完成!PCL86全段差動プッシュプルアンプ

真空管アンプ、底板も付けて最終版として完成しました。外観と内部の最終写真です。ちょっと本体と底版の隙間が空いていますが、部品を詰め込み過ぎたんで、あまり締め付けるとショートする危険性もあってこのくらいにしています。これを完成するのに結局2ヵ月半もかかりましたが、なんとか無事に連休中に完成出来て嬉しいです。
それから音質ですが、自分で一から作ったものに親馬鹿的バイアスがかかるのは当然ですが、それを抜いても音質は非常にいいです。このアンプは全段差動プッシュプルアンプというものですが、このタイプはもう一台KT88のものをヤフオクで買って持っています。それと比べても定位の良さ、音のピュアさは優っていると思います。出力は計算値で3.1Wくらいですが、実際は3.5Wくらい出ている感じです。

ベースとなっている回路は、https://lavie60.blog.fc2.com/blog-entry-659.htmlにあったものです。この場を借りて御礼申し上げます。
元の回路からの変更点は、
(1)出力段の定電流回路を三端子レギュレータから、定電流ダイオード16mA~18mA(SEMITECのE-153かE-183)のものの4本並列に変更。(1本あたり平均で14mAが必要なのですが、SEMITECのEシリーズの定電流ダイオードは大体公称値よりも実際のピンチオフ電流が低い傾向にあり、さらにばらつきも±20%程度ありますので数多く測定してその中から4本ずつ2組選びます。)テスターで測定して4本合計で56mAになる組み合わせを2組選んで使いました。(ノイズを出す三端子レギュレータより、定電流ダイオードの方が絶対にいいです!)
(2)ヒーター用電源+14V電源の回路の電解コンデンサーを10,000μFx3本を4,700μFx3本に減らしています。いくらなんでも14V電源用に30,000μFは理不尽ですし、またかなりのレベルの突入電流が発生してスイッチその他の部品を傷めます。オシロで見て、4,700μFx3本でまったく問題ありませんでした。(というかそれでもまだ多すぎると思います。)またヒーターは傍熱管なのでそもそもDC点灯にする必然性は少なく、さらに若干のリップルが残っていても問題ありません。
(3)同じくその電源のアースポイントを最初の電解コンデンサーのマイナス側ではなく、最後の電解コンデンサーのマイナス側に変更。これによりアースに混入するリップル電流が少なくなります。
(4)表示灯としては定電流ダイオード内蔵のLEDを使用。ちょっと明るすぎますが、今回のテーマが「定電流ダイオード」だったので敢えて使いました。明るさを落とすには、抵抗を入れて定電流ダイオードにかかる電圧を6Vより低くしていわゆる「肩特性」の所を使えばいいです、ってそれをやるくらいなら最初から普通のLEDを使った方がいいです。
(5)これは変更ではありませんが、元のページには電源トランスがもう1台必要なことが回路図以外には書いてありません。(同じページにこのアンプで使うトランス類という写真がありますが、その中にも含まれておらず、また外観写真でも使用を確認出来ませんでした。)この6V電源はC電源でバイアス用ですが、ぺるけさん式の整流用ダイオードの電圧降下を利用するなどでわざわざ別トランスを使わなくても出来そうですが、今回は修正に自信がなかったので回路図のままにしました。
(6)3極管部のプレート電圧を調整する抵抗は47KΩにしました。これで206Vくらいになっています。
(7)組み上げた後盛大にハムが出て、その対策としてカップリングコンデンサーの電力増幅段側をアース(全体のアースとは違うポイント、つまり2点アース)に落としました。これでピタリとハムは止まり、ボリューム最大でもハムは出ません。
(8)スパークキラーは岡谷のS1201が納期半年で入手出来なかったので、120Ω2Wの金属皮膜抵抗と0.1μF 200VAC(400VDC)のフィルムコンデンサーを3つ並列にして(つまり0.3μF)自作しました。(S1201は120Ω+0.1μFです。コンデンサーを0.3μFに増やしたのは大容量の電解コンデンサーが多く使用されているので、その突入電流を十分吸収させるためです。)
(9)電源スイッチはNKKの2極単投のS-21Aを使い「両切り」にしました。つまりライブ(トランスの100V端子につながる方)とニュートラル(同じくトランスの0V端子につながる方)を同時に入り切りして安全性を高めています。このスイッチの定格は15A 125V ACで、フューズが2Aであることを考えると十分な容量があります。
(10)B電源の整流回路を普通のブリッジダイオードではなく、ショットキーバリアダイオードに変更。このアンプには3つの電源回路がありますが、その全てでショットキーバリアダイオードを使っています。
(11)ヒーター用電源はDCのため電源トランスの14.5Vタップからではなく、12.6Vタップから取りました。これでヒーターの電圧が13.4Vくらいになっています。(14.5Vタップから取ると、整流することで電圧が1.2倍くらいになりますので、元の回路の抵抗程度ではヒーター電圧が17Vに近くなります。もちろんこれでも動きますが、ヒーターの寿命が短くなります。)
(12)回路の変更ではありませんが、抵抗は出来る限り指定より大きめのW数のものを使うように心がけました。

真空管アンプ-取り敢えず音が出ました!


真空管アンプ、慎重に配線をチェックし、電源を入れて煙などが出ないことを確認して、各部の電圧をチェックして一部配線を修正し、音出ししました。最初プレート電圧が高すぎたようで音が非常に小さくしか出ず、抵抗を変更してOKになりました。またどうにかすると盛大にハムが出るので2箇所ほどグラウンドに落とす箇所を追加し、また電解コンデンサーも一個追加しました。
後は底板とオシロでの波形チェック、使用する真空管の再測定です。

一応音が鳴った証拠に動画を貼っておきます。

真空管アンプ-配線作業完了!


真空管アンプ、配線作業完了!ただこれから奥飛騨温泉に2泊3日で行って来ますので、配線の再確認、各部の電圧チェック、音出しは戻ってから連休後半の作業になります。最初シャーシーが大きすぎてスカスカになるかと思いましたが、まったくそんなことなくて、ごらんの通りぎっしりになりました。これでまだ音が出るかどうかは分かりませんが、初めてスクラッチから作ったにしてはまあまあ良く出来たんではないかと思います。

真空管アンプ-最後の難所

徹夜で真空管アンプ組立て。300KΩの抵抗が断線していて、代りは無いので、手持ちの抵抗を組み合わせて作成。
またこのアンプは元はヒーターを直流点灯だったのを交流に直したのですが、何と今日、このヒーター電流で5極管のバイアスをかけていることにようやく気がつきました。仕方がないので、A電源回路をまた付けました。但し10000μFの電解コンデンサーは4700μFに減らしました。元のアンプ、10000μFを3本も使っているんですが、盛大に突入電流が発生すると思います。4700μFを3本でも多すぎるような気がしますが、スパークキラー回路のコンデンサーを0.2μFから0.3μFに増やしました。
本当はヒーターをAC点灯のまま改造したいんですが、残念ながらまだそこまでの知識が無いです。

全段差動プッシュプルアンプに三端子レギュレータって?

ぺるけさんの全段差動プッシュプルアンプの最終段には、定電流回路として三端子レギュレータ(LM317Tなど)が使われていて、またそれを多くの人が真似しています。私はこれに疑問を持っているので、定電流ダイオードと三端子レギュレータで波形を比べてみました。定電流ダイオードの方がほとんどスイッチング電源のノイズだけできれいな直流の波形を出したのに対し、今作ろうとしているPCL86全段差動プッシュプルアンプの元になっている回路の指定通りに三端子レギュレータに抵抗とコンデンサーを付け、DC7.7Vぐらい印加した時の波形はごらんの通りでした。すぐ分かるようにリップル(電圧変動)が出ていますし、ノイズもかなり乗っています。確かに平均電圧は±0.05Vくらいでそれは安定していますが、私はアンプの増幅回路の中に三端子レギュレータを使いたいとは思いません。そもそも定電流ダイオードよりFETの方がいいとか書いている人もいますが、定電流ダイオードはFETそのもの(FETのゲートとソースを短絡させたもの)です。最近の照明用の超超高輝度のLED用などで、定電流ダイオードを並列にして使用することは普通に行われています。

真空管アンプ-後少しです。

真空管アンプ、かなり進み、部品は後4つだけ。配線箇所は残り20箇所くらいです。ちょっと配線がごちゃごちゃになって来ましたが取り敢えず一度動かして動くのが確認出来たらやり直します。
カップリングコンデンサーは最初HGCのオイルコンデンサーを使おうとして一度取り付けましたが、一個半田ごてを当てて表面を溶かしてしまったので、ASCのポリプロピレンフィルムコンデンサーに交換しました。まあこの辺はどうせ色々変えて遊びたい所です。連休前には何とか配線が終わるかなと思います。

定電流ダイオード(CRD)の補償抵抗について

定電流ダイオードの補償抵抗の抵抗値の決め方ですが、図はSEMITECのEシリーズのCRDの温度によるピンチオフ電流の変化を示したものです。これによるとE-153(1.5mA)で20℃から50℃に温度が上がった場合、実に17%もピンチオフ電流が低下します。
一方で炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)の温度係数ですが、-200ppmから-800ppmとのことです。%に直すと、-0.02%から-0.08%ということになります。この値では、温度が上昇した場合にCRDでのピンチオフ電流減少を全部補うということにはなりません。おそらくですが、温度上昇分を見込んで、あらかじめ定電流値をかさ上げしておくという意味が大きいのだと思います。

真空管アンプ-定電流回路取付け

真空管アンプ。ヒーターへの配線が長すぎてごちゃごちゃしていたので短くしてすっきりさせました。それから定電流回路2つを実装、左側の2枚のユニバーサル基板です。といってもご覧の通り、定電流ダイオードに抵抗を並列につないだだけです。初段が定電流ダイオード1.5mAのを一本で抵抗は1.8KΩ、電力増幅段が定電流ダイオード4本並列で56mA、抵抗が2KΩです。この抵抗は補償抵抗といって、定電流ダイオードは温度が上がると電流値が下がるので。それを補正するものです。真空管アンプのシャーシーの中はそれなりに熱くなるので入れた方が無難と思いますが、これまでWebで見た限りではちゃんと入れている人は一人もいませんでした。なお定電流回路ですが、いわゆるキルヒホッフの法則ですね。2つの真空管からの電流が定電流ダイオードに流れるので、2つの真空管電流値の合計と定電流ダイオードのピンチオフ電流が等しくなります。(補償抵抗は、後で考えなおし、電圧増幅部が5KΩ、電力増幅部が3KΩに変更しました。この辺りはトライアンドエラーです。補償抵抗で合計の電流値が増えますが、これは温度上昇での電流低下を見込んだかさ上げの意味があります。)
これで未実装の部品は16で全部抵抗とコンデンサーです。後2日ぐらいで取り敢えずは実装は完了しそうです。

ぺるけ氏の定電流ダイオードに関する記述への疑問

ぺるけ氏が定電流ダイオードについて書いているページで以下の疑問を持ちました。(ぺるけ氏=「情熱の真空管アンプ」や「真空管アンプの素」の作者の木村哲さん、今私が作っている「全段差動プッシュプルアンプ」の提唱者)

(1)「電圧が高くなると定電流ダイオードの自己発熱が大きくなり、その影響が出てしまうのです。」と、定電流ダイオードのマイナスの熱特性についての記載はあるが、ではそれに対してどう対策するのかまったく記載が無い。「他の部品の発熱によってシャーシ内の温度が上昇するにつれて特性は変化します。厳密な設計する場合、この変化を見越しておく必要があります。」で見越してどうするのか?

SEMITECのEシリーズのデータシートによると、補償抵抗を並列に付ければいいことになっています。
これはどういうことかというと、炭素皮膜抵抗(カーボン抵抗)は負の温度係数を持ちます。つまり温度が上がると抵抗値が下がります。抵抗値が下がれば同じ電圧であれば電流は増えます。一方で定電流ダイオードは同じく負の温度係数を持っていますが、電流値は逆に下がります。一方で下がって一方で上がるので温度による影響が小さくなるということになります。注意点として、カーボン抵抗の温度係数はばらつきが大きいので、「何ΩでOK」ではなく、トライアンドエラーで試す必要があるようです。
(2022年4月26日追記)
良く考えたら補償抵抗はLEDの点灯みたいに電圧が変動しない回路ならいいですが、この差動アンプに使うのには、電圧が変動しそれに伴い補償抵抗の電流値も変動するのでダメですね。ぺるけさん、失礼しました。

(2)「定電流ダイオードの並列接続は意味がありますが、直列接続は意味をなしません。直列接続した場合は、直列になった定電流ダイオードのうち1つしか働かなくなるからです。」
これも間違っています。まああまりやるべきではないのでしょうが、SEMITECのデータシートによれば、電流値の低い方のCRDに電圧が集中するのを防ぐため、並列にツェナーダイオードを入れれば直列接続で使えます。また、CRDの向きを逆につなげば、双方向に定電流を作れますので、直列接続を使うことがあります。

SEMITEC社による定電流ダイオードのQ&Aはこちらを参照ください。

真空管アンプ-電源トランス交換、B電源一部作り直し

真空管アンプ、先日煙が出た電源トランスを新品に交換しました。その際にトランスケース(東栄の)の再取付けが大変であれこれやっていたらB電源回路のFETの脚を折ってしまったので、そこのユニバーサル基板の回路も作り直しました。作り直したものでB電源の電圧を測ったら平均304Vで26Vも低下しました。これは電源トランスの特性のばらつきなのか、前のB電源回路の配線が一部間違っていたのか良くわかりませんが、何にせよ抵抗やAC用コンデンサーでB電源の電圧を下げることは必要なさそうになってきました。(最終的に回路を接続すればB電源はもっと下がります。)