KT88の全段差動プッシュプルアンプを入手

オーディオへのAddiction(中毒)は止まらず、今度はヤフオクでKT88全段差動プッシュプルアンプ完成品を入手しました。超三結アンプと並んで、真空管アンプの新しい回路としてぺるけさんが2000年頃考案(正確には以前からあったアイデアを具現化したといった方がいいでしょう)したものです。プッシュプルの高い出力は犠牲にしますが、その代りプッシュプルの2つの真空管に完全な補完動作を定電流回路で行わせるものです。特に定位感の向上に効果があります。ただ、プッシュプルの一番のメリットである高出力が無くなってしまうのに対して、メリットの方はある意味玄人受けというか、初心者だとほとんど違いは分からないと思います。退職金をもらったのでいっそのことヴィンテージの真空管アンプでも買おうかとも考えましたが、それより真空管アンプの新しい可能性を試してみたくてこうなりました。
定位感は本当にいいです。今、フィッシャー・ディースカウのレーヴェのバラードのLPを聴いていますが、本当にそこで歌手が歌っているという感じが出ています。

別冊FM fanのカートリッジフルテスト(1976、1978、1980年)

ヤフオクと日本の古本屋で、別冊FM fanのカートリッジのフルテストを行っている、1976、1978、1980年の各号を入手。この内1980年の号は実際にリアルタイムで所有していました。テストしているのはすべて長岡鉄男です。今こんなに詳しいカートリッジのテスト記事は無いです。感心するのが、すべてのカートリッジで、20時間テストレコードをトレースするというエージングをやってからテストしていることです。このため1976年の最初の40機種のテストには実に4ヵ月かかったそうです。またレビューの中身も単なる様々なソースを聞いての印象批評だけではなく、それぞれのカートリッジの技術的な特徴を、自分の言葉でちゃんと説明しています。それに比べると今のカートリッジ評はメーカーの宣伝文句をそのまま繰り返すだけで自分で理解して書き直すということがまずないですし、またエージングをやっている例も少ないです。長岡鉄男も色々に評価される人ですが、このカートリッジの評価ではいい仕事をしていると思います。

サテンのMCカートリッジ

昔京都にサテン音響という会社があり、学生の頃そこのM-21というMCカートリッジを使っていました。この会社はもうありませんし、創業社長ももうお亡くなりになっています。しかしこのカートリッジは今でも忘れられない素晴らしい音のカートリッジでした。そもそもMC型のカートリッジを世界で最初に作ったのがデンマークのオルトフォンで、最初の製品はSPUというものでした。(今、そのレプリカを使っています。)この時にオルトフォンが採用した構造は、今でもMCカートリッジのおそらく8割くらいで採用されています、というか真似をしています。ところが、このサテン音響はオルトフォンのMC型に真っ正面から挑戦し、その欠点である所を全て解決した製品を出していました。オルトフォンのSPUの欠点とは、
(1)出力電圧が低く、昇圧トランスやヘッドアンプを必要としSN比が悪い。
(2)カンチレバーの後ろに十字型の枠があり、それにコイルを巻く構造です。このためMM型のような簡単な針交換が出来ませんでした。
(3)コイルを巻くのに鉄芯を使っていましたが、それは磁性体歪を発生させます。
上記3つ以外に、筐体が柔いというのも欠点でしたが、それは省略します。
サテンのMCカートリッジは、
(1)独自のリボン型巻線を採用し、出力電圧をMM型並みにした。
(2)針先の近くに、パンタグラフ状の金属バネを付け、針の振動はこのパンタグラフ状の金属を経由してコイルに伝えられました。針先とパンタグラフは接着されていないため、簡単に針交換が出来ました。しかもスタイラスユニットと本体の固定は、本体の中に磁気回路として入っている磁石でくっつけていました。
(3)コイルは歪の発生しない空芯コイルを採用していました。
といった構造で、オルトフォン型の欠点を全て解決した独自の構造を持っていました。
また(2)の構造はカンチレバーの共振とか、歪、群遅延特性といった問題をある程度解決しており、ビクターのMC-1、MC-L10、MC-L1000といったダイレクトカップル方式に先んじていました。現在こういう構造のMCはオーディオテクニカのAT-ART1000だけです。

以上のように素晴らしい製品でしたが、使いこなしは結構難しく、ビリツキが出るのをなかなか解決出来なくて苦労しました。針圧も0.01g単位で調整してください、みたいなことが書いてあって、本当は専用のアームを使わないと真価を発揮しなかったのかもしれません。

AT-OC9XSHのレビュー

オーディオテクニカのAT-OC9XSHのレビューをAmazonにアップしました。(現時点ではまだ公開されていません。)買ったのはヨドバシですが、前のAT33EVもAmazonでレビューしたのでAmazonにしました。多分ですが、インターネット上では一番詳しいレビューだと思います。
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AT-OC9Xシリーズには、5機種有り、その内パーメンジュール(鉄とコバルトの合金で磁束密度が高い)のヨークとボロンのカンチレバーを備えたのが、上位からSL、SH、MLの3種類。この3つの違いは針先のダイヤモンドチップの形状の違いで、この順で特殊ラインコンタクト針、シバタ針、マイクロリニア針となっています。でこの3種類の中からわざわざSHを選ぶ人は、要するにシバタ針というものの音を一度経験してみたい、という人が多いのではないかと思います。(私がそうです。)このシバタ針というのは元々は、1970年に日本ビクターが開発したCD-4というLPレコードで4チャンネル再生をするにあたって、前後のスピーカーの差分信号を30KHzの搬送波を使ったFM変調でLPレコードの溝に記録したものを再生する必要がありました。この目的で従来の丸針や楕円針より優れた高周波特性を実現するために開発されたのがシバタ針で、名前は発明者が柴田憲男という方だったためです。一言で言えば現在で言うラインコンタクト針の走りであり、丸針や楕円針よりも先端を鋭角にしてより深く音溝に針先が入り込み、左右の音溝との接触が点ではなく長方形に近い線状になります。これによるメリットは周波数レンジの拡大以外に、摩擦が分散されることによる針の長寿命化ということがあります。ちなみに4チャンネル再生は方式が乱立した結果自滅し、CD-4のLPがその後作られることはありませんでした。しかしシバタ針そのものは生き残り、1980~1984年頃に日本ビクターが発売していたMC-1やMC-L10と言った、プリントコイルを使ったダイレクトカップル方式のカートリッジに採用されていました。これらのカートリッジは長岡鉄男が使っていたことで有名です。しかし、シバタ針は結構扱いが難しい面がありかなりマニア向けであり、ビクターはその他のカートリッジでは楕円針に戻したりしており、ダイレクトカップルの最終版のMC-L1000では特殊マイクロリッジ針に変わりました。オーディオテクニカがシバタ針を採用しだしたのは、おそらく日本ビクターの特許が切れた1990年代だと思われ、現在はVM型2種、MC型3種にシバタ針を採用しています。面白いのがオーディオテクニカがシバタ針を採用している理由は、「豊かな中低域再生を実現する」ということであり、高周波特性が優れているという理由ではありません。これは何かと言うと、私の想像ですが、アルミやジュラルミンのカンチレバーに比べ、ボロンのカンチレバーは特性としては非常に優れていますが、聴感上は音が細身に聞こえエネルギー感が乏しいと感じる人が多くいます。特にマイクロリニア針との組み合わせはそうだと思います。これに対しシバタ針はラインコンタクトと言っても接触形状のアスペクト比は、現在のラインコンタクト系の針よりも高くなく、せいぜい2.5倍くらいであり、また研磨の仕方もある程度針先の剛性を維持しているため、マイクロリニア針に比べて中低音の厚みが出て、ボロンによる細身の音を補うという効果があるのだと思います。
前置きが長くなりましたが、最初にこのAT-OC9XSHを聴いた時は「何だこれ?」でした(昇圧にはトランス:AT3000Tを使用)。これまで主に同じテクニカのAT33EVを使って来ましたが、SHの音色と音場に違和感があり、かつトラッキング能力が十分ではなく、ピアノの強音で音割れが生じていました。それでも我慢して聴き続け、LPを20枚くらい再生し、また電動のスタイラスクリーナーで何度か強制的なエージングをした結果ようやく音のビリツキは解消し、また音場や音色も自然なものになりました。その後はAT33EVと比較して音像が立体的で特に前後感が良く出て音場も広く自然です。また金管楽器や電子楽器の音に独特の艶がある一方で弦楽器やボーカルも悪くなく、クラシック、ジャズ、ロックとジャンルを選ばない万能型です。一方中低音の押出し感という点では、いくらシバタ針とはいえ、AT33EVのテーパードジュラルミンによる押出し感までは行きません。総合的にはAT33EVよりは上で良く出来たMCカートリッジだとは思いますが、最近のMCカートリッジの高価格化に合わせて、実売で税込み78,000円前後という価格は、消耗品であるMCカートリッジとしては辛い部分があります。また分析的な音より音楽のグルーブ感を優先するならAT33EVを選んだ方がいいと思います。ただそのAT33EVも発売当初は実売で4万円くらいだったのが、Amazonで現在5万8千円くらいになっており、こちらも気安く買えるものではなくなっていますが。

アルゲリッチのバッハ、オリジナルと復刻盤の差(その2)

私の愛聴盤である、アルゲリッチのバッハのLPレコード、ヤフオクで1980年の初発の盤でかなり程度の良いものを落札することが出来ました。そこで改めてその1980年盤と現在発売されている180g重量盤とを聴き比べました。カートリッジは先日購入したばかりのオーディオテクニカのAT-OC9XSHです。
1.旧盤の方がカッティングレベルが高く、同一ボリューム位置では旧盤の方が音量が大きくなっています。
2.特に高域で、今使っているオーディオテクニカのAT-OC9XSHはダンパーがまだなじんでいないのか、トラッカビリティが最大針圧でも十分でなくビリツキが発生することがありますが、旧盤はかなりの頻度でFF部でビリツキが出るのに対し、新盤はまったく出ません。
3.新盤の方が全体に音が丸くなった感じです。

これの推定原因ですが、
1.新盤はデジタルリマスターされて、万人向けの音にチューニングされた可能性有りと思います。
2.カッシングマシンが違います。(41年経っていて当時のカッティングマシンが残っているとは思えません。)
3.盤の材質が違います。新盤は180g重量盤で厚さと重さで旧盤より上です。

といった所です。新盤も良い録音とは思いますが、オーディオマニア的にはやはり旧盤の方が上ですね。(ビリツキはカートリッジを選んで対処するしかないです。)

オーディオ関係の装置の整理

ここの所、AVが置いてある列が実に4列になっていて、寝るスペースさえ圧迫されて、レコードプレーヤーのラックには台車を着けて寝る時は移動させるということをやっていました。さすがに毎日面倒になってきたので、意を決して現時点でほとんど使っていない16cmバックロードホーンと、録音用機材(マイクプリ、コンプレッサー、イコライザー、リバーブ、電源ユニット)を片付けました。かなりの重労働でしたが、なんとか3時間くらいで終りました。この結果、サブウーファーも以前使っていたFostexのCW250A x 2台という体制を復活させました。部屋が広くなって圧迫感が減ったし、寝る時のラック移動作業もこれで無くなります。

オーディオテクニカのAT-OC9XSH

オーディオテクニカのMCカートリッジ、AT-OC9XSHをゲット。会社から定年退職の餞別でいただいたギフトカードで買いました。こういう普通の家電量販店では売っていないレアな商品をギフト券で買う方法ですが、ヨドバシカメラのネットで買って、受け取りを「店頭受け取り」にするという手を使いました。店頭で受け取るときの支払い手段は現金、カード、ギフト券等々色々OKです。私はヨドバシカメラの川崎店で受け取りました。昨日ネットで買って、本日の12時以降は受け取りOKでした。(受け取りOKになるとメールが来ます。)ちなみにヨドバシカメラ川崎店の地下の高級オーディオ売り場も覗いてみましたが、このカートリッジは置いてありませんでした。
このカートリッジはMC型で、ボロンカンチレバー+シバタ針です。シバタ針というのは1970年代の初めに4チャンネルのレコード(CD-4方式)を再生するために高周波特性を改善して作られた一種のラインコンタクト針です。今LPによる4ch再生は廃れたのでその意味はありませんが、点ではなく線で接触するため、寿命が長く、また高域の特性が優れています。このカートリッジはAT33EVからの切り換えで同じオーディオテクニカですし、このクラスのカートリッジになると、変えたからといって劇的に音が変わったりはしません。ただEVはテーパー付きのジュラルミンカンチレバーで中低域重視の音作りでしたが、OS9XSHは聴感上のレンジが広く、高域の立ち上がりは速く、鋭く切れ込みます。だからといってきつい音ではなく、一歩手前でバランス良く踏みとどまっている感じです。低域も引き締まって制動の効いたもので、超低域(25Hzくらい)も危なげなく安定して聞こえます。33EVに比べて優れていると思われるのは、音場が広く音像が引き締まっていることで、上下左右だけではなく前後の位置関係も的確に再現します。情報量も33EVより多いです。
最初若干のビリ付きを感じるLPもありましたが、それは針圧が1.8gになっていたせいで、2.1gに設定しなおしたら解決しました。(VPIのClassicの針圧設定は高級機にも関わらず最低で、六角レンチでウェイトのネジを緩めて前後に動かすだけというアバウトなものです。そして針圧計を使わないとどのくらい針圧がかかっているかも分かりません。それで一応シュアーの針圧計が付属していますが、機械式というかシーソーの原理で針圧を測定するものでこちらも使いにくいです。結局電子式の針圧計を別に買って使っています。)

シュトックハウゼンのSirius

シュトックハウゼンのSiriusを探し始めて実に40年ぶりでようやくゲットしました。このLPは、現代音楽ファンよりも長岡鉄男信者の間で有名で、A面の冒頭に電子音での超低音25Hzくらいが中域と同レベルで入っており、肉眼でレコードの表面を見ても溝がうねっているのが分かります。長岡鉄男曰く、ボリュームを上げて再生すると「スピーカーか部屋か人間かのどれかが壊れる」と評しています。2枚組で全部聴くと96分にもなります。内容はSiriusからやって来たエイリアンと地球人4人の対話劇みたいなものです。現代音楽でジョンケージみたいなのはハッタリ100%という感じですが、シュトックハウゼンはワケワカながらそれなりの芸術性は感じます。シュトックハウゼンはもう一種タイトルは忘れましたがCDも持っています。ちなみにゲットしたのはeBayで$50くらいで落札出来ました。

オヤジというよりジジイの懐メロ(2)

更に懐かしのロック・ロカビリー・ポップスのビニール盤追加購入。ジジイの懐メロです。全てCDでもダウンロードでも簡単に入手出来ますが、LPの存在感は圧倒的です。それにこれらが最初に発売された時のメディアは言うまでもなくLPなのです。

レコードの内袋の向き

音楽メディアがレコードからCDに切り替わったのが1985年頃とすれば、既に36年も経っていることになります。最近アナログレコードがブームだそうですが、中古のLPを買うと良く内袋の開口部がジャケットの開口部と同じ方向になっているのを良く見かけます。こうしている人はおそらく内袋はジャケットの中に入れたままレコードだけを取り出すためにこうしているのでしょうが、その他何のメリットも無く、逆にデメリットがいくつかあります。
(1)レコードがある意味剥き出しに近く、ゴミが開口部から簡単に入ります。
(2)レコードの表面を指で触ってしまいやすくなります。指で盤面を触ると最悪そこにカビが生えたりする場合があります。そうではなくても手の脂でホコリをくっつけてしまうことになります。
(3)場合によってはジャケットからレコードが滑り落ちて、レコードを傷つけることになる可能性があります。

(1)のゴミ侵入対策という意味では、ジャケットの開口部と内袋の開口部を180°逆にするのが、効果としては最大です。しかしやってみれば分かりますが、中の内袋がくしゃくしゃにならないでこの向きに入れるのはかなり大変です。

ということでお勧めはジャケットの開口部と90°ずらして内袋の開口部を上向きにして入れることです。最初は入れにくいかもしれませんが、途中まで入れて、ジャケットの背をトンと叩いてやると慣性の法則で上手く入ります。
また時々内袋の角を45°に折って入れる人がいますが、これをやると最悪盤の表面に擦り傷を付けてしまう危険性があります。入れやすくするためにそうするのでしょうが、上述したように折らなくても綺麗に入れることが出来ます。