久野暲・高見健一著の「謎解きの英文法 単数か複数か」

久野暲・高見健一著の「謎解きの英文法 単数か複数か」を読了。最近EigoxやAEONで英語をしゃべっていて、よく迷うのが動詞を単数で受けるか複数で受けるかということ。その辺りの知識を整理するために読みましたが、なかなかに有益でした。まずは学校文法で十把一絡げに「集合名詞」と呼ぶものの中に、team, familyのように数えられるものと、cattle, policeのように数えられないものが混在していることを明らかにしてくれます。しかもcattleの場合は、a cattleは駄目だけど、two cattle (two cattlesではない)はOKというなかなか混乱することが書いてあります。また、アメリカの野球チームのThe Boston Red Soxは複数形で受ける、何故ならSoxは元々Socksだから、なんてのは知らないとまず間違えます。(野球チームは原則複数で、日本のHiroshima Carpも見た目は単数形だけど、この場合Carpが単複同形で複数形と見なすべきだそうです。)また私は会社については複数の人が働いているという意識でつい複数で受けてしまいますが、それはイギリス英語で、アメリカ英語の場合なら、General Motorsのように名称自体が複数形になっていても単数で受けなければならないことを再度確認できました。また、none of usの後はisかareというのは、50年くらい前まではisが正しいとされていたのが、今は複数で受ける人の方がはるかに多い、などなかなか目から鱗でした。それがNeither of themの後だと、書き言葉で正しくは単数で受けるけど、話し言葉では単数を使うとものすごく文法の細かい所にこだわっている感じがして却って不自然と思われるなど、なかなか一筋縄ではいかないことが理解できました。また、Nobody can see himself directly. に付加疑問文をくっつけると、Nobody can see themself directly, can they? になるなんて言うのは細かすぎて初めて知りました。この場合のthemselfはthemselvesの間違いではなく、himself or herself という意味です。
そんな感じで、この本では英和辞典の記述も結構当てにならないことがいくつか例示されています。

English Journal 2018年3月号

English Journalの2018年3月号について。この号で買い始めてから丁度丸4年になります。
しかしながら、この号はこの雑誌の悪い所が出ていると思います。
(1)収録CDが今号は60分弱くらいしかない。ちなみに先月は80分近くありました。私は、まず一回通して流し聞きし、次に30分ずつ2回に分けてテキストを見ながら聴くというのを2回やります。時間が毎月大幅にぶれるとこうした計画的な学習がやりにくくなります。
(2)特集記事の意味の無さ。今号の特集は、「TOEICテストが劇的にアップする「コスパ最高の」英単語」ですが、挙げられているのが、「上級語49」となっているので、delivery(配送、配達)、material(素材)、production(生産)、application(申込書)などで、どこが「上級」なのか理解に苦しみます。上級じゃないのは、interview(インタビュー)、busy(忙しい)、position(位置)、market(市場)とかではっきり言って中学生レベル。そりゃこのレベルの単語を知らない人がこれらを覚えればTOEICの点数はアップするでしょうが、この雑誌を買って読むような人はそんなレベルじゃないと思います。(そうじゃないと英語の生インタビューなんか聴いてもまったく理解できず役に立たないでしょう。)

要はこの記事は、TOEICの問題を集めて、その中から頻出する単語を抜き出したんでしょうが、大半の人がそのレベルは知っているので無意味です。むしろ出現頻度は低くても、例えばproduceに「生産する」という動詞だけではなくて、「農産物」という名詞の意味があるといったそういうことを覚えるのが必要だと思います。実際にこの意味で出題されたことがあります。

ロッシェル・カップ、大野和基の共著の「英語の品格」

ロッシェル・カップ、大野和基の共著の「英語の品格」を読了。これは良書です。日本人の英語学習者は、アメリカは何でもストレートにダイレクトに言う文化で、英語もそうあるべきである、と考えている人が多いのですが、この本はそれが大きな間違いであることを明らかにします。エリン・メイヤーの「The Culture Map」にも、アメリカ人の上司が部下にネガティブなフィードバックをする時は、まずポジティブな指摘から始めて、なるべくネガティブな内容をオブラートでくるむようにするというのが出てきていましたが、この本でも同じことが言われています。気をつけないと、ネイティブは日本人だから英語のニュアンスが良くわかっていないんだろう、なんて好意的には解釈してもらえなくて、なまじ少し英語をしゃべる人の方が大きな誤解と悪印象を相手に与えがちです。また私にとって良かったのは、私にとっては、英語の語彙を今の9,000語レベル(TOEICのReadingでほとんど困らないレベル)から20,000語レベル(TimeとかNewsweekをすらすら読めるレベル)に上げるのが課題なのですが、この本ではネイティブが語彙を強化するために使っている本を3冊紹介してくれています。私は内2冊をAmazonに発注しました。また、主に映画で英語を覚えた人が、映画に出てきた表現をそのままインタビューで使って、相手の人を怒らせる事例が出てきます。後、この本ではいわゆるpolitically correctな表現の話も出てくるのですが、体に障害がある人を言う場合の、disabledやhandicappedが既に古い表現で、今はphysically challengedとか、differently abledとか言わないといけないのだとか。この点はこの本に同意できず、行きすぎじゃないかと思いました。
まったく英語がしゃべれない人向けではないですが、TOEICで800点ぐらい取れる人は読んでおいた方がいい本です。

ディケンズの「クリスマス・キャロル」

ディケンズの「クリスマス・キャロル」を「英語で」読了。このお話のラジオドラマ(英語)を、高校の時英語の授業で使って、懐かしかったので改めて英語で読んでみたものです。よく知られた小説で、ストーリーも分かっているし、そんなに難しくないだろう、と思っていましたが、実際には知らない単語だらけで、結構苦労しました。それでもストーリーは分かっているので知らない単語を一つ一つ辞書で引いたりはせずに読み進めました。この小説が書かれたのは1843年で、日本で言えば天保年間の最後の年です。さすがにこれだけ昔の本だと今の英語とはそもそも語彙自体が違うように思います。後読んでいて感じたのは、結構韻を踏むような文章も出てくることでした。
この物語に出てくる、ボブ・クラチットの末の息子で、足の不自由なTiny Tim(これも韻を踏んでます)が、私は好きで、スクルージ爺さんが改心して、ボブの一家を助けてTiny Timを死の運命から救い、Tiny Timの第2の父のような存在になる、というお話が好きです。

Erin Meyerの”The culture map”

Erin Meyerの”The culture map”を読了。(日本語訳は、「異文化理解力」)
エリン・メイヤーは、フランスとシンガポールに拠点を置くビジネススクールであるINSEAD客員教授です。この本を知ったきっかけは、English Journalにエリン・メイヤーのインタビュー記事が載っていたことです。そのインタビューで、メイヤーが日本の企業について、日本はこの上ない階層社会だけど、決定プロセスは合議とコンセンサスに基づくもの(つまり稟議システムのこと)、そこで決定されたものはDecision(Big-D)でなまじ皆で時間をかけて決めたため、一度決まるとフレキシブルに変更することが難しい。一方でアメリカはフラットな平等主義の社会だけど、企業の決定プロセスはトップダウンで上から降ってくる。しかしそこで決まったものはdecision(small-D)で一度決めても状況が変わればすぐ変更される。といった内容に興味を覚えてこの本を買ってみたものです。
メイヤーは色々な国のビジネス文化を評価・比較するために8つのスケールを持ち出します。
1.コミュニケーションのやり方-簡単で直接的なコミュニケーションを良しとするか、高度な文脈を持った含蓄のある(けどわかりにくい)コミュニケーションが一般的であるか。
2.人の評価方法-ネガティブな評価をダイレクトに伝えるか、遠回しに伝えるか。
3.説得の仕方-原理原則で相手を説得するか(演繹的)、具体的な事実・意見を先に行って説得するか(帰納的)。
4.リーダシップのあり方-平等主義的なリーダーシップか階層的・権威的なリーダーシップか。
5.企業での決定方法-全員のコンセンサスを重視するか、トップダウンでの決定か。
6.人への信頼-あくまでビジネスライクか、個人としての付き合いをビジネスでも重視するか。
7.意見が違う時-対立的か、それとも全体の和を重視するか。
8.時間感覚-きちんとスケジュール化してそれに従うか、成り行きに任せてフレキシブルに対応するか。
日本については、
(1)この上ない程、高度な文脈を持ったコミュニケーション(空気を読む、忖度)
(2)ネガティブな評価はオブラートにくるんで直接的な非難の表現をほとんど使わない
(3)具体的な事実・意見を重視した説得プロセス、原理原則から論じない
(4)かなりの部分階層的で平等主義ではない
(5)コンセンサスを世界でもっとも重んじる
(6)仕事に割切った人間関係というより個人での関係をかなり重視する
(7)ともかく対立を忌み嫌うことでは最右翼
(8)かなり時間に几帳面で正確
となっています。
この本を批判するとすれば、(1)この8つの尺度を持ち出すのが適当であるかどうか(2)その尺度に従った各国の評価がどの程度当てはまっていて、またその国全体に一般化してOKかどうか、という点で可能と思います。私の意見では(1)についてはこの8つはかなりいい線を行っていて、実際にビジネスを行っていく上で非常に重要な尺度が良く集められていると思います。(2)については、個別の会社ではそれぞれ文化が違いますし、過度な一般化は危険なようにも思いますが、ある程度は参考になる評価だと思います。細かく見ると、8.の時間感覚で、ドイツの方が日本より時間にシビアで正確となっているのはまったく納得できませんが。(ドイツに行ってドイツの鉄道の運行時間の適当さにはうんざりしましたから。)また、日本の「コンセンサスを重んじる」ってのは、ちょっと稟議制だけを見た表面的な見方のようにも思います。
ともかく、中にちりばめられた具体的な文化の違いによるビジネス上のトラブルがとても面白く参考になります。たとえば欧州の人とアジアの人を集めたチームで、最初懸念された「欧州人対アジア人」ではなく、実は「中国人対日本人」の対立が一番問題になったとか。(8つの尺度で比較すると、中国と日本は実は同じアジアの国でありながらかなり違います。)国際的なビジネスに携わる人にとっては、ある意味必読の本と思います。
なお、オリジナルの英語版で読みましたが、辞書を引かなければならないのは1ページ辺り1~2回のレベルであり、Newsweekの記事なんかに比べるとはるかに読みやすいです。