デジタルオシロスコープ+ファンクションジェネレーター


真空管アンプの測定用に、両方中華製ですが、デジタルオシロスコープ+ファンクションジェネレーターを買いました。オシロを使うのはまったくの初めてで、おまけに日本語のマニュアル無しです。幸いなことに、機能とデザインがテクトロニクスの1番安いのとほぼ同じようなので、テクトロニクスのマニュアルを見ながら使おうと思っています。最初、1,000Hzの校正信号を表示させてみたら、盛大にリンギングが出て、何じゃこれは、と思ったのですが、単なるプローブの容量を調整していないだけでした。取り合えず超三結アンプにつないで正弦波を入れて表示させることは出来ました。

KT150を全段差動プッシュプルで聴く

これまでTUNG-SOLのKT120、150、170をシングルアンプで試しました。この中では150が今の所一番いいと思い、2本買い足して、KT88の全段差動プッシュプルアンプに挿して聴いてみました。これはヤフオクで個人の方から買ったものですが、回路図を見ると、電源トランスのヒーター用の巻線の容量は6.3V4A(KT88を2本分)なので、余裕はありませんがまあOKと思いました。結果的に問題無く鳴りました。電源トランスのカバーの温度ですが、ギリギリ手で短時間なら触れるくらいに収まっていますので、おそらく50℃くらいで、まあ何とかという感じです。
で音はというと、私的にはやはりシングルアンプの音の方が好みですね。全段差動プッシュプルの音はとても端正なのですが、それが何だか半導体アンプに近付いたみたいで、真空管アンプらしさが減じているような気がします。また定位とか音像表現がいいと言う人がいますが、全段差動の理屈を知っていると、何だか人工的に作られた音像・音場ではないかという気がします。まあシングルアンプに比べていい所は、強音でも音がクリップしないことですね。ただプッシュプルだからといって全段差動の場合は出力がシングルアンプの倍になる訳ではなく、出力そのものはシングルアンプとほぼ同じです。
ちなみにこのTUNG-SOLの真空管はブランドはアメリカですが、製造はロシアです。なので早めに買っておかないと、ロシアへの経済制裁の逆制裁で買えなくなるんじゃないかという気がしたのも慌てて色々買いそろえた理由の一つです。

スパークキラーの自作

自作真空管アンプ用に、岡谷電機のスパークキラーS1201を買おうとしたら、何故かどこのオンラインショップでも在庫無しで、納期が5月~8月とかです。仕方が無いので自分で作ります。スパークキラーといっても、単に抵抗とコンデンサーを直列につないだものなのですが、いざ自作しようとすると抵抗のW数とか、コンデンサーの耐圧が気になります。岡谷のデータシートを見た限りでは、抵抗は120Ω、コンデンサーは0.1μFでした。それで定格ですが、まずこのRC直列回路のインピーダンスを求める必要があります。式は左の通りですが、計算サイトがありますのでそれを利用すると、31.8KΩになりました。AC100VでI=V/Rから電流を求めると3.1mAになりました。この場合W数は100X0.0031=0.31Wになりました。であれば抵抗の定格は1/2W(0.5W)が最低限になります。またコンデンサーは岡谷のデータシートではAC150Vになっています。

結論としては、
(1)抵抗 120Ωで1/2W以上 カーボン抵抗が最低限。(出来ればもっと余裕を持たせた方がいいです。1/2Wより高い定格のを使う場合は金属皮膜抵抗とかになります。)
(2)コンデンサー 0.1μFで耐圧AC150V以上(出来ればAC200V) フィルムコンデンサーか積層セラミックコンデンサー
となります。
ただ、残念ながら抵抗もコンデンサーも1本だけ売ってくれる奇特なショップはないので、結局10本とか25本の最小購買数での購買になり割高になります。岡谷のS1201は通常100円くらいで一個から買えますので、こっちの方が安いです。

なお、取付位置ですが、電源トランスの入力側の0と100Vの端子につなぎます。スイッチに並列にするつなぎかたもありますが、上記の通りわずかですがスイッチをバイパスして電流が流れますのでいわゆる待機電力を消費しますし、またリレー等を使っている場合は誤動作する可能性があり、望ましくありません。

実際に私が買った抵抗とフィルムコンデンサーです。十分過ぎる余裕を持ったのにしています。

 

 

 

 

実際にアンプに実装したのはこんな感じです。このアンプでは大容量の電解コンデンサーが使われていてかなりの突入電流が予想されるので、0.1μFのフィルムコンデンサーを3つ並列にして0.3μFにして使っています。

真空管アンプにおける間違った両切り(スイッチ)

ちょっとKT150を使ったシングルアンプを探していたら、左のような回路図がありました。この会社のアンプでは電源スイッチに2極のスイッチを使って、いわゆる「両切り」にしたつもりなのかもしれませんが、残念ながらこれは「間違った両切り」です。一見すると2極のスイッチを使い、並列の2つの回路でスイッチを入り切りしているので、スイッチの負荷としては1接点当たり1/2になって信頼性が上がる、と多分思われているのだと思います。しかしこの考え方は間違いです。何故かというと2極のスイッチの場合、接点の開閉タイミングが両方で完全に一致するということはなく、どちらかの極の接点が先に開閉しますので、アークはそこで発生し、常に片側の接点だけが損耗して行くということになり信頼性が向上することはありません。(片方の接点が損耗した結果、ON-OFFタイミングがずれ、今度はもう一方の接点が先に開閉することになるという可能性もあるので、まったく意味が無い訳ではありません。)

正しい「両切り」とは、左図のように回路のライブ側(信号側)とニュートラル側(グラウンド側)の両方を一度に開閉することを言います。(この場合、2つの極の開閉タイミングが正確に一致する必要はありません。)これをする理由は床が濡れていた場合など、機器のグラウンドから漏れた電流による感電を防止することです。この場合濡れた床から人体を通じて機器に戻るという回路が出来る可能性があるので、グラウンド側の回路を明示的に切断することで感電防止になります。なので家の中の電灯用のスイッチでも浴室など水回りで使う場合は必ず両切りになっています。

WE300BよりKT150、170


KT170をずっと聴いていますが、やはりいいです。私の環境と機器、私の良く聴くソースでという限定ですが、どちらがより好ましい音を出すかと言われたら、ウェスタン・エレクトリックの300BよりTUNG-SOLのKT150、KT170です。まず低音に関しては圧倒的にKT150、KT170の方がいいです。十分に低域まで伸びて、しかもダンピングの利いた引き締まった低音を聴かせてくれます。中高音についてはどちらにもいい所がありますが、音の粒立ちの明確さという意味で、KT150、170の方が私好みです。分解能の点でもこのソースにこんな音が入っていたのかという感じです。音場・音像も良く、もっともこれはデュアルモノという構成による部分がありますが、いわゆる「前に出て来る音」です。もちろんアンプによる差というのが大きいですが、私の所ではどちらもエレキットのものをAmtransパーツに一部変え、ルンダールのトランスにしている、という点で同じです。それからコストパフォーマンスでは圧倒的にKT150、170が上回ります。2021年度に出たウェスタン・エレクトリックの復刻300Bはペアで23万円なのに対し、KT170はペアで3万ちょっとです。問題点は、ヒーター電流が大きいので、単純にはKT88用アンプでは使えないということですが、私みたいにデュアルモノでやるとか、あるいはヒーター専用のトランスを足すとか、色々と対策はありますし、何よりこれから色々なアンプが出て来るでしょう。

KT170もポチる


KT150の音がとても気に入ったので、この辺でそろそろ打ち止めにすべきでは、と思ったのですが、好奇心に逆らえず昨年発売されたKT170もポチりました。写真の左からJJ製12AU7、KT120、KT150、KT170、そしてPSVANEのWE300B(サイズの比較用)です。KT170は150から更に形状が変わり、高さは300Bとほぼ同じで、横は300Bより大きい巨大な管になりました。KT120はまだKT88風ですが、ここまで来ると全く別の管です。ちなみにetracerで、KT120用の設定で測定した時のプレート電流は、KT120が140mA、KT150が160mA、そしてKT170が170mAになりました。120→150→170の順で低域の締まりとダンピングが良くなります。ただ170はまだ今日届いたばかりでエージングが出来ておらず、女性ボーカルの艶とかがイマイチです。何度も書いていますが、これらのいわばスーパーKTシリーズはヒーター電流が2AとKT88の25%増しになっていますので、KT88用のアンプにそのまま挿すと最悪電源トランスが焼き切れます。某サ○バ○ーの色んな出力管が使えますと言ってKT150もOKですとしているアンプ、電源トランスのヒーター用巻線の容量は2本で4Aでした。ということは定格ギリギリでかなり危ないです。私がこれらの球でシングルアンプを作るなら、左右独立電源にして、電源トランスは2台にします。6.3Vで5Aが取れる電源トランスは春日無線等で売っています。あるいはヒーター専用のトランスを設けるかです。

真空管アンプー完成イメージ

真空管アンプの製作、ケースが届いたので取り敢えず上部に付ける部品を並べてみてそれらしくなりました。上部真ん中の電源トランスは上下逆で角穴を開けてこの半円の部分をシャーシの中に入れます。
ところでケースって底板は付いていないんですね。Amazonで丁度のサイズのアルミ板が無いんでちょっとあせりましたが、Webで探して指定のサイズに切って一枚から売ってくれる店を見つけて何とかなりました。

PCL86全段差動プッシュプルアンプのスクラッチ製作に挑戦


これまで真空管アンプのキットを6台組立て、いずれも成功しています。(1台だけ販売店に手直ししてもらいましたが)
それで前からやろうと思っていた、シャーシの加工から始まるスクラッチでの真空管アンプの作成についに踏みきり、部品を集めている最中です。アンプの回路はPCL86の全段差動プッシュプルアンプというものです。既にキットでPCL86の超三結アンプを組立てていますので、今度は同じ真空管で全段差動プッシュプルを作って比べるのが目的です。もちろん回路設計なんて出来ませんから、Webにあったものそのままですが、レイアウトや配線の引き回しなどは自分で考えます。またアルミの1.5mm厚の板のケースを使いますが、余裕を十分持った大きめの箱にしています。(330x220x50)PCL86は三極管と五極管が一緒になった複合管なんで他の真空管は必要無く(整流はショットキーバリアダイオードでやります)、ご覧のようにスペース的には十分ゆとりがあります。
材料代は概算で10万円程度、その内真空管など3万円分は既に持っているものが使えたので、結局出費は7万円ほどです。(工具代は除く。)アルミ板の加工が問題ですが、既にかなり前にボール盤を買っており、またボッシュの電動ドリルやホールソーも揃えています。まあ完成はいつになるか分かりませんが気長にやろうと思います。
なお、レイアウトで普通前面にある電源スイッチが天板にあるのは上杉研究所のアンプの真似です。(上杉のアンプの電源スイッチは私の会社のS-1Aというトグルです。)

KT150を試す


KT-120の試聴結果がとても良かったので、更に同じTSUNG-SOLから出ているKT-150を試してみました。KT-120より高さが増し、高さではほとんど一般的300Bと同じです。ご覧になってお分かりのように、ラグビーボールのような独特のガラス形状をしています。これはマイクロフォン歪を減らすのに効果があるんだそうで、確かに特定の周波数で共振することが少なくなるような気がします。高さが増えたということは、プレートとカソードの電極の表面積が増え、その分より高い電流を余裕をもって流せるということかと思います。後構造として面白いのがゲッター用リングが上部と左右の3箇所に付いています。やはり管の中の容積が増えた分、ゲッター部の面積も増やす必要があったのでしょうか。
まだ聴き始めたばかりですが、低域に関してはKT120よりも更に制動が良くなっていい感じです。外見だけ見ると大味なのでは、と思われる方もいるでしょうが、どうしてなかなか繊細な中高音で気に入りました。ただアンプには負担をかけますね。前に書いたように電源トランスの電気容量的には、片Chしか使っていないので問題ありませんが、KT120でテラークの1812年の例の大砲のCDをかけたら、大砲の発射の箇所で保護回路が働きました。KT88ならクリップして終わりなんですが、KT120やKT150では余裕で大電流を流せるので、アンプがついて行けないんでしょうね。
本来、KT120もKT150もプッシュプルにして、KT88より高い、例えば100W+100Wという出力を実現するのは主目的で開発されたんでしょうが、こうやってシングルアンプで楽しむ分にも十分メリットがあると思います。
真空管のオーディオというと、とかく昔の球を使った骨董趣味みたいになりがちなのですが、こういう風にまったく新しい出力管が開発されるというのはとてもいいと思います。

TU-8200Rのデュアルモノで、TSUNG-SOLのKT120を使う。

TU-8200Rのデュアルモノで、KT120というTSUNG-SOLから出ているKT88上位互換の出力管を試してみました。このKT120ともう一つKT150というのはヒーター電流がKT88が1.6Aなのに対し2Aになっているので、TU-8200Rで鳴らないことはないですが、電源トランスの電流定格をオーバーするので、長時間使うとトランスが最悪焼き切れます。しかし、このデュアルモノでは元々片チャンネルしか使わないので、KT88の普通の使い方で電流が100としたら、100÷2×1.25=0.625となり、全体の2/3弱の容量なのでまったく問題ない筈です。それで実際やってみましたが(余分なヒーター電流を抑えるため、使わない方のチャンネルの真空管は12AU7も含め外しました)、もちろん音は出て、また2時間ぐらい使っても特に電源トランスが熱くなったりもしていませんので、大丈夫と思います。
それで音ですが、元々このデュアルモノは電源に余裕があるので力強さが出る上に、さらに出力トランスをルンダールに変えてさらに低域が伸びています。それとこのKT120という、本来KT88よりも大出力を出すことを狙って作られた出力管の相乗効果で、真空管のシングルアンプとは思えないような、力強くかつダンピングの利いた音で、聴いていると楽しくなるような音になりました。シングルアンプでここまで出来るんだったら、私の環境ではプッシュプルアンプは必要ないと思いました。

TU-8200Rのデュアルモノで問題無いだろうという計算根拠の詳細は以下の通りです。
TU-8200Rのヒーター電源は回路図を見ると6V4Aで、これで左右の真空管計4本のヒーター電流をまかなっています。出力管として6L6GCを2本挿した時のトータルのヒーター電流は2.4Aです。(6L6GCが一本0.9A、12AU7が一本0.3Aです。)KT88が2本の場合は、3.8Aです。(KT88のヒーター電流は一本1.6Aです。)KT120を2本挿した時は、2.0 x 2 + 0.3 x 2 = 4.6Aとなり定格を15%もオーバーしています。それでデュアルモノで片側だけ使用した場合はKT120で合計2.3Aとなりまったく問題ありません。ただこれはあくまでトランスの定格の話であって、他の部品が場合によってはパンクする危険性が0ではないので、もし同じことを試すのであれば自己責任にてお願いします。