NHK杯戦囲碁 謝依旻7段 対 阿部良希4段(2022年7月24日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が謝依旻7段、白番が阿部良希4段の対戦でした。阿部4段はNHK杯戦初出場であり、また二人は初手合いです。対局は黒が地で先行し、白が左辺から中央にかけての模様で対抗という進行になりました。形勢が動いたのは右下隅で、白が黒のカカリに手を抜いて、黒が両ガカリしてからの折衝で、白が左辺からの模様の拡大をかねて、下辺で大ゲイマで黒を封鎖に行ったのがある意味打ち過ぎで、黒は待ってました、とばかりに出切り、ここから戦いが始りました。この戦いの結果として、黒は右辺と下辺で地を持ってほぼ治まり、白はその2つの黒の間に入って後で攻められることになりました。特に下辺の黒は白1子をシチョウに取って厚くなり、これが自然に白の左辺からの大模様を牽制する形になりました。その後白は模様を可能な限りまとめ、また左上隅で黒地を減らすなどして、懸命に挽回を図りました。また中央で黒3子を取り込んだため、形勢はかなり接近しました。しかしながら全体では黒が少し厚い碁形で、終ってみれば黒の1目半勝ちでした。

NHK杯戦囲碁 小池芳弘7段 対 常石隆志5段(2022年7月17日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が小池芳弘7段、白番が常石隆志5段の対戦です。小池7段は、挨拶で序盤は完璧に研究して来た、と言い切りました。しかし、左辺から左上隅の攻防で、白が左辺と左上隅を地にし、黒は取られている隅の2子にもう一手かけた理屈で、AIは白が優勢と判定しました。しかしそれはAIがまだ左上隅の石が活用可能なのを見ていなかったからで、その狙いは黒が上辺で詰めた後に炸裂し、左上隅の黒は単独では活きない形ですが、それを取りに行くと、上辺の白も眼が無く、攻め合いで劫になります。劫材は黒が多いため、白は左上隅の黒を活かさざるを得なくなり、黒が互角以上に持ち直しました。白も中央の黒地を半分くらいに値切れたため、後はヨセ勝負になりました。中央の黒も眼がなかったため、下辺で攻防が続き、黒が若干上手くやって細かいながら勝勢になりました。結局黒の2目半勝ちでした。小池7段が左上隅の帰趨を全てあらかじめ研究していたならすごいですが、おそらくは多少の誤算があったのを上手く挽回したのかなと思います。

NHK杯戦囲碁 六浦雄太7段 対 結城聡9段(2022年7月10日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が六浦雄太7段、白番が結城聡9段の対戦です。左上隅、左辺、左下隅の攻防が興味深く、白が左上隅でツケヒキ定石の最後の手を省略していたのを、通常それを咎めるには3線に横に付けて行くのですが、チキリ飛びのように黒が間を開けて包囲したのが、私は初めて見ました。勢い白は間を出て包囲されたのを切って行ったのは武闘派(?)の結城9段らしい打ち方でした。その後の攻防で、黒が左辺から左上隅に渡るのに、直接3線に渡らず、2線に下がって渡ったのが好手でした。というのは3線に渡るとすぐ切られて、その石は取れますが下がられていわゆる石塔シボリにされ、取られてしまいます。その好手で左辺の手数を伸ばし、左上隅の白に差し込んで、白は断点が2つで両方はしのげず、黒は白の2子を取って9目の地を取って治まり、リードしました。形勢の悪い白は、上辺と下辺の両方で押して行って中央に白模様を作り、なおかつ右上隅で三々に入り忙しく立ち回りました。黒は中央の白模様を消すため、中央の絶妙な位置に石を置きました。これに対して白が受けるとおそらく少し足らないので、黒は外側から打ちました。白は当然白模様に踏み込んで行き、この石の活き死にが勝負となりました。白は白の下方の包囲網の欠陥を付き、中央で利かしを打とうとしました。しかし白も黒が左辺を押したのに受けず、下辺に利かしを先手で打ち、黒からの中央の利かしを無くしました。結局黒は左辺を破って左上隅に渡れましたが、白も上方の黒4子を飲み込み、結局いいワカレになりました。しかしそれは黒のリードのまま、終盤に入ったことになり、白は右下隅の三々に入った後、黒のハネに切っていって頑張りました。しかし右上隅で白が2線に下がったのに受けず、中央で黒が白模様に一間トビで入って行ったのが好判断で、結局攻め合いになり、黒は締め付けるだけでも十分でしたが、一手勝ちで白を取りつつ中央の黒が生還し、ここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 蘇耀国9段(2022年7月3日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が孫喆7段、白番が蘇耀国9段の対戦です。この碁は布石が少なく、下辺から戦いが始まり、それが最後まで続いた激戦でした。その激戦の始まりは、下辺で、右側に白、左側に黒が展開し、どっちが主導権を取って攻めに回るかが焦点でした。この局面で黒が白2子を利かしではなく、いきなり切ったのが乱戦の始まりでした。しかしそれは短兵急過ぎで、ここから白が巧みに打ち回し白がリードしました。白が中央のダンゴ石を逃げて上辺につながろうとした時に、黒が急所を覗いて行ったのが、勝負手気味でした。しかし白はただつながるだけの手を打たず、逆に覗いた黒を攻めに行きました。ここでの黒の泣き所は右辺で一手かけねばならなかったのを、そこに回ることが出来ていなかったことで、白に上手く右上隅から右辺上方の黒を取る手と、右辺下方の白の策動を見合いにする手を打たれ、結局右上隅から右辺上方の黒が全部取られてしまいました。後は上辺左方から左上隅、左辺にかけての白の一団が活きるか死ぬかの勝負となりました。ここは劫になりました。その劫は一旦黒が謝った後、隅で2段劫になりました。結局劫は黒が勝ってここの白を取りましたが、劫争いの中で白は上辺と左辺の両方で黒地を値切ったので、形勢の逆転にはならず、白の7目半勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 藤沢里奈女流本因坊(2022年6月26日放送)


本日のNHK杯戦を囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が藤沢里菜女流本因坊の対局です。この二人は意外にも初対局です。この碁の最初の焦点は左辺で、黒が左上隅からの壁をバックに左辺に打ち込み、戦いとなりました。ここでの折衝で黒に誤算があり途中で白が左上隅への渡りを見せた時、手を抜いて右辺を打ったのがどうだったか。結局その後黒は左辺白に付けた所で反発され、白1子を取って左辺を分断したものの、左辺下方ではみ出されて左下隅の黒2子を味良く取り込まれ、白地30目弱が味良く確定し白のリードとなりました。その損を取り戻すべく黒は右辺の白を攻めました。今度は白に誤算があり、封鎖された右辺の白に2眼がなく、取られてしまいました。しかし下辺に出て行って黒地を割る手があり、白も再度挽回しました。そこからは闇試合となり、振り替わりもあって、黒のリードが続きました。最後は右上隅に取り残された黒2子を白が取れるかどうかが勝敗の鍵になりました。しかし黒は白の包囲の薄みを付いて中央に連絡し無事生還しました。これで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁3段 対 依田紀基9段(2022年6月19日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻篤仁3段、白番が依田紀基9段の対戦です。辻3段は関西棋院期待の若手で初出場です。局面が動いたのは白が左辺の黒の構えに打ち込んでからで、黒白双方眼が無い石で攻め合いになり、攻め合いは黒が有利かと思いきや、白の放り込みがAIも予想していなかった妙手で、攻め合いは白の勝ちになり、白は左上隅から左辺に大きな地を作りました。これで白の優勢となりましたが、解せないのがその後の白の打ち方で、左辺に残された白を動き出したのは厳しくて良かったのですが、中途半端に途中まで打って、下辺に転じてしまいました。この結果黒は2箇所の白の種石を取って中央が厚くなり、形勢は互角に戻りました。その後白は右下隅に潜り込んで生還し、細かい碁になりましたが、黒は右辺を広げまた中央にも地を付けてリードし、白は挽回のために上辺で策動しましたが上手く行かず差が広がり、結局黒の3目半勝ちとなりました。辻3段の戦いとヨセが見事でした。

NHK杯戦囲碁 福岡航太朗3段 対 張栩9段(2022年6月12日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗3段、白番が張栩9段の対戦です。福岡3段は初出場です。韓国で修行し、院生時代は197連勝という記録を作った若手強豪です。4隅星打ちのじっくりした布石で始まりました。右上隅で白が上辺からかかったままだったのを黒が低く二間に挟み、白が三々に入り懐かしい感じの定石形が出来ました。その後上辺の黒に白が肩に打って利かそうとしたのに黒が反発し、勢い白は上辺の黒を二分し戦いになりました。結局白の左上隅の石も眼がなくなり、黒白弱石2つずつのもつれた戦いになりました。戦いは左辺に及び、黒は左辺で活きて白地を削減しましたが、白は上下がつながって厚くなり、ここで白のリードとなりました。しかし黒も右辺の白模様を捨て石を使って上手く削減し、形勢は接近しました。その後ヨセで白にミスがあり、かなり細かくなりましたが、結局白の1目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流棋聖 対 久保勝昭9段(2022年6月5日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野愛咲美女流棋聖、白番が久保勝昭9段の対戦です。上野女流棋聖は、先日女流の最強戦で優勝し世界一になりました。久保9段は実に18年振りの出場ということで、64歳というお歳ながら、AIを活用することで往年の力を取り戻し、第46期(2021年)の棋聖戦Cリーグで3勝2敗で見事残留を果たされたようです。序盤は両者研究済みと見えて、黒の実利、白の厚みで互角の進行でした。局面が動いたのは、黒が右下隅で付けてハネに切っていった時でした。白は黒に隅を小さく取らせ厚く打って中央に取り残された黒との戦いになりました。黒が白の一団を中央で切断する手を打った後、下辺左の白にカケを打って利かしに行きました。しかし白は中央の黒を切って両アタリにし、上下の白が連絡しました。しかし下辺では元々白の勢力地であった所に黒はそれなりの大きさの地を作って治まり、黒が打ちやすい形勢になりました。非勢の白は黒の唯一の弱石である下辺から延びる石を攻めましたが、黒も強く逆襲し、結局白は中央左の黒を取り、また黒3子も取りましたが、黒は下辺からの一団が右辺につながった結果、右辺も大きな地になり、ここで黒の勝勢になりました。白はその後の打ち方が非勢な割には緩く(例えば左辺の黒の三間開きに打ち込まず、四線から利かして渡らせただけでした)、結局黒の19目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 伊田篤史8段(2022年5月29日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が伊田篤史8段の対戦です。布石は白が2手目の左下隅で大大高目が意欲的で、黒はその後星からかかりましたが白のハサミに手を抜いて、左下隅は結局白地になりました。白はその後左辺に打ち込んだ黒を攻めながら下辺の模様を大きく拡げました。黒は左上隅の白を多少攻めつつ左辺の黒をしのぎ、右辺を地模様にして対抗しました。クライマックスは、下辺の模様の完成寸前に黒が下辺の4線の白に付けて行き、白模様の中で活きを図った時でした。しかし白が最強に頑張り、黒の数子は持ち込みになりました。黒も中央で白2子を取りましたが、ここで細かいながら白のリードとなり、最後まで形勢は変わらず、白の3目半勝ちで終わりました。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 富士田明彦7段(2022年5月22日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。両者戦いよりも形勢判断を重視した棋風ということで、地味な寄せ合いになるかと思いきや、中盤から激しい戦いの連続になりました。まずは右下隅で白が仕掛け、黒は右辺と右下隅が分断され、隅は単独で活きなければならず、白が先手で右辺の黒を割った形になり、白がポイントを挙げました。その後下辺の白と中央の2つの黒と白、下辺左から延びる黒とのもつれた戦いになりました。その後中央の2つの黒は白3子を取ってつながり、下辺の白は単独で活きました。次に下辺左から延びる黒は下辺の白への利きを使って活きようとしましたが、白があらかじめ黒が眼を持とうとした場所に置いていったので、黒は一眼しかなくなりました。そこで黒は左下隅に潜り込んでそこで眼を持とうとしましたが、劫になり、白が黒の左辺の劫立てを無視して劫を継ぎました。この結果黒は下辺に一眼もなくなり、劫立てに打った左辺で二眼を作ろうとしましたが上手く行かず、黒は全部取られてしまいました。後は黒が逆襲して白の包囲網の一部を取ってしまえるかですが、これも白に正確に応じられ上手く行かず、黒の投了となりました。