白井喬二の「富士に立つ影」[4](新闘篇)

jpeg000 154「富士に立つ影」第四巻、新闘篇読了。
熊木伯典の一子公太郎と、佐藤菊太郎の一子兵之助は、日光霊城審議で、かつて伯典と菊太郎がぶつかったのと同じように、対決します。兵之助の親の菊太郎がただ真っ正直で策を巡らすという事ができずに伯典に負けたのに対し、その子の兵之助は抜け目なく、才気煥発で一分の隙もありません。それに対して熊木伯典の子の公太郎は、大らかですが、伯典のように策を巡らすことができず、兵之助との問答では、相手の策を褒めてしまったり、築城において農民や樵のことを思いやるべきだなどとやって、兵之助に突っ込まれてしまいます。
そういう訳で直接対決は賛四流佐藤兵之助の圧勝でしたが、公太郎についてきた伯典は裏から手を回し、賛四流をいわれなき罪に陥れようとします。それが成功し、一旦は赤針流の熊木公太郎の勝利に決まりかけましたが、その時、生命を賭けた証人が登場し…
というお噺です。公太郎につきまとって来た影法師の正体も明らかになります。

裾野篇 江戸篇 主人公篇 新闘篇 神曲篇 帰来篇 運命篇 孫代篇 幕末篇 明治篇 総評

古今亭志ん生の「お直し、庚申待ち」

jpeg000 148今日の落語、志ん生の「お直し、庚申待ち」。昨日志ん朝の「お直し」を聴いたので、本家のが聴いてみたくて買いました。「お直し」が昭和38年、「庚申待ち」が昭和40年で、どちらも志ん生の病後です。但し、ググって見ると、志ん生のお直しについては、この病後の昭和38年のがベストだと言っている人もいました。「庚申待ち」はTVの録音で、音が良くありません。
「お直し」はさすがに本家で、語りようによっては陰惨な噺になりかねない噺ですが、志ん生の語りでは暗さはまったくありません。基本的に志ん朝のは志ん生のをコピーしていますが、細部はそれなりに違いますね。
「庚申待ち」は、ある旅籠屋で、庚申の夜に町の人が集まって色んな話をして過ごす様子を描いた話です。その中に、「女ムジナ汁を食って玉の輿に乗る」というのが出てきて、何の洒落だかわからないので調べてみたら、「女氏無くして玉の輿に乗る(おんな、うじなくしてたまのこしにのる)」の洒落でした。

白井喬二の「富士に立つ影」[3](主人公篇)

jpeg000 153白井喬二の「富士に立つ影」第三巻主人公篇を読了。この巻からいよいよ全体の物語の主人公である、熊木公太郎(きみたろう)が登場します。親父である熊木伯典と違って、天真爛漫で邪気の無い、善人である意味「聖なる愚者」的な人物として描かれています。この公太郎には、親父である伯典への恨みからなのか、影法師と呼ばれる謎の人物がつきまとっており、公太郎が何かを習っていよいよ免許を得ようとする段階になると、決まってこの影法師の邪魔が入り、免許を得ることができません。公太郎は、軍学者頼母木介堂に入門しようとしますが、その入門の儀式でまたしても影法師の邪魔を受け、入門することができません。そうしている内に、公太郎は一緒に旅していた猿回しの助一(実は富士の裾野の村で佐藤菊太郎に味方した牛曳きの息子)から、熊木伯典の昔の悪について聞きますが、公太郎はそれを信じることができません。実家に戻った公太郎の元へ、鼠小僧次郎吉が泥棒に入りますが、公太郎はこれを逃がしてしまい、公太郎の評判はさらに悪くなります。そうこうしている内に、伯典は幕府が日光で新しい城を築く話を聞いてきて、公太郎に築城学を仕込んで、今度こそ名を成させようとします。

裾野篇 江戸篇 主人公篇 新闘篇 神曲篇 帰来篇 運命篇 孫代篇 幕末篇 明治篇 総評

古今亭志ん朝の「お直し」

jpeg000 146今日の落語は志ん朝の「お直し」です。親父の志ん生が得意だった噺です。(というか志ん生と志ん朝の親子以外はほとんど演じる人がいません。)いわゆる廓噺、それも最下層の廓である「けころ」(蹴転がし、の略)の噺です。そういう噺であるにも関わらず志ん生は平気で戦争中でも高座にかけていたそうです。志ん生はこの落語の口演で、昭和31年に芸術祭賞を受賞しています。
お噺は、吉原の女郎と牛太郎が惚れ合った仲になりますが、店の女郎と牛太郎が仲良くなるのはご法度です。でも店の主人は話の分かる人で、二人を夫婦にしてくれそのまま雇ってくれました。二人で一生懸命働いたので、暮らし向きは楽になりましたが、そうすると亭主が女遊びを始め、ついでに博打まで始めて店に出なくなり、借金も重ねます。女房の方も亭主が休むので店に出ずらくなり、二人して店を辞めることになります。そうなるとお金を得る手段がなく、亭主は女房を最低限の女郎である「けころ」にして金を稼ごうとする…というものです。ちょっと間違えると暗い噺になりますが、志ん朝の噺ぶりはとても明るくてユーモラスです。

白井喬二の「富士に立つ影」[2](江戸篇)

jpeg000 151白井喬二の「富士に立つ影」、第二巻読了。
舞台は一転して富士の裾野の村から江戸に変わります。
佐藤菊太郎を慕うお染は、第一巻の最後で、熊木伯典の出生の秘密にまつわる書き付けを盗み出し、それを別の内容に書き換えたものにすり替え、伯典に戻します。そして伯典の側に住み、伯典が偽の書き付けに翻弄されて不幸に陥っていく様を眺めます。
一方で裾野村の庄屋の娘で、伯典によって危うく人柱にされかかったのをお染に救われたお雪は今は江戸に出て、芸者となって名前を小里と変え、お染に協力します。
それが何故か、まだ経緯はよくわかりませんが、小里は伯典の女房になり、妊娠します。生まれる子は第三巻以降に出てくる熊木公太郎です。二巻までは熊木は悪者ですが、公太郎は純真無垢な自然児で、ここで善役と悪役がひっくり返ります。

裾野篇 江戸篇 主人公篇 新闘篇 神曲篇 帰来篇 運命篇 孫代篇 幕末篇 明治篇 総評