山中貞雄監督の「盤嶽の一生」シナリオ

キネマ旬報の昭和41年(1966年)2月号別冊の「日本映画シナリオ古典全集 第二巻」にて、山中貞雄監督・白井喬二原作の「盤嶽の一生」のシナリオを読むことが出来ました。まず言っておかないといけないのはこの映画はサイレントだということです。日本で初めての本格的なトーキー映画は昭和6年(1931年)の「マダムと女房」とのことですが、この映画は昭和8年の制作で、トーキーが普及するにはかなり時間がかかったみたいです。この映画の特徴として、キャプションがかなり効果的に使われていて、例えば最後のシーンでは、「盤嶽どこへ行く?」「江戸へ」「騙されに」といった具合です。弁士が解説する前提のサイレント映画ではある意味こういうやり方は禁じ手だったみたいですが、山中貞雄は積極的に使いこなしています。またシナリオを読んだだけでも、原作のいくつかのエピソードをテンポ良くつなぎ合わせて、盤嶽というキャラが観る人に良く分かるような作りになっていると感じました。西瓜畑のラグビーシーンも出てきますが、ただ「ラグビーのように西瓜を奪い合う」といった感じにしか書かれておらず、実際のシーンを想像するのは難しいです。何はともあれ、シナリオだけでも残ったというのは素晴らしいことです。いつの日かどこかでフィルムが発見されないか、というのが私の夢です。

宇宙家族ロビンソンの”The Keeper”(2話)

宇宙家族ロビンソンの”The Keeper”(2話)を観ました。初めての2回連続でのお話です。宇宙の色々な動物をコレクションしているエイリアンが、ロビンソン一家に目を付けます。そのエイリアンはウィルとペニーをコレクションに加えようと渡すように要求します。ロビンソン一家は当然断りましたが、そうしている内にドクター・スミスがエイリアンが宇宙船の外に出ている間に、その宇宙船に乗り込んで地球に戻ろうとします。しかし操作を誤ってその宇宙船に捕らえられていた動物たちを逃がしてしまいます。で、ここで出ました!アーウィン・アレンお得意の「トカゲ恐竜」がまたも登場です。”The Lost World”の映画が最初で、原子力潜水艦シービュー号で確か3回ぐらい、タイム・トンネルで1回、そしてこの宇宙家族ロビンソンでも使い回しています。「巨人の惑星」でも出てくるようです。全部観たら、そのうち全部スクリーンショットを取って、ブログにまとめようと思います。お話に戻ると、エイリアンはドクター・スミスの行動に激怒しますが、ウィルとペニーを渡さないと危険なモンスターも含まれる動物たちをこのままにしておくと脅迫します。ここで、まずジュディがドンに対し、私達が身代わりになろうと提案し、二人で宇宙船に向かいます。同時にロビンソン博士とモーリーンも同じことを考え身代わりになろうとします。エイリアンはそれぞれの自己犠牲に感銘を受けますが、それでもウィルとペニーを要求します。しかし、ロビンソン博士が宇宙船の中でエイリアンが使う杖(ソロモンの杖みたいにモンスター達を操れるもの)を倒して壊してしまったため、エイリアンは一匹だけ船内に残っていた最凶のモンスターに襲われて倒れます。エイリアンはモーリーンに介抱されて、今度こそ地球人の気高さに感動を受け、最後はドクター・スミスだけを檻に入れた状態に放置して去って行きます。

白井喬二(厨井道太郎)の「銀の火柱」

白井喬二の「銀の火柱」を連載1号分だけ(博文館 淑女画報 大正10年{1921年}2月号)を読了。というか名義が「白井喬二」ではなく、「厨井道太郎」名義です!最初本当に本人が書いたのか疑いましたが、白井喬二の自伝の「さらば富士に立つ影」の巻末の年譜にちゃんと出ているので間違いないでしょう。また白井と「淑女画報」は、白井が学生時代に近松門左衛門の作品の現代語訳である「雨乞い小町」「恋のはやりうた」をこの雑誌に載せていますので、以前から付き合いがあります。また内容は時代小説ではなく、(その当時の)現代ものであり、しかも丁度この回はある男子学生が女性に恋の告白をする(「あなたを愛しています」ではなく「あなたを恋しています」が使われています)、という白井の作品としては非常に珍しいものです。白井は他にも「東遊記」とか「旧造軍艦」の時も、前者で飛鳥亭主人、後者で白井狂風という別名を使っていますので、この白井の最初期(連載は1920年4月-1921年3月、「怪建築十二段返しは博文館の「講談雑誌」の1920年1月号{おそらく発売は1919年12月}に掲載)に別名で作風が異なるものを書いていても特に不思議はないと思います。林不忘=牧逸馬=谷譲次のような例もありますし。

英語の手紙の結語(Complimentary Close)について

英語で正式なレターを書くという機会は、メールの普及でとても減っていると思います。
メールは多くの場合かなり砕けていて、あまり形式をうるさく言われることは少ないですが、手紙となるとそれなりに形式を守る必要があります。日本語の「拝啓-敬具」の敬具に当たる部分を英語では、Complimentary closeと言います。
20代の頃、会社の研修で「商業英語」の講座を週2回で半年ほど受講しました。ヘンリー中村という先生でした。(この先生、今ググってもヒットせず、どういう人だったのか不明です。でも色んな企業に対して商業英語を教えていたみたいです。)この先生によると、結語については”Very truly yours,”が一番正式であると力説されていました。
私も習った当初はこの結語を愛用していましたが、疑問が出てきたのは、ソフトウェア会社に移り、そこでワープロソフトに付ける英語の手紙文の監修を、早稲田大学の商業英語の長野格さんという先生と、ヤヌシュ・ブダさんという先生にお願いしてからです。実は長野先生は日本人とアメリカ人の実際のビジネスメールを何百通か集め、結語に何が使われているかを分析された論文を出されていて、それを読みました。それによると”Very truly yours,”は圧倒的に日本人ビジネスマンによって使われており、アメリカ人で使っている人はおそらく20%もなかったと記憶しています。どうもこの日本人ビジネスマンの多くがヘンリー中村に直接習ったか、または習った人から教えてもらって、”Very truly yours,”を墨守しているのではないかと思います。ネイティブの感覚では「私がここで書いていることは本当に本当のことですよ」という感じであり、あまりに硬すぎ、また逆に本当かな、という疑いを起こしかねません。実はアメリカ人でこの結語を多用するのはほとんどリーガル関係者、つまり弁護士です。普通のビジネスマンだったら、”Sincerely yours,”などの方がいいと思います。(イギリスだとYours sincerely,と逆。但し相手の名前を知っている場合のみ。知らない場合はYours faithfully,です。)
日本語だって、外人に正式な手紙の書き方を教えるのに、「謹啓-謹言」をいつも使え、と教えるのは不適切でしょう。それと同じだと思います。

宇宙家族ロビンソンの”Return from Outer Space”

宇宙家族ロビンソンの”Return from Outer Space”を観ました。今回のはおそらく第1シーズンの白眉といってもいいかもしれない話で、何とウィルが数話前に登場した人間みたいな宇宙人が残していった転送装置を使って地球に4時間だけ戻ります。(スタートレックの転送装置は、エンタープライズ号から目的の惑星に降りる程度の距離の転送ですが、この転送装置は何と4光年もの距離を瞬時に転送します。)しかし、ウィルが降り立ったのはヴァーモントの田舎町で、1965年とほとんどそのままという感じで、誰もウィルの言うことを信じてくれず、アルファコントロールに連絡してくれません。ロビンソン一家は全員死んだと思われていました。ウィルは、ある店で、ジュピター2号で食料の浄化に使っている四塩化炭素(例によってドクター・スミスが蓋を開け放しにして蒸発させてしまった)を見つけますが、わずか85セントのお金も持っていなくて、それをそのまま持って行こうとしてシェリフに捕まってしまいます。(ちなみに四塩化炭素は現在は発がん性があるので生産されていません。)最後になってようやく最初にウィルが出現するのを目撃していた少年がウィルの言うことを信じて四塩化炭素を買ってウィルに渡してくれます。ウィルはこの少年にアルファコントロールに連絡してくれるよう頼んで、再び元の星に戻っていきます。なのでこの少年がアルファコントロールにロビンソン一家が生きていてある惑星にいることを伝えてくれれば、救助隊が来る筈ですが、アーウィン・アレンのドラマは、脚本家が変わると話が引き継がれないのが特長なんで、結局救助隊は来ません。それに2話前のワンちゃんは一体どこに消えてしまったのか…