今日の落語は、古今亭志ん朝の「大山詣り、粗忽の使者」。
どちらも良く出来た噺で笑えます。
「大山詣り」は長屋の皆で大山詣りに出かけたけど、喧嘩をしないという戒めを破った熊さんが、酔っ払って寝ている間に坊主頭にされてしまいます。それを起きて知った熊さんの復讐が面白い噺です。
「粗忽の使者」は、子供の頃から物忘れが激しいので、物を忘れる度に親にお尻をつねられていた者が、使者に立って、ものの見事に伝える用件を忘れて、それを思い出すのにお尻をつねってもらいますが、弱すぎてちっとも効かず、それを聴いた大工の留っこが、閻魔(釘抜き)でその使者のお尻をつねって…という噺です。
投稿者「kanrisha」のアーカイブ
白井喬二の「新撰組」[下]
白井喬二の「新撰組」[下]を読了。
タイトルの「新撰組」は下巻の半分くらい、全体の3/4を経過したところでやっと登場します。それで池田屋事件とかも出てくるのですが、新撰組はあくまで背景に過ぎません。メインは、但馬流の織之助、金門流の紋兵衛、そして京都の伏見流の潤吉、この3人の独楽勝負を巡るお話しに、勤王の志士の妹であるお香代がからみます。織之助は、最初紋兵衛と戦い、その後潤吉と戦います。そして最後にお香代をどちらが妻にするかをかけて、潤吉と再度、肉独楽という占い独楽で決着をつけようとします。とにかくはらはらどきどき、織之助の人生も波乱万丈で読んでいて非常に楽しいです。ポケモンgoもいいけど、やっぱり本もいいです。
柳家小さんの「長屋の花見」
白井喬二の「新撰組」[上]
古今亭志ん朝の「三軒長屋、羽織の遊び」
伊藤祐靖の「国のために死ねるか 自衛隊『特殊部隊』創設者の思想と行動」
伊藤祐靖の「国のために死ねるか 自衛隊『特殊部隊』創設者の思想と行動」を読了。たぶん片山杜秀の右翼に関する本を買ったので、そのつながりでAmazonがおすすめで出してきたもの。強烈なタイトルに惹かれて購入。
筆者は、海上自衛隊で、イージス艦「みょうこう」の航海長在任時に、北朝鮮の工作母船と遭遇し、その船を威嚇銃撃しながら追撃し、一度は停船させましたが、結局取り逃がすという能登半島沖不審船事件に遭遇しています。この時、工作母船の船内を調査することが必要でしたが、この時点ではその任務にふさわしい技能を持ったものは自衛隊にはいませんでした。これをきっかけに自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に関わります。その後、特殊部隊について自衛隊の幹部と考え方が合わず退官、フィリピンのミンダナオ島に移り、そこでもさらに特殊部隊としての技能を磨いて、現在は各国警察や軍隊への指導を行っている人です。
まず、この人のお父さんがある意味異常な人で、陸軍中野学校の出身で、戦前に蒋介石殺害の命令を受け、終戦時にもその命令が解除されなかったという理由で、戦後も新たな指令に備えて、毎日射撃訓練を続け、それは1975年に蒋介石が死ぬまで続いたというそういう人です。
そういう父親を持つ人が海上自衛隊の特殊部隊の創設に深く関わるのですが、意外だったのが、アメリカの特殊部隊がある意味世界最弱で、まったく参考にならず、日本独自の特殊部隊を考案したということです。
そういう特殊部隊創設時のエピソードよりももっと興味深いのが、ミンダナオ島に移ってからの体験で、ラレインというおそらく反政府ゲリラ出身の20過ぎの女性で、この女性の「殺し」についての根性がすごいです。筆者にとって射撃は的に当てることですが、このラレインにとっては、相手の顔を吹っ飛ばすことです。また筆者とこのラレインが水中で格闘戦をやった時に、筆者はラレインの肩にまたがって、自分は水面から顔を出し、ラレインは水中に押し込められて呼吸ができないという姿勢になったのですが、ラレインはふりほどけないことがわかると、筆者を水の中に引きずり込んで、そちらも呼吸ができないようにし、結局我慢比べに勝って、不利な闘いを打開します。
そのラレインが、戦争中の日本の沈没船から、大正天皇が関東大震災の時に出した詔勅の額を引き上げてきて、筆者に訳してもらいます。それを聞いた感想が、大正天皇はエンペラーではなく、部族長だということです。何故なら命じるのではなく、ただ「こいねがう」ことしかしていないからです。
筆者の「思想」は正直な所、私には受け入れがたい部分が多いのですが、強烈な本ではありました。
NHK杯囲碁 金秀俊8段 対 溝上知親9段
今日のNHK杯戦の囲碁は、金秀俊8段の黒番、溝上知親9段の白番です。金8段は趙治勲門下で、力が強いです。溝上9段は菊池康郎門下で、各種リーグ戦で活躍する強豪です。対局は右上隅で金8段が一手かけて2線の石をかけついだのが珍しく、その代償に上辺をほとんど封鎖されてしまいました。しかしながら封鎖している白石にいきなりつけこし、ここから戦いになりました。この戦いは白の溝上9段が固く受けたため、中央は黒が制して下辺が広大な黒模様になりました。白は下辺に打ち込んでいき、さらに右下隅にも打ち込んで何とかさばこうとします。これに対し黒は白の全部を取りに行きましたが、これがやりすぎで、白にうまく治まられてしまいました。それでも黒地は全体的に多く、まだ黒が優勢でしたが、白は最後の勝負ということで、中央の厚みになっている黒を狙いました。黒はどこかで手厚く打っていれば勝ちだったのですが、いっぱいに打っている内にある意味放心の手が出て、中央を取り込まれてしまいました。さしもの黒の好局もこれで逆転し、終わってみれば白の4目半勝ちでした。
古今亭志ん生の「猫の皿、藁人形、権兵衛狸」
小林信彦の「イーストサイド・ワルツ」
小林信彦の「イーストサイド・ワルツ」再読完了。
1993年4月27日~10月3日 毎日新聞朝刊に連載されたもの。朝日新聞に連載された「極東セレナーデ」は一応成功作だと思いますが、この作品は毎日新聞の読者に歓迎されたか疑問です。特に終わり方の暗さと来たら…
作者は後書きで、「初めての恋愛小説」だと説明していますが、それはないと思います。1988年の「背中合わせのハート・ブレイク」(原題は「世間知らず」)はどうなるのでしょうか。その「ハート・ブレイク」と結構共通点が多いです。主人公がどちらも「世間知らず」であること、主人公の若い時の恋愛が自分は振られたと思っていて、相手は逆に主人公に振られたと思っていること、そしてどちらもハッピーエンドではないこと、等々。また、1992年の「ドリーム・ハウス」とも、一緒に住んでいる女性が結婚した後自分を殺して家と土地を自分のものにする、という心配をする所がかぶっています。
後、山の手の男性と下町の女性の恋愛ということで、「東京の街」論がたっぷり出てきますが、恋愛小説には不必要な詳細さであるのと、小林信彦をずっと読んできている読者にはある意味うんざりするような感じです。
この作品は、知らなかったのですが、「イーストサイド・ワルツ 悦楽の園」としてVシネマになっているみたいです。ここで予告編が見られますが、意外と忠実な映像化をしているように見えます。