。

ミニ・サブ:2人乗り小型潜航艇。気密性はなく、潜水服着用で搭乗する。フライング・サブの登場で、あまり使われなくなった。これに爆薬を積んで敵の潜水艦を攻撃するのに使われた場合もある。

フライング・サブ(FS-1、FS-2):第2シーズンからカラー放送になり、また日曜日の19時からという子供も多く観る時間帯になったため、テレビ局からより一般受けする工夫を依頼され、アーウィン・アレンが考案したもの。気密性を持つマンタ形の小形潜水艇であり、潜水状態から海面に浮上しそのまま飛行出来、また逆に飛行状態からそのまま潜水に移る能力を備える。水中での最高速度は60ノット、空中での最高速度はマッハ2。艦首下部の格納庫から発進する。原則的に2人乗りだが、それ以上の人が乗っているシーンも存在する。シービュー号本体と同様、レーザー光線を発射出来る。シービュー号よりはるかに高速で移動出来るため、ストーリーの幅が拡がった。

潜水球(ダイビング・ベル):主にシービュー号やフライング・サブで潜行不可能な深海の探索用の球形の小形潜水装置。シービュー号本体から、ワイヤーで下ろされる。海底で座礁した潜水艦の乗組員の救助用にも使用される。

コンピューター:操舵室に、如何にも1960年代的な汎用コンピューターが2台装備されている。単純な計算や分析、暗号通信の解読を行うだけでなく、時にはシービュー号の危険を回避する方法をクレーン艦長に教えたりしている。

エスケープハッチ:ダイビングギアを着用して水中に出るための出入り口。ミサイルルームの中にある。第2シーズンから注水した際の水位計にカラーのボールが追加された。

登場人物とキャスト

ハリマン・ネルソン提督:リチャード・ベースハート(声:黒沢良、家弓家正)
ネルソン海洋調査研究所の所長であり、シービュー号の設計者兼最高責任者。同時にアメリカ海軍で提督でもある。天才的な科学者で、しばしば極めて短時間で新規の装置を作り上げている。科学を重視する余り、時にはシービュー号のクルーを危険にさらしクレーン艦長と議論になるストーリーも存在する。家族は実の妹が一人いるだけである。第2シーズンの最初の方では、ジェームズ・ボンド並みのスパイ活動も行い、女性との濡れ場も演じた。先祖には奴隷貿易で巨利を得た者がいる。ネルソン提督を演じたリチャード・ベースハートは、1956年制作ジョン・ヒューストン監督、グレゴリー・ペック主演の映画「白鯨」にもイシュメイル役で出演した名優である。(なお、第1シーズンのエピソード14は巨大な鯨に自分の息子を殺された科学者がシービュー号を使って復讐しようとする白鯨もどきの内容である。)

リー・クレーン艦長:デヴィッド・ヘディソン(声:田口計、納谷悟朗)
第1話でシービュー号の初代艦長ジョン・フィリップが某国により暗殺されたため、ネルソン提督から召喚されアメリカ海軍を離れ、シービュー号の艦長に就任。ネルソン提督とは艦長に就任する前に海軍で一緒に仕事をした経験がある。家族の話は出てこず、おそらく独身ではないかと思われ、ストーリー中では女性とよろしくやっているシーンもある。艦長としてはきわめて有能で、指導力を発揮して数々の危機を乗り越え、クルーから「スキッパー(艦長)」と親しみをこめて呼ばれている。(正式なタイトルはキャプテン。スキッパーは一般的にもっと小規模の船舶の船長のこと。)

チップ・モートン副長:ロバート・ドーデル(声:愛川欽也、二瓶秀雄)
普段はシービュー号の操船指示を担当するが、ネルソン提督とクレーン艦長が不在の際は艦長を代行する。沈着冷静で有能な副官。

 

 

 

カーリー・ジョーンズ:ヘンリー・カルキー(声:諏訪孝二)(ヘンリー・カルキーは1965年に死亡しており、第1シーズンのみの登場)
ミサイルルームの責任者で、ミニサブの管理も担当する。演じていたヘンリー・カルキーは元ボンバー・カルカヴィッチというプロレスラー。(テレビジョンエイジ、1975年8月号によればルー・テーズやプリモ・カルネラとも対戦経験があるという。)

 

 

フランシス・エセルバート・シャーキー:テリー・ベッカー(声:椎原邦彦)(カーリー役のヘンリー・カルキーの死により第2シーズンより登場)
カーリー・ジョーンズの後任として第2シーズンより登場。ミサイルルームの責任者(チーフと呼ばれている)で魚雷やミサイルの発射ボタンを押す役目を担っている。三枚目的性格でしばしば笑いを取るが、正義感と責任感はとても強く、しばしばネルソン提督やクレーン艦長と一緒に行動し、二人をよくサポートしている。

 

ライリー:アラン・ハント(声:市川治)
シャーキーと同様、第2シーズンから登場。演じているアラン・ハントがベトナム戦争に従軍することになったため、第2シーズンの16のエピソードのみに登場。

 

 

 

コワルスキー:デル・マンロー(声:羽佐間道夫)
ミサイルルームで実務を担当したり、ソナーやレーダーを担当している。実兄はアメリカ海軍におり、深海ダイビングの専門家。名前からしてロシア系アメリカ人と思われ、ロシア語が出来る。エイリアンや蘇った海賊などに操られるという話が多くある。

 

パターソン:ポール・トリンカ(声:嶋俊介)
艦内の様々な実務に従事。父親はTVのカメラマン。致死量の放射線を浴びて死にかけたり、銃で撃たれたりと損な役回りを演じることが多い。

 

 

 

スパークス:アーチ・ウィティング(声:緑川稔)
シービュー号の無線担当。外部との通信という重要任務担当のため、侵入した外敵から襲われることが多い。

 

 

 

 

ドクター(艦医):リチャード・ブル(声:千葉順二)
シックベイ(医務室)で、乗組員の怪我や病気の治療を担当するだけでなく、時には新しいウィルスのワクチンまで開発したりする。外部からの侵入者や、何かに操られた乗組員によって暴行を受けることも多い。

 

 

日本語吹替版ナレーター:浦野光

原語版スタッフ
製作総指揮:アーウィン・アレン
製作補助:ポール・ザストゥプネヴィッチ
脚本:全放映リストを参照
監督:全放映リストを参照
撮影:ロバート・J・ブロナー、カール・ゴスリー、ウィントン・ハーチ、サム・リーヴィ、ポール・フォーゲル
特撮:ライル・B・アボット、ハワード・ライデカー
音楽:ポール・ソーテル、レニー・ヘイトン、ハリー・ゲラー、リース・スティーブンス、ヒューゴー・フリードホーファー他

日本語版スタッフ (東京12チャンネルでの放送分)
翻訳:木原たけし/宇都木道子(日本語版第57話~)
効果:東北新社
特殊音響効果:中村忠康
録音:市ヶ谷スタジオ/三栄スタジオ(日本語版第57話~)
調整:前田政信/前田仁信(日本語版第27話~)/笹岡栄太郎(日本語版第57話~)
録音担当:中里勝範(日本語版第19、20、54話)/伊藤敏弘(日本語版第30話)/栗原秀人(日本語版第31、32、53、64、67話)
演出:旭谷暘
監修:福島正実
制作:毎日放送/東北新社/東京12チャンネル(日本語版第57話~)

全放映リスト

別ページにあります。

関連作品

・『原子力潜水艦シービュー号』 : シオドー・スタージョン著、井上勇訳、創元推理文庫(東京創元社) – 映画『地球の危機』のノベライズ版。絶版。

 

 

 

 

 

 

・『深海の宇宙怪獣』(SF名作シリーズ ; 13):スタージョン 作、福島正実 訳、伊藤展安 絵、偕成社、 1968年、 – TV版の「Monster from the Inferno 地獄の使者」と「The Cyborg サイボーグ」のノベライズ。絶版。

目次: 南太平洋の怪物 6 シービュー号出動! 11 ひかる隕石 20 ヘビのような光線 24 クレーン艦長の心配 30 宇宙生物の命令 34 地球人ヲ奴隷ニ! 38 勝ちほこる怪物 46 せまりくるわな 51 もうごめんだ! 58 提督の決意 63 すくわれた艦長 70 成功か蒸発か? 77 ナゼ人間ハ戦ウノカ? 83 サンターバーバラヘ 88 授賞式 94 国際生体工学研究所 99 ウルリッヒの陰謀 105 ふたりのネルソン提督 111 新型電子計算機 116 いがいな味方 120 こちら太平洋艦隊司令部 126 ミサイル発射暗号 130 狂気のトリック 139 さいごの手段 147 あかるい笑い 164 「深海の宇宙怪獣」について(解説) 168

・『シービュー号と海底都市』 : ポール・W・フェアマン著、高橋泰邦訳、創元推理文庫(東京創元社) – 本作のノベライズ版(映画版ともTV版とも違うオリジナルストーリー)。絶版。

河西昌枝、宮本恵美子、谷田絹子、半田百合子、松村好子、磯辺サタ、鈴木恵美子 共著の「思い出の回転レシーブ 大松先生ありがとう」

東洋の魔女と鬼の大松のマイブームはまだまだ続いています。河西昌枝、宮本恵美子、谷田絹子、半田百合子、松村好子、磯辺サタ、鈴木恵美子の7人の共著の「思い出の回転レシーブ 大松先生ありがとう」を読了しました。最初の6人は言うまでもなく、東京オリンピックの時のレギュラーです。最後の鈴木さんはチームのマネージャーとして食事を始めとしてレギュラーの面倒を見た人です。
この本も一番私を泣かせてくれたのは最年少の磯辺サタさんです。大松監督と他のチームのメンバーの磯辺さんのイメージは「親に早く死に別れたせいか人に甘えることをしない」「無口で黙々とやる」というものでした。ところが本人の手記では「私は甘えん坊」「私は話好き」とあって、これには大松監督も意外だったようです。実は増尾選手が抜けて磯辺選手が入ったばかりの頃は、「5人の方がマシ」「ニチボーの穴は磯辺選手」とさんざんの言われようだったそうです。それで磯辺選手は何とか早くチームの他のメンバーと対等にプレー出来るようにと何も喋らずにとにかく大松監督の練習について行くことを最重視し、また最年少の自分が先輩のお姉さん選手に甘えるのもチームの和を乱すと思って控えていたそうです。そして遠征などで高校の先輩である谷田選手と一緒の部屋に泊まったとき、磯辺選手は寝言で「ソンナニ、オコランデモ、イイデショウ。」とか「ヤッテマスヨ。」などと言っていたそうです。そして一人で押し入れの中で泣いていたりもしたそうです。谷田選手は声をかけるのもためらわれてそっと見守っていたそうです。そんな磯辺選手が東京オリンピックの1年前には一人前になり、本番でも6本のキル(相手のブロックを抜く鋭いアタックのこと)を決めています。それから磯辺選手が高校に行く話も、大松監督の本では本人からそう言って来た、となっていましたが、磯辺選手自身の手記では大松監督が「お前高校に行ってみないか」と勧めてくれた、となっています。どちらが本当か分かりませんが、どちらでもいいと思います。大松監督は磯辺選手より23歳年上なので、実の父娘でもおかしくないですが、二人の間には本当の親子より強い絆があったということだと思います。それから磯辺選手に給料を無駄遣いしないで貯金するように言ったのは主将の河西選手だとのことです。この辺り本当に「大松一家」という感じでほっこりします。

舛添要一の「ヒトラーの正体」

舛添要一の「ヒトラーの正体」を読了しました。舛添さんは、私が卒業した学科でその頃政治学を教えておられて、私はその講義は受けませんでしたが、公務員試験とか外交官試験を目指しているような人には人気があったと思います。政治家としてはほとんど評価していませんが。
先日、A.J.P.テイラーの「第2次世界大戦の起源」を読んで、その関連で続けて読みました。舛添さんが「ヒトラーマニア」だとは知りませんでしたが、それなりにコンパクトな本ですが良くまとまっていると思います。私も未だにヒトラーというのはどういう人間だったのかは判別しかねていますが、ユダヤ人に対する考え方はまったく同意出来ませんが、金融の天才のヒャルマール・シャハトを経済相に任命して、いわゆるケインズ政策で積極的な公共投資(アウトバーンなど)を行い、また各種の社会保険類の充実を図り、完全雇用をほぼ達成したということで、その政治家としての実力は少なくとも今の日本の首相よりはずっとあると思います。当時ドイツで多くの政治家がヒトラーの実力を見くびり、上手く利用してやろうとして結果的には逆に利用されたりしています。「第2次世界大戦の起源」が言うように、ヒトラーは世界征服のきちんとした青写真など最初から持っておらず、場当たり的に行動したのが上手く行って、途中でストップすればいいのに、ギャンブルと同じで始めに上手く行くと止められなくなり、結局無謀極まりない両面作戦で米英以外にソ連とも戦い、最後は破綻するというのはご存知の通りですが、舛添さんも指摘する通り、少なくとも独裁者になるまでのプロセスは全て合法的に進めたのであり(裏でナチス党が暴力をふるったりはしていますが)、当時のドイツ人はヒトラーを熱狂的に支持したんだということは忘れるべきではなく、トランプ大統領がもう一人のヒトラーになる危険性も十分見極めるべきと思います。まあ、ヒトラーについて手っ取り早く知りたい方にはお勧め。

小泉志津男の「日本バレーボール五輪秘話 東洋の魔女伝説」

私の中の東洋の魔女と大松監督マイブームはまだまだ続いています。小泉志津男の「日本バレーボール五輪秘話 東洋の魔女伝説」を読了しました。このシリーズは全5巻で、「バルセロナへの挑戦」で終わっています。東洋の魔女と大松監督について調べれば調べるほど、本当の意味のすごさが分かってきて、素直に頭が下がります。この本で初めて知ったのは、オリンピックの前年に日本バレーボール協会の中に「反ニチボー貝塚」みたいな動きがあり、またニチボーチームは主力の6人の時は素晴らしい結果を出すけど、控えの選手になるとガクンとレベルが落ちるということで、ニチボーチーム単独の日本代表ではなく、混成チームにすべきではないかという意見が出ます。それで作られたのが一般選抜チームで、ニチボーのライバルである倉紡、鐘紡、ヤシカなどのチームの選手を集めたものです。それでこのいわば二軍チームが、オリンピックの前年の1963年に何とソ連チームを2度も破る、という快挙を果たします。このチームの監督は四天王寺高校の監督で後に大松監督の後を継いでニチボーの監督になった小島孝治です。(ニチボーチームの谷田、松村、磯辺、松村選手は四天王寺高校出身で元々小島監督が鍛えた選手です。)そこでニチボーと一般選抜チームを対決させるという話に当然なり、二度対戦が実現します。一度目は一般選抜チームがニチボーに食い下がり、敗れはしましたが2-3の結果を出します。これでさらに混成チーム論が盛り上がり、マスコミ曰くの「巌流島の対決」と呼ばれた二度目の対決が1964年3月21日に行われます。しかし、結果はニチボーチームの3-0の完勝でした。大松監督曰くは、「一度目はソ連が偵察しているのに全力を見せる必要がないということで、前日に8時間の猛練習をして疲れていただけ。二度目が実力。」ということでした。大松監督は1962年の時の世界選手権では4-6でソ連に負けていたのを精神力で勝ったけど、東京オリンピックでは7-3で圧倒して勝つ、と言っていましたが、まさしくそれを実現しており、ソ連のチームはニチボーチームが3-0で勝つチームにさえ負けたことになります。
後は面白かったのは男子の東京オリンピックでの活躍。1961年の欧州遠征で女子が22連勝し「東洋の魔女」と呼ばれるようになったのに対し、男子は2勝21敗という屈辱的な成績に終わります。モスクワから地方に移動しての試合では女子が飛行機で移動したのに対し、男子は汽車で往復させられます。この最低の状態からしかし建て直し、1963年にはソ連チームを2度破り「男女ともに金メダルか」という期待が高まります。そして本番の東京オリンピックでは、緊張したのか緒戦の韓国戦こそ勝ちましたが、その後ハンガリーとチェコに惨敗します。この時点で早くも自力の金メダルは無くなり、世間から「やっぱり男子はダメだ」と見放されます。しかしここから男子は奮起し、何とこの後ソ連を3-1で下し6連勝で、7勝2敗となり、銅メダルを獲得します。1961年の惨敗からよくもここまで持っていったものでこれも「奇跡」と言っても良いでしょうが、マスコミは女子の活躍一色で男子は完全に無視されます。この時の屈辱がメキシコの銀、ミュンヘンでの金につながります。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳第11回目公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第11回目を公開しました。
正月休みだから少しペースを上げたかったのですが、ハッキング騒ぎによるサイトの再構築作業などで時間が取られ、思うようには進みませんでした。でもこれで全体の約2割が完了です。
なおこの部分はコムメンダが実はイスラム圏起源ではという説を頭において読むと、それは違うんでは、という突っ込みが出来て面白いです。

A.J.P.テイラー著、吉田輝夫訳の「第二次世界大戦の起源」

A.J.P.テイラー著、吉田輝夫訳の「第二次世界大戦の起源」を読了。最初は1977年に出版され、論争を呼んだ書です。何故論争を呼んだかというと、従来は第二次世界大戦(欧州での)の原因をもっぱらヒトラーに負わせ、そこからヒトラーと話し合って何とか平和を保とうとしたチェンバレンなどの宥和主義者は間違っていた、という論調が主流だったのを、ヒトラーの行動には最初から首尾一貫した戦略があり、それに従って、(1)オーストリア融合(2)チェコスロバキア融合(3)ポーランドへの領土要求(ダンツィヒ=グダニスク、ポーランド回廊)(4)ポーランドへの侵攻、を進めていったのではなく、むしろ成り行きに任せてそういう進行になったとし、従って宥和主義者が努力したヒトラーとの平和的な解決というのは決して可能性が無かったことではないとしたものです。この二つの立場のどちらが正しいかを判定出来るほどの知識は持っていませんが、少なくともヒトラーは狂人ではないですが、その戦略構想は思いつきが多い、という部分には同意します。ただ、いわゆるドイツの「生存圏(Lebensraum)」がかけ声だけのもので、1939年当時ドイツは東欧との貿易で十分な利益を得ていたので、新たに領土拡張を意図したのは経済的な理由からではない、というのは同意しかねます。ヒトラーとナチスのドイツでの台頭は、ヴェルサイユ条約とその結果としての天文学的金額の賠償金、それによるドイツのハイパーインフレ、そして1929年の世界大恐慌による列強の関税による世界市場の分割ということが背景にあり、「生存圏」という目標は十二分に経済的な理由が裏にあると思います。1939年当時に東欧との貿易で利益を得ていたというのも、世界恐慌後ドイツは徹底した外国為替への管理体制を作り上げて、東欧の諸国とは二国間取引で閉鎖的な市場圏を作り上げた結果です。その次のステップとしてそれらの地域を自分の領土に取り込もうとするのは自然な流れと思います。
ちなみにこの本で同意出来ないのは、いわゆる太平洋戦争を欧州での戦争での裏で起きたもので、副次的なものに過ぎないとしていることです。日本とアメリカにとってこの論はとうてい承服出来ないものです。以前やはりイギリス人学者が太平洋戦争について書いた本を読んだことがありますが、その本では「太平洋戦争は日本とアメリカの戦争というより日本とイギリスの戦争であった。」と論じており、これまた日本人には到底承服出来ないものでした。何というか欧州中心主義、自国中心主義を感じます。そういうのがBrexitにもつながるのかなと思います。
ともかく、現在の世界あちこちでのきな臭い状況を見るに付け、先の大戦が何故起きたのかをもう一度考えることは重要だと思います。