三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~お久殺し」

jpeg000 152今日のお噺、三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~お久殺し」。
豊志賀が死んで、新吉は弔いを済ませ、21日間は怖いのでお墓参りをして殊勝に過ごす。ところがそのお墓参りに、お久もやってきて、あの寿司屋で連れて逃げてくれるという約束はどうなったのかと問いただす。そこで焼けぼっくいに火が付いて、新吉はお久と駆け落ちすることを約束し、二人でお久の叔父さんが下総の羽生村にいるということなので、そこを目指す。道中二人は夫婦になったが、後一歩で羽生村に着くという時、昔、累(かさね)という女が鎌で殺されたという累ヶ淵という場所にたどり着いた所、雨が降り出し、お久が濡れた草に足を滑らせて、川原を転げ落ちてしまう。お久は草の中に放置してあった鎌で膝の下をざっくりと切って歩けなくなってしまう。新吉は、お久を介抱するが、お久は新吉が不実な男だとなじり、そのうち自分を捨てて逃げてしまうだろう、と言い出す。いつの間にかお久の顔が豊志賀と同じく顔の半分が腫れ上がったひどい顔になっている。びっくりした新吉は、思わず鎌を取ってお久に切りつけ、お久を殺してしまう。殺してしまうとその顔は普通のお久の顔に戻っている。新吉は逃げようとするが、やくざ者の土手の重蔵という男が一部始終を見ていて、新吉に組み付いてくる。しばらくもみあった二人だったが、そのうち雷が鳴り出し、重蔵は雷が大の苦手だったので思わず手を離す。やっと逃げ出した新吉は、灯りがついた家が見えたのでそこに飛び込む。しばらくすると、そこの家の主人が戻って来たが、それは重蔵の家だった。新吉は旅の者のふりをして一夜の宿を頼むが、重蔵と新吉は結局兄弟分の契りを交わす。重蔵は実は新吉だと気がついていて、お久殺しを正直に話すように強要する。仕方なく新吉は豊志賀との因縁とお久とのこれまでの話をする。結局、新吉は重蔵の家に住むことになる。とこういう噺です。「真景累ヶ淵」はまだ続きますが、取り敢えずここまでで止めておくことにします。

白井喬二の「富士に立つ影」[7](運命篇)

jpeg000 162白井喬二の「富士に立つ影」第七巻、運命篇読了。
前巻の最後で、佐藤兵之助に斬り殺されそうになったお園は、兵之助の元から身を隠すことを条件に命を助けてもらい、一人で男の子を産んで、兵吾と名付け、女手一つで育てていきます。
一方、日光霊城審議から十年が経ち、その時に約束した熊木家と佐藤家の三度目の対決の時がやってきます。熊木公太郎は昌平校の武術師範になっており、佐藤兵之助は調練隊の隊長になっています。しかし二人の対決は、思わぬ展開から斬り合いとなり、物別れと終わってしまいます。
その結果を知った熊木伯典は気を落として、死の病の床に就いてしまいます。公太郎は、その伯典を救わんとし、猿回しの助一に、御殿医玄融を連れてきて伯典を診てもらうように頼みます。玄融は、百両あれば診てやるといい、助一は玄融の囲い女の家から百両を盗み出し、玄融を伯典の元に連れてきましたが、時既に遅く、一足違いで伯典は死んでしまいました。
助一の盗みは公儀の知る所となり、助一は捕まって伝馬町で斬首されそうになります。危ない所で馬に乗った公太郎が駆けつけ、助一を助け出して江戸を逐電します。この公太郎と助一の追捕を命じられたのが、他ならぬ調練隊の隊長佐藤兵之助で、兵之助は行き先を調べるのに苦労しますが、とうとう筑波山麓に隠れ潜んでいることを探し当て、ついに両者は再び相まみえます。ここで兵之助の部下が鉄砲で公太郎を撃ち、さしもの好漢公太郎もついにここで命を落とします。

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三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~豊志賀の死」

jpeg000 152今日のお噺は、三遊亭圓生(六代目)の「真景累ヶ淵~豊志賀の死」。先日聴いた志ん朝のと聴き比べになります。志ん朝も普通の落とし噺であれば、決して圓生に劣るものではないと思いますが、怪談噺に限ってはやはり圓生の年季が上回ると思います。
この前の噺の「深見新五郎」では、皆川宗悦の娘のお園は、深見新左衛門の息子新五郎を徹底して嫌い抜きますが、この「豊志賀の死」では、同じく宗悦の娘(お園の姉)の豊志賀は、深見新左衛門の次男である新吉をこともあろうに39歳にもなっての初めての男として好きになるのがちょっと不思議です。豊志賀が病気になって、新吉とお久のことについて焼き餅を焼いて、くどくど繰り言を述べるのは、新吉でなくても聴いていて嫌になります。聴いていてまったく楽しい噺ではないです。後半豊志賀の幽霊が出るところはさすがに怖いですが、全体的に何度も聴きたい噺ではないですね。

白井喬二の「富士に立つ影」[6](帰来篇)

jpeg000 159白井喬二の「富士に立つ影」第六巻、帰来篇読了。物語の舞台は再び富士の裾野愛鷹山麓へと戻ります。佐藤菊太郎と熊木伯典の対決の時に、菊太郎に味方した花火師の竜吉は、伯典の陰謀で捕らえられたままどこかの岩牢の中に終身閉じ込められています。その竜吉が持っている口書調印状が伯典の旧悪を暴くものとして、熊木公太郎と佐藤兵之助とで奪い合いになります。しかし、ここで初めて熊木公太郎が佐藤兵之助を出し抜き、竜吉の捕らえられている岩牢を見つけ、先に口書調印状を手に入れます。兵之助は口書調印状を奪い取ろうと、公太郎に二度斬り合いを仕掛けますが、剣の腕では公太郎に敵わず、手傷を負ってしまいます。
江戸の熊木家では、公太郎の妹のお園が、那須から帰って来ても、佐藤兵之助との逢い引きを続け、とうとう兵之助の子供を身籠もってしまいます。これが両親の伯典と小里にばれ、お園は家を出て兵之助の元に身を寄せます。
一方、公太郎は、那須で知り合った音楽師である錦将晩霞の妹である貢を嫁にすることを決めます。
佐藤兵之助は、身重のお園を連れて江戸を抜け出し、大山までやってきます。兵之助は自らの立身出世のためにはお園とそのお腹の子が邪魔であると考え、お園を切り捨てようとします。
巻末の山室恭子の解説が見事で、中里介山の「大菩薩峠」とこの「富士に立つ影」を比べ、「大菩薩峠」が空間的広がりを主とし、「富士に立つ影」が時間的な広がりを主とする、としています。

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三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~深見新五郎」

jpeg000 150落語ではなくて怪談噺、今日も三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~深見新五郎」です。新五郎は新左衛門の子供ですが、親父に愛想を尽かして家を飛び出していました。そのうち心細くなり家に戻ってみたら、屋敷はすっかり荒れ果てていて、親父は乱心を起こして討ち取られ、お家も廃絶となったことを知ります。墓の前で腹を切ろうとしていた所を、丁度通りがかった質屋の下総屋の主人に止められ、訳を聞かれて話し、新五郎は下総屋で働くことになります。新五郎は如才なく働き、人当たりもいいのですっかり気に入られます。その内に、新五郎は下総屋の女中でお園というのがすっかり好きになります。ところが、お園の方はいくら言いよられても、新五郎のことが虫が好かず側に寄られるのも嫌。それもその筈、お園は新左衛門に殺された宗悦の娘でした。そうこうしている内にお園は病気になりましたが、新五郎は一生懸命看病します。その甲斐あってお園は回復しましたが、新五郎は看病したことを恩に着せてお園に迫ります。ですがお園はそれでも相手にしません。その後、蔵の塗り替え工事がありましたが、工事で人が出入りする隙を狙って新五郎はお園に再度言いより、とうとうお園を積んであった藁の上に押し倒します。ところが藁の中には藁を切る押し切りという包丁が入れてあって、お園はその包丁に身を切られて命を落とします。新五郎はこうなっては、とドサクサに紛れ、店から100両という金を盗んで逐電する…といった噺です。

白井喬二の「富士に立つ影」[5](神曲篇)

jpeg000 157白井喬二の「富士に立つ影」第五巻神曲篇を読了。日光霊城審議で勝利した佐藤兵之助は、早速築城に取りかかりますが、半年ほど根を詰めて働いたのが体に来て、神経痛を患います。その療養に、那須の温泉宿に逗留していたところ、熊木伯典の娘お園が何故か兵之助を訪ねて来ます。その用件は、熊木の家にある牡丹群鳥の壺(昔佐藤菊太郎がその壺の偽物を誤って割ってしまった)を佐藤家に売り、その代償として、日光で囚われている上田三平を解放してもらうことでした。兵之助は断りますが、何度も話を重ねている内に、二人はお互いに惹かれ合うようになり、ついには男女の仲になってしまいます。
那須の温泉宿にはお園の後を追って伯典もやって来ます。そうこうしている内に、那須で跳梁していた山賊を討つことになり、その指揮を兵之助と伯典が執り行うことになります。山賊の山狩りはうまく行きましたが、そのドサクサで兵之助と伯典は斬り合うことになり、伯典は足を滑らせて谷に落ち、重傷を負います。それにつけこんだ兵之助は、伯典の昔の悪を白状させて念書を取ってしまいます。
実は熊木公太郎も前からこの那須の地に来ていて、樵や川漁師の真似ごとをして暮らしていたのですが、山賊とも顔なじみになっており、山狩りにあった山賊に頼まれて、それとは知らず兵之助に立ち向かうことになり、兵之助の刀を曲げてしまいます。
兵之助はお園との関係が深くなり、病気は治ったにも関わらず日光に戻らず那須にぐずぐずしています。そこに日光から兵之助が戻ってこないのをいぶかって調査のためにある侍がやって来ます。兵之助はふとしたきっかけでこの侍を斬り殺してしまいます。
一方、熊木公太郎は、隣の小屋に住む貢といい中になり、一緒になる約束をします。
といった具合ですが、日光霊城審議で鮮やかに勝った佐藤兵之助が、そのまま栄光に満ちた日を送るのかと思ったら、色々と暗雲が立ちこめ、ついには人殺しを犯してしまいます。一方で破れた熊木公太郎は、清廉潔白に暮らしていきます。

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三遊亭圓生の「真景累ヶ淵~宗悦殺し」

jpeg000 150今日の落語というより怪談噺、三遊亭圓生の「真景累ヶ淵-宗悦殺し」です。長大な怪談噺、「真景累ヶ淵」の最初の噺です。旗本の深見新左衛門が、借金の催促に来た按摩の皆川宗悦を、酒に酔って怒りを抑えられず、誤って斬り殺してしまいます。この死体をつづらに入れて、広場に捨てておいたのを、欲の深い上方者二人が自分の家のものだと嘘をいって持ち帰ります。すっかり得をしたと思ったこの上方者二人は酒をくらって寝てしまいますが、その間に泥棒が入り、つづらを開けて、中が宗悦の死体だということがわかってしまいます。一方で、新左衛門はある夜按摩を頼んで肩をもませていたら、その按摩が宗悦に変わります。びっくりして刀を抜いて斬りかかりますが、誤って自分の女房を斬ってしまいます。乱心した新左衛門は隣家にも押し入り、狼藉者として結局討ち殺されます。
この「宗悦殺し」以降は、新左衛門の子孫と宗悦の子孫が不思議な運命でからみながら、それぞれ不幸になっていく噺です。
正直怖いというより陰惨さ100%のお噺で、聴く楽しみがないのですが、乗りかかった船なので、圓生の噺で、続けて「深見新五郎」「豊志賀の死」「お久殺し」までを聴く予定です。圓生の録音では、さらにこの後、「お累の婚礼」「勘蔵の死」「お累の自害」「聖天山」までが出ています。

白井喬二の「富士に立つ影」[4](新闘篇)

jpeg000 154「富士に立つ影」第四巻、新闘篇読了。
熊木伯典の一子公太郎と、佐藤菊太郎の一子兵之助は、日光霊城審議で、かつて伯典と菊太郎がぶつかったのと同じように、対決します。兵之助の親の菊太郎がただ真っ正直で策を巡らすという事ができずに伯典に負けたのに対し、その子の兵之助は抜け目なく、才気煥発で一分の隙もありません。それに対して熊木伯典の子の公太郎は、大らかですが、伯典のように策を巡らすことができず、兵之助との問答では、相手の策を褒めてしまったり、築城において農民や樵のことを思いやるべきだなどとやって、兵之助に突っ込まれてしまいます。
そういう訳で直接対決は賛四流佐藤兵之助の圧勝でしたが、公太郎についてきた伯典は裏から手を回し、賛四流をいわれなき罪に陥れようとします。それが成功し、一旦は赤針流の熊木公太郎の勝利に決まりかけましたが、その時、生命を賭けた証人が登場し…
というお噺です。公太郎につきまとって来た影法師の正体も明らかになります。

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古今亭志ん生の「お直し、庚申待ち」

jpeg000 148今日の落語、志ん生の「お直し、庚申待ち」。昨日志ん朝の「お直し」を聴いたので、本家のが聴いてみたくて買いました。「お直し」が昭和38年、「庚申待ち」が昭和40年で、どちらも志ん生の病後です。但し、ググって見ると、志ん生のお直しについては、この病後の昭和38年のがベストだと言っている人もいました。「庚申待ち」はTVの録音で、音が良くありません。
「お直し」はさすがに本家で、語りようによっては陰惨な噺になりかねない噺ですが、志ん生の語りでは暗さはまったくありません。基本的に志ん朝のは志ん生のをコピーしていますが、細部はそれなりに違いますね。
「庚申待ち」は、ある旅籠屋で、庚申の夜に町の人が集まって色んな話をして過ごす様子を描いた話です。その中に、「女ムジナ汁を食って玉の輿に乗る」というのが出てきて、何の洒落だかわからないので調べてみたら、「女氏無くして玉の輿に乗る(おんな、うじなくしてたまのこしにのる)」の洒落でした。

白井喬二の「富士に立つ影」[3](主人公篇)

jpeg000 153白井喬二の「富士に立つ影」第三巻主人公篇を読了。この巻からいよいよ全体の物語の主人公である、熊木公太郎(きみたろう)が登場します。親父である熊木伯典と違って、天真爛漫で邪気の無い、善人である意味「聖なる愚者」的な人物として描かれています。この公太郎には、親父である伯典への恨みからなのか、影法師と呼ばれる謎の人物がつきまとっており、公太郎が何かを習っていよいよ免許を得ようとする段階になると、決まってこの影法師の邪魔が入り、免許を得ることができません。公太郎は、軍学者頼母木介堂に入門しようとしますが、その入門の儀式でまたしても影法師の邪魔を受け、入門することができません。そうしている内に、公太郎は一緒に旅していた猿回しの助一(実は富士の裾野の村で佐藤菊太郎に味方した牛曳きの息子)から、熊木伯典の昔の悪について聞きますが、公太郎はそれを信じることができません。実家に戻った公太郎の元へ、鼠小僧次郎吉が泥棒に入りますが、公太郎はこれを逃がしてしまい、公太郎の評判はさらに悪くなります。そうこうしている内に、伯典は幕府が日光で新しい城を築く話を聞いてきて、公太郎に築城学を仕込んで、今度こそ名を成させようとします。

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