真空管アンプにおける間違った両切り(スイッチ)

ちょっとKT150を使ったシングルアンプを探していたら、左のような回路図がありました。この会社のアンプでは電源スイッチに2極のスイッチを使って、いわゆる「両切り」にしたつもりなのかもしれませんが、残念ながらこれは「間違った両切り」です。一見すると2極のスイッチを使い、並列の2つの回路でスイッチを入り切りしているので、スイッチの負荷としては1接点当たり1/2になって信頼性が上がる、と多分思われているのだと思います。しかしこの考え方は間違いです。何故かというと2極のスイッチの場合、接点の開閉タイミングが両方で完全に一致するということはなく、どちらかの極の接点が先に開閉しますので、アークはそこで発生し、常に片側の接点だけが損耗して行くということになり信頼性が向上することはありません。(片方の接点が損耗した結果、ON-OFFタイミングがずれ、今度はもう一方の接点が先に開閉することになるという可能性もあるので、まったく意味が無い訳ではありません。)

正しい「両切り」とは、左図のように回路のライブ側(信号側)とニュートラル側(グラウンド側)の両方を一度に開閉することを言います。(この場合、2つの極の開閉タイミングが正確に一致する必要はありません。)これをする理由は床が濡れていた場合など、機器のグラウンドから漏れた電流による感電を防止することです。この場合濡れた床から人体を通じて機器に戻るという回路が出来る可能性があるので、グラウンド側の回路を明示的に切断することで感電防止になります。なので家の中の電灯用のスイッチでも浴室など水回りで使う場合は必ず両切りになっています。

WE300BよりKT150、170


KT170をずっと聴いていますが、やはりいいです。私の環境と機器、私の良く聴くソースでという限定ですが、どちらがより好ましい音を出すかと言われたら、ウェスタン・エレクトリックの300BよりTUNG-SOLのKT150、KT170です。まず低音に関しては圧倒的にKT150、KT170の方がいいです。十分に低域まで伸びて、しかもダンピングの利いた引き締まった低音を聴かせてくれます。中高音についてはどちらにもいい所がありますが、音の粒立ちの明確さという意味で、KT150、170の方が私好みです。分解能の点でもこのソースにこんな音が入っていたのかという感じです。音場・音像も良く、もっともこれはデュアルモノという構成による部分がありますが、いわゆる「前に出て来る音」です。もちろんアンプによる差というのが大きいですが、私の所ではどちらもエレキットのものをAmtransパーツに一部変え、ルンダールのトランスにしている、という点で同じです。それからコストパフォーマンスでは圧倒的にKT150、170が上回ります。2021年度に出たウェスタン・エレクトリックの復刻300Bはペアで23万円なのに対し、KT170はペアで3万ちょっとです。問題点は、ヒーター電流が大きいので、単純にはKT88用アンプでは使えないということですが、私みたいにデュアルモノでやるとか、あるいはヒーター専用のトランスを足すとか、色々と対策はありますし、何よりこれから色々なアンプが出て来るでしょう。

KT170もポチる


KT150の音がとても気に入ったので、この辺でそろそろ打ち止めにすべきでは、と思ったのですが、好奇心に逆らえず昨年発売されたKT170もポチりました。写真の左からJJ製12AU7、KT120、KT150、KT170、そしてPSVANEのWE300B(サイズの比較用)です。KT170は150から更に形状が変わり、高さは300Bとほぼ同じで、横は300Bより大きい巨大な管になりました。KT120はまだKT88風ですが、ここまで来ると全く別の管です。ちなみにetracerで、KT120用の設定で測定した時のプレート電流は、KT120が140mA、KT150が160mA、そしてKT170が170mAになりました。120→150→170の順で低域の締まりとダンピングが良くなります。ただ170はまだ今日届いたばかりでエージングが出来ておらず、女性ボーカルの艶とかがイマイチです。何度も書いていますが、これらのいわばスーパーKTシリーズはヒーター電流が2AとKT88の25%増しになっていますので、KT88用のアンプにそのまま挿すと最悪電源トランスが焼き切れます。某サ○バ○ーの色んな出力管が使えますと言ってKT150もOKですとしているアンプ、電源トランスのヒーター用巻線の容量は2本で4Aでした。ということは定格ギリギリでかなり危ないです。私がこれらの球でシングルアンプを作るなら、左右独立電源にして、電源トランスは2台にします。6.3Vで5Aが取れる電源トランスは春日無線等で売っています。あるいはヒーター専用のトランスを設けるかです。

河口俊彦の「大山康晴の晩節」

河口俊彦の「大山康晴の晩節」を読みました。最初にこの本が出たのは2003年だったと思いますが、その時読んでいるのでおよそ20年弱ぶりの再読です。この本のことが思い出されたのは、最近羽生善治9段がついにA級から陥落したという報道があり、改めて69歳で亡くなるまで実に44期もA級在籍を続けた大山康晴名人のことが思い出されたのと、その大山名人に風貌が似ているとされる渡辺明名人が王将戦で藤井聡太竜王に敗れたなどで、大山名人のことについて改めて知識を新たにしたいという気持ちがあったからです。
タイトルの「晩節」ですが、この言葉の本来の意味は人の人生の最後の時節ということでニュートラルな表現ですが、「晩節を全うする」という言い方はほぼ死語になりつつあり、一方で「晩節を汚す」は政治家などのスキャンダルなど今でも良く使われる表現です。なのでこの本の記憶は、大山名人がいわゆる番外戦術を駆使したやり方や盤上の露骨なNo.2つぶしなどが先に立ち、どちらかというと「晩節を汚す」的な印象を持っていました。ところが改めて読み直してみて、むしろ死を翌年に控えて順位戦で好成績を残し挑戦者決定戦にまで進んだことや、三度目の癌による入院の直前まで対局を続けた姿に素直に頭が下がりました。確かに加藤一二三と最初に名人戦で戦った時の最終局の最後の場面など、あまりにも露骨で嫌になりますが、おそらく大山名人自身もそのような仕打ちを先輩棋士に受けながら、それを跳ね返して名人になったのだと思います。
今は将棋界は藤井聡太五冠の大ブームの最中ですが、藤井5冠が50歳を過ぎても大山名人のように勝ち続けられるだろうかという点については疑問に思います。AIに人間が勝てなくなった時代だからこそ、大山名人や升田幸三名人の将棋の価値が改めて見直されるのだと思います。

ウルトラQの「1/8計画」

ウルトラQの逆輸入版ブルーレイを買いました。最近、トワイライト・ゾーンとかアウターリミッツを観始めたので、それに影響を受けたウルトラQを再確認したかったためです。取り敢えず「1/8計画」を観ました。子供の時に観たように思いますが、さすがに覚えていません。なんというか由利子が小さくなって電話をかけるシーンにデジャヴ感がありますが、これはアーウィンアレンの「巨人の惑星」で何度も観た風景です。しかし向こうは確か巨人の40分の1くらいの大きさだった筈であり、1/8では合わないですが。(ちなみにウルトラQの方が先です。)後半の淳と一平が1/8になった町に侵入する画面は、要するに特撮用の町のセットをそのまま使っているだけで、円谷プロの特撮としては非常に簡単だったと思います。

NHK杯戦囲碁 余正麒8段 対 山下敬吾9段


本日のNHK杯戦の囲碁は、黒番が余正麒8段、白番が山下敬吾9段の対戦です。対局前のインタビューで山下9段は「独創的な布石のネタも特に白番のは尽きて来たので、黒番が当たりたい」と言っていましたが、結果は白番でした。しかし2隅で大目外し(星にケイマにかかるそのケイマの位置)と今回も見せてくれました。その白の変則的な位置に、黒がすぐ星の位置にかかったため、右下隅が空き隅のまま競い合いが始まるという不思議な碁になりました。その競い合いで余8段は山下9段のお株を奪うような強気で攻撃的な手を打ち、左辺で戦いになりました。そこで劫になり、黒が白を包囲する手を劫立てに打ちましたが、白は劫を解消しました。黒は当然白を包囲しましたが、白がすぐ切っていきました。白はその切った石から黒の下辺をいじめようとしましたが、結果的には誤算があり、黒は白の4子を取りながら右下隅につながり、下辺がいい地になりました。白は黒2子を抜いて中央が厚くなりましたが、このワカレは明らかに黒良し、でした。そこで白は第2の攻めで左辺から延びる白を狙っていき、その過程で上辺左を抉りましたが、黒もつながって厚くなり不満はありませんでした。波乱が起きたのは、白が右下隅の三々に入った後で、黒は下辺側から抑えていればなんの問題もなかったのを、右辺側から抑えて頑張りました。しかしこれは打ち過ぎで、黒のダメ詰まりを利用して、下辺で取られていた白4子が復活し、劫になりました。黒が左辺の白の活きを脅かす手を劫立てにしたのを白が受けずに劫を解消しました。これによって黒地だった下辺が逆に白地になり、形勢が逆転しました。後は左辺をどう処理するかで、眼の無い石同士でセキになれば白の勝ちでした。しかし駄目詰めの過程で白に疑問手があり、結局黒の取り番の劫になりました。白はどこにもこの大きさの劫立てが無く、仕方なく下辺の黒7子をアタリにしましたが、黒は当然受けず左辺の白20子くらいを打ち抜いて、派手な振り替わりになりました。(写真)白からすると泣けるのは、残された白の左下隅がまだ活きていないことで、白が一手入れれば活きで、黒から打てばセキまたは万年コウということになりました。結局黒は劫材を消してから劫を決行したため、この白は全部取られてしまいました。AIの判定では途中で白が手を入れれば白の勝ちだと言っていましたが、実戦心理としてもし手を入れて半目負けだと切なく、山下9段が抵抗したのは理解出来ます。余8段はこれで準決勝進出です。去年も決勝に進出しています。

ワクチン3回目

本日、川崎市の大規模接種会場で3回目のワクチン(モデルナ)を受けて来ました。13:40頃接種を受けて、16時頃証明書アプリを起動して3回目を含む証明書が取れるか試してみたら出来ました。川崎市素早いです。今回、川崎市の対応は迅速で良かったです。
副反応は今のところ熱も無くまったく問題ありません。

真空管アンプー完成イメージ

真空管アンプの製作、ケースが届いたので取り敢えず上部に付ける部品を並べてみてそれらしくなりました。上部真ん中の電源トランスは上下逆で角穴を開けてこの半円の部分をシャーシの中に入れます。
ところでケースって底板は付いていないんですね。Amazonで丁度のサイズのアルミ板が無いんでちょっとあせりましたが、Webで探して指定のサイズに切って一枚から売ってくれる店を見つけて何とかなりました。

キャプテン・スカーレットの”Codename Europa”

キャプテン・スカーレットの”Codename Europa”を観ました。今回はキャプテン・ブラックがあるエレクトロニクスの専門家をライフルで狙撃して殺し、例によってミステロンズのロボットにします。そしてそのエレクトロニクスの専門家が狙うのは、「欧州のトライビューナル」が何とか、と言ったので何のことだか分かりませんでしたが、Triumviratで「欧州の三頭政治家」でした。そして今回のエージェントは、007ばりに秘密兵器を駆使してスペクトラムの防衛網を突破します。まずある基地の側で、テープレコーダーとアンプ付き拡声器をセットし、機銃を撃つ音を流します。それで基地の注意をそちらに惹き付け、さらにはタンクの音を流します。基地側は大慌てでその隙にエージェントは、電流の流れている鉄条網を、電流を他に流しながら切断し、基地に潜入し、通気口から爆弾を投げ込みます。しかし、プロのスパイと違ってそこが詰めが甘く、通気口はスペクトラムがわざと設けた偽のもので、基地の1Fから上が爆破されても、狙われた政治家は地下にいたので無事でした。しかし一人目のターゲットを仕留めたと思ったエージェントは二人目の政治家を狙います。SPVが追跡して来ましたが、SPVのレーダーを攪乱して視界を無くし、撃破します。次に夜中に別の基地を攻撃し、ラジコンの飛行機で攪乱電波を流し、基地の通信を使えないようにします。それから基地の電源を切断して真っ暗にしてから、ノクトビジョン(赤外線暗視装置)を付けて基地に潜入します。ここまでは良かったのですが、キャプテン・スカーレットが部屋の入り口に仕掛けた超単純なワイヤに引っ掛かって倒れ、スカーレットに撃ち殺されます。という訳で頭がいいんだか悪いんだか良く分からないミステロンズのエージェントのお話でした。

PCL86全段差動プッシュプルアンプのスクラッチ製作に挑戦


これまで真空管アンプのキットを6台組立て、いずれも成功しています。(1台だけ販売店に手直ししてもらいましたが)
それで前からやろうと思っていた、シャーシの加工から始まるスクラッチでの真空管アンプの作成についに踏みきり、部品を集めている最中です。アンプの回路はPCL86の全段差動プッシュプルアンプというものです。既にキットでPCL86の超三結アンプを組立てていますので、今度は同じ真空管で全段差動プッシュプルを作って比べるのが目的です。もちろん回路設計なんて出来ませんから、Webにあったものそのままですが、レイアウトや配線の引き回しなどは自分で考えます。またアルミの1.5mm厚の板のケースを使いますが、余裕を十分持った大きめの箱にしています。(330x220x50)PCL86は三極管と五極管が一緒になった複合管なんで他の真空管は必要無く(整流はショットキーバリアダイオードでやります)、ご覧のようにスペース的には十分ゆとりがあります。
材料代は概算で10万円程度、その内真空管など3万円分は既に持っているものが使えたので、結局出費は7万円ほどです。(工具代は除く。)アルミ板の加工が問題ですが、既にかなり前にボール盤を買っており、またボッシュの電動ドリルやホールソーも揃えています。まあ完成はいつになるか分かりませんが気長にやろうと思います。
なお、レイアウトで普通前面にある電源スイッチが天板にあるのは上杉研究所のアンプの真似です。(上杉のアンプの電源スイッチは私の会社のS-1Aというトグルです。)