三遊亭圓生の「鼠穴」

jpeg000-38今日の落語、三遊亭圓生の「鼠穴」。
放蕩して一文無しになり、兄から商売の元手を貸してもらおうとしたが、兄が貸してくれたのはたった三文。それでも気を取り直して、その三文で細々と商売を始め、こつこつ貯めて増やして、何年か後には何とか倉を三つ持つ店を構えることができた。兄の家に金を返しに行き、その晩泊まったら、店が火事になり三つの倉も全部焼けて元の一文無しに。兄にまた金を借りようとしたが、少額しか貸してくれず、それではと七つの娘が吉原の禿に身売りして二十両をこしらえる。しかし、その金を盗まれてしまい、もう駄目だと思って首を吊って…その時目が覚めて、という夢落ちの噺です。何か後味が良くないし、笑える所もほとんどなくて、これ本当に落語?という感じです。

NHK杯戦囲碁 苑田勇一9段 対 新垣朱武9段

jpeg000-43本日のNHK杯戦の囲碁は黒番が苑田勇一9段、白番が新垣朱武9段の一戦。苑田9段は1手目が高目、それに対し新垣9段がいきなり2手目でかかり、苑田9段はそれに受けずに右下隅でやはり高目、新垣9段が左下隅を打って、苑田9段が左上隅を目外しという今まで見たことのない序盤でスタートしました。その後苑田9段は右下隅を白が手抜きしたのもあって大きく地にしかつ右辺を模様化しました。これに対し白は左下隅から左辺、下辺にかけて地模様を築きました。それから白が右辺を消しに行き、黒が反発して勝負はこの白に対してどのくらい攻めが利くかでした。結果的にはこの白は十数目の地を持って治まってしまい、むしろ黒の方が右辺から中央に飛んだ石の眼を心配しなければなりませんでした。白は左上隅の黒に対してもうまい手を打って地を減らすことが出来ました。全局を通じて戦いらしい戦いがなく、囲い合いになりました。こういう展開になると白のコミがものを言い、終わってみれば白の4目半勝ちでした。苑田9段はちょっとらしくない碁でした。

曲亭馬琴・白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(下)

jpeg000-37曲亭馬琴・白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(下)読了。
なんせ、八犬伝のオリジナルは、全98巻、106冊もあるそうですから、それがこのボリュームで読めるのは幸いです。それでも普通の文庫本の4冊分くらいありますが。私は伝奇小説が好きなんですが、考えてみればこの八犬伝が元祖ですよね。
とにかく八犬士が八人集まるまでがはらはらどきどき、そして最後の犬江親兵衛が現れると、この人が年は一番若く、再登場時(4歳の時に神隠しに遭い、行方不明になります)の時もまだわずか9歳。しかしながら武芸抜群で、再登場後は胸が空くような大活躍です。しかも美少年という設定です。後は出てくる悪役の名前が素晴らしいです。鰐崎悪四郎猛虎(わにさきあくしろうたけとら)、暴風左衛門舵九郎(あかしまざえもんかじくろう)なんてのはすごいです。
全体に白井喬二の訳はとても読みやすく、そして格調も失っていません。お勧めです。

三遊亭圓生の「錦の袈裟、猫怪談」

jpeg000-38本日の落語、三遊亭圓生の「錦の袈裟、猫怪談」。
錦の袈裟は、錦の布が手に入ったので、それを褌にして吉原に繰り出せばもてるだろう、ということで、一人錦の布が足らない与太郎が、和尚さんの錦の袈裟を借りてそれを褌にして吉原に行ったら、お大名と間違えられて一番もてた、という他愛ないお噺。
「猫怪談」は以前聴きましたので省略。

曲亭馬琴作、白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(上)

jpeg000-35曲亭馬琴作、白井喬二訳の「南総里見八犬伝」(上)を読了。白井喬二関係の著作で、現時点で一番売れているのはどうも「富士に立つ影」ではなく、この八犬伝のようです。Amazonのレビューを読む限り、白井訳は非常に評判がいいみたいなんで、読んでみました。「八犬伝」は子供の時、子供向けの翻案を読んでいますが、ちゃんとしたのは読んだことがなかったので、丁度いい機会と思いました。白井喬二は学生時代から、近松門左衛門や井原西鶴の作品の現代語訳を手がけていて、手慣れたものです。白井の現代語訳は、非常に読みやすく、リズムもいいと思います。そして白井は馬琴からストーリーテリングの手法を学んでいるように思います。
上巻では、八犬士のうち、六人までが判明し、七人目と思われる人物が出てきた所で終わっています。

古今亭志ん朝の「犬の災難、三枚起請」

jpeg000-34本日の落語、古今亭志ん朝の「犬の災難、三枚起請」。
「犬の災難」は酒を飲むのにつまみを、隣の家の分として預かった鶏肉を自分のもののように装って、後で辻褄が合わなくなったので、犬に盗られたとし、あげくの果ては友人の買ってきた酒を一人で飲んでしまって、これまた犬が徳利を倒してしまった、と言ってごまかす調子のいい男の噺。
「三枚起請」は以前聴いているので省略。
これで、志ん朝のCDは手持ちのものを全部聴き終えました。

梶原一騎・川崎のぼるの「男の条件」

jpeg000-32梶原一騎・川崎のぼるの「男の条件」読了。
「巨人の星」のゴールデンコンビが1968年に少年ジャンプに連載したもの。漫画家を主人公にして、梶原流スポ根をやったものです。
川崎のぼるの絵というのが、ワンパターンで、主人公は星飛雄馬そっくり。ライバルは花形満、親友のギャグ漫画家志望は伴宙太そっくりです。星一徹のそっくりさんは、ドヤ街で無銭飲食の男として登場します。(笑)ストーリーはあの当時の梶原一騎のいかにも時代がかったもので、ひたすら熱いです。ちなみに主人公の名前は旗「一太郎」です。一太郎は、ある旋盤の工員を主人公にした有名漫画の漫画家に、旋盤の絵が間違っている(そんな旋盤は存在しない)と指摘し、漫画家に工場に見学に来るように要求します。漫画家を工場に連れて行くため、一太郎は漫画家が酒場で酒を飲む間待っていますが、やがて喧嘩に巻き込まれ、頭を怪我します。その出血のため、工場に行くことができなかったため、一太郎は「自分の血で」床に旋盤の絵を描きます。それを見た漫画家は「まるで雪舟だ」と感動します…それから、一太郎は師匠と仰ぐ漫画家と一緒に紙芝居を描いて日銭を稼いでいましたが、ある時ヤクザに因縁をつけられます。この辺りがいかにも梶原一騎。
ともかく、「ああこういう漫画の時代もあったんだ」と懐かしいです。

三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋」(下)

jpeg000-29今日の落語、三遊亭圓生の「ちきり伊勢屋(下)」。
占い師に死ぬことを予言され、全財産を使い果たして自分の葬式まで出したのに、傳次郎は棺の中に入っても結局死ねません。自分の屋敷も売っぱらってしまいましたから、今では浮浪者同然。易者に出会って問いただしてみたら、財産を使い果たす時に、人助けをして人の命を救ったので、それで運命が変わり、今度は80過ぎまで生きるという。それで色々あって駕籠舁きの真似ごとをしていたら、そこで前に命を助けた女性に出遭って、今度は逆にその女性から恩返しをされて幸せに暮らした、という長いけれど中々後味の良いお噺です。

白井喬二の「東遊記」

jpeg000-31白井喬二の「東遊記」を読了。飛鳥亭主人のペンネームで1922年に「人情倶楽部」に連載したもの。名前から分かるように、「西遊記」のパロディーで、三蔵法師が一念法師、お供が孫悟空、沙悟浄、猪八戒の代わりに、蛙舎麟(あしゃりん)、土竜星(どりゅうせい)、爬六甲(はろくこう)が付き添い、天竺ではなく地竺にお経を取りに行くという話です。孫悟空の如意棒に相当する武器は蛙舎麟、筋斗雲に相当するものは土竜星がそれぞれ所持していて、一対一の対応にはなっていません。活躍の仕方も最初は蛙舎麟が活躍しますが、土竜星が登場してからはもっぱら土竜星が活躍します。こういう偽古典的な大ぼら話を書かせたら、白井喬二の右に出る人はいません。1940年4月に単行本になってから、再版されておらず幻の本となっていましたが、1999年にようやく出たのが今回読んだ版です。本来は学芸書林の全集に入る筈でしたが、第二期の全集が中止されて日の目を見ませんでした。
それ以外に、白井狂風名義での「旧造軍艦」も収録。こちらは全5回の子供向けのお話し。残念ながらクライマックスと思われる第4回の分が欠けています。1886年にフランスで建造され、日本に回航される途中、南シナ海で行方不明になった、防護巡洋艦の「畝傍」の話をベースにしています。

白井喬二の「雪麿一本刀」(下)

jpeg000-30白井喬二の「雪麿一本刀」(下)読了。上巻では、仇と付け狙う青江霧太夫の手下の剣士10人ばかりをばったばったとなぎ倒して来た雪麿ですが、下巻に入るとようやく霧太夫の正体を突き止め、直接渡り合います。しかし、その戦いは邪魔が入ったり、霧太夫が逃げ出したりしてなかなか本懐を達することができません。そうこうしている内に、霧太夫は偽の切腹騒ぎを起こして死んだふりをし、その間に講武所の後釜を募集するという名目で、名だたる武門の秘伝書を集めて、それを自分のものにしてしまうという陰謀を企みます。霧太夫はある屋敷に隠れているのですが、それが「怪建築十二段返し」の再来のようなからくり屋敷で、その仕掛けにはまって雪麿は苦戦します。しかしながら奉行所の助けも借りながら、再度その屋敷に忍び込んで、見事秘伝書を取り返します。その時手伝った奉行所の者が忍術の心得があって、とこれは「忍術己来也」の再現。そして最後は奉行所公認での御前試合で、霧太夫と真剣勝負をして見事勝つ、という王道的展開です。全体的に深みはまったくないのですが、肩の凝らない理想的大衆小説です。雪麿を巡る女性も、最後に雪麿の妻となる香鳥、雪麿が世話になる大名家の鏡姫、年増のお壺、料亭の女お琴など、たくさん出てきて鞘当てを演じて飽きさせません。
なお、1961年にNETでTVドラマになっていて、主題歌を村田英雄が歌っています。