大木毅の「独ソ戦 絶滅戦争の惨禍」を読了しました。今、英語でクリミア戦争の本も読んでいますが、そっちは後1/4くらいです。この本は出た時結構話題になったと思いますが、今日まで読む機会がありませんでした。こういう本読んでまず思うのが、自分がこれまでの戦争について知らないことです。とは言っても、小学校の時は当時戦記ブームみたいなものがあり、太平洋戦争に関する本はかなり読みました。それに対し、欧州方面はどうしても手薄です。
クリミア戦争も色々細かいことを知ると、英仏とオスマン帝国連合軍も、ロシアも色々と凄惨な戦いはやっていますが、どこかまだ牧歌的な雰囲気が残っていて、セバストポリの攻城戦が長期化した中だるみの時期には、時には双方が一時休戦して一緒に煙草を分け合ったり、歌を歌ったり、という世界がありました。また、戦争はしているものの、目的は相手の国を完全につぶすということでは当然無く、どちらもどこで手を引くかということは考えながら戦争していました。
それに対してこの第2次世界大戦の独ソ戦は、ある意味史上もっとも醜く、もっとも凄惨な戦いです。この戦いでの例えば相手捕虜とかの殺害が、ドイツではユダヤ人の組織的虐殺につながった、という指摘にはなるほどと思いつつも、やり切れなさが強く残ります。また、今行われているウクライナでの戦いとも共通する要素は多くあり、春先の雪解けの時期にはロシア西部は道が泥濘化してドイツ自慢の機甲部隊が役に立たなくなる、ということが今でも起きています。また、ドイツは少なくとも敗戦国で大きな代償を払い、このような凄惨な「絶滅戦争」をしかける、ということはしなくなっていますが、ソ連-ロシアについては、戦勝国になったことで、考え方を変えるといったことはまるでなく、今でもこの時の野蛮極まる戦争のやり方を引き摺っているように思います。
また、どうしてもこの戦いを例えば日中戦争とも比較してしまいます。日本は日中戦争で首都の南京さえ陥落させれば戦争は終り、と思って日本全国で提灯行列して祝いましたが、ご承知の通り、国共合作の軍は奥地に逃げて徹底抗戦を続けます。ドイツの方も緒戦での圧倒的勝利までは計画的にやって成功したものの、どうやって最終的に戦争を終らせるかについて、モスクワ攻略を主張する軍部と、石油などの資源の豊富な南部攻略を主張するヒットラーで分裂しており、明確な戦略を決めることが出来ませんでした。
おそらくはこの戦争の全貌は、こんな新書1冊で描写出来るものではないと思いますが、コンパクトに良くまとめた概説書だと思います。
トワイライト・ゾーンの”The Last Rites of Jeff Myrtlebank”
トワイライト・ゾーンの”The Last Rites of Jeff Myrtlebank”を観ました。これはまだシーズン1を観終わっていないのに、間違えてシーズン3のエピソードを観たものです。テーマ音楽とオープニングがシーズン1とは変わっていました。そのテーマ音楽は聴いたことあるもので https://www.youtube.com/watch?v=-b5aW08ivHU あ、これはトワイライト・ゾーンだったのか、という感じです。良く日本のテレビのホラー系の番組で使われていたと思います。
お話は、中西部の最南部(要するにアメリカのど田舎)で、1920年代半ばです。マートルバンクという若い男のお葬式がおこなれています。その男は悪性のインフルエンザで2日前に亡くなっていました。ところが葬式の最中に棺桶の蓋が動き、中からマートルバンクが生きて出てきました。人々は恐れおののいて逃げ回ります。しかしマートルバンクが色々話してようやく彼の家族も恋人も彼が生き返ったことを喜んでくれました。しかし、実家に戻ったマートルバンクについて、両親は以前の彼と違うと感じていました。マートルバンクの恋人もそうでした。その恋人の兄がマートルバンクにもう来るな、と言って喧嘩になりますが、前は弱くてその兄には腕力で敵わなかった筈が、ボクサーのようなパンチでその兄の顎を骨折させてしまいます。家に戻ったマートルバンクを恋人が追って来ます。そこでマートルバンクは彼女にプロポースします。しかし返事を聞く前に彼を悪霊に取り憑かれた死体だと考える人達がやって来て、その村から出て行くようにいいます。しかし、彼は恋人と結婚しここに住む、と宣言し、人々も納得して引き返します。二人きりになった時、マートルバンクはマッチを擦らないで発火させることをして、恋人を驚かせます。そこから何か捻りがあるのかと思ったらこれでお終いで、ただ二人の子供が後に有能な政治家になった、というのだけが付け加えられます。うーん、もう少し話にまとまりが欲しいです。
松下製2A3(UX-2A3)
パナソニックじゃなくて松下電産/ナショナルの2A3ペアをebayで入手。正式な型名はUX-2A3で、作られた時期は不明ですが、箱の底に「正價980円」と旧字体が使われているので(真空管の真の字も「眞」です)、昭和30年よりも前でしょう。(新字体は昭和24年に作られていますが、すぐに社会全体が新字体に変わった訳ではなく、黒澤明の映画でも「黑」が使われているのが、1950年代前半ぐらいまであります。)また品名がUX-2A3でこの品名が使われたのは昭和30年までなんで、おそらくは昭和25~26年ぐらいの製造かと思います。(もっと前という可能性もありますが、戦争中はこんなどちらかというと娯楽向けの真空管は作れなかったでしょうし、また戦後すぐもこんな高級真空管の製造は難しかったんではないかと思います。)
でもその当時で980円は、おそらく今だと1.5万円~2万円くらいのイメージでしょうか。2A3は高級な電蓄に使われる高価な真空管だったので、価格は頷けます。
音質は今聴いていますが、柔らかさの中に芯がある感じでまた大音量でもクリップしにくく、なかなかいい感じです。日本製2A3というと、東芝製の方が有名みたいですが、松下製もなかなか悪くない感じです。無帰還アンプは真空管の違いを良く出してくれます。
P.S.
https://holdings.panasonic/jp/corporate/brand/history.html
に松下/ナショナル/パナソニックのロゴの歴史がありますが、写真右側の丸に「ナショナル」のロゴが作られたのが1937年と1955年の間になっています。なので上記の推定はそう間違っていないと思います。
P.S.その2
https://radiomann.sakura.ne.jp/HomePageVT/Tube_Identify_Date.html#Mat によると、松下で真空管製造が始まったのは1946年でした。またソケット部に「W」と「S」ってあってロットかなと思いましたが、上記ページによればWが1949年、Sが1953年製みたいです。eTracerで測定してみましたが、2A3のプレート電流の初期値が60mAなのに対し、片方が58mA、片方が55mAで少なくとも片方はいわゆる新古品(NOS)のようでした。この2本は、プレートの色が違い、明らかに製造時期が異なっています。
ジョー90の”The Fortress”
ジョー90の”The Fortress”を観ました。これは正統的(?)スパイものという感じで、おそらくキューバ辺りがモデルの敵国の要塞に、WINのエージェントが捕まってしまって、WINのネットワークの情報が入ったマイクロフィルムの隠し場所を拷問でしゃべらさせられそうになって、ジョー90がそのエージェントのペアだった男の脳波パターンを得て救出に向かうものです。まあストーリーとしてはありきたりで、見せ場はジョーとエージェントが乗ったホバークラフトがモーターボートの追跡をかわすために、川に横倒しになっていた木の幹をうまく飛び越えて、モーターボートがそれに突っ込んで大破、という所です。しかしこの時代の敵役というと、原子力潜水艦シービュー号でもそうでしたが、ソ連と中国とキューバですね。
トワイライト・ゾーンの”The Monsters Are Due on Maple Street”
トワイライト・ゾーンの”The Monsters Are Due on Maple Street”を観ました。アメリカのある町のメイプル・ストリートの何てことはない夏の夕方、突然空からの光に包まれます。人々はそれが何か分りませんでしたが、おそらく隕石だろうということで家に戻ります。しかしそのすぐ後、全ての家で停電になり、電話も通じなくなります。また隣町まで車で行って様子を確かめようとしましたが、車のエンジンはかかりません。人々が通りに出てあれこれ話している時に、ある子供はこれは宇宙人がやって来て、我々の中に人間の格好をして潜り込んでいると言い出します。その内、ある男が車のエンジンをかけようとしてやはりかからなかったのが、何故か男が車を降りてしばらくしてから自動的にエンジンがかかります。人々はその男が宇宙人なんではないかと問い詰め始めます。男は夢遊病の発作で明け方外に出て空を眺めていることがありましたが、その行動が疑われます。次第に人々はお互いを疑い始め、最初に宇宙人の話をした少年を疑ったり、ついには歩いてきた知り合いを宇宙人と思って撃ち殺してしまいます。そして今度はその撃ち殺した男の家の電気が急に点き、人々はお前が宇宙人でさっき人を殺したのは自分の正体をばらされたくなかったからだろう、と問い詰めます。こんな感じでついに暴動が起き、人々はお互いに殺し合います。これを近くで観察していたのが、先ほどの光の正体であったUFOに乗っていたエイリアンで、「地球人を滅ぼすのに武器は必要無い」と言って円盤に乗って去って行きます…
なんか人々の一人一人を世界の国の一つ一つにすると、現実の世界を反映しているような話でした。やはりトワイライト・ゾーンの脚本はいいですね。
NHK杯戦囲碁 六浦雄太7段 対 結城聡9段(2022年7月10日放送)
本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が六浦雄太7段、白番が結城聡9段の対戦です。左上隅、左辺、左下隅の攻防が興味深く、白が左上隅でツケヒキ定石の最後の手を省略していたのを、通常それを咎めるには3線に横に付けて行くのですが、チキリ飛びのように黒が間を開けて包囲したのが、私は初めて見ました。勢い白は間を出て包囲されたのを切って行ったのは武闘派(?)の結城9段らしい打ち方でした。その後の攻防で、黒が左辺から左上隅に渡るのに、直接3線に渡らず、2線に下がって渡ったのが好手でした。というのは3線に渡るとすぐ切られて、その石は取れますが下がられていわゆる石塔シボリにされ、取られてしまいます。その好手で左辺の手数を伸ばし、左上隅の白に差し込んで、白は断点が2つで両方はしのげず、黒は白の2子を取って9目の地を取って治まり、リードしました。形勢の悪い白は、上辺と下辺の両方で押して行って中央に白模様を作り、なおかつ右上隅で三々に入り忙しく立ち回りました。黒は中央の白模様を消すため、中央の絶妙な位置に石を置きました。これに対して白が受けるとおそらく少し足らないので、黒は外側から打ちました。白は当然白模様に踏み込んで行き、この石の活き死にが勝負となりました。白は白の下方の包囲網の欠陥を付き、中央で利かしを打とうとしました。しかし白も黒が左辺を押したのに受けず、下辺に利かしを先手で打ち、黒からの中央の利かしを無くしました。結局黒は左辺を破って左上隅に渡れましたが、白も上方の黒4子を飲み込み、結局いいワカレになりました。しかしそれは黒のリードのまま、終盤に入ったことになり、白は右下隅の三々に入った後、黒のハネに切っていって頑張りました。しかし右上隅で白が2線に下がったのに受けず、中央で黒が白模様に一間トビで入って行ったのが好判断で、結局攻め合いになり、黒は締め付けるだけでも十分でしたが、一手勝ちで白を取りつつ中央の黒が生還し、ここで白の投了となりました。
ジョー90の”Arctic Adventure”
ジョー90の”Arctic Adventure”を観ました。世界連邦の爆撃機が北極上空でエンジンが故障し、パイロット2名は脱出しましたが、機体は氷山にぶつかって炎上します。そのすぐ近くにはある国(おそらくソ連のイメージ)の潜水艦基地がありました。問題は積んでいた4発の核爆弾が3発は回収されたものの、1発が海に沈んで流されて行方不明になります。それが潜水艦基地側に見つかると外交問題になるため、ジョー90に回収命令が出されます。現在70歳の老海洋学者の脳波パターンをビッグラットで記録してジョー90に移して作戦開始です。ジョーは何とか4発目核爆弾を海底で発見しましたが、その時は相手の潜水艦基地に近付き過ぎて、敵の潜水艦がジョーの乗るミニ潜水艦を撃破にやって来ます。ジョーは爆弾回収に手間取りながらもギリギリでミニ潜水艦を発進させ、途中海底の洞窟に隠れて敵の潜水艦をやり過ごし、何とか無事に帰還します。まあジョー90での典型的なパターンのお話で、意外性は無かったです。
1952年製RCA JANの2A3
ヤフオクで落札したRCA JANの1952年製の2A3が到着しました。JANというのは米海軍事用管という意味で(Joint Army Navy)、本来のデザインから若干機構を簡略化してコストを下げたものです。なのでオリジナルのビンテージ品よりは安く入手出来ます。出品者の情報では未使用品ということです。これはその内測定器で調べて確認します。しかし、1952年ということは70年前で、私よりも長く生きている管です。
音はまだ聴き始めたばかりですが、PSVANEのTiiに比べると高音が自然です。(逆に言うとPSVANEは高音にちょっと強調感、装飾めいた感じがあります。)またボーカルの艶についてはこちらの方がはるかに優れています。全体にとても良い感じで、これは下手すると300Bより上かもしれません。
トワイライト・ゾーンの”Mirror Image”
トワイライト・ゾーンの”Mirror Image”を観ました。ミリセント・バーンズという25歳の女性がバスを待合室で待っています。バスがなかなか来ないので係員にいつ来るか聞いたら「そう何回も聞きに来るな」と言われます。しかし彼女が聞いたのはそれが初めてでした。しかもチェックインされている荷物が彼女のバックと瓜二つでした。それを係員に言ったら「それはさっきあんたが預けたものだろう」と言われました。そんな筈は無いと自分の荷物を確かめたらそれは消えていました。怖くなったミリセントはトイレに行きますが、そこに居た女性に数分前に来たばかりなのにどうしたのか聞かれます。慌ててドアを開けたからトイレの鏡にはさっき自分が座っていたベンチに、もう一人の彼女が座っていました。ベンチに戻った彼女の横に、もう一人男性客がやって来ます。彼女の様子がおかしいので問い質し、事情を聞いてそれは幻覚でしょう、と説明します。しかしバスが来て乗り込もうとした彼女は既にバスの中に自分が居るのを発見して逃げ出します。結局男は友人に車で来てもらうと言い、実際は警察に電話します。ミリセントはパトカーで連れていかれます。しかし残った男がちょっと目を離した隙に自分の鞄が無くなります。それはある男が持って逃げていましたが、その男は男にそっくりで…という話です。いわゆるドッペルゲンガーものかと思いましたが、女性はこれはパラレルワールドにもう一人の私が来て、入れ替わろうとしていると説明しています。ちょっともう一ひねりが欲しかったです。
ヴェーバーの「ローマ土地制度史」の日本語訳の10回目を公開
マックス・ヴェーバーの「ローマ土地制度史」の日本語訳の第10回目を公開しました。ヴェーバーが特に注釈で細かい所をほじくるので、訳すのは大変ですが、個人的にはローマ史のお勉強にはとてもなります。今回の所も、ローマへの穀物供給はどのように行われていたのかの一端が分る内容でした。