2A3ロフチンホワイトで色々聴いてみての個人的な感想。Web上で探しても、この回路の音質についてきちんと書いているのはあまり見かけませんので、あくまで2A3のロフチンホワイトで私が作ったアンプでの感想になりますが、紹介します。
この回路の音の最大の特長は、過渡特性、つまり音の立ち上がり、立ち下がりがいいことではないかと思います。いわゆる「キレがある」、また力強い音です。ただこの特長が常に良い方向に働くとは限らず、真空管アンプに「暖かく柔らかい音」を求める人には「ちょっと違う」と思われる可能性があります。また歪み感も普通のCR結合の無帰還回路に比べて強いように感じます。例えて言えばコントロールの定まらない速球投手でしょうか。(豪速球というほどではない。)さらには、普通直熱三極管の音はソースの粗を隠して聴きやすくする方向の音になりますが、ロフチンホワイトの場合だとそのまま出してしまう傾向が強いようです。そういう意味では半導体アンプ的でもあります。
それから、たまたま今回のアンプだけの特長かもしれませんが、高音が硬いです。これはおそらく超高域が早めに落ちている、いわゆるカマボコ型の音になっているためではないかと思います。(前段の12AX7がパラっているとはいえ結構インピーダンスが高く、このため高音が落ちやすいみたいです。)この場合、プリアンプのトーンコントロールで6KHz以上を少し持ち上げやると高音の硬さが軽減されより聞きやすい音になります。
それから音像・音場も独特で、音像自体ははっきりしているのですが、音場が何かホログラム的というか、大地と切り離されて空中に浮いているような不思議な音場になります。またCR結合の無帰還アンプで音が前に出てくる感じはロフチンホワイトでは文字通り後退し、音場はどちらかというと狭く奥に向かって拡がる感じになります。
こういう特質から向いている音源はソロ楽器より、むしろオーケストラとかジャズだったらビッグバンドとかになると思います。ソロ、特にヴァイオリンのソロは結構きつい音に聞こえるソースがありますが、オケの弦合奏だとあまりそれを感じません。またいいのがロックで、適度に歪み感を残してストレートに立ち上がるのがロックには合います。このためこのアンプを聞き出してから、手持ちの60年代、70年代のロックのLPを多く聞くようになりました。
以上のような音の傾向から、私は無帰還で聴くより、少しNFBをかけてやった方がいいと判断し、現在帰還係数β=0.23、約11dBくらいのNFBをかけています。元々2A3の増幅特性は直線性が良く、無帰還でも十分聞けますが、ロフチンホワイトだとどうも歪みが目立つ感じです。なおロフチンホワイトでは位相ずれを発生させるコンデンサーやトランスを段間に使っていないので、NFBには元々相性の良い回路だと思います。(ロフチンホワイトが最初に作られた1929年頃にはまだNFBの技術は無かったのでオリジナルは当然無帰還です。)
結論としては、私が一番好きなタイプの真空管アンプでの音とはちょっと違いますが、他にも色々持っているので、こういう音の真空管アンプが1台あってもいいと思いますし、特にロック用としては良いと思います。
それからこのロフチンホワイトで使う2A3については、いわゆるヴィンテージ管よりも、むしろ300Bのプレートと共通の構造にしている現在の2A3の方が相性がいいように感じます。
投稿者「kanrisha」のアーカイブ
NHK杯戦囲碁 三村智保9段 対 余正麒8段(2022年8月21日放送)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が三村智保9段、白番が余正麒8段の対戦です。この碁は最初から最後まで黒の打ち回しが冴え、黒の名局と言ってもいいかという内容でした。左上隅で白が厚みを築いたので、白の右上隅の黒の星への上辺からの掛かりに対して黒は上辺を三間に挟み、結果的にこの上辺の黒白の競い合いになりました。上辺の黒が2線に付けて根拠を確保しほぼ活きたのに対して、白の上辺からの石はまだ活きていなくて黒から攻めを狙われていました。これを睨みながら、黒は右辺で通常大ゲイマに開くところを三間に開きました。上辺からの白が弱いので白は右辺には打ち込めないだろうという主張でした。しかし白は三間に開いた黒の肩を付き、黒が反発して中央に伸びたので白が押さえ込んでここから戦いになりました。右辺の黒の下方の石は白の1子を切り離して右下隅につながったので、後は右辺上方の黒だけが問題でしたが、こちらも白にプレッシャーをかけつつ巧みに左辺に連絡しました。こうなると黒の確定地の方が多く黒が優勢になりました。後は白が中央に地をどの程度まとめられるかが勝負でしたが、結局黒も中央に同等レベルの地を作ったので、差は縮まらず、黒の中押し勝ちとなりました。最後まで打てば黒の4目半~6目半ぐらいの勝ちだったと思います。ともかく三村9段の完勝譜であり、余8段はちょっと手が伸びなかったようです。
ジョー90の”Talkdown”
ジョー90の”Talkdown”(無線での着陸指示のこと)を観ました。あるF-113というマッハ4で飛ぶ新鋭戦闘機のテスト飛行中に、最高速度の達成は上手く行ったのですが、着陸態勢に入った時、突然パイロットが無線に返事をしなくなり、機体は完全なオーバースピードで滑走路に突っ込みます。司令塔からの脱出の指示がギリギリ間に合いパイロットは射出されて助かりますが、機体は滑走路に激突して爆発、パイロットは足を骨折し病院に入れられます。この機体はも1機残っていて、2日後にデモ飛行をある将軍に見せて量産の許可をもらう必要があります。WINに相談した結果、例によってジョー90がパイロットの脳波を移してF-113を操縦することになります。とここまではいつものパターンなんですが、違うのは元々のパイロットが病院で記憶を取り戻し、自分が着陸の態勢に入った時に失神したことを思い出します。それは彼が長期に渡り着陸に不安感を持っていて、それが積もり積もって身体が自衛反応として失神を選んだということでした。問題はその脳波パターンを移したジョー90も同じで、着陸の方法を忘れて着陸が出来なくなります。WINのサムとマクレーン教授は病院に行ってパイロットを銃で脅して基地まで連れて行き、そこで無線でジョー90に着陸の仕方を教えるように強制します。最初は思い出せなくて、脚を出す指示を忘れたため、ジョーは着陸寸前でまた高度を上げます。結局パイロットはなんとか手順を完全に思い出してジョー90は無事着陸出来た、という話です。
ただエキスパートの脳波パターンを移せば上手く行くのではない、という教訓的なお話でした。最後に将軍が「200機量産だ!F-113ではなくあの(マクレーン教授の)車だ!」と叫んで最後に小さく「ついでにF-113も50機」とつぶやくのが面白かったです。
トワイライト・ゾーンの”A Nice Place to Visit”
トワイライト・ゾーンの”A Nice Place to Visit”を観ました。
”ロッキー”・ヴァレンタインは、子供の頃から悪の限りを尽くして来ました。今も宝石店に忍び込んで宝石を盗もうとしていましたが、そこにパトカーがやって来て、警官に追われます。壁を越えて逃げようとしましたが、そこで警官に銃で撃たれます。目を覚ますとそこには白い服を着た男がいて、「貴方の望みを何でもかなえるために来ました。」と言います。その男に付いて行くと豪華な屋敷に入りました。そこの壁には「ヴァレンタインの家」とありました。しかも机の引き出しには100ドル紙幣が山のように入っていました。最初は疑いながらも、ヴァレンタインは自分が撃たれたことを思い出し、死んで天国に来たのだと思うようになります。それで彼はカジノに行きますが、ルーレットをやれば毎回勝ち、スロットマシンをやれば一回で大当たりです。稼いだチップを取り巻きの女性達に気前よく上げて彼は有頂天でしたが、何日も過ごす内に、何をやっても自分が勝つ、というのに飽きて来ます。それで結局ヴァレンタインはPIPという名の白い服の男を呼び出して、「こんな所にいる位なら別の場所(=地獄)の方がまだまし」と言います。PIPはしかし冷ややかに「ここがその別の場所なのだよ」と言い放ちます。
という話でなかなか捻りが利いていて良かったと思いますが、菊池寛の小説で善良な老夫婦が死んで極楽に行ったのですが、何百年と蓮の台で過ごす内に退屈して「地獄はどんな所だろうか」と想像するのだけが楽しみになった、というのがありましたが、ちょっとそれを思い出しました。
ジョー90の”Attack of the Tiger”
ジョー90の”Attack of the Tiger”を観ました。東側のどこかの国(出てくる言葉がアマガトとかシーチーハンとかで、日本と中国がごっちゃになったイメージ)が、強力な核ミサイルを衛星軌道上に打ち上げて、世界の覇権を握ろうとしています。打ち上げの数日前にWINのエージェントがそれを突き止めますが、最後の録音を残して彼は撃たれて死にます。WINではその基地の破壊を計画しますが、それには世界軍の最新鋭の重武装戦闘機が必要です。その飛行機の操作は非常に高度な練度を要求しますが、例によってビッグラットでベテランパイロットの脳波パターンを移して、という話です。それで敵の基地がジョーが乗った戦闘機が接近した時に、レーダーに映った地図は何と日本列島!もしかしたらこのシーンは日本での放映の際はカットされたのかも。しかし1960年代後半になっても日本をまだ敵国扱いとはあきれます。
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ回路図
今回の2A3ロフチンホワイトシングルアンプの回路図です。元は宍戸公一さんの「送信管によるシングルアンプ製作集」に載っているものです。
その元の回路との違いは、
(1)トランス類は元は全てタンゴでしたが、電源トランスを春日無線変圧器のに、チョークと出力トランスをゼネラルトランス(旧ノグチトランス)のに変更しています。
(2)(1)の電源トランスの電圧が400V→340Vになったので、元の回路での整流管出力のすぐ後にある電圧降下のための50Ω10W抵抗を外しました。それでもB電圧が405V程度と元の回路より一割くらい低くなりましたが、問題無く動作しています。
(3)元の整流回路では、5AR4の整流の直後に100μFの電解コンデンサーがつながっていますが、これは5AR4の推奨容量を上回っていて、コンデンサーによる突入電流のため5AR4の寿命が短くなる可能性があります。なのでこれを47μFに変更しました。なおかつおまじない的に、2.2μFのフィルムコンデンサーをパラに入れました。(秋一郎さんの2A3アンプの真似)
(4)ボリュームを追加しています。
(5)出力トランスの8Ω端子から5KΩの抵抗経由で12AX7のカソードにNFBをかけています。(帰還係数β=1.5K/(1.5K+5K)=0.23、約11dB)
(6)スイッチを安全のため両切りに変更しました。
(7)スパークキラー用回路を入れました。
(8)ハムバランサーは20Ω抵抗+10Ω可変抵抗+20Ω抵抗ではなく、50Ωの可変抵抗だけを使いました。
(9)1次回路だけでなく、2次回路の保護のため、2次回路にもヒューズを入れました。(1A 500VAC、1A500VDCのは取り寄せ中。ちなみにACでもDCでも溶断特性には変わりがありませんが、DCの場合ヒューズが切れる際に強いアークが発生するので、その対策をした{管の中に充填された珪砂によってアークを瞬間的に消す}のがDC用みたいです。)
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ改造
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、完成!
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、一応完成
2A3ロフチンホワイトシングルアンプ、ひとまず完成しました。ただ、演奏中も弱音の時に聞こえるハムが出ています。ハムを減らすために、平滑用の電解コンデンサーの容量を倍にしたり、配線を見直したり、色々やってみて多少マシにはなりましたが、まだ聞こえます。これの低減は今後の宿題とします。
音質ですが、2A3のCR結合の無帰還アンプと比べると、中低音が力強く、高音はCR結合が柔らかいのに対し、こちらは何というか鋭利な感じ(といっても決して金属的ではありません)の高音です。
途中で小さな音しか出なかったのは、何と2A3のソケットを180度間違えて配線してからでした。それでも小さいとはいえ音が出ていたのが不思議です。実はこの間違い、Webで紹介されたのを読んでいたんですが、自分でもやってしまいました。ソケットの細い方がヒーターだと思い込んでいました。
なお、シャーシは、サンバレーのJB300BVer.3のものの流用です。なので使わない穴が色々開いています。ロフチンホワイトは発熱が大きいので丁度良かったです。
NHK杯戦囲碁 伊田篤史9段 対 関航太郎天元(2022年8月14日放送)
8月14日のNHK杯戦囲碁は、黒番が伊田篤史9段、白番が関航太郎天元です。実は伊田9段は天元戦の挑戦者に決まったので、この戦いはその前哨戦です。また今をときめく一力遼棋聖を倒して20歳にして天元位を取った関天元がどのような碁を打つのか興味がありました。布石は伊田9段が得意としているかなりの変則布石で、右上隅が三々、右下隅は目外しから普通の小ゲイマジマリより一路高く構えるというものです。黒が左下隅に下辺からかかったのを白がはさんだことにより、ここから戦いが始りました。途中の競い合いで、黒が下辺から一転して左辺に展開し、白は当然その間を裂いていったので、下辺から中央に延びる黒の石は弱くなり、その後ずっと攻め続けられるという、二人の棋風からすると反対の展開になりました。白はこの黒を攻めた代償に中央が非常に厚くなりました。また黒を攻めながら上辺にも地を確保した後、更に右下隅の黒の変則構えに付けていってここを活き、地合で先行していた黒を追い上げます。右辺で劫争いが起き、黒が右下隅に劫立てしたのに白は受けずに劫を解消し、黒模様だった右辺に白が居座り、この別れは白が良かったようです。白は結局厚みを活かして中央にも地を作り、黒はコミを出せない形勢となり投了となりました。関天元の自在の打ち回しが冴え、これなら一力遼棋聖に勝ったのはまぐれではないなと思いました。この二人の天元戦が楽しみです。タイトルは防衛してこそ一人前と言われますので、関天元にとっても大事なタイトル戦です。