NHK杯戦囲碁 井山裕太棋聖 対 王立誠9段

本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が前期優勝の井山裕太棋聖、白番が王立誠9段の対局です。王立誠9段も過去棋聖を3連覇した名棋士ですが、如何せん井山棋聖とはかなりの年齢差があり、対戦成績は井山棋聖から見て9勝2敗だそうです。対局は井山棋聖が右辺で星と大ゲイマ締まりの組み合わせに対し白が右辺から右上隅にかかった後、黒が小ゲイマに受けた後、白が高く4間に開いたのが私としては珍しかったですが、世界戦で流行っている打ち方だということです。黒は高く打ち込んで行きましたが、白は下方の石を重視して、上方の石は黒からコスミツケられても手を抜き捨てて打ちました。右辺が一応一段落した後、白は左上隅を小ゲイマに構えましたが、その後黒が右辺に打ち込んだのが厳しく、結果としてこれが良くなかったように思います。黒は白の右下隅の4子をもぎ取り、黒は右上隅と右下隅でほぼ60目の地を確保し、地合では黒の大幅リードになりました。対して白は黒の1子を中央でゲタに抱えて厚く、白が左辺にどれだけ地を確保するかが勝負になりました。黒は左辺に割り打ちし、更に左下隅にかかって行きました。白はその黒の三間の間に打ち込んで行きました。しかし黒はその白1子を取って治まりました。白は黒が治まったので、ノゾキを決め、更に下から利かそうとしましたが、ここで黒は反発し、左下隅の白にノゾキをしました。白は受けずに結局左下隅は黒地となりまた黒地が増え70目レベルになりました。白としては白模様の中で切り離された黒を如何に厳しく攻めるかでした。黒は先に儲けているので全部を助ける必要はなく、半分捨て気味で打ち、一時は黒5子が取られました。しかしその後の黒のしのぎは巧妙で、左上隅に手をつけ、それと絡めながら、結局取られた5子も連れ戻してしまいました。こうなると確定地がものをいい、中央の白地もまとまらず、白の投了となりました。井山棋聖の常に相手の言い分に反発する打ち方が功を奏した一局でした。

白井喬二の「捕物にっぽん志」(連載第20回)

白井喬二の「捕物にっぽん志」連載第20回を読了。この話は20回、21回の2回の連載ですが、残念ながら第21回の分は入手できていません。読み始めて、ピストルを持った尊王攘夷の義賊「三日月小僧」というのが出てきて、あれ、と思いました。この「三日月小僧」は確か白井喬二の他の作品で出てきた筈です。と思って調べてみたら、「露を厭う女」でした。例の、横浜岩亀楼の女郎の喜遊(亀遊)が、アメリカ人相手をするように申し含められた時に、「露をだにいとふ大和の女郎花 ふるあめりかに袖はぬらさじ」という歌を残して自害した、という有名な話に基づく小説です。話の内容も「露を厭う女」とほとんど同じで、箕作周庵の娘のお喜佐が、父親の病気による借金のため、横浜岩亀楼の女郎に身を堕とし、そのお喜佐を慕っていた勤王の志士の采女正が何とかお喜佐を救おうとする話です。采女正は身請けする大金を持っていないため、やむを得ず三日月小僧である清次に頼み、清次が旅先で大商人に強盗を働く所で終わっています。何故晩年の白井喬二がまたこの話を題材に取り上げたのか理由はよくわかりませんし、話の進行がほとんど同じで新しさがありません。