平凡社の白井喬二全集の第15巻に収録されている「随筆感想集」を読了。全体に、随筆として非常に面白いという物は少なかったですが、白井喬二に関する色々な事を知る資料としては貴重でした。
一つ後悔したのは、「幸吉君の印象」というエッセイを読んだ時で、このエッセイは夭折した画家の小野幸吉と白井喬二の交わりの話なのですが、調べてみたら、小野幸吉は酒田市の生まれで、その作品は本間美術館に展示されているとのことでした。旅行前にこのエッセイを読んでいたら、8月の旅行で本間美術館に行ったのに!と残念に思いました。(今回、本間屋敷には行ったのですが、そこで入場券を買う時に、本間美術館と共通券にしますかと聞かれて、時間もあまり残っていなかったので断ってしまったのでした。)
また、いくつかのエッセイで小説と歴史の区別が論じられます。以前もこのことについて書いたことがありますが、白井は「歴史」はその時々の為政者によって都合良くでっち上げられたものであるという考えを持っており、小説の役目はむしろそういう「正史」には出てこない本当の真実をあぶり出すことだと考えていたようです。また白井によれば「史」が最後に付く歴史書はそういう為政者によるでっち上げがほとんどですが、「志」が最後につくものは比較的真実が書かれていることが多いといのことです。白井の「捕物にっぽん志」で何故「志」が使われているのか、これで謎が解けました。
後は細かいことですが、白井が夏の暑さを「九十度」と表現しているのが気になりました。これは明らかに華氏での表現ですが、日本で華氏が一般的に使われたことがあったのでしょうか?
白井喬二の「随筆感想集」(平凡社の全集の第15巻収録)
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