NHK杯戦囲碁 六浦雄太7段 対 大西竜平7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が六浦雄太7段、白番が大西竜平7段の対戦です。この碁の布石は、比較的オーソドックスで、ダイレクト三々は無く、また星にかかりに手抜きもありませんでした。ただ左下隅で星に小ゲイマガカリに一間受けにいきなり上から覗いたのはAI式でした。この碁の最初の焦点は右辺で、白が黒2子を取って、それ単体で活きはあるのに敢えて捨て、中央にかなりの勢力を築きました。黒の実利も大きかったですが、元々黒の勢力圏であったことを考えると白が上手くさばいたように思います。しかし黒も下辺を囲い、地でかなり先行し、一時AIの形勢判断が、白優勢75%くらいまで行きました。しかし白は慌てず上辺を地にし、中央を囲い、なおかつ左辺の黒を分断して攻めて左上隅を確定地にし、気がつけば形勢は互角で半目勝負になりました。ここで白が下辺に飛び込む手を匂わせたのに黒が中央を打ち、白が一間トビで下辺に飛び込みました。黒はこの白を切断し取りに行きましたが、攻め合いになり、結局白は中央の黒4子を先手で取りました。これは白の儲けが大きくこれで黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 山下敬吾9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が山下敬吾9段の対戦です。最近のNHK杯戦でいつも独創的な布石を見せてくれている山下9段ですが、今回は大高目の連続でした。それに対して黒は左上隅と左下隅の両方で星に打ったので、結果的に黒は4隅が星打ちという、まるで4子局のような配置になりました。白は左辺の両隅で黒を挟んで打ち、黒は左下隅を下がって受け、左上隅は白が更に三々に打ちました。左上隅は黒と白の石の数が1:3で、手抜きで他を打つかと思いましたが、黒は三々の白を押さえてまともに動き出しました。この後、黒は分断されて中央の石が弱くなり、これは捨て気味に打つかと思いきや、鶴山8段は最強の手で頑張りました。この戦いが左下隅にも波及し、隅から中央に出ていった黒が白がハネていた所を切ったのに白は切られた下方の石から下がりこれまた最強に頑張りました。その後白が5線を押して黒が4線を伸び、下辺が大きく黒地となって黒が優勢になりました。その後白が左下隅の黒を切り離して攻めましたが、白の包囲網はケイマの連続で薄く、黒は白1子を取って眼を作り問題なくシノギました。しかしその後左辺の白を当てて取りに行ったのが打ち過ぎで、下辺の白との攻め合いは上手くいかないので、左辺の白を取りに行きましたが本劫になりました。この劫は黒は負けると全部死んでしまうというもので、下辺での白の劫立てに受けられず、結局下辺の黒地が消えて白地が出来、ここで白が逆転しました。こうなると後は黒は中央の白を攻めてどれだけ戦果を挙げられるかでしたが、白は右上隅を犠牲に先手で中央の黒4子を取り込み、勝勢になりました。その後、黒は取られた黒4子を攻め取りにさせるなど最後まで頑張りましたが、結局白の6目半勝ちでした。

囲碁プロ棋士は戦国時代へ

将棋のタイトルは今後ほぼ藤井聡太竜王の1択の時代が続くと思いますが、囲碁は戦国時代になりつつあります。まだ井山裕太4冠王が3大タイトルをがっちり握っている所に、一力遼9段が名人戦であと一歩まで追い詰めながら逆転負けし、今度は1月から始まる棋聖戦でついに井山4冠王を倒すか、という所で何とその一力遼9段を倒す若手が早くも現れました。これは本当に驚きです。

関七段が天元奪取、プロ4年8カ月の史上最速

NHK杯戦囲碁 井山裕太4冠王 対 張栩9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が井山裕太4冠王、白番が張栩9段という豪華対決です。井山4冠王が最初に7大タイトルに挑戦した時の相手が張栩9段で、名人戦でした。この時は張栩9段が挑戦を撥ね除けましたが、翌年リターンマッチで見事に初7大タイトルを奪取しました。それ以来二人の激闘は続いています。対局は左上隅で白がシチョウに抱えていたのを、白がポン抜く手を打たないで右上隅にかかったのを、黒がシチョウアタリで右辺の白に付けて行きました。これに対白は右辺を受けずに、シチョウを抜きました。黒は当然ハネて行き、ここから戦いが始まりました。しかしその後の白の打ち方は大胆で、辺の黒一子をポン抜く代償に、種石の白2子を抜かせました。このワカレはさすがに黒が打ちやすくなったと思います。実際に黒は右辺の白を攻立てて下辺の地を大きくまとめることが出来ました。また右辺上部で黒1子をポン抜いた白も、ポン抜いたといっても単体では活きておらず、結局黒から圧迫されて、右上隅に渡る手を打たされたのはちょっと辛かったように思います。その後白も左上隅の黒に付けて行って、それを捨て石にして左辺を大きくまとめたので、思ったほど差は開いていなかったようです。しかしやはり黒のリードは変わらず、何手か黒が慎重な手を打った結果として、途中AIによる形勢が五分に戻った局面もありましたが、黒が右辺の劫を白に譲っての1目半勝ちでしたので、細かくはなりましたが、黒が終始リードを保って逃げ切った碁でした。

NHK杯戦囲碁 広瀬優一5段 対 呉柏毅5段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が広瀬優一5段、白番が呉柏毅5段の対戦でした。この碁の最初の焦点は左上隅で、黒の小ゲイマガカリに白が一間に挟んだのに、黒はなんと三間トビで、初めて見ました。白はそれに対し隅から上辺に二間に固く開いたのに、黒がその右に付けて行きました。白が跳ねた後、黒は覗いて行き、白がへこんで受けました。その後白は黒の背後に打って黒の切断を狙いました。黒はつながりには行かず、左側を左上隅に働きかけて独立で活きに行きました。その後更につながらず、右下隅を掛けて打ちました。これは白が切断に来た時のシチョウアタリでした。結局その後白は右下隅を連打し、黒が左辺でつながって安定するというワカレになりました。この収支は若干黒が良かったようです。その後左下隅から左辺にかけて黒が白を攻める展開になりましたが、ここで白はほぼ取られかけていた左辺の白一子を動き出しました。この狙いは左上隅の黒を取ってしまうことで、攻め取りながらそれは成功しましたが、その反動として左上隅方面の白がほとんど死んでしまい、AIによる形勢判断も黒の勝率が90%以上になりました。その後下辺での折衝が始まり、ポイントは白が取られている石を上手く活用して損を減らすことが出来る、あるいは振り変われるかという所でしたが、白の策動は成功せず、かろうじて左下隅の黒をなんとか取れましたが、それは劫に勝ってやっと取ったので、手をかけた割りには見合わないものであり、ここで黒の勝勢になりました。その後上辺や右辺、中央での折衝がありましたが、黒が中央にも追加で20目以上の地を付けて、白は地合で追いつけず白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 藤井秀哉8段 対 小池芳弘6段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が藤井秀哉8段、白番が小池芳弘6段の対戦です。序盤は黒がやや実利指向でしたが淡々と進み、局面が動いたのは白が右辺に打ち込み黒が上から詰め、白が右下隅の黒の二間ジマリの間に付けていってからです。ここの折衝で白は下辺の方の2子を捨て、右辺に展開しました。ただ白の右辺の一団はまだ完全に治まっていませんでした。黒は右下隅の厚みを生かして下辺を目一杯広げました。しかし白も右下隅で取られている白2子の利きを頼りに下辺に打ち込みました。ここで黒が左下隅で白が星から両方に小ゲイマで開いている所へ星下に付けていったのがタイミングの良い様子見でした。この黒は部分的には活きていませんでしたが、下辺に黒が来ると渡りを見てサガリが先手になれば活きることが出来ました。下辺で起きた競い合いは、黒が右辺の白と下辺の白を割いて行くことにより、カラミ気味の攻めになり、分断された黒も下辺で活きたので、ここでの収支は黒のリードとなりました。ただ中央で分断された黒と上辺の黒1子を連絡させずに上手くカラミ攻めに持ち込み、上辺を大きくまとめれば白にもチャンスがありました。しかし黒は左上隅で取られかけていた黒2子を活用し、上辺を破ることに成功しました。そうなると白の最後の望みは左辺を大きくまとめることでしたが、これも黒が中央と左上隅から無理せずに寄せて、白にチャンスを与えませんでした。最後右辺の白に1線に置いていって眼を取る手がありましたが黒は決行せずにヨセて左下隅も活き、結局白が投了しました。

NHK杯戦囲碁 大竹優5段 対 林漢傑8段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が大竹優5段、白番が林漢傑8段の対戦です。この碁は激しい戦いは無く、中盤から終盤直前まで互角の形勢が続くというある意味玄人好みの渋い碁でした。まずは右上隅で黒が白の一団を追い立てましたが、白は右上隅の黒にプレッシャーをかけつつ上手く右辺の白に連絡しました。その後白は左上隅の黒に急所のハサミツケを打ちました。黒は左辺の活きを重視し、3子をあっさり捨てました。黒はそれに対して下辺の黒から中央に飛び、左下隅の白にプレッシャーをかけました。しかし黒も上辺から延びる一団に眼が無く、結局白は中央の黒2子を取って左下隅と中央がつながって活きました。黒も上下がつながって安泰になり、やや黒のリードとなりました。黒はしかしその白の連絡の不備を付いて、左辺でケイマ2つの所をハネ出して行きました。しかしここの折衝で分断された白が下方でまず左下隅で先手でハネツギを打ち、その結果下辺の黒地にある程度侵入出来ました。また中央と左辺も何とか連絡し、黒は取られていた2子を生還させましたが、この収支は白の得が大きく白のリードとなりました。それでも黒はそのつながった白の切断との見合いで白3子をもぎ取って中央に地を作りましたが、下辺の損を取り戻すまでには行きませんでした。結局白の2目半勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 洪爽義4段 対 大西竜平7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が洪爽義4段、白番が大西竜平7段の対戦です。布石で左上隅で白が実利、黒が厚みの分かれになりました。しかし黒の厚みはシチョウで白1子を抱えていることによるもので、シチョウアタリからの動き出しを狙われるという借金がありました。これが現実化したのが白が右下隅の黒の一間ジマリの左に付けていったのが、シチョウアタリでした。白が跳ね返したのに黒が当てたのが悪手で、白が継いで黒が下を継いだ後、シチョウが成立しなくなっており、白はすぐに左上隅の動き出しを決行しました。これについて黒は左上隅を受けずに右下隅を連打して白の3子を取り込みましたが、白は左上隅の黒の全てを取り込むという、派手な振り替わりになりました。この結果は明らかに白が良く白の優勢になりました。戦いは次に右辺に移り、右辺の白を黒は攻めましたが、右上隅の黒も眼が無く、白はさして苦労せず右辺で活きました。右上隅の黒は隅の白を劫を絡めながら圧迫しましたが、最終的に白は左辺からの大模様をまとめる手で妥協し、右上隅は黒地になりました。こうなるとほとんど碁盤を2分した100目レベルの巨大な地の対抗になりましたが、AIの形勢判断は常に白の優勢であり、ヨセで白がかなり妥協したり、手入れ不要の所に手を入れたりして堅く打って、結局白の2目半勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 横塚力7段 対 張栩9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が横塚力7段、白番が張栩9段の対戦です。両者は先期のNHK杯戦で今年の1月に対戦しており、その時は張栩9段が考慮時間を1回も使わないで勝っています。布石は上辺で白が理想的な構えを取ったのに黒が左上隅で左辺からカカリました。それに対して白は何とツケで、以前はこれは置碁の下手の手でした。しかもそのツケにハネてツケノビ定石になるのではなく、白は上方に伸びて地を取りに行きました。結果として白が厚み、黒が実利という展開でしたが、白は黒がハネてカケついだ所を覗き、その石を引っ張り出す攻めを狙っていました。その攻めを緩和するため黒が中央に飛んだのを白が受けなかったので、黒は上辺に大ゲイマで踏み込みました。これに対し白は強く遮って行きました。この後の折衝で白は上手く黒の連絡の不備を付いて、黒にただつながるだけの手を打たせ、結果的に上辺と左上隅は無事で、黒の左辺からの一団はまだ切断を狙える形で、白が優勢になりました。白はその後左辺の黒への攻めを見ながら左辺と左下隅も地にし、上辺から中央にかけても厚みを築き、容易に負けない形になりました。黒がその上辺から中央に展開した白に迫ったのに白が手を抜いて右下隅に先着したので黒はここの白をイジメに行きましたが、白も問題なく応じて大きな損はなく治まりました。その後左辺で白が3線に這い込んで黒に断点を継がせようとしたのに手を抜いて右下隅を打ったため、若干黒が盛り返しました。しかし白は左辺からの黒の一団を攻め、結局白が切断を決行した結果、切り離された中央の黒は単独で活きなければならなくなりました。しかし黒のシノギに誤算があり、左上隅の黒の活きと見合いにされてじまい、中央の黒が全滅し、黒の投了となりました。張栩9段がまったく危なげなく打ち回し勝利した一局でした。横塚7段のリベンジはなりませんでした。

NHK杯戦囲碁 高尾紳路9段 対 謝依旻7段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が高尾紳路9段、白番が謝依旻7段の対戦です。意外にもこの二人は今回が初手合いです。対局は、黒が厚めに打って模様の碁かと思いきや、左辺で二間にじっくり開いて地でも負けないという体制でした。右辺から右下隅で黒が低い中国流より真ん中の石を一路右下隅に寄せて打っていた(最近の流行)のを、白は堂々と左下隅に一間高ガカリしました。黒がケイマに受けた後、白は小目の黒に付けて行きましたが、黒はハネ出して行きました。白は右辺の黒に横から付けるかと思いましたが、上から付けました。そして結果として黒が隅の白を取って地にし、白は右辺で黒1目をポン抜くという分かれになりました。この結果は若干ですが黒の実利が優るかと思いました。(「ポン抜き30目」という格言がありますが、中央でならその位あるかもしれませんが、辺部ではいいとこ十数目ぐらいかなと思います。黒の右下隅は20目以上で最終的には30目近くになりました。)その後黒が左下隅を付けてハネるという、最近流行の手で治まりに行きました。それに対して白は下辺で黒の断点を覗いて継がせてからケイマし、下辺で居直りました。黒は薄いのを承知でこの下辺の白を攻めました。結果として下辺の白は黒2子を取ってほぼ活きましたが、代償として黒も左下隅の白を封鎖し、中央が黒っぽくなりました。そうなると焦点は黒の中央がどのくらいまとまるかで、白は右辺と上辺から黒地の削減を図り、更に中央で黒の断点を切って行きましたが、結果から見てこれが失着だったようです。白は上辺で白地を作りましたが、黒は中央で白の数子を取り、中央から右辺を大きくまとめました。こうなると白にはこの中央の黒地に対抗出来る地は無く、しばらくヨセを打った後、白の投了となりました。謝さんはNHK杯戦でこれまで羽根直樹9段と2回対戦していますが、2度とも敗れています。平成四天王の壁は厚いようです。これで今期は女流棋士はいなくなりました。