今日の落語、三遊亭圓生の「代脈、田能久」。
「代脈」は医者が、忙しいので、自分の代わりに与太郎を豪商の家に代理の診察にいかせる。当然のことながら与太郎は頓珍漢なやりとりをし、というお噺。「転失気」以外におならの出てくるお噺。
田能久は、阿波の田能村の久兵衛さんが、芝居の一座を組んで、伊予の宇和島まで行くが、母親が病気だという連絡があり、急ぎ戻ろうとする山中でうわばみに出逢い…というお噺。「田能久(たのきゅう)」がうわばみに「狸」に聞き間違えられたので、食べられないで済んだのですが、阿波といえば狸のイメージが昔からあったのでしょうね。金長狸の狸合戦の話もありますし。
三遊亭圓生の「淀五郎、紀州」
本日の落語、三遊亭圓生の「淀五郎、紀州」。
「淀五郎」は「中村仲蔵」と似ていて、というかこの噺に中村仲蔵自身も登場しますが、仮名手本忠臣蔵の歌舞伎を演じる役者の噺です。若手の役者の澤村淀五郎が市川團蔵に、塩冶判官の役に抜擢されたがいいが、舞台ではその團蔵にまともに演技の相手にしてもらえないで悩む噺です。その淀五郎の相談に乗ってアドバイスするのが中村仲蔵です。
「紀州」は先日、金馬でも聴きましたが、物音が人の言葉に聞こえるという聞きなしの噺で、圓生はこの聞きなしの噺を徹底的に膨らませています。もっとも本題の噺は実に大したストーリーがないので、そうせざるを得ないのでしょうが。金馬よりさすがにうまいと思いました。
小林信彦の「ムーン・リヴァーの向こう側」
古今亭志ん朝の「大山詣り、粗忽の使者」
白井喬二の「新撰組」[下]
白井喬二の「新撰組」[下]を読了。
タイトルの「新撰組」は下巻の半分くらい、全体の3/4を経過したところでやっと登場します。それで池田屋事件とかも出てくるのですが、新撰組はあくまで背景に過ぎません。メインは、但馬流の織之助、金門流の紋兵衛、そして京都の伏見流の潤吉、この3人の独楽勝負を巡るお話しに、勤王の志士の妹であるお香代がからみます。織之助は、最初紋兵衛と戦い、その後潤吉と戦います。そして最後にお香代をどちらが妻にするかをかけて、潤吉と再度、肉独楽という占い独楽で決着をつけようとします。とにかくはらはらどきどき、織之助の人生も波乱万丈で読んでいて非常に楽しいです。ポケモンgoもいいけど、やっぱり本もいいです。
柳家小さんの「長屋の花見」
白井喬二の「新撰組」[上]
古今亭志ん朝の「三軒長屋、羽織の遊び」
伊藤祐靖の「国のために死ねるか 自衛隊『特殊部隊』創設者の思想と行動」
伊藤祐靖の「国のために死ねるか 自衛隊『特殊部隊』創設者の思想と行動」を読了。たぶん片山杜秀の右翼に関する本を買ったので、そのつながりでAmazonがおすすめで出してきたもの。強烈なタイトルに惹かれて購入。
筆者は、海上自衛隊で、イージス艦「みょうこう」の航海長在任時に、北朝鮮の工作母船と遭遇し、その船を威嚇銃撃しながら追撃し、一度は停船させましたが、結局取り逃がすという能登半島沖不審船事件に遭遇しています。この時、工作母船の船内を調査することが必要でしたが、この時点ではその任務にふさわしい技能を持ったものは自衛隊にはいませんでした。これをきっかけに自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に関わります。その後、特殊部隊について自衛隊の幹部と考え方が合わず退官、フィリピンのミンダナオ島に移り、そこでもさらに特殊部隊としての技能を磨いて、現在は各国警察や軍隊への指導を行っている人です。
まず、この人のお父さんがある意味異常な人で、陸軍中野学校の出身で、戦前に蒋介石殺害の命令を受け、終戦時にもその命令が解除されなかったという理由で、戦後も新たな指令に備えて、毎日射撃訓練を続け、それは1975年に蒋介石が死ぬまで続いたというそういう人です。
そういう父親を持つ人が海上自衛隊の特殊部隊の創設に深く関わるのですが、意外だったのが、アメリカの特殊部隊がある意味世界最弱で、まったく参考にならず、日本独自の特殊部隊を考案したということです。
そういう特殊部隊創設時のエピソードよりももっと興味深いのが、ミンダナオ島に移ってからの体験で、ラレインというおそらく反政府ゲリラ出身の20過ぎの女性で、この女性の「殺し」についての根性がすごいです。筆者にとって射撃は的に当てることですが、このラレインにとっては、相手の顔を吹っ飛ばすことです。また筆者とこのラレインが水中で格闘戦をやった時に、筆者はラレインの肩にまたがって、自分は水面から顔を出し、ラレインは水中に押し込められて呼吸ができないという姿勢になったのですが、ラレインはふりほどけないことがわかると、筆者を水の中に引きずり込んで、そちらも呼吸ができないようにし、結局我慢比べに勝って、不利な闘いを打開します。
そのラレインが、戦争中の日本の沈没船から、大正天皇が関東大震災の時に出した詔勅の額を引き上げてきて、筆者に訳してもらいます。それを聞いた感想が、大正天皇はエンペラーではなく、部族長だということです。何故なら命じるのではなく、ただ「こいねがう」ことしかしていないからです。
筆者の「思想」は正直な所、私には受け入れがたい部分が多いのですが、強烈な本ではありました。
NHK杯囲碁 金秀俊8段 対 溝上知親9段
今日のNHK杯戦の囲碁は、金秀俊8段の黒番、溝上知親9段の白番です。金8段は趙治勲門下で、力が強いです。溝上9段は菊池康郎門下で、各種リーグ戦で活躍する強豪です。対局は右上隅で金8段が一手かけて2線の石をかけついだのが珍しく、その代償に上辺をほとんど封鎖されてしまいました。しかしながら封鎖している白石にいきなりつけこし、ここから戦いになりました。この戦いは白の溝上9段が固く受けたため、中央は黒が制して下辺が広大な黒模様になりました。白は下辺に打ち込んでいき、さらに右下隅にも打ち込んで何とかさばこうとします。これに対し黒は白の全部を取りに行きましたが、これがやりすぎで、白にうまく治まられてしまいました。それでも黒地は全体的に多く、まだ黒が優勢でしたが、白は最後の勝負ということで、中央の厚みになっている黒を狙いました。黒はどこかで手厚く打っていれば勝ちだったのですが、いっぱいに打っている内にある意味放心の手が出て、中央を取り込まれてしまいました。さしもの黒の好局もこれで逆転し、終わってみれば白の4目半勝ちでした。