NHK杯戦囲碁 河野臨9段 対 鶴田和志6段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が河野臨9段、白番が鶴田和志6段の対戦です。河野9段は棋聖戦の挑戦者に決まり、いつも安定して強いですが、今年は勢いを感じます。鶴田6段は24歳で、中部総本部期待の若手です。対局は全体に黒が実利、白が厚みという感じで進みました。中盤で黒は右上隅にまだはっきり活きていない一団を抱え、更に下辺では取り残されている黒一子をいつ動き出すか、という状況で、右下隅から跳ね出して白を2つに分断しました。全体に白が厚い碁形でこれらの石をどうやってしのぐのかと思っていました。まずは右辺の白をいじめて多少は右下隅がしっかりしたのですが、その代り白をはっきり活かしてしまったので、この辺りはどうなのかな、と思っていました。鋭い技が出たのは右上隅で、ここは白が通常とは異なる受け方をしていた所でしたが、まずは出を決めて、それによって生じた断点を2線に置いて覗きました。これが好手で、この手自体は白に取られますが、ハネが利いて上辺の白地を分断する手がかりが出来、なおかつ右辺からの黒についても若干ですが強くなりました。この後さらに黒は下辺を動き出しました。白は当然右辺と下辺の黒を分断したのですが、曲げではなくケイマで2つの黒を分断したのがある意味やりすぎですかさず黒が出切りを決めました。こうなると右下隅の白も眼がなく攻め合い含みの戦いになったのですが、白は黒の一子をかみとる代わりに黒の一団も活かすという妥協的な打ち方をしました。更に白は右辺の黒を攻めましたが、黒が右辺の5子を捨てて、白2子を取り込んだのが好判断で、単純な大きさでは黒5子の方が大きいですが、右辺は元々活きている所に多少地を増やしただけであるのに対し、黒は中央が厚くなりまた下辺とも連絡し、何より先手が取れて左辺に回れたのが決勝点でした。これで地合では黒が完全にリードしたため、白は単純な寄せ合いでは勝機がなく、黒の左辺の地に突入しました。しかし逆に黒は左辺の白地に置きを敢行し、下辺から左辺に展開する白全体を狙いました。結果として白は左辺で打ち込んだ石と元からの左辺の地が連絡しましたが、その代償で中央で白十数子を取り込まれてしまい、ここで投了となりました。河野9段のチャンスでの鋭い踏み込みと的確な形勢判断が光った一局でした。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳第8回目公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の第8回目を公開しました。
いよいよ「コムメンダ」が登場します。今日の海上輸送の保険用語で「共同海損」というのがありますが、これが既に中世の地中海での貿易においてそういう取り決めがあったということに驚きました。共同海損は古い言い方では「投荷」とも言いました。要するに嵐などで船が沈みそうな場合、積み荷を海の中に投げ捨て軽くして危険を減らすということが古くから行われていますが、そういった場合捨てられた荷物の分の損を、捨てられずに済んだ荷物の荷主も平等に負担する、というのが元だと思います。それからイタリアの貿易というと、どちらかというと東岸のヴェネツィアとかの東方貿易がイメージされるのですが、歴史的にはジェノヴァなどのイタリア西岸とバルセロナなどのスペインの沿岸都市の貿易の方が先だったようです。

オールブラック日本の会社

昨日は私の勤務する会社の馬鹿な人事と喧嘩しました。理由は、パートさんの優秀な人を無期契約にする場合があり(長期間雇っている非正規社員を正規社員に登用しなさいという国の方針に形式的に従ったもの)、パートさんとは別の名称となっています。その人達には「賞与」を出しますと言っておいて(正規社員に近い扱いをしなければ意味が無いのである意味当然ですが)、また成績評価によって金額を変えます、といって結局一年半くらい経っても決まらず、ようやく本日初めての評価別「賞与」がその人達に支給されました。
その金額が、A評価が7000円、B評価が5000円、C評価が3000円です。法律で賞与を出さなければならないとか、いくらが最低額とかの規定はもちろんありませんが、日本語の常識としては、これらの金額は通常言う「寸志」の額にも達していません。最初に入った会社の入社年の6月のボーナスはこの「寸志」でした。しかし、金額は10倍以上ありました。
それでいて「しっかりフィードバックして志気を高めるようにしろ」とかの指示がメールで来て、切れたもの。
この会社、私が2005年に入社した時はなかなかいい会社だったのですが、近年本当にダメになりつつあります。ちょっと会社の若い人が可哀想です。

A man called Devil and Oriental Witches

Did you know that the female Japanese volleyball team won the gold medal at the first Tokyo Olympics in 1964? The final match with the Soviet Union team, which was ranked No.1 in the world at that time, was broadcasted by NHK on TV and had a viewing rate of 66.8%, which is still the record in relay sports in Japan. The Japanese team, with an average height of just 171 cm while that of the Soviet team was 183 cm, overwhelmed all the other nations’ teams with incredibly new tactics such as “the rolling dive receive” and “the floating change-up service”, and they were called Oriental Witches by Americans and Europeans at that time.

The head coach of the team was Hirobumi Daimatsu. The national team of Japan was actually a private company, Nichibo’s, team and he was also an employee of the company. He showed quite strong leadership skills with the players of the team and forced them to train extremely hard. All the players worked in Nichibo’s office from 9 to 4, and then they started training every day, usually until 12 o’clock or sometimes until 2 to 3. His nickname at the time was Daimatsu, the Devil, and he was harshly criticized by many people, including the labor union of the company, as he was bullying the players. The players, however, did not complain about his training and followed him and even called him a master. Mr. Daimatsu was a survivor of the alleged worst operation during World War II, the Imphal operation that killed more than 50,000 Japanese soldiers through battles and starvation in Myanmar. His belief from this harsh experience was that victory is everything, and his team recorded 175 successive victories both in domestic and international matches. Nobody condemned him any more after such tremendous results.

Not only did he force ultra-hard training on the players, but he really thought rationally about how his team could defeat the Soviet Union team in the face of more than a 10 cm difference in height. He invented “the rolling dive receive” in order to receive all attacks by the Soviet team, by jumping to a ball and soon standing up by rotating the body in order not to interfere with other players and come back to the attack immediately. He also developed many new serves since the height of a player is almost irrelevant in serves. While a normal straight serve was popular at that time, his team developed many breaking ball serves, including no-rotation serve that almost nullified the receivers of the opponent team.

Mr. Daimatsu is now enshrined in the hall of fame of the Word Volleyball: https://www.volleyhall.org/specialawards/hirofumi-daimatsu. Nobody can follow his style at present, but he was actually a tremendously strong leader and encouraged many Japanese people 19 years after the ceasefire of World War II.

日本語Wikipediaのダメな所

今日もヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳に取り組んでいて、「西ゴート法典」について調べていたら、何と日本語Wikipediaにはこの項目がありません!にも関わらず、西ゴート王国で定められた法典の一つに過ぎない「エリック法典」については項目があります。といっても参考文献に挙げられているのは山川出版のおそらく高校の世界史用の参考書ですが…
Wikipedia自警団という連中がダメなのは、人が書いた記事の出典が無いとかそんなチェックばかりで、百科事典に限らず全ての辞書・事典で重要な「何を立項(=項目を立てる)すべきか」を考える人が誰もいないことです。まあオンラインのボランティア執筆百科事典では仕方がないのかもしれませんが、サブカル系が異常に充実している一方でこういう学術分野は穴だらけ、というよりほとんど未開拓といった方が正しいのかも。

宇宙家族ロビンソンの”The Curse of Cousin Smith”

宇宙家族ロビンソンの”The Curse of Cousin Smith”を観ました。この回も目茶目茶ナンセンスで、何とドクター・スミスの従兄弟が登場します。演じているのは原子力潜水艦シービュー号で時間を操る男ミスター・ペムを演じていた人です。何でも彼らの共通の叔母さんが大金持ちで、死んで大金を遺産に残します。それを相続出来るのがスミス一族で最後に残ったものということで、最後の2人がドクター・スミスと今回やって来たジェレマイアです。ジェレマイアはドクター・スミスがギャンブル好きなのを利用して、どこかに頼んでギャンブルマシンを送らせ、ドクター・スミスを借金漬けにして、そのギャンブルマシンに始末してもらおうという作戦です。しかし結局ジェレマイアもそのギャンブルをやって、二人とも負けてしまい、しかもその叔母さんの遺産を賭けに使ってしまったため、ギャンブルマシンは二人の内一人を殺そうとします。それで結局ロビンソン博士が介入し、ギャンブルマシン相手に、インチキなボール当てゲームの賭けをして勝ち、二人を救うという話です。ジェレマイアが何で宇宙を彷徨っていたのか、またドクター・スミスが遺産を相続したとしても、そもそも地球に戻れなかったら意味が無いと思いますが、その辺りはまったく説明無しです。何というか第2シーズンは本当に緩いです。

英語の語彙力アップ

私の今の英語力ですが、色んなオンライン英会話の教師によれば、文法についてはほとんどミスが無い、という評価をもらっています。(冠詞の有る無し、単数か複数か、とか前置詞の用法とか、間違い自体が無い訳じゃないですが。)発音は、悪くないけど満点でもない、というレベルで、これは今Hummingbirdという学校に通って一生懸命習っていますので、後は語彙です。おそらく今の私の語彙は10,000語をちょっと超したぐらいだと思います。ネイティブで言えば高校生ぐらいでしょうか。ネイティブの高校生が大学を受験する時に、語彙を増やす本を読んで勉強します。そういう本を私も勉強することにしました。というか前から3冊くらい買ってあるのですが、手を付けていませんでした。3冊の内で一番読みやすそうだったのがこの”Verbal Advantage”です。気長にやってみるつもりです。

宇宙家族ロビンソンの”The Thief of Outer Space”

宇宙家族ロビンソンの”The Thief of Outer Space”を観ました。何かどんどん話のレベルが劣化していくように思います。子供向けというか。今回の内容は「アリババと四十人の盗賊」的で、中東風の盗賊が出てきて、昔さらわれたお姫様の行方を追って200年間旅しているとの設定。結局お姫様はペニーが拾った壺の中に閉じ込められていて、中から出してあげたら、200年間壺の中で座って食べているばかりだったので、ブクブクに太って昔のお姫様の面影はまるで無し、という落ちです。
ところで、ドクター・スミスのロボット(フライデー)に対する悪口の多彩さは本当に感心します。この回に出てきたのだけでも、
bubbling bumpkin
ninny
garrulous gargoyle(おしゃべりな彫像)
bubble-headed booby
などがあります。

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳7回目の公開

ヴェーバーの「中世合名会社史」の日本語訳の7回目を公開しました。今回の箇所は特にラテン語とかは出て来ないのですが、法的見地と経済的見地の関係が分かりにくいです。ただ、まったく普通の経済の外にある「家計」「家ゲマインシャフト」から、合名会社の二つの原理である「連帯責任」と「特別財産」が生じたということをおそらく言いたいのだと理解すれば、書いてあることは理解出来ました。英訳は分かりやすいですけど、あまりに単純化して訳しすぎのように思います。

NHK杯戦囲碁 張栩9段 対 上野愛咲美女流二冠


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が張栩9段、白番が上野愛咲美女流二冠(女流本因坊、女流棋聖)の興味深い一戦です。女流の碁界は長く続いた謝依旻6段の一強の時代から藤沢里菜女流名人の時代に変わったかと思ったら、そこに上野二冠の登場です。しかも上野二冠は女流棋戦に留まらず、一般棋戦でも好成績を残しており、先日は竜星戦で決勝まで勝ち上がり、後一歩で女流棋士の一般棋戦での優勝という快挙を達成する寸前まで行きました。(準優勝でも快挙で、これまでは女流棋士はベスト8にまで進んだのが最高の成績でした。)さて対局ですが、左下隅で黒のカカリに白が一間に低く挟んだのを黒が手抜きし、白が下辺を開いた時に黒が両ガカリし、白がコスミツケた後、黒が立ったのにコスミ出して黒を割いて行きました。黒がその白に差し込んで1子取りと切りが見合いになりましたが、白は下を継いで頑張り黒に上を切らせて戦いになりました。この戦いで結局黒は左辺で白2子を取り込みましたが、下辺の黒が攻められる展開になりました。しかし黒は下辺で手を抜いて右辺の下方に打ったので、白は下辺黒を包囲し攻めたてました。黒は結局白2子を取り込んで1眼、後は中央につながる手と下辺でももう1眼持つのを見合いにしてほぼ活き形になりました。白はそれをにらみながら右下隅でツケフクラミを打ち、黒の当てに対してはじいて劫にしました。白は下辺の黒に対して劫材があります。結局劫は黒が勝ち、代償で白が下辺からの黒の下半分を取りました。上半分の黒は中央に逃げられるのが黒の自慢でしたが、しかし白の攻撃目標になりました。黒は右辺の白を攻めながら中央のしのぎの足しにしようとしました。その過程で白が右辺を補強する手を打った時、黒が覗いていったのに白が反発して上方に飛んだのが悪く、すかさず黒に切断を決行され、弱い石が2つになりました。(写真の場面)こうなると中央の黒は攻められる石から白を攻める厚みに変わり、形勢は黒良しになりました。白は右上隅を荒らしましたが後手でかつ黒を切って攻め合いにしようとしたのが余計で結局中央の4子を取りこまれたので、得にはなりませんでした。最後にまた右辺を攻められ、結局1眼しかなく死んでしまい、ここで白の投了となりました。上野女流二冠の豪腕を、張栩9段が上手くかわして打った技が光った一局でした。