NHK杯戦囲碁 孫喆7段 対 蘇耀国9段(2022年7月3日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が孫喆7段、白番が蘇耀国9段の対戦です。この碁は布石が少なく、下辺から戦いが始まり、それが最後まで続いた激戦でした。その激戦の始まりは、下辺で、右側に白、左側に黒が展開し、どっちが主導権を取って攻めに回るかが焦点でした。この局面で黒が白2子を利かしではなく、いきなり切ったのが乱戦の始まりでした。しかしそれは短兵急過ぎで、ここから白が巧みに打ち回し白がリードしました。白が中央のダンゴ石を逃げて上辺につながろうとした時に、黒が急所を覗いて行ったのが、勝負手気味でした。しかし白はただつながるだけの手を打たず、逆に覗いた黒を攻めに行きました。ここでの黒の泣き所は右辺で一手かけねばならなかったのを、そこに回ることが出来ていなかったことで、白に上手く右上隅から右辺上方の黒を取る手と、右辺下方の白の策動を見合いにする手を打たれ、結局右上隅から右辺上方の黒が全部取られてしまいました。後は上辺左方から左上隅、左辺にかけての白の一団が活きるか死ぬかの勝負となりました。ここは劫になりました。その劫は一旦黒が謝った後、隅で2段劫になりました。結局劫は黒が勝ってここの白を取りましたが、劫争いの中で白は上辺と左辺の両方で黒地を値切ったので、形勢の逆転にはならず、白の7目半勝ちとなりました。

NHK杯戦囲碁 村川大介9段 対 藤沢里奈女流本因坊(2022年6月26日放送)


本日のNHK杯戦を囲碁は、黒番が村川大介9段、白番が藤沢里菜女流本因坊の対局です。この二人は意外にも初対局です。この碁の最初の焦点は左辺で、黒が左上隅からの壁をバックに左辺に打ち込み、戦いとなりました。ここでの折衝で黒に誤算があり途中で白が左上隅への渡りを見せた時、手を抜いて右辺を打ったのがどうだったか。結局その後黒は左辺白に付けた所で反発され、白1子を取って左辺を分断したものの、左辺下方ではみ出されて左下隅の黒2子を味良く取り込まれ、白地30目弱が味良く確定し白のリードとなりました。その損を取り戻すべく黒は右辺の白を攻めました。今度は白に誤算があり、封鎖された右辺の白に2眼がなく、取られてしまいました。しかし下辺に出て行って黒地を割る手があり、白も再度挽回しました。そこからは闇試合となり、振り替わりもあって、黒のリードが続きました。最後は右上隅に取り残された黒2子を白が取れるかどうかが勝敗の鍵になりました。しかし黒は白の包囲の薄みを付いて中央に連絡し無事生還しました。これで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 辻󠄀篤仁3段 対 依田紀基9段(2022年6月19日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が辻篤仁3段、白番が依田紀基9段の対戦です。辻3段は関西棋院期待の若手で初出場です。局面が動いたのは白が左辺の黒の構えに打ち込んでからで、黒白双方眼が無い石で攻め合いになり、攻め合いは黒が有利かと思いきや、白の放り込みがAIも予想していなかった妙手で、攻め合いは白の勝ちになり、白は左上隅から左辺に大きな地を作りました。これで白の優勢となりましたが、解せないのがその後の白の打ち方で、左辺に残された白を動き出したのは厳しくて良かったのですが、中途半端に途中まで打って、下辺に転じてしまいました。この結果黒は2箇所の白の種石を取って中央が厚くなり、形勢は互角に戻りました。その後白は右下隅に潜り込んで生還し、細かい碁になりましたが、黒は右辺を広げまた中央にも地を付けてリードし、白は挽回のために上辺で策動しましたが上手く行かず差が広がり、結局黒の3目半勝ちとなりました。辻3段の戦いとヨセが見事でした。

NHK杯戦囲碁 福岡航太朗3段 対 張栩9段(2022年6月12日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が福岡航太朗3段、白番が張栩9段の対戦です。福岡3段は初出場です。韓国で修行し、院生時代は197連勝という記録を作った若手強豪です。4隅星打ちのじっくりした布石で始まりました。右上隅で白が上辺からかかったままだったのを黒が低く二間に挟み、白が三々に入り懐かしい感じの定石形が出来ました。その後上辺の黒に白が肩に打って利かそうとしたのに黒が反発し、勢い白は上辺の黒を二分し戦いになりました。結局白の左上隅の石も眼がなくなり、黒白弱石2つずつのもつれた戦いになりました。戦いは左辺に及び、黒は左辺で活きて白地を削減しましたが、白は上下がつながって厚くなり、ここで白のリードとなりました。しかし黒も右辺の白模様を捨て石を使って上手く削減し、形勢は接近しました。その後ヨセで白にミスがあり、かなり細かくなりましたが、結局白の1目半勝ちに終わりました。

NHK杯戦囲碁 上野愛咲美女流棋聖 対 久保勝昭9段(2022年6月5日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が上野愛咲美女流棋聖、白番が久保勝昭9段の対戦です。上野女流棋聖は、先日女流の最強戦で優勝し世界一になりました。久保9段は実に18年振りの出場ということで、64歳というお歳ながら、AIを活用することで往年の力を取り戻し、第46期(2021年)の棋聖戦Cリーグで3勝2敗で見事残留を果たされたようです。序盤は両者研究済みと見えて、黒の実利、白の厚みで互角の進行でした。局面が動いたのは、黒が右下隅で付けてハネに切っていった時でした。白は黒に隅を小さく取らせ厚く打って中央に取り残された黒との戦いになりました。黒が白の一団を中央で切断する手を打った後、下辺左の白にカケを打って利かしに行きました。しかし白は中央の黒を切って両アタリにし、上下の白が連絡しました。しかし下辺では元々白の勢力地であった所に黒はそれなりの大きさの地を作って治まり、黒が打ちやすい形勢になりました。非勢の白は黒の唯一の弱石である下辺から延びる石を攻めましたが、黒も強く逆襲し、結局白は中央左の黒を取り、また黒3子も取りましたが、黒は下辺からの一団が右辺につながった結果、右辺も大きな地になり、ここで黒の勝勢になりました。白はその後の打ち方が非勢な割には緩く(例えば左辺の黒の三間開きに打ち込まず、四線から利かして渡らせただけでした)、結局黒の19目半勝ちになりました。

NHK杯戦囲碁 安達利昌7段 対 伊田篤史8段(2022年5月29日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が安達利昌7段、白番が伊田篤史8段の対戦です。布石は白が2手目の左下隅で大大高目が意欲的で、黒はその後星からかかりましたが白のハサミに手を抜いて、左下隅は結局白地になりました。白はその後左辺に打ち込んだ黒を攻めながら下辺の模様を大きく拡げました。黒は左上隅の白を多少攻めつつ左辺の黒をしのぎ、右辺を地模様にして対抗しました。クライマックスは、下辺の模様の完成寸前に黒が下辺の4線の白に付けて行き、白模様の中で活きを図った時でした。しかし白が最強に頑張り、黒の数子は持ち込みになりました。黒も中央で白2子を取りましたが、ここで細かいながら白のリードとなり、最後まで形勢は変わらず、白の3目半勝ちで終わりました。

NHK杯戦囲碁 瀬戸大樹8段 対 富士田明彦7段(2022年5月22日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が瀬戸大樹8段、白番が富士田明彦7段の対戦でした。両者戦いよりも形勢判断を重視した棋風ということで、地味な寄せ合いになるかと思いきや、中盤から激しい戦いの連続になりました。まずは右下隅で白が仕掛け、黒は右辺と右下隅が分断され、隅は単独で活きなければならず、白が先手で右辺の黒を割った形になり、白がポイントを挙げました。その後下辺の白と中央の2つの黒と白、下辺左から延びる黒とのもつれた戦いになりました。その後中央の2つの黒は白3子を取ってつながり、下辺の白は単独で活きました。次に下辺左から延びる黒は下辺の白への利きを使って活きようとしましたが、白があらかじめ黒が眼を持とうとした場所に置いていったので、黒は一眼しかなくなりました。そこで黒は左下隅に潜り込んでそこで眼を持とうとしましたが、劫になり、白が黒の左辺の劫立てを無視して劫を継ぎました。この結果黒は下辺に一眼もなくなり、劫立てに打った左辺で二眼を作ろうとしましたが上手く行かず、黒は全部取られてしまいました。後は黒が逆襲して白の包囲網の一部を取ってしまえるかですが、これも白に正確に応じられ上手く行かず、黒の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 鶴山淳志8段 対 広瀬優一6段(2022年5月15日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が鶴山淳志8段、白番が広瀬優一6段の対戦です。広瀬6段は対局前のコメントで、鶴山8段は戦いの碁が得意なので穏やかな碁にしたいと言っていましたが、実際の碁は最初から最後まで激しい戦いとなりました。タスキの布石でしたが、白が左下隅に高くかかってツケ引き定石となった時、白は定石通りに左辺に開かず、左上隅の星から上辺に向かって小ゲイマに締まったりしたので、むしろ広瀬6段が戦いを誘ったような打ち方でした。左辺と右辺でお互いに眼の無い石がもつれ合い、黒が下辺の白に中央の石からケイマにかけた時、白が出切っていったので更に局面は複雑化し、闇試合の様相を呈して来ました。こうなると戦いの得意な鶴山8段に一日の長があり、中央でかけて上手く白の種石を取って局面は黒のリードとなりました。しかし白も左辺の棒石の黒を攻めようとしましたが、ここでも逆に黒が中央の白を攻め、右辺に取り残された白を大きく飲み込んで勝勢になりました。白はその後色々やって右辺の一団を連れ戻しましたが、その代償にまた中央の種石を取られてしまいました。最後に白は右上隅で取られていた石を動き出し、劫形で渡って成功したかと思いましたが、黒は渡らせた全体を攻め結局全滅させて右上隅に50目強の黒地を確定させ、ここで白の投了となりました。

NHK杯戦囲碁 呉柏毅5段 対 三村智保9段(2022年5月8日放送)


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が呉柏毅 5段、白番が三村智保9段の対戦です。布石では白が左辺の黒に打ち込んで黒がそれを直接受けずに下辺にかわした辺りでは白がリードしていましたが、その後黒が白のノゾキを逆手に取って白を左下隅と中央で切断したことで互角に戻りました。中央で激しい戦いとなり、結局黒は中央の一団を捨て、代償で右辺の白を大きく取り込むという振り替わりになりました。中央の黒は取られたといっても攻め取りなので見た目ほど大きくなく、ここで黒が優勢になりました。しかし、黒が上方の白の薄味を突いて取られていた石を逃げ出したのは、打ち過ぎでした。上辺の白はギリギリでしたが捕まらずに脱出出来たため、黒の中央の損害が拡大しました。なおかつ黒の包囲網の一部が逆に取られてしまって攻め取りもなくなりました。こうなると盤面でも白が5目以上のリードで黒の投了となりました。黒が余計なことをせずに右辺を大きく取って中央は攻め取りさせれば勝ちではなかったかと思われ、呉柏毅 5段としては残念な一局でした。

NHK杯戦囲碁 小県真樹9段 対 林漢傑8段(2022年5月1日放送)


2022年5月1日のNHK杯戦囲碁は、小県真樹9段と林漢傑8段の対戦です。この碁のポイントは、中央の黒への白への攻めがどのくらい効果を上げられるかでした。その意味で白が中央の黒の一間飛びに下から覗いたのに、黒は素直に継がずに上辺からの白の一団の石に突き当たりました。これは私も一瞬考えてすぐ無いな、と思った手でしたが、小県9段が実際に打ったのには驚きました。この突き当たりに白は延び、そうすると黒はもう一手タケフでつながる必要があります。白からすれば薄みが気になっていた一団を先手で強化出来た理屈になります。実際にこの黒の手でAIの評価は白の大幅リードになりました。黒はその後一方的に攻められることになり、白は攻めながら効率良く右辺と下辺を地に出来ました。黒も左辺を目一杯囲いましたが、あちこちに穴があって侵入出来、大きくはまとまらず、黒の投了となりました。